少しは,慣れたことでしょうか。
その中で,何度も「普遍主義」と「選別主義」が出てきています。
過去30回の中での出題回数をみると・・・
普遍主義 8回
選別主義 6回
普遍主義の方が若干多いですが,どちらも出題頻度が高いことが分かります。
今日は,普遍主義&選別主義を深めていきたいと思います。
第23回・問題28 普遍主義と選別主義に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 普遍主義とは,福祉サービスを真に必要とする人々を選び出して,それらの人々にサービスを重点的に提供する方法である。
2 福祉サービスを選別主義的に提供すると,サービスは真に必要な人々に行き渡るので,利用者がスティグマを感じることが少なくなる。
3 自由主義レジームの福祉国家では,福祉サービスが普遍主義的に提供されることが多い。
4 ティトマス(Titmuss,R.)は,選別的サービスが社会権として与えられるためには,その土台に普遍主義的サービスが必要であると主張した。
5 日本の生活保護制度は,資力調査なしに給付される典型的な普遍主義給付ということができる。
普遍主義,選別主義の本質をしっかり押さえておかなければ答えられない問題だと思います。
1942年に出されたイギリスのべヴァリッジ報告は,いかにスティグマを与えないようにするかを追求しました。それらも考慮しながら解説していきたいと思います。
1 普遍主義とは,福祉サービスを真に必要とする人々を選び出して,それらの人々にサービスを重点的に提供する方法である。
普遍主義は,ニーズがある場合,所得を調査しないで,資源を配分します。
選別主義は,ニーズがある場合,所得を調査して,条件にあった場合,資源を配分します。
選び出すのは,選別主義です。よって間違いです。
普遍主義の方が優れた福祉政策のように思う人もいるかもしれません。
べヴァリッジ報告のべヴァリッジもそのように考えました。
しかし,普遍主義では,ニーズの強弱にかかわらず,ニーズがあれば資源を供給することになるので,どうしてもニーズがそれほど強くない方に合わせて資源を供給することになりがちです。
2 福祉サービスを選別主義的に提供すると,サービスは真に必要な人々に行き渡るので,利用者がスティグマを感じることが少なくなる。
スティグマとはらく印のことです。選別主義は,真にニーズがある人に資源を供給することができますが,それと同時にスティグマを感じさせてしまうことになります。よって間違いです。
べヴァリッジは,スティグマをいかに感じさせないで資源を供給するかを追求して,普遍主義を目指しました。
しかし,普遍主義では,選別主義よりも多くの資源を必要とします。そのため,イギリスでは財源不足を来たし,制度発足からすぐに政策変更を余儀なくされました。
3 自由主義レジームの福祉国家では,福祉サービスが普遍主義的に提供されることが多い。
この問題を難しくしている理由は,自由主義レジームの理解が必要だからです。
エスピン-アンデルセンという人は,福祉国家を福祉レジームという言葉を使って3つに類型化しました。
その一つが自由主義レジームです。
自由主義レジームの特徴は,福祉ニードの充足は,基本的には市場によって供給され,市場で充足できないものを国家が供給します。
そのため選別主義がとられます。よって間違いです。
保守主義レジームの特徴は,貢献原則がとられることです。貢献原則とは,多く拠出した人により多くの資源を供給するものです。
社会民主主義レジームの特徴は,多くの場合にニーズがある人に資源を供給する普遍主義をとることです。
4 ティトマス(Titmuss,R.)は,選別的サービスが社会権として与えられるためには,その土台に普遍主義的サービスが必要であると主張した。
べヴァリッジは,べヴァリッジは,スティグマを与えないために,普遍主義をとりました。しかし財源不足から選別主義をとらざるを得なくなってしまいました。
そのあと,イギリスでは,普遍主義と選別主義をめぐる論争が展開されます。
その時に登場しきたのが,ティトマスという人です。
ティトマスは,どのようにするとスティグマを与えないで,真に必要としている人に資源を供給するかを考えました。
それが,普遍主義が土台にあって,その上に選別主義的にサービスを供給するという方法です。よって正解です。
普遍主義と選別主義はどちらが優れている福祉政策なのか,という視点を変換させて,その関係性を論じたのです。
5 日本の生活保護制度は,資力調査なしに給付される典型的な普遍主義給付ということができる。
日本の生活保護制度は,資力調査(ミーンズテスト)を行う典型的な選別主義です。
よって間違いです。
〈今日の一言〉
選別主義が出てきたら,日本の生活保護制度を思い浮かべると良いでしょう。