その中心テーマが「地域包括ケアシステム」の構築です。絶対に押さえておきたい法制度は「医療介護総合確保推進法」です。
地域包括ケアシステムとは・・・
重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように,住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるものです。
「住まい」が加わっているのが特徴と言えるでしょう。
今までは,護送船団方式と言える,国が方針や制度を決めて地域格差のない制度が実践されてきました。
ところが,地域包括ケアシステムは,市町村・都道府県がその地域の実情に合わせて,システムを作り上げていくことになります。
言葉は悪いですが,今後は地域の格差が生じてくることでしょう。
さて,今日の問題はその地域包括ケアシステムがテーマです。
地域包括ケアシステムの内容はともかく国家試験の問題のつくり方がよく分かる問題となっています。
そこを意識して問題を読んでみましょう。
それでは,問題です。
第27回・問題32 地域包括ケアシステムに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高齢者を対象としているため,障害者や子どもについては対象として想定されていない。
2 団塊の世代が75歳となる2025年を目途に,専ら認知症高齢者に対する在宅医療システムの充実を目指している。
3 地域包括ケアの概念は,「医療介護総合確保推進法」における介護保険法改正(平成27年4月施行)において,初めて法的根拠が与えられた。
4 自助,互助,共助,公助から構成されるが,公助を中心としたシステム構築が必要であるとされている。
5 住まい・医療・介護・予防・生活支援が地域の特性に応じて,一体的に提供されるシステムの構築を目指している。
問題のつくり方も意識しながら解説していきたいと思います。
1 高齢者を対象としているため,障害者や子どもについては対象として想定されていない。
〇〇は●●であるが,〇〇は●●ではない
という文章です。
これはほとんどが間違い選択肢となります。
地域包括ケアシステムは,高齢化に対応するものですが,障害者や子どもも対象とします。
こういったものを障害があってもなくてもみんなが包まれて地域で生活できる「ソーシャル・インクルージョン」と呼ばれるものです。
2 団塊の世代が75歳となる2025年を目途に,専ら認知症高齢者に対する在宅医療システムの充実を目指している。
この問題は「専ら」がキーです。
在宅医療も大切ですが,病院,施設なども重要です。もちろん間違いです。
3 地域包括ケアの概念は,「医療介護総合確保推進法」における介護保険法改正(平成27年4月施行)において,初めて法的根拠が与えられた。
地域包括ケアの概念は,平成20年の地域包括ケア研究会の報告書で打ち出され,平成23年の介護保険法の改正で法的根拠が与えられています。よって間違いです。
この選択肢のキーは,「初めて」です。この問題は平成27年1月に行われた第27回国試のものです。
ずっと昔の問題だと「初めて」があっても正解となりますが,この場合はリアルタイムの問題です。「初めて」は初めてではないと想像できます。
4 自助,互助,共助,公助から構成されるが,公助を中心としたシステム構築が必要であるとされている。
地域包括ケア研究会の報告書では,従来の「自助」「共助」「公助」に加えて「互助」という概念が示されています。
これらが機能することが重要ですが,その中でも「自助・互助」が重要となっています。よって間違いです。
公助が中心であれば,これまでの制度と変わらないものとなります。
5 住まい・医療・介護・予防・生活支援が地域の特性に応じて,一体的に提供されるシステムの構築を目指している。
これが正解です。
この問題の難易度は高くはないですが,目のつけどころを変えると,確実に得点できる可能性が上がります。