2018年5月21日月曜日

国試に合格する勉強法~福祉の歴史編~その15

今回は,地域福祉における日本の歴史を取り上げたいと思います。

地域福祉の歴史は,人名問題になっているものがほとんどです。

嫌いな人にとっては,無味乾燥に思うかもしれません。

出題の目的は,地域福祉は地道な活動の積み重ねによって作り上げられていることを知ってもらいたいのではないでしょうか。

さて,問題です。

第22回・問題34 地域福祉の源流をつくった人物に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。

1 賀川豊彦は,生活協同組合の父と呼ばれたが,アメリカへ渡り牧師として生涯を送った。
2 小河滋次郎は,済世顧問制度を創設し,民生委員の父と呼ばれた。
3 渋沢栄一は,晩年,実業界を退き中央慈善協会の初代会長の職務に専念した。
4 石井十次は,イギリスのトインビーホールの影響を受け,岡山で日本最初のセツルメントを開設した。
5 牧賢一は,社会福祉協議会の創設期から指導者として貢献し,『社会福祉協議会読本』(1953年)を著した。


各人の出題頻度(旧カリ時代も含む)

賀川豊彦 5回
小河滋次郎 8回
渋沢栄一 5回
石井十次 10回
牧賢一 2回

石井十次と小河滋次郎の出題回数は突出していることが分かります。

今日の問題は,現行カリキュラムの1回目のものです。
牧賢一以外,出題されているのは常連さんたちですが,内容が少し難しいです。

それでは解説です。

1 賀川豊彦は,生活協同組合の父と呼ばれたが,アメリカへ渡り牧師として生涯を送った。

賀川豊彦(かがわ・とよひこ)は,神戸の新川のスラムに住み込み,布教活動を行います。その後アメリカにわたって学び,帰国後に労働者や農民運動を行いました。生涯を送ったのは日本です。よって間違いです。賀川の自伝的小説「死線を超えて」は出版当時ベストセラーとなりました。


2 小河滋次郎は,済世顧問制度を創設し,民生委員の父と呼ばれた。

小河滋次郎(おがわ・しげじろう)が創設したのは,大阪府の方面委員制度です。
2018年は,方面委員ができて100年の節目の年です。


3 渋沢栄一は,晩年,実業界を退き中央慈善協会の初代会長の職務に専念した。

渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)は,日本資本主義の父と呼ばれる人物です。生涯,実業界に身を置き,一生のうち,設立した会社は500社を超えると言われています。しかし自分の名前を会社名につけることを好まなかったために,知らない人にとってはなじみがない人かもしれません。

中央慈善協会は,現在の全国社会福祉協議会の源流,渋沢は初代会長に就任しました。中央慈善協会は,全国の慈善事業を推進するために感化救済事業講習会の第1回講習会の終了日に設立されました。


4 石井十次は,イギリスのトインビーホールの影響を受け,岡山で日本最初のセツルメントを開設した。

石井十次は,イギリスのバーナードホームの影響を受けて岡山孤児院を開設しました。
岡山のセツルメントは,A.アダムスが開設した岡山博愛会です。


5 牧賢一は,社会福祉協議会の創設期から指導者として貢献し,『社会福祉協議会読本』(1953年)を著した。

これが正解です。

牧賢一は,全国社会福祉協議会の事務局長を務めた人物です。


<今日の一言>

普通の感覚から言えば,牧賢一だけ時代が大きく違うので違和感があります。

この問題を作成したのは,全社協にかなり思い入れの強い人だったのではないでしょうか。



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