「社会調査の基礎」を苦手とする受験生は多いと思います。
苦手なものは勉強しても,学習効果が出にくいものなのかもしれません。
しかし,0点を1にすることはできますし,1点を2点にすることもできます。
3点を4点にすることも,4点を5点にすることもできます。
苦手意識さえなくなれば,得点は伸ばせます。
逆に得意な科目は,もともと点数が取れるので,7問の科目で,6点を7点満点にするのは簡単ではありません。最後の1点の上乗せは,限りなく多くの知識が必要だからです。
「社会調査の基礎」が難しく感じるのは,量的調査の検定の部分があるからでしょう。
しかし,量的調査でもそのほかの部分や質的調査はそんなには難しくはありません
今回も面接法を続けていきたいと思います。
前回の問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_30.html
今日の問題は,構造化面接,非構造化面接,半構造化面接の意味を知っているかが正解にたどり着くポイントです。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題89 社会調査における面接法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 非構造化面接では,対象者に自由に回答してもらうことになるので,調査内容に精通していない調査員を採用して,面接を実施してもらうのがよい。
2 半構造化面接では,インタビューのおおむね半分程度の時間を,質問内容や質問の順番などが詳細に決められた質問紙によって面接が進められる。
3 面接における会話を録音できない場合には,正確な面接記録を作成するために,面接時はできるだけ会話の書き取りを優先しなければならない。
4 非構造化や半構造化で行われることが多いフォーカスグルーブインタビューでも,質問内容や討議のルールなどを示したインタビューガイドを準備する方がよい。
5 面接法では,対象者との間に十分な信頼関係を築くことが重要であり,いわゆるオーバーラポールの状態を目指すのがよい。
面接法は,第28回を出題された後は出題されていません。
しかしそれ以前は毎年のように出題されていました。
第28回は,グループインタビューの問題です。1問丸ごとの出題であり,前回紹介したようないろいろな要素をミックスしたものではありません。
3年間の過去問が完璧に解けても合格できない,という理由はここにあります。
この問題を間違った人の多くは,おそらく選択肢2の
半構造化面接では,インタビューのおおむね半分程度の時間を,質問内容や質問の順番などが詳細に決められた質問紙によって面接が進められる。
を選んだものと思われます。
国家試験には,この手の引っ掛けがときどき見られます。
「この手」とは,「半構造化面接」の「半」を指します。
半構造化面接とは,構造化面接と非構造化面接の中間にあたるものです。
構造化された(つまり事前に決めた)質問をいくつかしてから,そのあとは非構造化面接で進めていきます。
しかし,勉強不足の人は「半構造化」の意味がわからないので「半」という意味を考えます。そして選択肢2に引っ掛けられます。
「この手」の引っ掛け問題を見たら,とてもおかしくなります。
「試験委員は一生懸命考えたのだろう」
そして
「勉強不足の人はここに引っ掛けられるのだろう」
と思ってしまうのです。
実に上手に作ったと思いませんか?
正解は,選択肢4のインタビューガイドです。
インタビューガイドは,面接を進めるうえでの手引書です。
非構造化面接は自由面接です。だからと言って行き当たりばったりで進めるものではありません。
ソーシャルワークにも通じるものでしょう。
初回面接では,クライエントの話を傾聴することに努めますが,それ以降は何かの意図をもって面接をするでしょう。
話がずれた方向に向かった場合は,それを戻すのか,あるいはそのまま話をしてもらうのか,それもすべて意図的な面接です。
それがソーシャルワークの場面でできるのは,熟練しているためです。
質的調査の面接も目的をもって行われます。そのため,非構造化面接であっても,インタビューガイドは必要です。
<今日の一言>
ボーダーラインを大きく上回る人も大きく下回る人もいますが,それは受験生のほんの一部の人です。
多くの場合,合格するのも不合格になるのもほんの数点差です。
合否を分けるのは,今日の問題のようなタイプの問題に引っ掛けられることなく,得点することです。
勉強をまんべんなくしてきた人は,「半」構造化面接の意味は何となくでもつかめていることでしょう。
知識を積み上げてきた人は,合否を分ける1点2点をこういった問題から稼ぐことができます。
2019年1月31日木曜日
2019年1月30日水曜日
社会福祉士国試を初めて受験される方へのメッセージ
現在の社会福祉士国試は,今まで何度も紹介してきましたが,問題文がどんどん短くなってきています。
短くなったことは,文章の中に引っ掛けポイントをほとんど仕掛けられないことにつながります。
言い回しの難解さで,正解がわかりにくいものではなくなってきています。
「社会福祉士になる」という強い意志をもって勉強してきた人は,試験当日に大きな力を発揮できるのが今の国試です。
今は,緊張感が高まっていると思います。
それは誰もが通り抜けなければならない道です。
国試は,マーク式。問題文の中に必ず答えがあります。
覚えたことが頭のどこかに残っていれば,何となくでも答えを探り出すことができます。
名探偵になったつもりで,試験委員が仕掛けたトラップを見つけていきましょう。
文字数の制約のため,以前のように,二重三重にはトラップは仕掛けられません。
間違いを誘うような思わせぶりな表現もされにくくなっています。
知識だけで勝負できる条件が整っています。
あとは「自分を信じ切れること」です。
学習部屋では,今では入手困難な過去問もたくさん紹介してきました。
問題の読み解き方もたくさん紹介してきました。
どんな参考書が良いかも言わない,質問も受け付けない,一風変わったブログかもしれませんが,勉強部屋に訪れていただいたすべての人が合格できるように,チームfukufuku21の知恵を絞って,今まで情報を発信してきたつもりです。
自分を信じて,学習部屋を信じて,国試に臨みましょう!!
合格の扉は,今まさに開かれようとしています
さて,今日から質的調査に戻ります。
質的調査で用いられる主なものは
観察法,面接法,ドキュメント分析です。
そのうち面接法で出題される主なものは,
構造化面接法
非構造化面接法
半構造化面接法
フォーカス・グループインタビュー
ライフストーリー・インタビュー
ここに,観察法で紹介しなかった,アクション・リサーチを織り交ぜて出題されます。
構造化面接法の「構造化」とは,質問内容があらかじめ組み立てられていることを意味しています。
非構造化面接法は,質問内容が決まっていないもの
半構造化面接法は,構造化と非構造化の半分の要素をもったもの
グループインタビューは集団面接法,フォーカス・グループインタビューは同じような傾向をもった集団に対する面接法です。
ライフストーリー・インタビューは,調査対象者がインタビュアとの対話を通して,人生を語るものです。これの発展型とも言えるのがアクティブ・インタビューです。対話を通して,調査対象者の新しい気づき,新しい世界を構築するものです。語りを重視する面では「ナラティブ・アプローチ」と共通します。
アクションリサーチは,参与観察よりも調査対象に深くかかわり調査対象の問題の解決を目指すものです。
それでは今日の問題です。
第27回・問題89 調査の手法に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい
1 ライフストーリー・インタビューの実施において,構造化面接によって聞き取りを進めるのがよい。
2 質的データを収集するインタビューや観察などと,量的データを収集する質問紙調査などを組み合わせて行う調査の手法のことを,ミックス法という。
3 アクションリサーチでは,問題解決を目指すという価値指向的立場よりも,真理を追い求める理論的研究の立場が重視される。
4 エスノグラフィーでは,調査者の客観的立場を維持するために,参与観察によってデータを収集してはいけない。
5 フォーカスグループの活用においては,グループとして一致した意見をとりまとめることよりも,異なる意見が幅広く収集されることが期待される。
問題の難易度は高めです。
内容を読むことに夢中になって,2つめを選ぶのを忘れないようにしましょう。
それでは解説です。
1 ライフストーリー・インタビューの実施において,構造化面接によって聞き取りを進めるのがよい。
これは間違いです。
ライフストーリー・インタビューは対話で行われるので,非構造化面接です。
2 質的データを収集するインタビューや観察などと,量的データを収集する質問紙調査などを組み合わせて行う調査の手法のことを,ミックス法という。
これが正解です。
ミックス法は,この時の一回しか出題されたことがないものです。
しかし,正解になっているので,今後注意が必要なものとなります。しっかり覚えておきましょう。
3 アクションリサーチでは,問題解決を目指すという価値指向的立場よりも,真理を追い求める理論的研究の立場が重視される。
これは間違いです。
「よりも」は間違いになりやすいものですが,アクションリサーチは,問題解決を目指すものです。真理を追い求める理論的研究は重視されるものではありません。
4 エスノグラフィーでは,調査者の客観的立場を維持するために,参与観察によってデータを収集してはいけない。
これも間違いです。
エスノグラフィーの本来の意味は「民族誌」です。観察法が文化人類学から発展したことを思い出させます。現代のエスノグラフィーは,参与観察などで得られたデータ一般をさします。
5 フォーカスグループの活用においては,グループとして一致した意見をとりまとめることよりも,異なる意見が幅広く収集されることが期待される。
これは正解です。
フォーカスグループインタビューはいつも「グループとして合意形成を目指す」といった間違い選択肢として出題されることが多いですが,グループ討議ではないので,そのようなことを目指すものではありません。
<今日の一言>
今日の問題では,ミックス法は正解として出題されました。
しかし,ミックス法は,言葉だけでは意味をつかむことができません。
国試ではこういったところがねらわれます。
半構造化面接もそうです。
勉強をした人はわかっても,勉強が足りない人は見当もつかないでしょう。
こういったところから合否がわかれていきます。
勉強をした人でも解けない問題はあります。
しかしそんな問題は勉強が足りない人はもっと解けないものです。
眠くて辛くても勉強を続けてきたあなたには,合格への道がつながっています。
試験委員が仕掛けたトラップもうまく避けることができるでしょう。
短くなったことは,文章の中に引っ掛けポイントをほとんど仕掛けられないことにつながります。
言い回しの難解さで,正解がわかりにくいものではなくなってきています。
「社会福祉士になる」という強い意志をもって勉強してきた人は,試験当日に大きな力を発揮できるのが今の国試です。
今は,緊張感が高まっていると思います。
それは誰もが通り抜けなければならない道です。
国試は,マーク式。問題文の中に必ず答えがあります。
覚えたことが頭のどこかに残っていれば,何となくでも答えを探り出すことができます。
名探偵になったつもりで,試験委員が仕掛けたトラップを見つけていきましょう。
文字数の制約のため,以前のように,二重三重にはトラップは仕掛けられません。
間違いを誘うような思わせぶりな表現もされにくくなっています。
知識だけで勝負できる条件が整っています。
あとは「自分を信じ切れること」です。
学習部屋では,今では入手困難な過去問もたくさん紹介してきました。
問題の読み解き方もたくさん紹介してきました。
どんな参考書が良いかも言わない,質問も受け付けない,一風変わったブログかもしれませんが,勉強部屋に訪れていただいたすべての人が合格できるように,チームfukufuku21の知恵を絞って,今まで情報を発信してきたつもりです。
自分を信じて,学習部屋を信じて,国試に臨みましょう!!
合格の扉は,今まさに開かれようとしています
さて,今日から質的調査に戻ります。
質的調査で用いられる主なものは
観察法,面接法,ドキュメント分析です。
そのうち面接法で出題される主なものは,
構造化面接法
非構造化面接法
半構造化面接法
フォーカス・グループインタビュー
ライフストーリー・インタビュー
ここに,観察法で紹介しなかった,アクション・リサーチを織り交ぜて出題されます。
構造化面接法の「構造化」とは,質問内容があらかじめ組み立てられていることを意味しています。
非構造化面接法は,質問内容が決まっていないもの
半構造化面接法は,構造化と非構造化の半分の要素をもったもの
グループインタビューは集団面接法,フォーカス・グループインタビューは同じような傾向をもった集団に対する面接法です。
ライフストーリー・インタビューは,調査対象者がインタビュアとの対話を通して,人生を語るものです。これの発展型とも言えるのがアクティブ・インタビューです。対話を通して,調査対象者の新しい気づき,新しい世界を構築するものです。語りを重視する面では「ナラティブ・アプローチ」と共通します。
アクションリサーチは,参与観察よりも調査対象に深くかかわり調査対象の問題の解決を目指すものです。
それでは今日の問題です。
第27回・問題89 調査の手法に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい
1 ライフストーリー・インタビューの実施において,構造化面接によって聞き取りを進めるのがよい。
2 質的データを収集するインタビューや観察などと,量的データを収集する質問紙調査などを組み合わせて行う調査の手法のことを,ミックス法という。
3 アクションリサーチでは,問題解決を目指すという価値指向的立場よりも,真理を追い求める理論的研究の立場が重視される。
4 エスノグラフィーでは,調査者の客観的立場を維持するために,参与観察によってデータを収集してはいけない。
5 フォーカスグループの活用においては,グループとして一致した意見をとりまとめることよりも,異なる意見が幅広く収集されることが期待される。
問題の難易度は高めです。
内容を読むことに夢中になって,2つめを選ぶのを忘れないようにしましょう。
それでは解説です。
1 ライフストーリー・インタビューの実施において,構造化面接によって聞き取りを進めるのがよい。
これは間違いです。
ライフストーリー・インタビューは対話で行われるので,非構造化面接です。
2 質的データを収集するインタビューや観察などと,量的データを収集する質問紙調査などを組み合わせて行う調査の手法のことを,ミックス法という。
これが正解です。
ミックス法は,この時の一回しか出題されたことがないものです。
しかし,正解になっているので,今後注意が必要なものとなります。しっかり覚えておきましょう。
3 アクションリサーチでは,問題解決を目指すという価値指向的立場よりも,真理を追い求める理論的研究の立場が重視される。
これは間違いです。
「よりも」は間違いになりやすいものですが,アクションリサーチは,問題解決を目指すものです。真理を追い求める理論的研究は重視されるものではありません。
4 エスノグラフィーでは,調査者の客観的立場を維持するために,参与観察によってデータを収集してはいけない。
これも間違いです。
エスノグラフィーの本来の意味は「民族誌」です。観察法が文化人類学から発展したことを思い出させます。現代のエスノグラフィーは,参与観察などで得られたデータ一般をさします。
5 フォーカスグループの活用においては,グループとして一致した意見をとりまとめることよりも,異なる意見が幅広く収集されることが期待される。
これは正解です。
フォーカスグループインタビューはいつも「グループとして合意形成を目指す」といった間違い選択肢として出題されることが多いですが,グループ討議ではないので,そのようなことを目指すものではありません。
<今日の一言>
今日の問題では,ミックス法は正解として出題されました。
しかし,ミックス法は,言葉だけでは意味をつかむことができません。
国試ではこういったところがねらわれます。
半構造化面接もそうです。
勉強をした人はわかっても,勉強が足りない人は見当もつかないでしょう。
こういったところから合否がわかれていきます。
勉強をした人でも解けない問題はあります。
しかしそんな問題は勉強が足りない人はもっと解けないものです。
眠くて辛くても勉強を続けてきたあなたには,合格への道がつながっています。
試験委員が仕掛けたトラップもうまく避けることができるでしょう。
2019年1月29日火曜日
社会福祉士国試を再受験される方へのメッセージ
受験に失敗すると試験が怖くなります。
それが数回続くともっともっと怖くなります。
怖くて怖くて受験するのをやめてしまおうと思うこともあるでしょう。
しかし,受験をあきらめなかったあなたは,試験の「まにあ」
怖さから
「ま」けなかった。
「に」げなかった。
「あ」きらめなかった。
受験をやめてしまった人は,合格をつかむことはできません。
あなたが「まにあ」である限り,合格することができます。
受験をやめてしまった人は,絶対に合格をつかむことはできません。
しかし試験の「まにあ」は,必ず合格できます。
「まにあ」である限り,合格はつかめます。
大切なことは,「まにあ」であることです。
再受験で合格を目指す方は「まにあ」です。
今まで解けた問題は,国試でも解けます。
たくさんたくさん問題を解いた人は,国試でも解けます。
今まで解けた問題が解けないことがあっても,ほかの問題がカバーしてくれます。
前日の緊張から寝不足で試験に臨んでも,当日の体調が少々悪くても,これまで頑張ってきた努力は,「まにあ」のあなたを支えてくれることでしょう。
努力は必ず結果になって現れます。
国試に対する恐怖を克服した先には,「国家資格」が待っています。
努力は必ず報われる
それが今の国試です。
それでは今日の問題です。
第29回・問題88 量的調査におけるデータの集計方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クロス集計表において,セルの度数の比が全ての行で等しい場合,そのクロス集計表の2変数間には関連がない。
2 クロス集計表において,2変数間の関連をみる場合,行パーセント,列パーセントのどちらを示しても,得られる情報に変わりはない。
3 クロス集計表では,2変数間の関連をみることができるが,3変数以上の関連についてみることはできない。
4 度数分布表における相対度数とは,度数を合計した値を各カテゴリーの値で割って算出したものである。
5 連続変数では,値が連続的に変化するため,度数分布表を作成することができない。
今日の問題は第29回国試で出題されたものなので,第31回国試を受験される方の多くは何度も何度も解いた問題だと思います。
そのため,今見見てもそんなに難しさはないと思います。
しかしこの問題が実際に出題されたときは,とても難しくて,ほとんどの受験生は解けなかったと思われる問題です。
こういった問題が誰もが解けないものの典型です。
クロス集計は,第22回,第24回,第27回,第29回とほぼ2回に1回出題されています。
頻出だから解けるものではないということを物語っています。
コツコツ勉強した人は,「あれだけ勉強したのに解けない」という敗北感を感じる瞬間です。
しかしこんな解けなくても,コツコツ勉強した人は,他の問題は解けます。
難しい問題があれば,その数と同じくらい易しい問題があります。
易しいというのは,勉強した人にとって易しいのであり,勉強不足の人にとっては決して易しくはないです。
それでは解説です。
1 クロス集計表において,セルの度数の比が全ての行で等しい場合,そのクロス集計表の2変数間には関連がない。
これが正解です。
この問題が難しくなった理由は
言い切り表現に正解少なし
を覆す選択肢が正解になったからです。
「関連がない」は言い切り表現です。
日本語的には解けない問題の典型です。
クロス集計表の例をネットで一度見ておくとよいのかもしれません。
社会福祉士の国試は,五者択一(あるいは択二)です。
択一であった場合の各選択肢の期待値は,20%です。
実際(測定値)は,各選択肢の割合が違っています。
これがもし期待値と測定値がぴったり重なった場合は,どんな問題が出題されても,選択肢1~5を選ぶ率は同じである,ということになります。
つまり,問題の内容と各選択肢の選択率には関連がないということになります。
勉強してきた人は,あきらめないで消去できる選択肢を消去すると,正解できる率が高くなります。
