数年前から見ると2か月くらい出版が早まってきています。
もっと前に目を向けると,過去問の発売は11月だった時期もあります。
3か月で合格できる
このようにアドバイスをする人が今もいますが,それはおそらくそのような時代に合格した人なのではないかと思います。
実際に3か月で合格できる人もいるとは思います。
しかしそんなに簡単に合格できるなら,3割しか合格できないというのは矛盾していると思いませんか。
第31回国試で確実に合格したいのなら,3か月神話は忘れて,今から集中していきましょう。
難しくなっているのかの理由はいくつかありますが,出題の方法が違うことがあります。
ここでは,詳しく述べませんが,3か月神話は過去のものであることを肝に銘じましょう。
さて,今日の問題です。
今日から,科目は「相談援助の基盤と専門職」に飛びます。
第22回・問題86 ソーシャルワークの形成過程に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 慈善組織協会は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立され,貧困の原因を社会の構造に求めて,貧困者に対する救済を社会の義務ととらえていた。
2 セツルメント運動は,大学生たちが貧困地区に住み込むことによって展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。
3 YMCAは,キリスト教の信仰を深める青年運動として始められ,個別面接を繰り返すことによって,心理的な側面を重視した面接技法の体系化を進めた。
4 リッチモンド(Richmond,M.)の提案に基づいて,ニューヨークで6週間に及ぶ博愛事業に関する講習会が初めて開催され,専門教育へと発展していった。
5 フレックスナー(Flexner,A.)によって「ソーシャルワークはすでに専門職である」と結論づけられ,専門性が社会的に認知されるきっかけとなった。
ソーシャルワークには,個別援助技術であるケースワーク,集団援助技術であるグループワーク,地域援助技術であるコミュニティワークがあります。
それらがどのように発展してきたのかを理解していきましょう。
それでは解説です。
1 慈善組織協会は,慈善活動による救済の偏りを防止するために設立され,貧困の原因を社会の構造に求めて,貧困者に対する救済を社会の義務ととらえていた。
慈善組織協会(COS)は,ケースワークの源流です。
COSは,貧困の原因は,社会の構造ではなく,個人の問題だと考えていました。
そのため,基本は自助だとしています。よって間違いです。
貧困の原因が,社会の構造であることが分かってくるのは,もう少し先の話です。
2 セツルメント運動は,大学生たちが貧困地区に住み込むことによって展開され,貧困からの脱出に向けて,勤勉と節制を重視する道徳主義を理念とした。
COSは,貧困の原因は,個人の問題だととらえていたのに対し,セツルメントは社会問題だととらえ,社会改良に取り組んでいきました。道徳主義を理念としたのは,COSです。よって間違いです。
セツルメントは,グループワークの源流です。
3 YMCAは,キリスト教の信仰を深める青年運動として始められ,個別面接を繰り返すことによって,心理的な側面を重視した面接技法の体系化を進めた。
YMCAもグループワークの源流です。面接技法の体系化を進めたのはケースワークの源流であるCOSです。よって間違いです。
4 リッチモンド(Richmond,M.)の提案に基づいて,ニューヨークで6週間に及ぶ博愛事業に関する講習会が初めて開催され,専門教育へと発展していった。
リッチモンドは,アメリカCOSの指導者です。ケースワークに科学的手法を持ち込み,「ケースワークの母」と呼ばれています。
1897年の全米慈善矯正会議でリッチモンドは,応用博愛事業学校の必要性を提案しました。その翌年にニューヨークで6週間にわたる夏期講座が開催されました。よって正解です。
5 フレックスナー(Flexner,A.)によって「ソーシャルワークはすでに専門職である」と結論づけられ,専門性が社会的に認知されるきっかけとなった。
フレックスナーが述べたのは「ソーシャルワーカーはいまだ専門職ではない」です。
それから約40年後に,グリーンウッドが「ソーシャルワークは専門職である」であると述べました。