その中でも,この科目が苦手だと思う人は,つかみどころがないように感じるのではないでしょうか。
勉強しても点数が伸びにくい科目であることは事実ですが,まったくつかみどころがないわけではありません。
つかみどころはズバリ
福祉政策の本質を理解すること
これに尽きます。
今回から数回にわたり,解説していきたいと思います。
まず1回目は,サービス利用についてです。
第27回・問題27 受益と負担に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 福祉サービスの利用者負担には,利用者と非利用者との公平を確保する機能がある。
2 財務省は,社会保障負担額と財政赤字額の合計が国民所得に占める割合を国民負担率として公表している。
3 社会福祉基礎構造改革以前は,福祉サービスを利用した者からの費用徴収額はサービスの利用量に応じて決められていた。
4 所得控除は,所得税の税対象から最低生活費を除く方法であり,実際の税負担軽減効果は低所得者に有利に働く。
5 公費負担(税)方式は,受益と負担の対応関係が社会保険方式より明確である。
何を書いてあるのか,さっぱり分からないという人もいるかもしれません。
国試直前であればそれは困りものですが,まだ国試戦線の火ぶたは切られたばかりの今は分からなくて当然です。
焦ることは決してありません。
日本語の特徴は・・・
漢字を混ぜて使用していることです。
漢字は漢字そのものに意味があります。
つまり,その用語を知らなくても推測できます。英語だとその言葉自体が分からなければお手上げです。
その視点を合わせて,この科目に取り掛かれば多くの場合,理解の促進を図ることができます。
かなりいけますよ。
それでは解説していきます。
1 福祉サービスの利用者負担には,利用者と非利用者との公平を確保する機能がある。
日本の社会保障制度の仕組み
社会保険制度
社会福祉制度
生活保護制度
の3種類があります。
そのうち,利用者負担があるのは,社会保険制度と社会福祉制度です。
それぞれは,それぞれのニーズを充足するために利用されます。
しかしニーズがない人は利用することはありません。
社会保険制度の場合を考えます。
社会保険制度は日本では税負担もありますが,基本的には社会保険料によって成り立ちます。
サービス利用に利用者負担がない場合を考えると
サービス利用をしない人は,保険料拠出だけを行います。
サービス利用をする人も,保険料拠出だけを行います。
不公平な感じがすると思います。そのため,利用者負担で調整しているのです。
これは税負担によって運営される社会福祉制度も同様です。よって正解です。
2 財務省は,社会保障負担額と財政赤字額の合計が国民所得に占める割合を国民負担率として公表している。
国民負担率は,しっかり押さえておきたいです。
国民負担率は,国民所得に占める税金+社会保障負担額の合計の割合です。国際比較に使われます。
財政赤字額を加えた率は,潜在的国民負担率というそうです。
しかし,国試で押さえておきたいのは,潜在的国民負担率ではなく,国民負担率です。
3 社会福祉基礎構造改革以前は,福祉サービスを利用した者からの費用徴収額はサービスの利用量に応じて決められていた。
福祉サービスの利用料の徴収方法には,「応能負担」「応益負担」の2種類があります。
応能は「能力に応じて」
応益は「受益に応じて」
という意味です。日本語はありがたいです。
社会福祉基礎構造改革以前は,応益負担が基本でした。よって間違いです。
4 所得控除は,所得税の税対象から最低生活費を除く方法であり,実際の税負担軽減効果は低所得者に有利に働く。
所得控除は,所得税の税負担を軽くするので,税負担が多い人の方が有利に働く方式です。つまり低所得者には有利に働きません。よって間違いです。
5 公費負担(税)方式は,受益と負担の対応関係が社会保険方式より明確である。
公費負担方式は,社会福祉制度と生活保護制度です。
そのうち,分かりやすいのは生活保護制度です。
生活保護制度は,事前に税負担をしていなくても生活保護を受けることができます。つまり負担はしません。よって間違いです。
受益と負担の対応関係が明確なのは,社会保険制度です。社会保険制度の基本は,事前に社会保険料を拠出することで,保険事故が発生した場合,制度利用が可能となります。
〈今日の一言〉
福祉制度を勉強する時は,身近な制度に置き換え覚えるのがコツです。
丸暗記は,あいまいな知識につながりますので注意が必要です。