一つでも多く消去できれば,どんどん正解できる率が近くなります。
難しい問題であればあるほど,各選択肢の選択率は同じような率に近づいていきます。
2 クロス集計表において,2変数間の関連をみる場合,行パーセント,列パーセントのどちらを示しても,得られる情報に変わりはない。
これも間違いです。
行パーセントは,横の行のセルそれぞれの割合です。
列パーセントは,縦の列のセルそれぞれの割合です。
別のデータを見ていますので,当然得られる情報は変わります。
3 クロス集計表では,2変数間の関連をみることができるが,3変数以上の関連についてみることはできない。
これも間違いです。
この問題が難しくなった理由のもう一つの理由は,この選択肢です。
3変数以上の関連もみることができるそうです。
一般的なクロス集計表は,XとYの関連をみていますが,3つめの変数であるZを加えてもその関連を見ることができます。
勉強時間(X),使った参考書(Y)だけではなく,模擬試験の振り返り(Z)といったものを加えて関連をみます。
「何時間以上勉強したら合格できる?」といった質問をネットで見かけることがありますが,単純な因果関係は見出すのは難しいと思います。
そのため学習部屋では,質問は受け付けないのです。
勉強は極めて個別性が高いためです。
合格に必要なのは,何を使って,何時間勉強するか,ということではなく,どのように理解するか,といったところが重要です。
4 度数分布表における相対度数とは,度数を合計した値を各カテゴリーの値で割って算出したものである。
これも間違いです。
相対度数は,各セルの値を行あるいは列の合計で割ったものです。
よく考えてみれば間違いだとわかるかもしれませんが,国試会場で落ち着いて問題を読むのはとても難しいのが現実です。
5 連続変数では,値が連続的に変化するため,度数分布表を作成することができない。
これは間違いです。
何度も出題されていますが,連続変数(間隔尺度と比例尺度)は,0~10点。11~20点といったようにデータを区切ることでクロス集計表を作成することができます。
<今日の一言>
現在の国試は,勉強してきた人は得点できるものになっています。
第25回国試と比べてみれば一目瞭然です。
現在何が起きているかと言えば,受験生の得点分布が広がっていることです。※得点分布は公表されていません。
第25回までは,受験生の得点分布は,合格基準点プラスマイナス10点あたりのところにほとんどが集まっていました。
現在は,プラスマイナス20点くらいまで広がっています。
ここが勉強した人は得点できる,勉強が足りない人は得点できないという根拠です。
試験当日も「まにあ」になりましょう。
難しい問題が出題されても
「ま」けない
「に」げない
「あ」きらめない
そうすれば,合格基準点に到達できます。
それが今の国試です。
それが数回続くともっともっと怖くなります。
怖くて怖くて受験するのをやめてしまおうと思うこともあるでしょう。
しかし,受験をあきらめなかったあなたは,試験の「まにあ」
怖さから
「ま」けなかった。
「に」げなかった。
「あ」きらめなかった。
受験をやめてしまった人は,合格をつかむことはできません。
あなたが「まにあ」である限り,合格することができます。
受験をやめてしまった人は,絶対に合格をつかむことはできません。
しかし試験の「まにあ」は,必ず合格できます。
「まにあ」である限り,合格はつかめます。
大切なことは,「まにあ」であることです。
再受験で合格を目指す方は「まにあ」です。
今まで解けた問題は,国試でも解けます。
たくさんたくさん問題を解いた人は,国試でも解けます。
今まで解けた問題が解けないことがあっても,ほかの問題がカバーしてくれます。
前日の緊張から寝不足で試験に臨んでも,当日の体調が少々悪くても,これまで頑張ってきた努力は,「まにあ」のあなたを支えてくれることでしょう。
努力は必ず結果になって現れます。
国試に対する恐怖を克服した先には,「国家資格」が待っています。
努力は必ず報われる
それが今の国試です。
それでは今日の問題です。
第29回・問題88 量的調査におけるデータの集計方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クロス集計表において,セルの度数の比が全ての行で等しい場合,そのクロス集計表の2変数間には関連がない。
2 クロス集計表において,2変数間の関連をみる場合,行パーセント,列パーセントのどちらを示しても,得られる情報に変わりはない。
3 クロス集計表では,2変数間の関連をみることができるが,3変数以上の関連についてみることはできない。
4 度数分布表における相対度数とは,度数を合計した値を各カテゴリーの値で割って算出したものである。
5 連続変数では,値が連続的に変化するため,度数分布表を作成することができない。
今日の問題は第29回国試で出題されたものなので,第31回国試を受験される方の多くは何度も何度も解いた問題だと思います。
そのため,今見見てもそんなに難しさはないと思います。
しかしこの問題が実際に出題されたときは,とても難しくて,ほとんどの受験生は解けなかったと思われる問題です。
こういった問題が誰もが解けないものの典型です。
クロス集計は,第22回,第24回,第27回,第29回とほぼ2回に1回出題されています。
頻出だから解けるものではないということを物語っています。
コツコツ勉強した人は,「あれだけ勉強したのに解けない」という敗北感を感じる瞬間です。
しかしこんな解けなくても,コツコツ勉強した人は,他の問題は解けます。
難しい問題があれば,その数と同じくらい易しい問題があります。
易しいというのは,勉強した人にとって易しいのであり,勉強不足の人にとっては決して易しくはないです。
それでは解説です。
1 クロス集計表において,セルの度数の比が全ての行で等しい場合,そのクロス集計表の2変数間には関連がない。
これが正解です。
この問題が難しくなった理由は
言い切り表現に正解少なし
を覆す選択肢が正解になったからです。
「関連がない」は言い切り表現です。
日本語的には解けない問題の典型です。
クロス集計表の例をネットで一度見ておくとよいのかもしれません。
社会福祉士の国試は,五者択一(あるいは択二)です。
択一であった場合の各選択肢の期待値は,20%です。
実際(測定値)は,各選択肢の割合が違っています。
これがもし期待値と測定値がぴったり重なった場合は,どんな問題が出題されても,選択肢1~5を選ぶ率は同じである,ということになります。
つまり,問題の内容と各選択肢の選択率には関連がないということになります。
勉強してきた人は,あきらめないで消去できる選択肢を消去すると,正解できる率が高くなります。
一つでも多く消去できれば,どんどん正解できる率が近くなります。
難しい問題であればあるほど,各選択肢の選択率は同じような率に近づいていきます。
2 クロス集計表において,2変数間の関連をみる場合,行パーセント,列パーセントのどちらを示しても,得られる情報に変わりはない。
これも間違いです。
行パーセントは,横の行のセルそれぞれの割合です。
列パーセントは,縦の列のセルそれぞれの割合です。
別のデータを見ていますので,当然得られる情報は変わります。
3 クロス集計表では,2変数間の関連をみることができるが,3変数以上の関連についてみることはできない。
これも間違いです。
この問題が難しくなった理由のもう一つの理由は,この選択肢です。
3変数以上の関連もみることができるそうです。
一般的なクロス集計表は,XとYの関連をみていますが,3つめの変数であるZを加えてもその関連を見ることができます。
勉強時間(X),使った参考書(Y)だけではなく,模擬試験の振り返り(Z)といったものを加えて関連をみます。
「何時間以上勉強したら合格できる?」といった質問をネットで見かけることがありますが,単純な因果関係は見出すのは難しいと思います。
そのため学習部屋では,質問は受け付けないのです。
勉強は極めて個別性が高いためです。
合格に必要なのは,何を使って,何時間勉強するか,ということではなく,どのように理解するか,といったところが重要です。
4 度数分布表における相対度数とは,度数を合計した値を各カテゴリーの値で割って算出したものである。
これも間違いです。
相対度数は,各セルの値を行あるいは列の合計で割ったものです。
よく考えてみれば間違いだとわかるかもしれませんが,国試会場で落ち着いて問題を読むのはとても難しいのが現実です。
5 連続変数では,値が連続的に変化するため,度数分布表を作成することができない。
これは間違いです。
何度も出題されていますが,連続変数(間隔尺度と比例尺度)は,0~10点。11~20点といったようにデータを区切ることでクロス集計表を作成することができます。
<今日の一言>
現在の国試は,勉強してきた人は得点できるものになっています。
第25回国試と比べてみれば一目瞭然です。
現在何が起きているかと言えば,受験生の得点分布が広がっていることです。※得点分布は公表されていません。
第25回までは,受験生の得点分布は,合格基準点プラスマイナス10点あたりのところにほとんどが集まっていました。
現在は,プラスマイナス20点くらいまで広がっています。
ここが勉強した人は得点できる,勉強が足りない人は得点できないという根拠です。
試験当日も「まにあ」になりましょう。
難しい問題が出題されても
「ま」けない
「に」げない
「あ」きらめない
そうすれば,合格基準点に到達できます。
それが今の国試です。
2019年1月28日月曜日
一歩差がつく消去法
今までいろいろな解答テクニックを紹介してきました。
国試で絶対にやってはいけないのは,最初に選んだ答えを変えることです。
答えを変えて正解になった話は聞いたことがありません。
近年の国試は,以前よりも解きやすくなってきている問題になってきていますが,それでも「答えはこれだ!!」とすぐ答えがわかる問題はそれほどありません。
国試は本当に辛いものです。
「あれだけ勉強してきたのにわからない!!」と打ちひしがれた気持ちになるでしょう。
みんなが簡単に解けてしまうと,国試の合格基準点が何点になってしまうのかとてもこわいです。
しかし,しっかり勉強した人は,答えを見つけ出すことができます。
その時に使うのが消去法です。
正しいものを1つ選ぶ問題で,選択肢を3つ消去できる実力があれば,正解にかなり近づくことができます。
真面目に真面目に勉強してきた人は,おそらくわからないことがあったら,調べたことでしょう。
国試では,調べることができません。
そのときに,「わからない,困った」で終わるのか,その次の手を繰り出すことができるのか,大きく違ってきます。
国家試験は,意味がわからなくて消去できる選択肢が存在します。
こういったものを確実に消去できることが重要です。
さて,それでは今日の問題です。
第27回・問題87 クロス表とその分析に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クロス集計表のクロスとは,各セルに表頭項目又は表側項目の頻度などが入るという意味である。
2 周辺度数とは,総計のことである。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
4 オッズ比の最大値は,1である。
5 オッズ比の最小値は,-1である。
この問題は,第27回国試では,最も難易度が高かった問題だと思います。
オッズ比という聞いたこともないものが出題されただけではなく,オッズ比に関する選択肢が3つも出題されています。
このような難易度が高い問題は,解けても解けなくも合否にはほとんど影響しません。
もちろん正解できればラッキーですが,正解できなくても他の受験生も同じく解けないので,受験生に差がつかないためです。
それでももちろん正解できたほうがよいです。
それでは解説です。
1 クロス集計表のクロスとは,各セルに表頭項目又は表側項目の頻度などが入るという意味である。
これは間違いです。
この時,受験した人はまったく見当がつけられなかったのではないかと思います。
しかし,消去できるヒントはあります。
それは「又は」です。
意味がわからなくても「又は」では作表するときに困ってしまうと思いませんか?
表頭項目は,クロス集計表の上部の項目部分です。
表側項目は,クロス集計表の左側の項目部分です。
表計算ソフトでは・・・
表側項目は,「行」(横の列)
表頭項目は,「列」(縦の列)
にあたります。
行及び列にはすべて観測値等を入れることになります。
2 周辺度数とは,総計のことである。
これも間違いです。
周辺度数は,行または列の合計です。総計ではありません。
これは消去できる要素がありませんので,▲をつけておきます。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
これが正解です。
オッズ比は聞いたことがなくても,オッズは競馬などで何となく聞いたという人がいるでしょう。
オッズ比は,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものなのですが,さっぱりわからないことでしょう。こういったときは,▲をつけておきます。
4 オッズ比の最大値は,1である。
5 オッズ比の最小値は,-1である。
選択肢4と5が知恵を使う部分です。
この2つの選択肢の消去ポイントが存在します。
それは,2つの選択肢が対になっている点です。
「勘」の領域になりますが,
4 オッズ比の最大値は,1である。
が正解であれば
5 オッズ比の最小値は,-1である。
も正解になりそうです。
しかし正解を2つ選ぶ問題ではないので,2つとも正解になることはありません。
そうなると2つとも間違いなのかではないかと推測することができます。
オッズ比の最大値は無限大,最小値は0です。
計算式を説明するのはここの目的ではないので,省略します。
なお,最大値が1,最小値がマイナス1なのは,相関係数です。
<今日の一言>
今日の問題では結果的に
2 周辺度数とは,総計のことである。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
の2つの選択肢に▲がついている状態です。
2つまで残すことができれば,正解できる確率は,2分の1なので50%です。
ここまでたどりつけば,半分の確率で正解できます。
選択肢1,4,5が消去できなければ,正解できる確率は20%なので,かなり正解できる確率が高まったと言えるでしょう。
今日の問題は,難易度が高いので,おそらく残った2つの選択肢を選択する確率はそれぞれ50:50となるでしょう。
しかし,多くの問題はここまで難易度は高くありません。
そのため,2つ残した問題の場合,正解のほうを選ぶ率が高くなります。
ここで重要なのが,最初に選んだものを変えないことです。
試験の鉄則ですね。
問題の読み間違った場合以外は,最初に選んだものを変えてしまうとほとんど間違いのほうを選ぶことになります。
森の中で二股に差し掛かったとき,馬が行くべき方向を「こっちだよ」と教えてくれているのに,馬の乗り手が考えあぐねた結果,馬が進もうとした道とは違う方を選択した結果,迷い道に入り込んでしまうようなものです。
十分気を付けましょう!!
国試で絶対にやってはいけないのは,最初に選んだ答えを変えることです。
答えを変えて正解になった話は聞いたことがありません。
近年の国試は,以前よりも解きやすくなってきている問題になってきていますが,それでも「答えはこれだ!!」とすぐ答えがわかる問題はそれほどありません。
国試は本当に辛いものです。
「あれだけ勉強してきたのにわからない!!」と打ちひしがれた気持ちになるでしょう。
みんなが簡単に解けてしまうと,国試の合格基準点が何点になってしまうのかとてもこわいです。
しかし,しっかり勉強した人は,答えを見つけ出すことができます。
その時に使うのが消去法です。
正しいものを1つ選ぶ問題で,選択肢を3つ消去できる実力があれば,正解にかなり近づくことができます。
真面目に真面目に勉強してきた人は,おそらくわからないことがあったら,調べたことでしょう。
国試では,調べることができません。
そのときに,「わからない,困った」で終わるのか,その次の手を繰り出すことができるのか,大きく違ってきます。
国家試験は,意味がわからなくて消去できる選択肢が存在します。
こういったものを確実に消去できることが重要です。
さて,それでは今日の問題です。
第27回・問題87 クロス表とその分析に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クロス集計表のクロスとは,各セルに表頭項目又は表側項目の頻度などが入るという意味である。
2 周辺度数とは,総計のことである。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
4 オッズ比の最大値は,1である。
5 オッズ比の最小値は,-1である。
この問題は,第27回国試では,最も難易度が高かった問題だと思います。
オッズ比という聞いたこともないものが出題されただけではなく,オッズ比に関する選択肢が3つも出題されています。
このような難易度が高い問題は,解けても解けなくも合否にはほとんど影響しません。
もちろん正解できればラッキーですが,正解できなくても他の受験生も同じく解けないので,受験生に差がつかないためです。
それでももちろん正解できたほうがよいです。
それでは解説です。
1 クロス集計表のクロスとは,各セルに表頭項目又は表側項目の頻度などが入るという意味である。
これは間違いです。
この時,受験した人はまったく見当がつけられなかったのではないかと思います。
しかし,消去できるヒントはあります。
それは「又は」です。
意味がわからなくても「又は」では作表するときに困ってしまうと思いませんか?
表頭項目は,クロス集計表の上部の項目部分です。
表側項目は,クロス集計表の左側の項目部分です。
表計算ソフトでは・・・
表側項目は,「行」(横の列)
表頭項目は,「列」(縦の列)
にあたります。
行及び列にはすべて観測値等を入れることになります。
2 周辺度数とは,総計のことである。
これも間違いです。
周辺度数は,行または列の合計です。総計ではありません。
これは消去できる要素がありませんので,▲をつけておきます。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
これが正解です。
オッズ比は聞いたことがなくても,オッズは競馬などで何となく聞いたという人がいるでしょう。
オッズ比は,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものなのですが,さっぱりわからないことでしょう。こういったときは,▲をつけておきます。
4 オッズ比の最大値は,1である。
5 オッズ比の最小値は,-1である。
選択肢4と5が知恵を使う部分です。
この2つの選択肢の消去ポイントが存在します。
それは,2つの選択肢が対になっている点です。
「勘」の領域になりますが,
4 オッズ比の最大値は,1である。
が正解であれば
5 オッズ比の最小値は,-1である。
も正解になりそうです。
しかし正解を2つ選ぶ問題ではないので,2つとも正解になることはありません。
そうなると2つとも間違いなのかではないかと推測することができます。
オッズ比の最大値は無限大,最小値は0です。
計算式を説明するのはここの目的ではないので,省略します。
なお,最大値が1,最小値がマイナス1なのは,相関係数です。
<今日の一言>
今日の問題では結果的に
2 周辺度数とは,総計のことである。
3 オッズ比とは,ある事象が起こる確率比を起こらない確率比で割ったものである。
の2つの選択肢に▲がついている状態です。
2つまで残すことができれば,正解できる確率は,2分の1なので50%です。
ここまでたどりつけば,半分の確率で正解できます。
選択肢1,4,5が消去できなければ,正解できる確率は20%なので,かなり正解できる確率が高まったと言えるでしょう。
今日の問題は,難易度が高いので,おそらく残った2つの選択肢を選択する確率はそれぞれ50:50となるでしょう。
しかし,多くの問題はここまで難易度は高くありません。
そのため,2つ残した問題の場合,正解のほうを選ぶ率が高くなります。
ここで重要なのが,最初に選んだものを変えないことです。
試験の鉄則ですね。
問題の読み間違った場合以外は,最初に選んだものを変えてしまうとほとんど間違いのほうを選ぶことになります。
森の中で二股に差し掛かったとき,馬が行くべき方向を「こっちだよ」と教えてくれているのに,馬の乗り手が考えあぐねた結果,馬が進もうとした道とは違う方を選択した結果,迷い道に入り込んでしまうようなものです。
十分気を付けましょう!!
2019年1月27日日曜日
社会人が合格するための国試問題の解き方
巷に広まるデマはたくさんあります。
その一つとして,50歳,60歳の合格率は数%というものがあります。
それは嘘です。
60歳以上の合格率は極めて高い!! 40歳以上で合格できる勉強方法
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/11/6040.html
ここで述べたように,年代別の合格者の割合は発表されていますが,年代別の受験者の割合は発表されていません。
そのため,年代別の合格率は,試験センター以外は知り得ません。
年代別の合格率を語る人の話はすべてデマに過ぎません。
過去記事で取り上げているのは,第29回のデータです。
第30回の合格率は,
大学 29.2%
一般養成施設 35.8%
一般養成施設で受験資格を得た人の多くは,仕事をしながら学んだ人です。
よく知られていないことだと思いますが,大学よりも一般養成施設の方が合格率が高いのです。
ここから,40歳代も含めて,50歳代,60歳代の合格率が低いとは考えにくいと思いませんか?
現役受験だけで比較しても
大学 38.9%
一般養成施設 59.4%
となっています。
年代別の合格者の割合は発表していますが,合格率は発表していないことに意図的なものを感じています。
大学生の多くは20歳代だと思いますが,もしかすると,それよりも上の年代よりも20歳代の合格率が低いのかもしれないのです。
事実はわかりませんが,少なくとも50歳代,60歳代の方の合格率は世間一般で思われているほど低くないと思います。
記憶力は,年齢とともに低下するのは生理的現象です。
しかし,結晶性知能は年齢とともに高まっていきます。
結晶性知能が社会人の合格とかかわっているのではないかと考えられます。
社会人のための問題の解き方のヒント
社会人には,人生の中で得た知恵があります。
それを最大限に生かしましょう。
難しい問題だからといって思考をとめちゃだめです。
それでは今日の問題です。
第24回・問題78 横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
横断調査と縦断調査は,第24回,第27回,第30回に出題されています。
第30回に出題されていますが,2年連続で出題されることはほとんどないと思って紹介しなかった領域です。
しかし,ここで紹介するのは,知恵(思慮深さ)が必要な問題だからです。
縦断調査は,何度も繰り返して行います。
横断調査は,一度きりの調査です。
この知識は,最低限必要です。
国試は,理解が難しいものが出題されます。
その時に発揮するのが,知恵(思慮深さ)です。
知らないものでも,ばたばたせず平然と考えを巡らせること!!
20歳の若者でもできる人はできるかもしれませんが,人生経験の中で多くのことを学んだ人の独壇場だと思います。
それでは解説です。
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
これは間違いです。
解答テクニック
●●は●●だが,●●は●●ではない
のスタイルの文章となっています。
このスタイルで正解になることはまずありません。
一回きりの調査は横断調査,複数回の調査は縦断調査です。
対象地域が広い,狭いは関係ありません。
ここに試験委員が仕掛けたトラップがあることに気が付きますか?
横断調査と縦断調査は,日本語的に推測しにくいものです。
そこがトラップなのです。
知識の足りない人は,「横断」「縦断」という言葉から意味を考えようとします。
しかし,日本語的に推測してもそれとは違うのです。
トラップを避けるためには,最低限の知識は必要ですが,解答テクニックを知っていれば,トラップは避けることができるでしょう。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
これも間違いです。
横断調査は,一回きりの調査です。複数回行う調査は縦断調査です。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
これが正解です。
第30回国試では,この選択肢を下敷きにしたのではないかと思う出題がありました。
横断調査では,因果関係を特定するに当たり制約が伴う。
これも正解です。
同じ内容のものを第24回,第30回でも正解にしているところが国試の面白いところです。
パネル調査は,縦断調査の一つで,同じ対象者に対して,複数回調査を実施するものです。
相関とは,「Aが増えたら(減ったら),Bも増える(減る)」というものです。
因果関係とは,「Aの結果,Bになる」といったAとBの関係が直接的なものです。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
これは間違いです。
しっかり思考をすれば間違いだとわかるでしょう。
思考をとめちゃだめです。
思考するのをやめなければ,解ける問題はたくさんあります。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
これは間違いです。
この時,初めて「パネルの摩耗」が出題されました。
多くの参考書には,現在記載されていると思いますが,この言葉を知らないで問題を解いた人が多かったはずです。
国試では,ほとんどの場合,かっこの中を読む必要はないのですが,この選択肢を知ってから,どこにヒントが隠されているかわからないものだということを強く感じました。
ここをお伝えしたいのです。
そのヒントとは(又は脱落)です。
「摩耗」では意味を推測することはできませんが,「脱落」なら当初よりもだんだん減っていくイメージがあると思いませんか?
そこから「第1回目の調査において」というのは間違いではないかと推測できます。
第2回以降,調査に協力してくれる人が減っていくことが「パネルの摩耗」です。
この問題が出題されたときに国試を受けた人で,この問題を間違った人の多くは,この選択肢を選んだと思われます。
つまり,この選択肢を消去できたか否かによって,正解できたか否かが決まったのです。
(又は脱落)に気持ちを向けられた人とそうでなかった人の違いとも言えるでしょう。
<今日の一言>
結晶性知能は,たくさんの知識,言葉の意味を知っているということに他なりません。
もちろん若者でもたくさんの知識をもっている人もいるでしょう。
しかし,結晶性知能は年齢とともに高まっていきます。
今日の結論です。
社会人は,知らないものが出題されたら,豊富な人生経験,そこからつかんだ知識を総動員して考えましょう。社会人の人生経験はとても貴重なものです。
大学よりも一般養成施設の方が合格率が高いことからわかるように,社会人の経験が結果に反映することができる試験です。
50歳代,60歳代の方が結果を残せる試験です。
細かいところまで配慮できる社会人が力を発揮できる試験です。
<おまけ>
学生の方は,流動性知能が高いです。問題にうまくアジャストすることができる能力です。
学生の方も最後まで粘りましょう!!
その一つとして,50歳,60歳の合格率は数%というものがあります。
それは嘘です。
60歳以上の合格率は極めて高い!! 40歳以上で合格できる勉強方法
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/11/6040.html
ここで述べたように,年代別の合格者の割合は発表されていますが,年代別の受験者の割合は発表されていません。
そのため,年代別の合格率は,試験センター以外は知り得ません。
年代別の合格率を語る人の話はすべてデマに過ぎません。
過去記事で取り上げているのは,第29回のデータです。
第30回の合格率は,
大学 29.2%
一般養成施設 35.8%
一般養成施設で受験資格を得た人の多くは,仕事をしながら学んだ人です。
よく知られていないことだと思いますが,大学よりも一般養成施設の方が合格率が高いのです。
ここから,40歳代も含めて,50歳代,60歳代の合格率が低いとは考えにくいと思いませんか?
現役受験だけで比較しても
大学 38.9%
一般養成施設 59.4%
となっています。
年代別の合格者の割合は発表していますが,合格率は発表していないことに意図的なものを感じています。
大学生の多くは20歳代だと思いますが,もしかすると,それよりも上の年代よりも20歳代の合格率が低いのかもしれないのです。
事実はわかりませんが,少なくとも50歳代,60歳代の方の合格率は世間一般で思われているほど低くないと思います。
記憶力は,年齢とともに低下するのは生理的現象です。
しかし,結晶性知能は年齢とともに高まっていきます。
結晶性知能が社会人の合格とかかわっているのではないかと考えられます。
社会人のための問題の解き方のヒント
社会人には,人生の中で得た知恵があります。
それを最大限に生かしましょう。
難しい問題だからといって思考をとめちゃだめです。
それでは今日の問題です。
第24回・問題78 横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
横断調査と縦断調査は,第24回,第27回,第30回に出題されています。
第30回に出題されていますが,2年連続で出題されることはほとんどないと思って紹介しなかった領域です。
しかし,ここで紹介するのは,知恵(思慮深さ)が必要な問題だからです。
縦断調査は,何度も繰り返して行います。
横断調査は,一度きりの調査です。
この知識は,最低限必要です。
国試は,理解が難しいものが出題されます。
その時に発揮するのが,知恵(思慮深さ)です。
知らないものでも,ばたばたせず平然と考えを巡らせること!!
20歳の若者でもできる人はできるかもしれませんが,人生経験の中で多くのことを学んだ人の独壇場だと思います。
それでは解説です。
1 広い地域を対象に行う調査は横断調査であるが,狭い地域のなかで若者と老人など多様な人を対象に行う調査は縦断調査である。
これは間違いです。
解答テクニック
●●は●●だが,●●は●●ではない
のスタイルの文章となっています。
このスタイルで正解になることはまずありません。
一回きりの調査は横断調査,複数回の調査は縦断調査です。
対象地域が広い,狭いは関係ありません。
ここに試験委員が仕掛けたトラップがあることに気が付きますか?
横断調査と縦断調査は,日本語的に推測しにくいものです。
そこがトラップなのです。
知識の足りない人は,「横断」「縦断」という言葉から意味を考えようとします。
しかし,日本語的に推測してもそれとは違うのです。
トラップを避けるためには,最低限の知識は必要ですが,解答テクニックを知っていれば,トラップは避けることができるでしょう。
2 同じ対象者に,一定の期間にわたって複数回調査を行うパネル調査は,横断調査に含まれる。
これも間違いです。
横断調査は,一回きりの調査です。複数回行う調査は縦断調査です。
3 1回限りの横断調査でも2つの変数の間の相関関係を見出すことはできるが,因果関係を明らかにするにはパネル調査の方が適している。
これが正解です。
第30回国試では,この選択肢を下敷きにしたのではないかと思う出題がありました。
横断調査では,因果関係を特定するに当たり制約が伴う。
これも正解です。
同じ内容のものを第24回,第30回でも正解にしているところが国試の面白いところです。
パネル調査は,縦断調査の一つで,同じ対象者に対して,複数回調査を実施するものです。
相関とは,「Aが増えたら(減ったら),Bも増える(減る)」というものです。
因果関係とは,「Aの結果,Bになる」といったAとBの関係が直接的なものです。
4 内閣を支持するか否かについて2つの時点で横断調査を繰り返し,内閣支持率に変化がなければ,支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
これは間違いです。
しっかり思考をすれば間違いだとわかるでしょう。
思考をとめちゃだめです。
思考するのをやめなければ,解ける問題はたくさんあります。
5 パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは,第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
これは間違いです。
この時,初めて「パネルの摩耗」が出題されました。
多くの参考書には,現在記載されていると思いますが,この言葉を知らないで問題を解いた人が多かったはずです。
国試では,ほとんどの場合,かっこの中を読む必要はないのですが,この選択肢を知ってから,どこにヒントが隠されているかわからないものだということを強く感じました。
ここをお伝えしたいのです。
そのヒントとは(又は脱落)です。
「摩耗」では意味を推測することはできませんが,「脱落」なら当初よりもだんだん減っていくイメージがあると思いませんか?
そこから「第1回目の調査において」というのは間違いではないかと推測できます。
第2回以降,調査に協力してくれる人が減っていくことが「パネルの摩耗」です。
この問題が出題されたときに国試を受けた人で,この問題を間違った人の多くは,この選択肢を選んだと思われます。
つまり,この選択肢を消去できたか否かによって,正解できたか否かが決まったのです。
(又は脱落)に気持ちを向けられた人とそうでなかった人の違いとも言えるでしょう。
<今日の一言>
結晶性知能は,たくさんの知識,言葉の意味を知っているということに他なりません。
もちろん若者でもたくさんの知識をもっている人もいるでしょう。
しかし,結晶性知能は年齢とともに高まっていきます。
今日の結論です。
社会人は,知らないものが出題されたら,豊富な人生経験,そこからつかんだ知識を総動員して考えましょう。社会人の人生経験はとても貴重なものです。
大学よりも一般養成施設の方が合格率が高いことからわかるように,社会人の経験が結果に反映することができる試験です。
50歳代,60歳代の方が結果を残せる試験です。
細かいところまで配慮できる社会人が力を発揮できる試験です。
<おまけ>
学生の方は,流動性知能が高いです。問題にうまくアジャストすることができる能力です。
学生の方も最後まで粘りましょう!!
2019年1月26日土曜日
質的調査の徹底理解(その2)~問題文の読み方のコツ
この学習部屋は,2017年4月に始めました。
なかなか合格をつかむことができない仲間を応援することが目的でした。
そのため,2017年はあと数点上乗せするための方法,問題の読み取り方を徹底的に紹介しました。
2018年は,基本的に解答テクニックを封印して,問題の読み取り方の本質を紹介してきました。理由は,問題文がどんどん短くなっているので,しっかり実力を蓄えると問題が解けるようになってきたからです。
このことはとても重要なことです。
以前は,問題文が長かったために,一つの文章に二重三重にトラップを仕掛けることができたので,正しいように見えると,すべてが正しく見えてきてしまうのです。
別な言い方をすると,すべてが間違いに見えてきてしまうのです。
その結果として,合格基準点は,80点台の前半になることが多かったのです。
勉強した人も得点できなかったためです。
試験センターが合格率30%,合格基準点90点を理想だと考えているのではないかと思うことがよくあります。
つまらないミス,特に読み間違いによるものですが,こういうものは極力避けなければなりません。
そんなことで今日も解答テクニックを紹介しますが,本当に重要なのは,落ち着いた気持ちを持つことです。
心の余裕をもつための解答テクニックだと思うと,もっと落ち着けるのではないでしょうか。
それでは今日の問題です。
第25回・選択肢90 調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 観察法は質的データを収集するための方法であり,量的データの収集においては用いられない。
2 統制的観察と非統制的観察の違いは,研究者が部外者として観察を行うか否かである。
3 フィールドワーカーの調査者としての立場は,「完全な参加者」から「完全な観察者」まで4段階があるが,よりよいデータ収集のためには「完全な観察者」の役割を目指すのが望ましい。
4 フィールドワークにおいて,観察されたことのメモをとる場合には,周囲の状況にかかわらず,観察を行ったその場で速やかにとることが望ましい。
5 参与観察において,その集団生活に慣れ,調査対象に同化し過ぎることは望ましくない。
今日の問題は,「魔の第25回国試」と呼んでいる合格基準点が過去最低の72点になった年の問題です。
「社会調査の基礎」らしい言い方をすると・・・
「範囲」は27です。(範囲=最大値―最小値)
第25回国試は,ひどい問題ばかりかというと,そうでもない問題もちゃんと存在します。
そのような問題がしっかり読めて得点を稼ぐことで,国家試験は合格できます。
それでは,解答テクニックを意識しながら解説していきましょう。
1 観察法は質的データを収集するための方法であり,量的データの収集においては用いられない。
これは間違いです。
言い切り表現に正解少なし
観察法は,面接法とともに質的調査の方法の中心です。
しかし量的データの収集にも使えます。
よく用いられるのが,街中での観察です。
例えば,通行する車の色を調べます。
同じ地域の歩く人のコートの色を調べます。
車の色とコートの色には関連があるのか
ほかの地域との差はあるのか,などを検証します。
色は名義尺度です。これはカテゴリー化されています。
なぜなら,調査員が,これは「赤」,あれも「赤」と判断してカウントしますが,この赤とあの赤では同じではありません。それをまとめて「赤」とカテゴリー化します。
名義尺度と順序尺度は,カテゴリー化された定性的データです。
これらをまとめるとクロス集計表となります。
クロス集計を見ただけでは,関連があるかどうかどうかわかりません。そこで「χ(カイ)二乗検定」などを用いて関連を調べます。
間隔尺度と比例尺度は,数値が連続した定量的データです。このままだとクロス集計表にまとめることができないので,数値を区切ってカテゴリー化します。そうすることでクロス集計表にまとめることができます。
クロス集計は,χ二乗検定などを使って関連を調べます。
しかし数値を区切っていない連続した定量的データではχ二乗検定ではなく,「ピアソンの積率相関係数」を用いて関連を調べます。
クロス集計(定性的データ) → χ二乗検定
定量的データ → ピアソンの積率相関係数
質的調査も仮説の検証のために行われることもありますが,基本的に,仮説の検証のために行うのは量的調査であることも覚えておきましょう。
質的調査のデータの分析方法でよく出題されるのは,「KJ法」と「グラウンデッドセオリー」ですが,いずれも仮説をベースにせず,分析を通して新しい発見をしていくものです。これも覚えておきたいです。
話を戻します。
言い切り表現に正解少なし
を考えてみましょう。
10,000の事象があった場合,1回でも例外が発生すると,その命題は成立しなくなってしまいます。9,999回はそうであったとしても,たった1回でも例外があると成り立たないのです。
それに対して
あいまい表現に正解多し
は,「●●することがある」
といったものです。
10,000の事象があった場合,1回でも例外が発生すると,その命題は成立します。9,999回はそうでなかったとしても,たった1回でも例外があると成り立つのです。
①のび太君は,テストで100点を取ることはない。(言い切り表現)
②のび太君は,テストで100点を取ることもある。(あいまい表現)
ドラえもんののび太君だって,たまには100点を取ることもあるでしょう。このように②の「あいまい表現に正解多し」の方が,成立しやすいのです。
2 統制的観察と非統制的観察の違いは,研究者が部外者として観察を行うか否かである。
これも間違いです。
これだけは,知識がないと解けないものかもしれません。
研究者が部外者として観察を行うか否か,の違いがあるのは,参与的観察と非参与的観察です。
前回の問題では
参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。
いう出題がありましたね。これは間違いです。
統制的観察,非統制的観察は,知らないと解けないと思うかもしれませんが,内容をよく読んでみると,参与的観察と非参与的観察であることがわかります。焦るとだめです。気をつけてくださいね。
統制的観察と非統制的観察の違いでは,観察ポイントをあらかじめ決めて観察するか否かの違いです。
例えば,先述の通行するときの車を観察する時,「色」を調べると言いました。
これは「色」という観察ポイントを決めているので,統制的観察となります。
そういったことを決めないで,観察するのが非統制的観察です。色だけではなく,メーカー,車の種類,など別な視点も持ちながら,観察していきます。
3 フィールドワーカーの調査者としての立場は,「完全な参加者」から「完全な観察者」まで4段階があるが,よりよいデータ収集のためには「完全な観察者」の役割を目指すのが望ましい。
これも間違いです。
「望ましい」「望ましくない」は,正解になりにくいものです。
非参与的観察の場合は,「完全な観察者」の役割を目指すのが望ましいかもしれません。
しかし参与的観察の場合は,場面場面によって役割が変わります。生活をともにして観察を行っている場合,他の人が食事の準備や洗濯をしているのに,手伝うことをせずに「完全な観察者」に徹していたら,追い出されてしまうかもしれません。
そんなときは一緒に食事の準備,洗濯をして,「完全な参加者」となります。
4 フィールドワークにおいて,観察されたことのメモをとる場合には,周囲の状況にかかわらず,観察を行ったその場で速やかにとることが望ましい。
これも間違いです。
「望ましい」「望ましくない」は正解になりにくいものです。
完全な観察者になっているときは,その役割に徹します。メモするならそれが一段落してからが「望ましい」と言えるでしょう。
5 参与観察において,その集団生活に慣れ,調査対象に同化し過ぎることは望ましくない。
これが正解です。
「望ましい」「望ましくない」は基本的に正解になりにくいものです。
そのことを逆手にとった出題もできます。
参与観察は,その集団に慣れることはとても重要です。非参与観察では見せてくれないものを見せてくれることもあります。
しかし,同化しすぎると客観的な観察が妨げられることもあります。何事も度を過ぎると不適切になるものです。
<今日の一言>
今日の問題は,ちゃんと勉強してきた人にとっては,決して難しいものではないでしょう。
しかし,試験会場ではうっかりミスは起きるものです。
国試問題は人が作成しています。
将来的には,AI(人工知能)が作成する時代もやってくるかもしれません。
しかし,それはもう少し先の話です。
人が作るものには,どこかに手がかりがあるものです。
問題文が短くなっている現在の問題では解答テクニックが使えるものは少なくなっているかもしれませんが,こういうものを知っておくことで心の余裕が生まれます。
緊張感あふれた国試会場では,心の余裕をもって臨むことが本当に大切です。
なかなか合格をつかむことができない仲間を応援することが目的でした。
そのため,2017年はあと数点上乗せするための方法,問題の読み取り方を徹底的に紹介しました。
2018年は,基本的に解答テクニックを封印して,問題の読み取り方の本質を紹介してきました。理由は,問題文がどんどん短くなっているので,しっかり実力を蓄えると問題が解けるようになってきたからです。
このことはとても重要なことです。
以前は,問題文が長かったために,一つの文章に二重三重にトラップを仕掛けることができたので,正しいように見えると,すべてが正しく見えてきてしまうのです。
別な言い方をすると,すべてが間違いに見えてきてしまうのです。
その結果として,合格基準点は,80点台の前半になることが多かったのです。
勉強した人も得点できなかったためです。
試験センターが合格率30%,合格基準点90点を理想だと考えているのではないかと思うことがよくあります。
つまらないミス,特に読み間違いによるものですが,こういうものは極力避けなければなりません。
そんなことで今日も解答テクニックを紹介しますが,本当に重要なのは,落ち着いた気持ちを持つことです。
心の余裕をもつための解答テクニックだと思うと,もっと落ち着けるのではないでしょうか。
それでは今日の問題です。
第25回・選択肢90 調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 観察法は質的データを収集するための方法であり,量的データの収集においては用いられない。
2 統制的観察と非統制的観察の違いは,研究者が部外者として観察を行うか否かである。
3 フィールドワーカーの調査者としての立場は,「完全な参加者」から「完全な観察者」まで4段階があるが,よりよいデータ収集のためには「完全な観察者」の役割を目指すのが望ましい。
4 フィールドワークにおいて,観察されたことのメモをとる場合には,周囲の状況にかかわらず,観察を行ったその場で速やかにとることが望ましい。
5 参与観察において,その集団生活に慣れ,調査対象に同化し過ぎることは望ましくない。
今日の問題は,「魔の第25回国試」と呼んでいる合格基準点が過去最低の72点になった年の問題です。
「社会調査の基礎」らしい言い方をすると・・・
「範囲」は27です。(範囲=最大値―最小値)
第25回国試は,ひどい問題ばかりかというと,そうでもない問題もちゃんと存在します。
そのような問題がしっかり読めて得点を稼ぐことで,国家試験は合格できます。
それでは,解答テクニックを意識しながら解説していきましょう。
1 観察法は質的データを収集するための方法であり,量的データの収集においては用いられない。
これは間違いです。
言い切り表現に正解少なし
観察法は,面接法とともに質的調査の方法の中心です。
しかし量的データの収集にも使えます。
よく用いられるのが,街中での観察です。
例えば,通行する車の色を調べます。
同じ地域の歩く人のコートの色を調べます。
車の色とコートの色には関連があるのか
ほかの地域との差はあるのか,などを検証します。
色は名義尺度です。これはカテゴリー化されています。
なぜなら,調査員が,これは「赤」,あれも「赤」と判断してカウントしますが,この赤とあの赤では同じではありません。それをまとめて「赤」とカテゴリー化します。
名義尺度と順序尺度は,カテゴリー化された定性的データです。
これらをまとめるとクロス集計表となります。
クロス集計を見ただけでは,関連があるかどうかどうかわかりません。そこで「χ(カイ)二乗検定」などを用いて関連を調べます。
間隔尺度と比例尺度は,数値が連続した定量的データです。このままだとクロス集計表にまとめることができないので,数値を区切ってカテゴリー化します。そうすることでクロス集計表にまとめることができます。
クロス集計は,χ二乗検定などを使って関連を調べます。
しかし数値を区切っていない連続した定量的データではχ二乗検定ではなく,「ピアソンの積率相関係数」を用いて関連を調べます。
クロス集計(定性的データ) → χ二乗検定
定量的データ → ピアソンの積率相関係数
質的調査も仮説の検証のために行われることもありますが,基本的に,仮説の検証のために行うのは量的調査であることも覚えておきましょう。
質的調査のデータの分析方法でよく出題されるのは,「KJ法」と「グラウンデッドセオリー」ですが,いずれも仮説をベースにせず,分析を通して新しい発見をしていくものです。これも覚えておきたいです。
話を戻します。
言い切り表現に正解少なし
を考えてみましょう。
10,000の事象があった場合,1回でも例外が発生すると,その命題は成立しなくなってしまいます。9,999回はそうであったとしても,たった1回でも例外があると成り立たないのです。
それに対して
あいまい表現に正解多し
は,「●●することがある」
といったものです。
10,000の事象があった場合,1回でも例外が発生すると,その命題は成立します。9,999回はそうでなかったとしても,たった1回でも例外があると成り立つのです。
①のび太君は,テストで100点を取ることはない。(言い切り表現)
②のび太君は,テストで100点を取ることもある。(あいまい表現)
ドラえもんののび太君だって,たまには100点を取ることもあるでしょう。このように②の「あいまい表現に正解多し」の方が,成立しやすいのです。
2 統制的観察と非統制的観察の違いは,研究者が部外者として観察を行うか否かである。
これも間違いです。
これだけは,知識がないと解けないものかもしれません。
研究者が部外者として観察を行うか否か,の違いがあるのは,参与的観察と非参与的観察です。
前回の問題では
参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。
いう出題がありましたね。これは間違いです。
統制的観察,非統制的観察は,知らないと解けないと思うかもしれませんが,内容をよく読んでみると,参与的観察と非参与的観察であることがわかります。焦るとだめです。気をつけてくださいね。
統制的観察と非統制的観察の違いでは,観察ポイントをあらかじめ決めて観察するか否かの違いです。
例えば,先述の通行するときの車を観察する時,「色」を調べると言いました。
これは「色」という観察ポイントを決めているので,統制的観察となります。
そういったことを決めないで,観察するのが非統制的観察です。色だけではなく,メーカー,車の種類,など別な視点も持ちながら,観察していきます。
3 フィールドワーカーの調査者としての立場は,「完全な参加者」から「完全な観察者」まで4段階があるが,よりよいデータ収集のためには「完全な観察者」の役割を目指すのが望ましい。
これも間違いです。
「望ましい」「望ましくない」は,正解になりにくいものです。
非参与的観察の場合は,「完全な観察者」の役割を目指すのが望ましいかもしれません。
しかし参与的観察の場合は,場面場面によって役割が変わります。生活をともにして観察を行っている場合,他の人が食事の準備や洗濯をしているのに,手伝うことをせずに「完全な観察者」に徹していたら,追い出されてしまうかもしれません。
そんなときは一緒に食事の準備,洗濯をして,「完全な参加者」となります。
4 フィールドワークにおいて,観察されたことのメモをとる場合には,周囲の状況にかかわらず,観察を行ったその場で速やかにとることが望ましい。
これも間違いです。
「望ましい」「望ましくない」は正解になりにくいものです。
完全な観察者になっているときは,その役割に徹します。メモするならそれが一段落してからが「望ましい」と言えるでしょう。
5 参与観察において,その集団生活に慣れ,調査対象に同化し過ぎることは望ましくない。
これが正解です。
「望ましい」「望ましくない」は基本的に正解になりにくいものです。
そのことを逆手にとった出題もできます。
参与観察は,その集団に慣れることはとても重要です。非参与観察では見せてくれないものを見せてくれることもあります。
しかし,同化しすぎると客観的な観察が妨げられることもあります。何事も度を過ぎると不適切になるものです。
<今日の一言>
今日の問題は,ちゃんと勉強してきた人にとっては,決して難しいものではないでしょう。
しかし,試験会場ではうっかりミスは起きるものです。
国試問題は人が作成しています。
将来的には,AI(人工知能)が作成する時代もやってくるかもしれません。
しかし,それはもう少し先の話です。
人が作るものには,どこかに手がかりがあるものです。
問題文が短くなっている現在の問題では解答テクニックが使えるものは少なくなっているかもしれませんが,こういうものを知っておくことで心の余裕が生まれます。
緊張感あふれた国試会場では,心の余裕をもって臨むことが本当に大切です。
2019年1月25日金曜日
質的調査の徹底理解(その1)~1点を底上げする解答テクニック
社会調査の基礎は,量的調査のイメージ強く,特にその中でもデータの集計が難しい,というイメージがある方が多いようです。
簡単ではないことは事実でしょう。
しかしそんな科目の中にも,食い込める領域はいくつかあります。
その一つが質的調査です。
量的調査が苦手なら,質的調査,特に観察法と面接法はしっかり勉強しておく必要があるでしょう。
覚えるべきポイントは少ないです。
しかも言葉的に解ける問題も出題されることがある領域でもあります。
今回は,そんな解答テクニックを紹介していきたいと思います。
それでは早速今日の問題です。
第22回・問題81 調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。
2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。
3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。
4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。
5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。
第22回は,現行カリキュラムの1回目,つまり「社会調査の基礎」ができた時の1回目となります。
初めての出題だったためかとても張り切った内容となり,その結果,とても難しいものとなりました。
量的調査の部分が難しかったのです。それが今にもその部分が難しいというイメージとなって残ったように思います。
この当時は,今と違って文章が洗練されていないので,日本語的に解けてしまう問題は多かったのです。
今はそのような問題が少なくなってきたとは言え,この科目ではまだまだそのような問題があります。
解答テクニックを用いなくても,正解できると思いますが,知っていて決して損はないでしょう。
それでは解説です。
1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。
これは間違いです。
この選択肢は
●●は〇〇だが,●●は〇〇ではない
という文章です。
これが本当に正しい文章なら
観察法においては,写真や音声などは,分析対象とはならない。
でよいはずです。
おそらく今の国試なら,このように出題されるでしょう。
今年度の学習部屋ではほとんど書かなかったのですが,
いわゆる
人は嘘をつく時,饒舌になる
という解答テクニックです。
饒舌になった部分は,
文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,
の部分です。
いずれにしても,写真や音声は重要な分析対象です。
今の国試問題は,だんだん短くなっていることもあり,饒舌に語ることはできなくくなってきていますが,覚えておきましょう。
2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。
これも間違いです。
解答テクニック
言い切り表現に正解少なし
の文章です。
言い切りの部分は,「行ってはならない」です。
大きなお世話です。そう思いませんか?
マジックミラーを使って観察をしていることを告げないのであれば不適切ですが,倫理上の配慮がなされていれば不適切ではありません。
3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。
これも間違いです。
これは解答テクニックが使えません。
参与観察と非参与観察は,しっかり覚えておかなければならないものです。何度も出題されています。
参与観察は,調査者が調査対象者と一緒に生活などを共にしながら観察する方法です。
非参与観察は,調査対象にはかかわらないで観察する方法です。
指示があるかないかではありません。
4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。
これも間違いです。
望ましい,望ましくない,は正解になりにくいものです。最近は試験委員もそれがわかってきているのか,表現をそろえて出題するようになってきています。そうすると解答テクニック的に解けなくなるのです。
フィールドノーツは,記録です。参与観察でも,調査対象者に配慮すれば,使用するのは不適切なことはありません。
5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。
これが正解です。
これも今年度の学習部屋ではあまり書きませんでしたが,
解答テクニック
あいまい表現に正解多し
です。
参与観察は先述のように,調査対象者と生活などを共にしながら観察する方法です。場面によって,調査者の立場は変わります。当然ですね。
<今日の一言>
第30回・問題89は,今日の問題と同じように解答テクニックで解ける選択肢で構成された問題です。
質問紙の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。
2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。
3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。
5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。
選択肢1と2は,「望ましい」。
選択肢3は,「あいまい表現に正解多し」。
選択肢4と5は,「言い切り表現に正解少なし」
この問題は,もともとそれほど難易度が高い問題ではありません。
しかし,こんな問題でも国試会場の独特な雰囲気の中では,正しく問題文が読めなくなってしまい,間違います。それは合格をつかみ取るには,避けたいことです。
こんなタイプの問題が出題されたら,「チームfukufuku21が言ってたものだ」と思いましょう。このことを思い出すことができたあなたは,落ち着きを取り戻しているはずです。
<おまけ>
国試が近づいてきた今は,緊張感が高まっているか,開き直っているか,どちらかでしょう。
もっと早くから勉強していればよかった,と後悔している人もいるでしょう。
否が応でもその日はやってきます。
せっかく受験するなら,陰鬱な気持ちで会場に向かうのではなく,心晴れやかに向かってほしいと思います。
周りにいる人はみんな勉強しているように思います。
7日間で合格できるといった本を買って勉強する人もいるかもしれません。
しかし,今新しい参考書などを買うのは絶対にNGです。
人がどうであれ,自分は自分。
国試会場に向かう電車の中では,おそらく参考書を一生懸命に読んでいる人もいるでしょう。
会場について,席に座ったら,隣の人は参考書にびっちりマーカーが引かれている参考書を開いていて,すごい!! と思ったりもするでしょう。
参考書にびっとりマーカーを引いている人は,大事なポイントが分かっていない人が多いです。マーカーを引くことで満足してしまっています。
人がどうであれ,自分は自分。
今の国試は,努力は絶対に裏切らないものになっています。
その理由・・・
問題の文字数が短くなっているため,言い回しで引っ掛けられることが少ないからです。
知識がそのまま得点になりやすいのです。
逆に勉強不足の人は全然得点できないということになります。
今までの努力はとても貴重です。
そんなあなたが輝くための舞台は用意されています。
素敵なステージで最高のパフォーマンスを発揮してくださいね。
昨年はうっかりして,試験当日の記事がコメントを入力できるようにしてしまいましたが,今年はコメント欄は開きません。
一方的な情報提供で申し訳なく思っていますが,それがチームfukufuku21のスタイルです。
双方向のコミュニケーションではありませんが,国試当日までより上質な情報を提供していきます。ぜひこの学習部屋にお越しください。
わからない時は,3か4をマークする
といった一般的なことは言いません。
簡単ではないことは事実でしょう。
しかしそんな科目の中にも,食い込める領域はいくつかあります。
その一つが質的調査です。
量的調査が苦手なら,質的調査,特に観察法と面接法はしっかり勉強しておく必要があるでしょう。
覚えるべきポイントは少ないです。
しかも言葉的に解ける問題も出題されることがある領域でもあります。
今回は,そんな解答テクニックを紹介していきたいと思います。
それでは早速今日の問題です。
第22回・問題81 調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。
2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。
3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。
4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。
5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。
第22回は,現行カリキュラムの1回目,つまり「社会調査の基礎」ができた時の1回目となります。
初めての出題だったためかとても張り切った内容となり,その結果,とても難しいものとなりました。
量的調査の部分が難しかったのです。それが今にもその部分が難しいというイメージとなって残ったように思います。
この当時は,今と違って文章が洗練されていないので,日本語的に解けてしまう問題は多かったのです。
今はそのような問題が少なくなってきたとは言え,この科目ではまだまだそのような問題があります。
解答テクニックを用いなくても,正解できると思いますが,知っていて決して損はないでしょう。
それでは解説です。
1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。
これは間違いです。
この選択肢は
●●は〇〇だが,●●は〇〇ではない
という文章です。
これが本当に正しい文章なら
観察法においては,写真や音声などは,分析対象とはならない。
でよいはずです。
おそらく今の国試なら,このように出題されるでしょう。
今年度の学習部屋ではほとんど書かなかったのですが,
いわゆる
人は嘘をつく時,饒舌になる
という解答テクニックです。
饒舌になった部分は,
文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,
の部分です。
いずれにしても,写真や音声は重要な分析対象です。
今の国試問題は,だんだん短くなっていることもあり,饒舌に語ることはできなくくなってきていますが,覚えておきましょう。
2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。
これも間違いです。
解答テクニック
言い切り表現に正解少なし
の文章です。
言い切りの部分は,「行ってはならない」です。
大きなお世話です。そう思いませんか?
マジックミラーを使って観察をしていることを告げないのであれば不適切ですが,倫理上の配慮がなされていれば不適切ではありません。
3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。
これも間違いです。
これは解答テクニックが使えません。
参与観察と非参与観察は,しっかり覚えておかなければならないものです。何度も出題されています。
参与観察は,調査者が調査対象者と一緒に生活などを共にしながら観察する方法です。
非参与観察は,調査対象にはかかわらないで観察する方法です。
指示があるかないかではありません。
4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。
これも間違いです。
望ましい,望ましくない,は正解になりにくいものです。最近は試験委員もそれがわかってきているのか,表現をそろえて出題するようになってきています。そうすると解答テクニック的に解けなくなるのです。
フィールドノーツは,記録です。参与観察でも,調査対象者に配慮すれば,使用するのは不適切なことはありません。
5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。
これが正解です。
これも今年度の学習部屋ではあまり書きませんでしたが,
解答テクニック
あいまい表現に正解多し
です。
参与観察は先述のように,調査対象者と生活などを共にしながら観察する方法です。場面によって,調査者の立場は変わります。当然ですね。
<今日の一言>
第30回・問題89は,今日の問題と同じように解答テクニックで解ける選択肢で構成された問題です。
質問紙の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。
2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。
3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。
5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。
選択肢1と2は,「望ましい」。
選択肢3は,「あいまい表現に正解多し」。
選択肢4と5は,「言い切り表現に正解少なし」
この問題は,もともとそれほど難易度が高い問題ではありません。
しかし,こんな問題でも国試会場の独特な雰囲気の中では,正しく問題文が読めなくなってしまい,間違います。それは合格をつかみ取るには,避けたいことです。
こんなタイプの問題が出題されたら,「チームfukufuku21が言ってたものだ」と思いましょう。このことを思い出すことができたあなたは,落ち着きを取り戻しているはずです。
<おまけ>
国試が近づいてきた今は,緊張感が高まっているか,開き直っているか,どちらかでしょう。
もっと早くから勉強していればよかった,と後悔している人もいるでしょう。
否が応でもその日はやってきます。
せっかく受験するなら,陰鬱な気持ちで会場に向かうのではなく,心晴れやかに向かってほしいと思います。
周りにいる人はみんな勉強しているように思います。
7日間で合格できるといった本を買って勉強する人もいるかもしれません。
しかし,今新しい参考書などを買うのは絶対にNGです。
人がどうであれ,自分は自分。
国試会場に向かう電車の中では,おそらく参考書を一生懸命に読んでいる人もいるでしょう。
会場について,席に座ったら,隣の人は参考書にびっちりマーカーが引かれている参考書を開いていて,すごい!! と思ったりもするでしょう。
参考書にびっとりマーカーを引いている人は,大事なポイントが分かっていない人が多いです。マーカーを引くことで満足してしまっています。
人がどうであれ,自分は自分。
今の国試は,努力は絶対に裏切らないものになっています。
その理由・・・
問題の文字数が短くなっているため,言い回しで引っ掛けられることが少ないからです。
知識がそのまま得点になりやすいのです。
逆に勉強不足の人は全然得点できないということになります。
今までの努力はとても貴重です。
そんなあなたが輝くための舞台は用意されています。
素敵なステージで最高のパフォーマンスを発揮してくださいね。
昨年はうっかりして,試験当日の記事がコメントを入力できるようにしてしまいましたが,今年はコメント欄は開きません。
一方的な情報提供で申し訳なく思っていますが,それがチームfukufuku21のスタイルです。
双方向のコミュニケーションではありませんが,国試当日までより上質な情報を提供していきます。ぜひこの学習部屋にお越しください。
わからない時は,3か4をマークする
といった一般的なことは言いません。
2019年1月24日木曜日
調査結果の読み方(2/2)~国試の出題スタイルは変化する!!
社会福祉士の国家試験は,平成元年に第1回試験が実施されました。
そのため,年号と国試の実施回が一緒でした。
それも第31回が最後です。
国試問題は第1回と第2回が非公開だったので,世に出回っている問題は,第3回以降です。
今,どの回の過去問を振り返っても,取り立てて変わったという感じはしないでしょう。
しかし,国試問題はいつも少しずつスタイルを変えて出題されています。
国試を終わった時の感想で最も多いのは「今年の出題は傾向が変わった」というものでしょう。
それはスタイルを変えているからです。現行カリキュラムの試験問題をどのように作るかを検討した時の報告書では,「出題スタイルはいろいろ変える」と明言しています
今見ると,その変化には気づきにくいですが,毎回,出題スタイルが違った問題があります。
そのため出題スタイルは,毎年少しずつ違います。それはずっと続いています。
そのため,もし出題の傾向が変わったと言うなら
今までと出題の傾向が変わって,去年と同じだった
というのが正しいです。国試問題は変化しています。
前回と今回は,調査結果の読み方の問題を紹介しています。
旧カリキュラム時代も含めて,調査結果を読み取る問題は,第26回と第27回のだった2回しか出題されたことはありません。
余談ですが,第26回国試から坂田周一先生が現在まで試験委員長を務めています。
今日の問題は第26回国試のものです。
その回を受験した人は,見たことがない出題スタイルにさぞかし驚いたことでしょう。
それでは今日の問題です。
第26回・問題88 事例を読んで,調査結果の読み方に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Y市社会福祉協議会に勤める社会福祉士は,「いきいきサロン」を利用している高齢者100人へのアンケートで,日頃どのようなスポーツを行っているのかを尋ね,100人すべてから有効回答を得た。選択肢として,(a)ウォーキング,(b)水泳,(c)テニス,(d)その他のスポーツの4つを用意して,普段行っているものにすべて○を付けてもらった。○の数の集計結果は,(a)30,(b)15,(c)10,(d)25となった。
この結果について,K社会福祉士は次のように考えた。
1 ここから,100人中80人は普段何らかのスポーツを行っていると分かる。
2 スポーツを行っている人に限ると,(c)のテニスをする人は8分の1である。
3 この100人の中で,普段何もスポーツを行っていない人は少なくとも20人いてもっと多い可能性もある。
4 卓球は明記されていないので,実際はウォーキングより多かったかもしれない。
5 (d)その他のスポーツに〇を付けた25人のうち,ゲートボールをする人が15人いた場合には,エアロビクスをする人は10人以下になる。
この手の問題の訓練をしても二度と出題されないと思います。
それにもかかわらず,この時期にこの問題を紹介するのは,見たことのない出題スタイルの問題に出くわしても,あわてることなく問題に取り組んで欲しいからです。
国家試験は,今まで勉強してきた知識だけで勝負するのではなく,足りない知識は想像しながら解いていかなければなりません。
今日の問題は,知恵を試しているものです。
今のセンター試験でもおなじみですね。
マーク式の試験では,どうしても知識偏重になってしまいますが,こういった問題を含めることで,その限界に取り組んでいるのだと考えられます。
何度も受験しても合格をつかむことができないという方は,こういった問題をいかに得点できるかが極めて重要です。
解説を読めばわかった,ではなくて,解説なしで考えられることが大切です。
第32回国試以降を受験される方に心がけてほしいのは,問題を解く時,調べながらあるいは解説を読みながら解くのではなく,必ず自分の頭で考えてから解くようにしてほしいということです。
それを普段からしておくことで,国試では大きな力を発揮することができることでしょう。
とにかく国試では今まで見たことのない出題スタイルがされる問題があることだけは知っておきましょう。
それでは解説です。
1 ここから,100人中80人は普段何らかのスポーツを行っていると分かる。
これは間違いです。
これを正解にする人もいるでしょう。
しかし「複数回答可」の調査です。そこを見落とすと間違ってしまいます。
複数回答した人がいれば,何らかのスポーツをしている人は80人以下になります。
2 スポーツを行っている人に限ると,(c)のテニスをする人は8分の1である。
これも間違いです。
これを正解にした人もいるでしょう。
しかし,分母は80人であるかは不明です。80名かもしれませんし,80名ではないかもしれません。
そのため,テニスをしている人10人は,8分の1とはわかりません。
3 この100人の中で,普段何もスポーツを行っていない人は少なくとも20人いてもっと多い可能性もある。
これが正解です。
スポーツをしている人は,全員一人一つずつ回答した場合は,スポーツをしている人は80人です。複数回答した人の分が減っていきます。相対的にスポーツをしていない人の人数は増えます。
4 卓球は明記されていないので,実際はウォーキングより多かったかもしれない。
これも間違いです。
卓球は明記されていないのは正しいですが,その他のスポーツという項目があります。
その他のスポーツと答えた人が全員卓球だったとしたら25人です。
ウォーキングは30人です。
その他のスポーツが全員卓球だったとしても,ウォーキングの方が多いことがわかります。
5 (d)その他のスポーツに〇を付けた25人のうち,ゲートボールをする人が15人いた場合には,エアロビクスをする人は10人以下になる。
これも間違いです。
25人全員が一つしか選んでいないと仮定すると,
ゲートボール15人+10人(エアロビクス●人+その他のスポーツ●人)=25人
となります。
その他のスポーツが0人の場合,エアロビクス10人です。
しかし,例のごとく複数回答している可能性は否定できません。
ゲートボールをしている人全員がエアロビクスもしていて,その他のスポーツが0人の場合は,エアロビクスをしている人は25人となります。
15人(ゲートボールもエアロビクスもしている人)+10人(エアロビクスだけしている人)=25人
<今日の一言>
今日の問題は,はっきり言えば,社会福祉士の試験らしからぬ問題です。
頭の体操のようなものです。
勉強していなくても機転の利く人なら正解できるかもしれません。
問題のねらいは良かったのですが,機転の利く人が得点できるという問題は,よくなかったのでしょう。
そこでその次の年の第27回では,テーマは同じでもガラッと内容を変えたと思われます。
第27回問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/12_23.html
国試は,みんなが解けない問題が多ければ,合格基準点が下がります。
逆に
みんなが解ける問題が多ければ,合格基準点は上がります。
だからといって特別な勉強が必要だというわけではありません。
あくまでも6割ラインの努力をもって国試に臨めば,勝手に合格基準点は上下に代わるだけです。
今日のようなスタイルの問題は,もう出題されないでしょう。
しかし大切なことは,どんなスタイルのものであっても,動じないことです。
スタイルが変わった問題例
第27回・問題23 社会的リスクに関する次の記述のうち,「ベヴァリッジ報告」で想定されていなかったものを1 つ選びなさい。
1 疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ
2 勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ
3 老齢による退職のために,稼働収入が途絶えるおそれ
4 保育や介護の社会化が不充分なため,仕事と家庭の両立が困難になるおそれ
5 稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ
ベヴァリッジ報告=1942年=5つの巨人悪
といった覚え方をしていた人は面を食らった気持ちになった問題だと思います。
「こんなことは勉強して来なかった,困った」
と思ったでしょう。
この問題は「現代社会と福祉」で出題されたものです。この科目は,旧カリキュラム時代の「社会福祉原論」と違い,福祉政策を学ぶための科目に変わっています。
そのため,この問題は,ベヴァリッジ報告を使いながら,現在を考えさせる問題になっているのです。
ベヴァリッジ報告の5つの巨人悪を正確に覚えていなくとも,その当時と今では何が違うのかを考えた時,4以外は古典的なリスクであることがわかります。
大切なことは,難しいと思った問題に突き当たったとき,なげやりにならないことです。
なげやりになって,思考を止めることは絶対にしないようにしましょう。
必要なことは,想像力を最大限に発揮して問題に取り組むことです
そのため,年号と国試の実施回が一緒でした。
それも第31回が最後です。
国試問題は第1回と第2回が非公開だったので,世に出回っている問題は,第3回以降です。
今,どの回の過去問を振り返っても,取り立てて変わったという感じはしないでしょう。
しかし,国試問題はいつも少しずつスタイルを変えて出題されています。
国試を終わった時の感想で最も多いのは「今年の出題は傾向が変わった」というものでしょう。
それはスタイルを変えているからです。現行カリキュラムの試験問題をどのように作るかを検討した時の報告書では,「出題スタイルはいろいろ変える」と明言しています
今見ると,その変化には気づきにくいですが,毎回,出題スタイルが違った問題があります。
そのため出題スタイルは,毎年少しずつ違います。それはずっと続いています。
そのため,もし出題の傾向が変わったと言うなら
今までと出題の傾向が変わって,去年と同じだった
というのが正しいです。国試問題は変化しています。
前回と今回は,調査結果の読み方の問題を紹介しています。
旧カリキュラム時代も含めて,調査結果を読み取る問題は,第26回と第27回のだった2回しか出題されたことはありません。
余談ですが,第26回国試から坂田周一先生が現在まで試験委員長を務めています。
今日の問題は第26回国試のものです。
その回を受験した人は,見たことがない出題スタイルにさぞかし驚いたことでしょう。
それでは今日の問題です。
第26回・問題88 事例を読んで,調査結果の読み方に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Y市社会福祉協議会に勤める社会福祉士は,「いきいきサロン」を利用している高齢者100人へのアンケートで,日頃どのようなスポーツを行っているのかを尋ね,100人すべてから有効回答を得た。選択肢として,(a)ウォーキング,(b)水泳,(c)テニス,(d)その他のスポーツの4つを用意して,普段行っているものにすべて○を付けてもらった。○の数の集計結果は,(a)30,(b)15,(c)10,(d)25となった。
この結果について,K社会福祉士は次のように考えた。
1 ここから,100人中80人は普段何らかのスポーツを行っていると分かる。
2 スポーツを行っている人に限ると,(c)のテニスをする人は8分の1である。
3 この100人の中で,普段何もスポーツを行っていない人は少なくとも20人いてもっと多い可能性もある。
4 卓球は明記されていないので,実際はウォーキングより多かったかもしれない。
5 (d)その他のスポーツに〇を付けた25人のうち,ゲートボールをする人が15人いた場合には,エアロビクスをする人は10人以下になる。
この手の問題の訓練をしても二度と出題されないと思います。
それにもかかわらず,この時期にこの問題を紹介するのは,見たことのない出題スタイルの問題に出くわしても,あわてることなく問題に取り組んで欲しいからです。
国家試験は,今まで勉強してきた知識だけで勝負するのではなく,足りない知識は想像しながら解いていかなければなりません。
今日の問題は,知恵を試しているものです。
今のセンター試験でもおなじみですね。
マーク式の試験では,どうしても知識偏重になってしまいますが,こういった問題を含めることで,その限界に取り組んでいるのだと考えられます。
何度も受験しても合格をつかむことができないという方は,こういった問題をいかに得点できるかが極めて重要です。
解説を読めばわかった,ではなくて,解説なしで考えられることが大切です。
第32回国試以降を受験される方に心がけてほしいのは,問題を解く時,調べながらあるいは解説を読みながら解くのではなく,必ず自分の頭で考えてから解くようにしてほしいということです。
それを普段からしておくことで,国試では大きな力を発揮することができることでしょう。
とにかく国試では今まで見たことのない出題スタイルがされる問題があることだけは知っておきましょう。
それでは解説です。
1 ここから,100人中80人は普段何らかのスポーツを行っていると分かる。
これは間違いです。
これを正解にする人もいるでしょう。
しかし「複数回答可」の調査です。そこを見落とすと間違ってしまいます。
複数回答した人がいれば,何らかのスポーツをしている人は80人以下になります。
2 スポーツを行っている人に限ると,(c)のテニスをする人は8分の1である。
これも間違いです。
これを正解にした人もいるでしょう。
しかし,分母は80人であるかは不明です。80名かもしれませんし,80名ではないかもしれません。
そのため,テニスをしている人10人は,8分の1とはわかりません。
3 この100人の中で,普段何もスポーツを行っていない人は少なくとも20人いてもっと多い可能性もある。
これが正解です。
スポーツをしている人は,全員一人一つずつ回答した場合は,スポーツをしている人は80人です。複数回答した人の分が減っていきます。相対的にスポーツをしていない人の人数は増えます。
4 卓球は明記されていないので,実際はウォーキングより多かったかもしれない。
これも間違いです。
卓球は明記されていないのは正しいですが,その他のスポーツという項目があります。
その他のスポーツと答えた人が全員卓球だったとしたら25人です。
ウォーキングは30人です。
その他のスポーツが全員卓球だったとしても,ウォーキングの方が多いことがわかります。
5 (d)その他のスポーツに〇を付けた25人のうち,ゲートボールをする人が15人いた場合には,エアロビクスをする人は10人以下になる。
これも間違いです。
25人全員が一つしか選んでいないと仮定すると,
ゲートボール15人+10人(エアロビクス●人+その他のスポーツ●人)=25人
となります。
その他のスポーツが0人の場合,エアロビクス10人です。
しかし,例のごとく複数回答している可能性は否定できません。
ゲートボールをしている人全員がエアロビクスもしていて,その他のスポーツが0人の場合は,エアロビクスをしている人は25人となります。
15人(ゲートボールもエアロビクスもしている人)+10人(エアロビクスだけしている人)=25人
<今日の一言>
今日の問題は,はっきり言えば,社会福祉士の試験らしからぬ問題です。
頭の体操のようなものです。
勉強していなくても機転の利く人なら正解できるかもしれません。
問題のねらいは良かったのですが,機転の利く人が得点できるという問題は,よくなかったのでしょう。
そこでその次の年の第27回では,テーマは同じでもガラッと内容を変えたと思われます。
第27回問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/12_23.html
国試は,みんなが解けない問題が多ければ,合格基準点が下がります。
逆に
みんなが解ける問題が多ければ,合格基準点は上がります。
だからといって特別な勉強が必要だというわけではありません。
あくまでも6割ラインの努力をもって国試に臨めば,勝手に合格基準点は上下に代わるだけです。
今日のようなスタイルの問題は,もう出題されないでしょう。
しかし大切なことは,どんなスタイルのものであっても,動じないことです。
スタイルが変わった問題例
第27回・問題23 社会的リスクに関する次の記述のうち,「ベヴァリッジ報告」で想定されていなかったものを1 つ選びなさい。
1 疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ
2 勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ
3 老齢による退職のために,稼働収入が途絶えるおそれ
4 保育や介護の社会化が不充分なため,仕事と家庭の両立が困難になるおそれ
5 稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ
ベヴァリッジ報告=1942年=5つの巨人悪
といった覚え方をしていた人は面を食らった気持ちになった問題だと思います。
「こんなことは勉強して来なかった,困った」
と思ったでしょう。
この問題は「現代社会と福祉」で出題されたものです。この科目は,旧カリキュラム時代の「社会福祉原論」と違い,福祉政策を学ぶための科目に変わっています。
そのため,この問題は,ベヴァリッジ報告を使いながら,現在を考えさせる問題になっているのです。
ベヴァリッジ報告の5つの巨人悪を正確に覚えていなくとも,その当時と今では何が違うのかを考えた時,4以外は古典的なリスクであることがわかります。
大切なことは,難しいと思った問題に突き当たったとき,なげやりにならないことです。
なげやりになって,思考を止めることは絶対にしないようにしましょう。
必要なことは,想像力を最大限に発揮して問題に取り組むことです
2019年1月23日水曜日
調査結果の読み方(1/2)~国試会場でミスしない工夫!!
社会福祉士の国試は,マーク式です。
問題文の中に必ず答えがあります。
しかし,実際に得点するのはとても難しいものです。
とは言っても,記述式よりも得点しやすいことは間違いありません。
皆さんが受験する国試は,社会福祉士です。
常に柔軟な思考と対人援助力が求められます。
答えは誰も教えてくれないので,自分で考えることが必要です。
しかも瞬間瞬間に判断しなければなりません。
国家試験で重要なことは,規定の時間内に答えを導き出すことです。
2回にわたって,調査結果の読み方を紹介します。
知識があっても,得点するには柔軟な思考が必要です。
それでは今日の問題です。
第27回・問題88 事例を読んで,調査結果の読み方に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
ある地区で開催された「ふれあいサロン」の参加者の性別と年齢を調査した。その結果,参加者は,男性が64歳と68歳の2名,女性が64歳,66歳,72歳,75歳,77歳,80歳,82歳の7名であった。
1 女性参加者の年齢の中央値は,75である。
2 参加者全体の年齢の範囲は,82である。
3 参加者全体の年齢の最頻値は,2である。
4 男性参加者の年齢の平均値は,66である。
5 女性参加者の年齢の分散と男性参加者の年齢の分散は等しい。
データをどのように読むかは,センター試験でも出題されます。
知識だけでは得点するのは簡単ではないでしょう。
ゆっくり考えると解けるかもしれません。しかし,試験の時間は誰にも共通です。
ゆっくり考えなければ答えられないので,10分延長してください,といったことにはなりません。
この問題は計算しなければならないものです。時間がかかります。
しかしすべてを計算しなければならないわけではありません。
用語を正しく理解しているのかが重要です。
初めて出題されている用語は「範囲」です。
それでは解説です。
1 女性参加者の年齢の中央値は,75である。
これが正解です。
中央値は,データを小さい方から並べてそのちょうど真ん中にあたる数値です。
これは計算ではなく,データを並べなければなりません。
こういった作業は面倒がらずに丁寧に行う必要があります。
ここで手を抜くと試験委員が仕掛けたトラップにはまって,間違う原因となるので注意が必要です。
2 参加者全体の年齢の範囲は,82である。
これは間違いです。
「範囲って何だろう?」と思うと,試験委員が仕掛けたトラップにはまります。
範囲は範囲。日本語の「範囲」と同じ意味です。
最小値から最大値までの範囲です。
82歳は最大値です。これから最小値を引けば範囲です。
3 参加者全体の年齢の最頻値は,2である。
これは間違いです。
最頻値は,最も多く現われる数値です。2歳の人はいません。2歳の幼児はふれあいサロンに参加しないということはないと思いますが,一般的にはあまりないでしょう。
それよりもここで注意しなければならないのは,試験委員が仕掛けたトラップです。
参加者のうち,64歳が2人,それ以外は1人ずつです。
選択肢1でデータを並べなかった人は,うっかり「64歳が2人いるので,最頻値は2だ」と思ってしまうおそれがあるのです。
今,読むとそんなことはないと思うかもしれません。
しかし,国試会場では,このようなものでも勘違いをする可能性があります。
本当によくある話です。笑いごとではありません。
4 男性参加者の年齢の平均値は,66である。
これは正解です。
計算すれば簡単ですね。
5 女性参加者の年齢の分散と男性参加者の年齢の分散は等しい。
これは間違いです。
こういった問題があると,分散を正しく理解して,計算しなければならないと思うかもしれません。
しかし決してそんなことはありません。
「分散」は,散布度の指標です。データがばらついていることを示すものです。
このことがわかっていれば,計算せずとも,女性のほうがばらついていそうだと想像することができます。
分散は,平均値から測定値の差を2乗して,すべてのデータを足したものをデータの個数で割ったものです。。
計算の達人であればすぐ答えは出せるかもしれませんが,分散の意味がわかっていれば,計算する必要はありません。
そこまで試験委員はいじわるではありません。
<今日の一言>
国試には,当然のことながら時間に制限があります。
そのため,時間が気になり焦ってしまいます。
焦ると,文字を読んでも頭に入って来なくなってしまいます。
今の国試は,文字数が短くなっているので,答えがすぐわかる問題も混じっています。
それらで時間を稼ぐことができます。
今日の問題で正解できるためには,選択肢1を面倒がらず,データを並べなおすことをしたかどうかがカギでした。
こういったことを面倒がらずに行えば,選択肢3のトラップに引っ掛けられることはないでしょう。
国試で,焦りそうなら,そこで一度手を止めて深呼吸しましょう。
そこで,リズムを取り戻せるでしょう。
「社会調査の基礎」は,午後の最初の科目です。
ここでリズムが狂うと,最後までリズムが狂ったまま問題を解くことになります。
国試会場では,焦っている自分に気がついていないこともよくあります。
焦っていることに気がつくことができれば,必ず態勢を立て直すことができます。
国試で,実力を発揮できる人と実力を発揮できない人の差は,実はこんなところにあるのです。
焦っている自分に気がついたら,手を止めて深呼吸する
国試会場で実践してみましょう!!
必ず自分を取り戻すことができます。
がちがち頭では,柔軟な思考はできません。
気持ちに少しでも余裕をもって,国試に臨むことができれば,今まで努力してきた人は,実力通りの力を発揮することができるでしょう。
あともうひと頑張りです。
問題文の中に必ず答えがあります。
しかし,実際に得点するのはとても難しいものです。
とは言っても,記述式よりも得点しやすいことは間違いありません。
皆さんが受験する国試は,社会福祉士です。
常に柔軟な思考と対人援助力が求められます。
答えは誰も教えてくれないので,自分で考えることが必要です。
しかも瞬間瞬間に判断しなければなりません。
国家試験で重要なことは,規定の時間内に答えを導き出すことです。
2回にわたって,調査結果の読み方を紹介します。
知識があっても,得点するには柔軟な思考が必要です。
それでは今日の問題です。
第27回・問題88 事例を読んで,調査結果の読み方に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
ある地区で開催された「ふれあいサロン」の参加者の性別と年齢を調査した。その結果,参加者は,男性が64歳と68歳の2名,女性が64歳,66歳,72歳,75歳,77歳,80歳,82歳の7名であった。
1 女性参加者の年齢の中央値は,75である。
2 参加者全体の年齢の範囲は,82である。
3 参加者全体の年齢の最頻値は,2である。
4 男性参加者の年齢の平均値は,66である。
5 女性参加者の年齢の分散と男性参加者の年齢の分散は等しい。
データをどのように読むかは,センター試験でも出題されます。
知識だけでは得点するのは簡単ではないでしょう。
ゆっくり考えると解けるかもしれません。しかし,試験の時間は誰にも共通です。
ゆっくり考えなければ答えられないので,10分延長してください,といったことにはなりません。
この問題は計算しなければならないものです。時間がかかります。
しかしすべてを計算しなければならないわけではありません。
用語を正しく理解しているのかが重要です。
初めて出題されている用語は「範囲」です。
それでは解説です。
1 女性参加者の年齢の中央値は,75である。
これが正解です。
中央値は,データを小さい方から並べてそのちょうど真ん中にあたる数値です。
これは計算ではなく,データを並べなければなりません。
こういった作業は面倒がらずに丁寧に行う必要があります。
ここで手を抜くと試験委員が仕掛けたトラップにはまって,間違う原因となるので注意が必要です。
2 参加者全体の年齢の範囲は,82である。
これは間違いです。
「範囲って何だろう?」と思うと,試験委員が仕掛けたトラップにはまります。
範囲は範囲。日本語の「範囲」と同じ意味です。
最小値から最大値までの範囲です。
82歳は最大値です。これから最小値を引けば範囲です。
3 参加者全体の年齢の最頻値は,2である。
これは間違いです。
最頻値は,最も多く現われる数値です。2歳の人はいません。2歳の幼児はふれあいサロンに参加しないということはないと思いますが,一般的にはあまりないでしょう。
それよりもここで注意しなければならないのは,試験委員が仕掛けたトラップです。
参加者のうち,64歳が2人,それ以外は1人ずつです。
選択肢1でデータを並べなかった人は,うっかり「64歳が2人いるので,最頻値は2だ」と思ってしまうおそれがあるのです。
今,読むとそんなことはないと思うかもしれません。
しかし,国試会場では,このようなものでも勘違いをする可能性があります。
本当によくある話です。笑いごとではありません。
4 男性参加者の年齢の平均値は,66である。
これは正解です。
計算すれば簡単ですね。
5 女性参加者の年齢の分散と男性参加者の年齢の分散は等しい。
これは間違いです。
こういった問題があると,分散を正しく理解して,計算しなければならないと思うかもしれません。
しかし決してそんなことはありません。
「分散」は,散布度の指標です。データがばらついていることを示すものです。
このことがわかっていれば,計算せずとも,女性のほうがばらついていそうだと想像することができます。
分散は,平均値から測定値の差を2乗して,すべてのデータを足したものをデータの個数で割ったものです。。
計算の達人であればすぐ答えは出せるかもしれませんが,分散の意味がわかっていれば,計算する必要はありません。
そこまで試験委員はいじわるではありません。
<今日の一言>
国試には,当然のことながら時間に制限があります。
そのため,時間が気になり焦ってしまいます。
焦ると,文字を読んでも頭に入って来なくなってしまいます。
今の国試は,文字数が短くなっているので,答えがすぐわかる問題も混じっています。
それらで時間を稼ぐことができます。
今日の問題で正解できるためには,選択肢1を面倒がらず,データを並べなおすことをしたかどうかがカギでした。
こういったことを面倒がらずに行えば,選択肢3のトラップに引っ掛けられることはないでしょう。
国試で,焦りそうなら,そこで一度手を止めて深呼吸しましょう。
そこで,リズムを取り戻せるでしょう。
「社会調査の基礎」は,午後の最初の科目です。
ここでリズムが狂うと,最後までリズムが狂ったまま問題を解くことになります。
国試会場では,焦っている自分に気がついていないこともよくあります。
焦っていることに気がつくことができれば,必ず態勢を立て直すことができます。
国試で,実力を発揮できる人と実力を発揮できない人の差は,実はこんなところにあるのです。
焦っている自分に気がついたら,手を止めて深呼吸する
国試会場で実践してみましょう!!
必ず自分を取り戻すことができます。
がちがち頭では,柔軟な思考はできません。
気持ちに少しでも余裕をもって,国試に臨むことができれば,今まで努力してきた人は,実力通りの力を発揮することができるでしょう。
あともうひと頑張りです。
2019年1月22日火曜日
量的調査の集計と分析(2/2)~バラつき・散布度とは?
平均点はどちらも70点であったにもかかわらず,合格率がまったく違う大学の例を紹介しました。
算術平均はよく算出するものです。
しかし算出平均は集団の様子を知るための手段の一つであり,それですべてが見えてくるものではありません。
が,必ずしもその集団の様子を正しく見ることができないので要注意です。
国家試験の平均点がA大学,B大学ともに70点だったとします。
どちらも受験者は10名だった場合,総得点は700点です。
しかし合格率は
A大学50%
B大学10%
といったように
大きな差が生まれることがあります。
これは得点にばらつきがあるためです。
今日の問題は難しいので,覚えられなけれは捨てましょう。
それでは今日の問題です。
第25回・問題88
算術平均はよく算出するものです。
しかし算出平均は集団の様子を知るための手段の一つであり,それですべてが見えてくるものではありません。
が,必ずしもその集団の様子を正しく見ることができないので要注意です。
国家試験の平均点がA大学,B大学ともに70点だったとします。
どちらも受験者は10名だった場合,総得点は700点です。
しかし合格率は
A大学50%
B大学10%
といったように
大きな差が生まれることがあります。
これは得点にばらつきがあるためです。
今日の問題は難しいので,覚えられなけれは捨てましょう。
それでは今日の問題です。
第25回・問題88
変数の散布度(バラつき,散らばり具合)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 平均値と中央値の差は偏差と呼ばれ,散布度の指標としてしばしば用いられる。
2 最大値は,変数がどの程度大きな値まで広がっているかを示しているので,散布度の指標である。
3 四分位範囲(第3四分位数と第1四分位数の差)は,分布の両端からそれぞれ4分の1の測定値を捨てた後の,中央の半数の測定値の範囲であり,散布度として用いられる。
4 分散と標準偏差はいずれも散布度の指標であるが,この2つの間には必ずしも決まった関係はない。
5 散布度の指標である分散とは,個々の測定値と平均値の差の絶対値をすべて足し合わせたものである。
なにこれ?
という感じでしょう。
さすがは「魔の第25回国試」の問題です。この時点では出来てもできなくても良いと言える問題です。
なぜなら問題は難しければ難しいほどみんなが解けないので,得点に差がつかないためです。
実はこの問題には下敷きとなった問題があります。
第20回・問題48 心理尺度の分析に関する次の記述のうち,適切なものに〇,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 標準偏差は,ある集団における尺度得点の散布度を示す統計量の一つである。
B 相関係数は,2つの集団間における尺度得点の平均値の差を示す統計の一つである。
C 分散分析は,3つ以上の集団間の尺度得点の平均値の差について検討する場合に用いる方法の一つである。
D 折半法は,同一集団において同じ心理尺度を使って繰り返し測定し,その一致度から信頼性を確認する場合に用いる方法の一つである。
(組み合わせ)
ABCD
1 ○○××
2 ○×〇×
3 〇××〇
4 ×〇〇×
5 ×〇×〇
答えは2。
この問題は,旧カリ時代の「心理学」で出題されたものです。これも難しいですね。
今日の問題と同程度の難易度です。おそらく多くの人は解けなかったでしょう。
それでは解説です。
1 平均値と中央値の差は偏差と呼ばれ,散布度の指標としてしばしば用いられる。
これは間違いです。
標準偏差は何度も出題されていますが,偏差が出題されたのは,その前もその後もこの時一回きりです。
偏差は,「平均値と測定値がどれほど離れているのか」を示したものです。
平均点が70点だったテストで,Aさんの点数は90点だったとき,「偏差」は20となります。
Aさんの成績がどれだけ平均値と離れているのかはわかりますが,クラス全体の点数のバラつきはわかりません。
バラつきをみるためには,偏差ではなく「分散」あるいは「標準偏差」を用います。
難しすぎですね。
2 最大値は,変数がどの程度大きな値まで広がっているかを示しているので,散布度の指標である。
これも間違いです。
散布度は測定値のバラつきを表わすものです。
最大値は一つの測定値がとんでもなく大きい場合,いわゆる外れ値というものになります。
そのため,最大値や最小値はバラつきを表わす散布度の指標になるように感じるかもしれません。
しかし,受験者10人の平均点が70点だったA大学とB大学で考えてみた場合,
A大学の最大値120点が1人,最小値20点が1人,そのほかの8人は70点。
B大学の最大値90点が1人,85点が1人,80点が1人・・・67点が1人,66点が1人,最小値が65点。
A大学の最大値は120点,最小値は20点
B大学の最大値は90点,最小値は65点
バラつきはA大学の方が大きいように見えます。
しかし,A大学は最大値と最小値を除けば,そのほかの受験者は全員70点です。
B大学は,85点,80点,67点,66点など,さまざまな点数の受験者がいます。
バラつきはB大学の方が大きくなります。
最大値や最小値はめったにいない外れ値であることがあるので,注意しなければなりません。
そのため,散布度を表わす指標とはならないのです。
3 四分位範囲(第3四分位数と第1四分位数の差)は,分布の両端からそれぞれ4分の1の測定値を捨てた後の,中央の半数の測定値の範囲であり,散布度として用いられる。
これが正解です。
しかし難しすぎです。
とはいうものの,四分位範囲,箱ひげ図,分散等は,現在は高校で学ぶ数学Ⅰの内容に含まれ,2020年以降は中学2年生で学ぶことになります。
つまり,将来の中学生や現在の高校生でも知っていることになります。
四分位範囲はよんぶんいはんいと読みます。読み方さえわかりませんよね。
四分位範囲は,測定値の小さい値から順番に並べて,それを4等分します。そのうち,小さい方と大きい方の25%ずつを除いた中央値を中心とした50%が四分位範囲です。
大きいほうと小さいほうの25%には,いわゆる外れ値を含みます。
社会福祉士の受験生データは発表されていませんが,模試なら受験生データを発表している団体があります。
それをみると,130点も取っている人がいます。そういう数字をみるとすごいなあ,自分はだめだなあ,と思ってしまうかもしれません。
しかしそれらは外れ値です。めったに取れるものではありません。
そのため,外れ値になるような測定値を除いた,中央値を中心とした全体の50%で集団のバラつきをみるのが四分位範囲です。
これならバラつきを表わす散布度の指標になりそうだと思いませんか?
平均点が同じ大学であっても,このような散布度を使えば,バラつき具合が見えてきます。
4 分散と標準偏差はいずれも散布度の指標であるが,この2つの間には必ずしも決まった関係はない。
これも間違いです。
分散は,平均値と測定値の差(つまり偏差)を2乗して,それをすべて足したものをデータの個数で割ったものです。
2乗する理由は,-1と1はゼロにより相殺されてしまうので,それを防ぐためです。
標準偏差は,分散の平方根です。
平方根を求める理由は,分散のときに2乗しているので,それをもとの数値に近く見せるためです。
このように,分散と標準偏差は別のものではありません。
分散も標準偏差も数値が大きい方がバラつきが大きいことを表わします。
5 散布度の指標である分散とは,個々の測定値と平均値の差の絶対値をすべて足し合わせたものである。
これも間違いです。
絶対値とは,マイナスとプラスの方向に関係なくゼロからどれだけ離れているかの数値です。
マイナス1は1,プラス1も1です。
分散は,単純に足すのではなく,偏差(個々の測定値と平均値の差)を2乗して,すべて足し合わせたものです。
<今日の一言>
今日の問題をみると,こんなことまで勉強していなければならないのか,と思うかもしれません。
しかし決してそんなことはありません。
試験センターは受験生のデータはほとんど出しません。
そのため,模試のように受験者の正解率はわかりませんが,第25回の合格基準点が72点という過去最低になったことを考えると,この問題は多くの人が解けなかったのではないかと思います。
今日の問題のような難しい問題が解ける人は外れ値となる点数を取る人です。
最近は,これほど難しい問題は出題されなくなっていますが,それでも難易度の高い問題はたくさんあります。
今日の問題に出てきた内容では最大値を除いた「偏差」「分散」「標準偏差」「四分位範囲」のうち,第25回以降の国試で出題されたのは,「分散」のみです。
分散は,第27回国試で出題されているので,しっかり覚えておきたいです。
分散とは
偏差(個々の測定値と平均値の差)を2乗して,すべて足し合わせたものです。
標準偏差とは
分散の平方根です。
平方根とはルートです。分散が4の場合の平方根は2です。
<おまけ>
国試には,とても難しい問題も出題されます。しかし,ちゃんと努力してきた人は,それらが解けなくてもほかの問題で得点できます。
試験センターが目指しているのは,約30%の人が90点以上取れる国試です。
そこに至る道にはまだまだ紆余曲折があるかもしれませんが,少なくとも約30%の人が100点以上取れる国試ではありません。
そういった面では,合格基準点が発表されるようになった第15回以降,合格基準点が最大値99点の第30回国試は,外れ値となるものでしょう。
国試がどんな出題になろうとも,ちゃんと努力してきた人は,ボーダーラインを超えられます。
大丈夫。あなたはそれだけの努力をしてきました。
今までの努力は決して裏切ることはありません。国試合格への扉は,あなたに向かって大きく開かれようとしています。
1 平均値と中央値の差は偏差と呼ばれ,散布度の指標としてしばしば用いられる。
2 最大値は,変数がどの程度大きな値まで広がっているかを示しているので,散布度の指標である。
3 四分位範囲(第3四分位数と第1四分位数の差)は,分布の両端からそれぞれ4分の1の測定値を捨てた後の,中央の半数の測定値の範囲であり,散布度として用いられる。
4 分散と標準偏差はいずれも散布度の指標であるが,この2つの間には必ずしも決まった関係はない。
5 散布度の指標である分散とは,個々の測定値と平均値の差の絶対値をすべて足し合わせたものである。
なにこれ?
という感じでしょう。
さすがは「魔の第25回国試」の問題です。この時点では出来てもできなくても良いと言える問題です。
なぜなら問題は難しければ難しいほどみんなが解けないので,得点に差がつかないためです。
実はこの問題には下敷きとなった問題があります。
第20回・問題48 心理尺度の分析に関する次の記述のうち,適切なものに〇,適切でないものに×をつけた場合,その組み合わせとして正しいものを一つ選びなさい。
A 標準偏差は,ある集団における尺度得点の散布度を示す統計量の一つである。
B 相関係数は,2つの集団間における尺度得点の平均値の差を示す統計の一つである。
C 分散分析は,3つ以上の集団間の尺度得点の平均値の差について検討する場合に用いる方法の一つである。
D 折半法は,同一集団において同じ心理尺度を使って繰り返し測定し,その一致度から信頼性を確認する場合に用いる方法の一つである。
(組み合わせ)
ABCD
1 ○○××
2 ○×〇×
3 〇××〇
4 ×〇〇×
5 ×〇×〇
答えは2。
この問題は,旧カリ時代の「心理学」で出題されたものです。これも難しいですね。
今日の問題と同程度の難易度です。おそらく多くの人は解けなかったでしょう。
それでは解説です。
1 平均値と中央値の差は偏差と呼ばれ,散布度の指標としてしばしば用いられる。
これは間違いです。
標準偏差は何度も出題されていますが,偏差が出題されたのは,その前もその後もこの時一回きりです。
偏差は,「平均値と測定値がどれほど離れているのか」を示したものです。
平均点が70点だったテストで,Aさんの点数は90点だったとき,「偏差」は20となります。
Aさんの成績がどれだけ平均値と離れているのかはわかりますが,クラス全体の点数のバラつきはわかりません。
バラつきをみるためには,偏差ではなく「分散」あるいは「標準偏差」を用います。
難しすぎですね。
2 最大値は,変数がどの程度大きな値まで広がっているかを示しているので,散布度の指標である。
これも間違いです。
散布度は測定値のバラつきを表わすものです。
最大値は一つの測定値がとんでもなく大きい場合,いわゆる外れ値というものになります。
そのため,最大値や最小値はバラつきを表わす散布度の指標になるように感じるかもしれません。
しかし,受験者10人の平均点が70点だったA大学とB大学で考えてみた場合,
A大学の最大値120点が1人,最小値20点が1人,そのほかの8人は70点。
B大学の最大値90点が1人,85点が1人,80点が1人・・・67点が1人,66点が1人,最小値が65点。
A大学の最大値は120点,最小値は20点
B大学の最大値は90点,最小値は65点
バラつきはA大学の方が大きいように見えます。
しかし,A大学は最大値と最小値を除けば,そのほかの受験者は全員70点です。
B大学は,85点,80点,67点,66点など,さまざまな点数の受験者がいます。
バラつきはB大学の方が大きくなります。
最大値や最小値はめったにいない外れ値であることがあるので,注意しなければなりません。
そのため,散布度を表わす指標とはならないのです。
3 四分位範囲(第3四分位数と第1四分位数の差)は,分布の両端からそれぞれ4分の1の測定値を捨てた後の,中央の半数の測定値の範囲であり,散布度として用いられる。
これが正解です。
しかし難しすぎです。
とはいうものの,四分位範囲,箱ひげ図,分散等は,現在は高校で学ぶ数学Ⅰの内容に含まれ,2020年以降は中学2年生で学ぶことになります。
つまり,将来の中学生や現在の高校生でも知っていることになります。
四分位範囲はよんぶんいはんいと読みます。読み方さえわかりませんよね。
四分位範囲は,測定値の小さい値から順番に並べて,それを4等分します。そのうち,小さい方と大きい方の25%ずつを除いた中央値を中心とした50%が四分位範囲です。
大きいほうと小さいほうの25%には,いわゆる外れ値を含みます。
社会福祉士の受験生データは発表されていませんが,模試なら受験生データを発表している団体があります。
それをみると,130点も取っている人がいます。そういう数字をみるとすごいなあ,自分はだめだなあ,と思ってしまうかもしれません。
しかしそれらは外れ値です。めったに取れるものではありません。
そのため,外れ値になるような測定値を除いた,中央値を中心とした全体の50%で集団のバラつきをみるのが四分位範囲です。
これならバラつきを表わす散布度の指標になりそうだと思いませんか?
平均点が同じ大学であっても,このような散布度を使えば,バラつき具合が見えてきます。
4 分散と標準偏差はいずれも散布度の指標であるが,この2つの間には必ずしも決まった関係はない。
これも間違いです。
分散は,平均値と測定値の差(つまり偏差)を2乗して,それをすべて足したものをデータの個数で割ったものです。
2乗する理由は,-1と1はゼロにより相殺されてしまうので,それを防ぐためです。
標準偏差は,分散の平方根です。
平方根を求める理由は,分散のときに2乗しているので,それをもとの数値に近く見せるためです。
このように,分散と標準偏差は別のものではありません。
分散も標準偏差も数値が大きい方がバラつきが大きいことを表わします。
5 散布度の指標である分散とは,個々の測定値と平均値の差の絶対値をすべて足し合わせたものである。
これも間違いです。
絶対値とは,マイナスとプラスの方向に関係なくゼロからどれだけ離れているかの数値です。
マイナス1は1,プラス1も1です。
分散は,単純に足すのではなく,偏差(個々の測定値と平均値の差)を2乗して,すべて足し合わせたものです。
<今日の一言>
今日の問題をみると,こんなことまで勉強していなければならないのか,と思うかもしれません。
しかし決してそんなことはありません。
試験センターは受験生のデータはほとんど出しません。
そのため,模試のように受験者の正解率はわかりませんが,第25回の合格基準点が72点という過去最低になったことを考えると,この問題は多くの人が解けなかったのではないかと思います。
今日の問題のような難しい問題が解ける人は外れ値となる点数を取る人です。
最近は,これほど難しい問題は出題されなくなっていますが,それでも難易度の高い問題はたくさんあります。
今日の問題に出てきた内容では最大値を除いた「偏差」「分散」「標準偏差」「四分位範囲」のうち,第25回以降の国試で出題されたのは,「分散」のみです。
分散は,第27回国試で出題されているので,しっかり覚えておきたいです。
分散とは
偏差(個々の測定値と平均値の差)を2乗して,すべて足し合わせたものです。
標準偏差とは
分散の平方根です。
平方根とはルートです。分散が4の場合の平方根は2です。
<おまけ>
国試には,とても難しい問題も出題されます。しかし,ちゃんと努力してきた人は,それらが解けなくてもほかの問題で得点できます。
試験センターが目指しているのは,約30%の人が90点以上取れる国試です。
そこに至る道にはまだまだ紆余曲折があるかもしれませんが,少なくとも約30%の人が100点以上取れる国試ではありません。
そういった面では,合格基準点が発表されるようになった第15回以降,合格基準点が最大値99点の第30回国試は,外れ値となるものでしょう。
国試がどんな出題になろうとも,ちゃんと努力してきた人は,ボーダーラインを超えられます。
大丈夫。あなたはそれだけの努力をしてきました。
今までの努力は決して裏切ることはありません。国試合格への扉は,あなたに向かって大きく開かれようとしています。
2019年1月21日月曜日
量的調査の集計と分析(1/2)~難しいものは捨てる
「社会調査の基礎」が難しいと思う理由は,「量的調査の集計と分析」にあるように思います。
統計の知識がないといけないと思ってしまうからです。
しかし出題されてもたったの1問です。
ピアソンの積率相関係数などと聞くととてもいやになってしまうと思います。
相関とは,2つ以上のものに関連があることです。
クロス集計は,定性的データをまとめたもので,相関を調べるためには,カイ2乗検定などを行います。
定量的データの相関を調べるための方法の一つがピアソンの積率相関係数です。
しかし旧カリ時代も含めて出題されたのは,第8回,第19回,第22回,第28回のたった4回だけです。
時間をかけるのはもったいないです。
ほかの分析方法も覚えられなかったら捨てましょう。ほかの部分で十分得点を稼ぐことができます。出題されたとしてもたった1問です。
得点できても1点。得点できなくても1点。
その1点が合否を分けることになるのでは?
と思う人もいるかもしれません。結果的にはそうなることもあるでしょう。
しかし,ほかの問題を見直してみると,もうちょっとしっかり覚えておけばよかった,あるいは思い違いをしたと思う問題があったはずです。
これは他の科目でも同じことが言えます。
例えば,都道府県及び市町村は福祉事務所を設置しなければならない
といった問題です。
今見るとこれを正解だとは思わないでしょう。町村は任意設置だからです。しかし国試会場ではこんなものでさえ引っ掛けられてしまうのです。
こういったものに引っ掛けられることなく,正解にたどり着くことが合格のためには極めて大切なことです。
難解なピアソンを覚え切ることやどんなものが出題されるか分からない白書に目を通すことではありません。
国試合格に必要なのは・・・
「良く読めば解ける問題」をいかに国試会場で正解することができるか
です。今の勉強はそのためにしているのです。
それでは今日の問題です。
第23回・問題81 質問に対する回答の分布の代表値に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 人々の年収額の分布では,平均値(算術平均)より高い人と平均値(算術平均)より低い人の数は等しくなる。
2 名義尺度変数では,中央値を求めることができないが,最頻値は求めることができる。
3 観測値の個数が偶数の場合には,中央値は存在しない。
4 一つの分布において,平均値(算術平均),中央値,最頻値はそれぞれ一つに定まる。
5 平均値(算術平均)は,はずれ値の影響を受けやすいので,中央値より常に大きくなる。
代表値と呼ばれるものの中には,算術平均(いわゆる平均値),中央値,最頻値があります。
前回書いたように,いわゆる平均値を算出することは多いですが,それが集団の正しい姿を現わしているかは分かりません。
そのためA大学とB大学の国試平均は同じだったにも関わらず,合格率がまったく違うということが起きます。
それでは解説です。
1 人々の年収額の分布では,平均値(算術平均)より高い人と平均値(算術平均)より低い人の数は等しくなる。
これは間違いです。
平均値は,いわゆる外れ値と呼ばれる極端に大きい数値や小さい数値があると,大きい方や小さい方にずれます。
高い方と小さい方の数が同数になるのは中央値です。
<算術平均が集団の性質を正しく表すことに限界がある例>
A大学とB大学の中央値を調べてみると,A大学はこの時の合格基準点だった90点が中央値,B大学の中央値は,70点。
そのために平均点が同じであっても,A大学の合格率は50%,B大学の合格率は10%と大きな差がついてしまったのです。
平均値は,外れ値の影響を受けやすいものです。
外れ値の影響を受けにくいのが,中央値です。
2 名義尺度変数では,中央値を求めることができないが,最頻値は求めることができる。
これが正解です。
名義尺度は「1.はい」「2.いいえ」と区別するための尺度です。
最頻値は最も多く現われるもので,「1.はい」50人,「2.いいえ」25人だとしたら,「はい」が最頻値です。
最頻値は,名義尺度,順序尺度。間隔尺度,比例尺度すべてで算出することができます。
3 観測値の個数が偶数の場合には,中央値は存在しない。
これは間違いです。
中央値は,すべてのデータを小さい方から並べて真ん中にあたる数値です。偶数の場合は中央にあたる数値の平均をとります。
中央にあたる数値が50と51だとしたら,中央値は50.5ということになります。
4 一つの分布において,平均値(算術平均),中央値,最頻値はそれぞれ一つに定まる。
これも間違いです。
算術平均,中央値,最頻値が同じ数値になることは稀です。
それぞれは違った算出方法を行うからです。たまたま同じになることはあっても,それはめったに起きることではありません。
5 平均値(算術平均)は,はずれ値の影響を受けやすいので,中央値より常に大きくなる。
これも間違いです。
算術平均は,いわゆる外れ値の影響を受けるのは正しいです。
しかし,外れ値によって,大きい方にも小さい方にもずれます。
<今日の一言>
ピアソンの積率相関係数は難しくても,尺度水準や代表値は正しく理解すればそれほど難しくないです。
「社会調査の基礎」は多くの人が苦手とする科目ですが,攻略ポイントはちゃんとあります。
こういったものをしっかり押さえていくことこそが合格をつかむことになります。
統計の知識がないといけないと思ってしまうからです。
しかし出題されてもたったの1問です。
ピアソンの積率相関係数などと聞くととてもいやになってしまうと思います。
相関とは,2つ以上のものに関連があることです。
クロス集計は,定性的データをまとめたもので,相関を調べるためには,カイ2乗検定などを行います。
定量的データの相関を調べるための方法の一つがピアソンの積率相関係数です。
しかし旧カリ時代も含めて出題されたのは,第8回,第19回,第22回,第28回のたった4回だけです。
時間をかけるのはもったいないです。
ほかの分析方法も覚えられなかったら捨てましょう。ほかの部分で十分得点を稼ぐことができます。出題されたとしてもたった1問です。
得点できても1点。得点できなくても1点。
その1点が合否を分けることになるのでは?
と思う人もいるかもしれません。結果的にはそうなることもあるでしょう。
しかし,ほかの問題を見直してみると,もうちょっとしっかり覚えておけばよかった,あるいは思い違いをしたと思う問題があったはずです。
これは他の科目でも同じことが言えます。
例えば,都道府県及び市町村は福祉事務所を設置しなければならない
といった問題です。
今見るとこれを正解だとは思わないでしょう。町村は任意設置だからです。しかし国試会場ではこんなものでさえ引っ掛けられてしまうのです。
こういったものに引っ掛けられることなく,正解にたどり着くことが合格のためには極めて大切なことです。
難解なピアソンを覚え切ることやどんなものが出題されるか分からない白書に目を通すことではありません。
国試合格に必要なのは・・・
「良く読めば解ける問題」をいかに国試会場で正解することができるか
です。今の勉強はそのためにしているのです。
それでは今日の問題です。
第23回・問題81 質問に対する回答の分布の代表値に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 人々の年収額の分布では,平均値(算術平均)より高い人と平均値(算術平均)より低い人の数は等しくなる。
2 名義尺度変数では,中央値を求めることができないが,最頻値は求めることができる。
3 観測値の個数が偶数の場合には,中央値は存在しない。
4 一つの分布において,平均値(算術平均),中央値,最頻値はそれぞれ一つに定まる。
5 平均値(算術平均)は,はずれ値の影響を受けやすいので,中央値より常に大きくなる。
代表値と呼ばれるものの中には,算術平均(いわゆる平均値),中央値,最頻値があります。
前回書いたように,いわゆる平均値を算出することは多いですが,それが集団の正しい姿を現わしているかは分かりません。
そのためA大学とB大学の国試平均は同じだったにも関わらず,合格率がまったく違うということが起きます。
それでは解説です。
1 人々の年収額の分布では,平均値(算術平均)より高い人と平均値(算術平均)より低い人の数は等しくなる。
これは間違いです。
平均値は,いわゆる外れ値と呼ばれる極端に大きい数値や小さい数値があると,大きい方や小さい方にずれます。
高い方と小さい方の数が同数になるのは中央値です。
<算術平均が集団の性質を正しく表すことに限界がある例>
A大学とB大学の中央値を調べてみると,A大学はこの時の合格基準点だった90点が中央値,B大学の中央値は,70点。
そのために平均点が同じであっても,A大学の合格率は50%,B大学の合格率は10%と大きな差がついてしまったのです。
平均値は,外れ値の影響を受けやすいものです。
外れ値の影響を受けにくいのが,中央値です。
2 名義尺度変数では,中央値を求めることができないが,最頻値は求めることができる。
これが正解です。
名義尺度は「1.はい」「2.いいえ」と区別するための尺度です。
最頻値は最も多く現われるもので,「1.はい」50人,「2.いいえ」25人だとしたら,「はい」が最頻値です。
最頻値は,名義尺度,順序尺度。間隔尺度,比例尺度すべてで算出することができます。
3 観測値の個数が偶数の場合には,中央値は存在しない。
これは間違いです。
中央値は,すべてのデータを小さい方から並べて真ん中にあたる数値です。偶数の場合は中央にあたる数値の平均をとります。
中央にあたる数値が50と51だとしたら,中央値は50.5ということになります。
4 一つの分布において,平均値(算術平均),中央値,最頻値はそれぞれ一つに定まる。
これも間違いです。
算術平均,中央値,最頻値が同じ数値になることは稀です。
それぞれは違った算出方法を行うからです。たまたま同じになることはあっても,それはめったに起きることではありません。
5 平均値(算術平均)は,はずれ値の影響を受けやすいので,中央値より常に大きくなる。
これも間違いです。
算術平均は,いわゆる外れ値の影響を受けるのは正しいです。
しかし,外れ値によって,大きい方にも小さい方にもずれます。
<今日の一言>
ピアソンの積率相関係数は難しくても,尺度水準や代表値は正しく理解すればそれほど難しくないです。
「社会調査の基礎」は多くの人が苦手とする科目ですが,攻略ポイントはちゃんとあります。
こういったものをしっかり押さえていくことこそが合格をつかむことになります。
2019年1月20日日曜日
尺度水準って何?~知識の整理
社会福祉士の国試の特徴は,出題範囲が広いことです。
19科目もあります。
模擬試験を受けて国試に備えてきた方も多いことでしょう。
出題範囲は広いので,
たまたま知っているところが出題された
たまたま適当につけたものが正解した
といった理由では,良い成績は取れません。
その中で,良い成績を取れた方は,自信を持って良いと思います。
決して「運が良かった」とは思わないようにしましょう。
そう思うと達成動機が低い人になってしまいます。
模試で90点を取れなくて,落ち込んだという方もいらっしゃるでしょう。
受験者の得点分布を発表している模擬試験の結果を見てみればわかりますが,90点以上得点できている人は,上位のほんの数パーセントです。
国試もそうですが,模擬試験も問題の難易度によって受験者の点数は大きく変化します。
模擬試験は,国試よりも難易度が高いものが多いので,国試よりも点数は取れません。
また,国試よりも早い時期に実施されるので,まだ仕上がっていない時点で受験します。
大切なことは,出題基準で示された範囲の内容をどれだけしっかり勉強してきたのか,です。
これを心がけてきた人は,必ず模試の点数よりも高い点数が取れます。
国試の出題範囲は広いですが,出題基準を超えた出題はほとんどありません。
焦りは高まってきますが,落ち着いて勉強していけば,今からでもまだまだ実力は伸ばせます。
さて,今回は,尺度水準を取り上げます。
尺度水準とは,測定したデータを数値化するものです。
尺度水準が現行カリキュラムで一問丸ごと出題されたのは,第25回と第28回の2回しかありません。
理解するのが面倒なら捨てても良いと思います。しかししっかり理解すれば点数は取れると思いますので,完全に捨ててしまうのはちょっともったいないです。
尺度水準は,名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の4種類しかないからです。
第25回の国試問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/10/blog-post_11.html
尺度水準の詳しい説明はこの中でしているので,まず確認してください。
それでは今日の問題です。
第28回・問題85 4種類の尺度水準,すなわち名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。
2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。
3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。
4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
この国試問題は,第28回のものです。
余計な言い回しはそぎ落とされて,しかも表現がそろえられています。
受験者にとっては,難関となる問題スタイルです。
しかも尺度水準の理解がなければまったく理解不能の問題だと思います。
初めて出題したものは一切ないのに,簡単には解くことができないこの問題は,国家試験としての完成度は極めて高いものと言えるでしょう。
この問題では,尺度水準の知識がしっかりあることに踏まえて,それらの特質を理解していることが必要です。
思考をしっかり動かして,答えを考える柔軟性が求められます。
正解を見つけ出すコツは,具体的な例を頭に思い浮かべることです。
柔軟な思考と想像力が求められる問題への対応は,ほとんどがこの方法でクリアできるでしょう。
それでは解説です。
1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。
これは間違いです。
名義尺度の例は,「1.はい」「2.いいえ」などで,単にデータを区別するだけのものです。
「1.いいえ」「2.はい」でも良いのです。
その時点でこの選択肢は間違いだと分かりますので,ほかの尺度水準のことを考える必要はありません。
しかし一応説明すると
順序尺度の例は,利用者満足度調査です。
「1.大いに満足」「2.やや満足」「3.ふつう」「4.やや不満」「5.大いに不満」といったように,強弱に意味があります。つまり大小に意味があります。
間隔尺度の例は,気温です。
0℃よりも20℃の方が気温が高いと表現されます。つまり大小に意味があります。
比例尺度の例は,身長や体重です。
身長150cmよりも身長180cmの方が身長が高いと表現されます。つまり大小に意味があります。
2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。
これが正解です。
算術平均とはいわゆる平均値のことです。最頻値,中央値とともに代表値と呼ばれます。
名義尺度の例では,「1.はい」「2.いいえ」の算術平均で1.5という数値を算出できますが,意味をもたないものです。
順序尺度の例は,利用者満足度調査です。これも算術平均を算出できますが,意味を持ちません。
なぜなら,Aさんにとっての「1.大いに満足」と,Bさんにとっての「2.満足」は同じレベルかもしれないからです。順序尺度の特徴は,数値の大小には尺度の間隔は意味をもたないということです。
もっとわかりやすい順序尺度の例を挙げると「以下のくだものの中から好きな順番に3つ挙げてください」といったものがあります。
最も好きなくだものは,ミカンだとしても,2番目に好きなくだものは思い浮かばず,ぶどうとりんごかな,まあ2番目に好きなものをぶどうにして,3番目に好きなものをりんごにしておこう,と思った場合は,1番目と2番目には大きな差がありますが,2番目と3番目の間の差がほとんどありません。
こういったものは,足したり引いたり,かけたり割ったりする計算はしても意味がないのです。
間隔尺度の例は,気温です。今月の平均気温は10℃といったように算出できます。
間隔尺度は尺度の間隔が等しいので,足したり引いたりすることができます。今日は昨日よりも5℃高いと表現できます。
しかし,かけたり割ったりすることは意味がありません。今日は昨日よりも気温は3倍になったという表現はできますが,意味がある数値ではありません。
比例尺度はの例は身長や体重などです。
Aクラスの平均身長,平均体重,Bクラスの平均身長,平均体重,といったように算出できます。
3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。
これも間違いです。
中央値は,算術平均,最頻値とともに代表値の一つです。
中央値は,小さい値から順番に並べて,そのちょうど真ん中にあたる数値です。
そのため中央値よりも小さい値,大きい値の数は必ず等しくなります。
算術平均だと,いわゆる「外れ値」と呼ばれる極端に大きな数値や小さな数値が混じっていると中央値よりも大きな方や小さな方にずれてしまいます。
算術平均は,よく使われますが,必ずしもその集団の様子を正しく見ることができないので要注意です。
国家試験の平均点がA大学,B大学ともに70点だったとします。
どちらも受験者は10名だった場合,総得点は700点です。
しかし合格率は
A大学50%
B大学10%
といったように大きな差が生まれることがあります。これは得点にばらつきがあるためです。ばらつきは,分散や標準偏差でみることになります。
そこまでやらなくても,算術平均だけではなく,中央値や最頻値をみるだけでもその集団の様子をうかがうことができます。
この科目では,代表値の知識を問われることが多いのですが,それは・・・
算術平均を算出することは多いけれど,それは正しい姿を必ずしも示しているわけではない
ということを示したいのではないかと考えています。
4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
これも間違いです。
最頻値は,最も多く表れる数値をいいます。
名義尺度でも最頻値は算出できます。
「1.はい」 50人
「2.いいえ」 20人
「3.どちらでもない」 30人
といったものなら 「1.はい」が最頻値となります。
そのほかの3つもすべて最頻値は算出できます。
5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
これも間違いです。
すべての尺度はカテゴリーごとに分類できます。
カテゴリーごとの分類とは意味がわかりにくいでしょう。
名義尺度と順序尺度は定性的データ
間隔尺度と比例尺度は定量的データ
です。
カテゴリーごとの分類とはいくつかあるものをまとめて分類することをいいます。
定性的データはもともとカテゴリーごとに分類されています。
名義尺度の例:「1.男」「2.女」
「1.男」であっても,その中には,野性的な男,優しい男,優柔不断な男,オタクっぽい男,スポーツマンの男,小太りな男,イケメンの男,日本人の男,中国人の男,大学生の男,おしゃべりな男……
など男にも様々なタイプがあります。
それを「1.男」として測定しています。「2.女」も同様です。
順序尺度も同じです。
利用者満足度調査は主観であり,本来数値化できるものではありません。
「1.とても満足」であっても,とてもとても満足,とてもとてもとても満足,今まで利用してきたものと比べてとても満足……
など,とても満足の中でも様々あります。それを「1.とても満足」として測定しています。
間隔尺度と比例尺度は,定量的データといいます。定量的テータは,数値が連続しています。
間隔尺度のカテゴリー化とは,例えば気温では
「-10~-1℃」「0~10℃「11~20℃」「21~30度」
といったように連続した数値を区切ることでカテゴリー化できます。
比例尺度のカテゴリー化とは,例えば国試の点数
「0~10点」「11~20点」「21~30点」「31~40点」「41~50点」「51~60点」「61~70点」「71~80点」「81~90点」「91~100点」「101~110点」「111~120点」「121~130点」「131~140点」「141~150点」
といったようにカテゴリー化します。
クロス集計表をつくるとき,カテゴリー化する必要があります。
クロス集計表はとても重要なので,この機会にしっかり覚えておきましょう。
<今日の一言>
尺度水準と聞くととても難しく感じるかもしれません。
しかし,それらの例を頭に入れておけば,どんな問題でも対応できます。
決して怖がることはありません。
名義尺度の例:性別
順序尺度の例:利用者満足度調査
間隔尺度の例:気温
比例尺度の例:体重,身長
間隔尺度と比例尺度は似ています。違いは比例尺度には絶対的なゼロがあることです。
比例尺度の身長や体重は,0未満はありません。0が出発点です。これが絶対的なゼロがあるという意味です。
それに対して
間隔尺度は,絶対的なゼロが存在しません。
間隔尺度の例は,気温ですが,たまたま氷結温度を摂氏0度に設定しているだけで,0℃よりも下のマイナスが存在します。
間隔尺度では0は,何もない絶対的なゼロではなく,たまたま誰ががそこをマイナスにしているだけのことです。
つまり間隔尺度のゼロは,自由に決めることができるということです。
19科目もあります。
模擬試験を受けて国試に備えてきた方も多いことでしょう。
出題範囲は広いので,
たまたま知っているところが出題された
たまたま適当につけたものが正解した
といった理由では,良い成績は取れません。
その中で,良い成績を取れた方は,自信を持って良いと思います。
決して「運が良かった」とは思わないようにしましょう。
そう思うと達成動機が低い人になってしまいます。
模試で90点を取れなくて,落ち込んだという方もいらっしゃるでしょう。
受験者の得点分布を発表している模擬試験の結果を見てみればわかりますが,90点以上得点できている人は,上位のほんの数パーセントです。
国試もそうですが,模擬試験も問題の難易度によって受験者の点数は大きく変化します。
模擬試験は,国試よりも難易度が高いものが多いので,国試よりも点数は取れません。
また,国試よりも早い時期に実施されるので,まだ仕上がっていない時点で受験します。
大切なことは,出題基準で示された範囲の内容をどれだけしっかり勉強してきたのか,です。
これを心がけてきた人は,必ず模試の点数よりも高い点数が取れます。
国試の出題範囲は広いですが,出題基準を超えた出題はほとんどありません。
焦りは高まってきますが,落ち着いて勉強していけば,今からでもまだまだ実力は伸ばせます。
さて,今回は,尺度水準を取り上げます。
尺度水準とは,測定したデータを数値化するものです。
尺度水準が現行カリキュラムで一問丸ごと出題されたのは,第25回と第28回の2回しかありません。
理解するのが面倒なら捨てても良いと思います。しかししっかり理解すれば点数は取れると思いますので,完全に捨ててしまうのはちょっともったいないです。
尺度水準は,名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の4種類しかないからです。
第25回の国試問題
https://fukufuku21.blogspot.com/2017/10/blog-post_11.html
尺度水準の詳しい説明はこの中でしているので,まず確認してください。
それでは今日の問題です。
第28回・問題85 4種類の尺度水準,すなわち名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。
2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。
3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。
4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
この国試問題は,第28回のものです。
余計な言い回しはそぎ落とされて,しかも表現がそろえられています。
受験者にとっては,難関となる問題スタイルです。
しかも尺度水準の理解がなければまったく理解不能の問題だと思います。
初めて出題したものは一切ないのに,簡単には解くことができないこの問題は,国家試験としての完成度は極めて高いものと言えるでしょう。
この問題では,尺度水準の知識がしっかりあることに踏まえて,それらの特質を理解していることが必要です。
思考をしっかり動かして,答えを考える柔軟性が求められます。
正解を見つけ出すコツは,具体的な例を頭に思い浮かべることです。
柔軟な思考と想像力が求められる問題への対応は,ほとんどがこの方法でクリアできるでしょう。
それでは解説です。
1 大小関係を示すことができるのは,名義尺度と比例尺度の2つだけである。
これは間違いです。
名義尺度の例は,「1.はい」「2.いいえ」などで,単にデータを区別するだけのものです。
「1.いいえ」「2.はい」でも良いのです。
その時点でこの選択肢は間違いだと分かりますので,ほかの尺度水準のことを考える必要はありません。
しかし一応説明すると
順序尺度の例は,利用者満足度調査です。
「1.大いに満足」「2.やや満足」「3.ふつう」「4.やや不満」「5.大いに不満」といったように,強弱に意味があります。つまり大小に意味があります。
間隔尺度の例は,気温です。
0℃よりも20℃の方が気温が高いと表現されます。つまり大小に意味があります。
比例尺度の例は,身長や体重です。
身長150cmよりも身長180cmの方が身長が高いと表現されます。つまり大小に意味があります。
2 意味のある算術平均を算出できるのは,間隔尺度と比例尺度の2つだけである。
これが正解です。
算術平均とはいわゆる平均値のことです。最頻値,中央値とともに代表値と呼ばれます。
名義尺度の例では,「1.はい」「2.いいえ」の算術平均で1.5という数値を算出できますが,意味をもたないものです。
順序尺度の例は,利用者満足度調査です。これも算術平均を算出できますが,意味を持ちません。
なぜなら,Aさんにとっての「1.大いに満足」と,Bさんにとっての「2.満足」は同じレベルかもしれないからです。順序尺度の特徴は,数値の大小には尺度の間隔は意味をもたないということです。
もっとわかりやすい順序尺度の例を挙げると「以下のくだものの中から好きな順番に3つ挙げてください」といったものがあります。
最も好きなくだものは,ミカンだとしても,2番目に好きなくだものは思い浮かばず,ぶどうとりんごかな,まあ2番目に好きなものをぶどうにして,3番目に好きなものをりんごにしておこう,と思った場合は,1番目と2番目には大きな差がありますが,2番目と3番目の間の差がほとんどありません。
こういったものは,足したり引いたり,かけたり割ったりする計算はしても意味がないのです。
間隔尺度の例は,気温です。今月の平均気温は10℃といったように算出できます。
間隔尺度は尺度の間隔が等しいので,足したり引いたりすることができます。今日は昨日よりも5℃高いと表現できます。
しかし,かけたり割ったりすることは意味がありません。今日は昨日よりも気温は3倍になったという表現はできますが,意味がある数値ではありません。
比例尺度はの例は身長や体重などです。
Aクラスの平均身長,平均体重,Bクラスの平均身長,平均体重,といったように算出できます。
3 中央値を算出できるのは,順序尺度と間隔尺度の2つだけである。
これも間違いです。
中央値は,算術平均,最頻値とともに代表値の一つです。
中央値は,小さい値から順番に並べて,そのちょうど真ん中にあたる数値です。
そのため中央値よりも小さい値,大きい値の数は必ず等しくなります。
算術平均だと,いわゆる「外れ値」と呼ばれる極端に大きな数値や小さな数値が混じっていると中央値よりも大きな方や小さな方にずれてしまいます。
算術平均は,よく使われますが,必ずしもその集団の様子を正しく見ることができないので要注意です。
国家試験の平均点がA大学,B大学ともに70点だったとします。
どちらも受験者は10名だった場合,総得点は700点です。
しかし合格率は
A大学50%
B大学10%
といったように大きな差が生まれることがあります。これは得点にばらつきがあるためです。ばらつきは,分散や標準偏差でみることになります。
そこまでやらなくても,算術平均だけではなく,中央値や最頻値をみるだけでもその集団の様子をうかがうことができます。
この科目では,代表値の知識を問われることが多いのですが,それは・・・
算術平均を算出することは多いけれど,それは正しい姿を必ずしも示しているわけではない
ということを示したいのではないかと考えています。
4 最頻値を算出できるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
これも間違いです。
最頻値は,最も多く表れる数値をいいます。
名義尺度でも最頻値は算出できます。
「1.はい」 50人
「2.いいえ」 20人
「3.どちらでもない」 30人
といったものなら 「1.はい」が最頻値となります。
そのほかの3つもすべて最頻値は算出できます。
5 カテゴリーごとの分類ができるのは,順序尺度,間隔尺度,比例尺度の3つだけである。
これも間違いです。
すべての尺度はカテゴリーごとに分類できます。
カテゴリーごとの分類とは意味がわかりにくいでしょう。
名義尺度と順序尺度は定性的データ
間隔尺度と比例尺度は定量的データ
です。
カテゴリーごとの分類とはいくつかあるものをまとめて分類することをいいます。
定性的データはもともとカテゴリーごとに分類されています。
名義尺度の例:「1.男」「2.女」
「1.男」であっても,その中には,野性的な男,優しい男,優柔不断な男,オタクっぽい男,スポーツマンの男,小太りな男,イケメンの男,日本人の男,中国人の男,大学生の男,おしゃべりな男……
など男にも様々なタイプがあります。
それを「1.男」として測定しています。「2.女」も同様です。
順序尺度も同じです。
利用者満足度調査は主観であり,本来数値化できるものではありません。
「1.とても満足」であっても,とてもとても満足,とてもとてもとても満足,今まで利用してきたものと比べてとても満足……
など,とても満足の中でも様々あります。それを「1.とても満足」として測定しています。
間隔尺度と比例尺度は,定量的データといいます。定量的テータは,数値が連続しています。
間隔尺度のカテゴリー化とは,例えば気温では
「-10~-1℃」「0~10℃「11~20℃」「21~30度」
といったように連続した数値を区切ることでカテゴリー化できます。
比例尺度のカテゴリー化とは,例えば国試の点数
「0~10点」「11~20点」「21~30点」「31~40点」「41~50点」「51~60点」「61~70点」「71~80点」「81~90点」「91~100点」「101~110点」「111~120点」「121~130点」「131~140点」「141~150点」
といったようにカテゴリー化します。
クロス集計表をつくるとき,カテゴリー化する必要があります。
クロス集計表はとても重要なので,この機会にしっかり覚えておきましょう。
<今日の一言>
尺度水準と聞くととても難しく感じるかもしれません。
しかし,それらの例を頭に入れておけば,どんな問題でも対応できます。
決して怖がることはありません。
名義尺度の例:性別
順序尺度の例:利用者満足度調査
間隔尺度の例:気温
比例尺度の例:体重,身長
間隔尺度と比例尺度は似ています。違いは比例尺度には絶対的なゼロがあることです。
比例尺度の身長や体重は,0未満はありません。0が出発点です。これが絶対的なゼロがあるという意味です。
それに対して
間隔尺度は,絶対的なゼロが存在しません。
間隔尺度の例は,気温ですが,たまたま氷結温度を摂氏0度に設定しているだけで,0℃よりも下のマイナスが存在します。
間隔尺度では0は,何もない絶対的なゼロではなく,たまたま誰ががそこをマイナスにしているだけのことです。
つまり間隔尺度のゼロは,自由に決めることができるということです。
2019年1月19日土曜日
質問紙の作成方法と留意点(5/5)~ダブルバーレル質問・キャリーオーバー効果などの理解
社会福祉士の試験に合格することはもちろん重要ですが,その過程で得られた知識・経験はそれ以上に重要だと思います。
社会福祉の現場にいる人が,仕事をしながら,そして家庭をもち,その上でさらに勉強するというのは,とても厳しい道であることは間違いありません。
そこに果敢にチャレンジしていることは,それだけですごいことだと思います。
人によっては「社会福祉士を取ったからといって何が変わるの?」という人がいます。
確実に変わります。
社会福祉士には,社会福祉士としての共通基盤があります。
目に見えることでは,質問紙の作成方法もその一つでしょう。
今まで行ってきたアンケートなども適切ではなかったものがあることに気がつく人もいるでしょう。
学校や職場で行うアンケートも変化していくでしょう。
ほかの人が作ったものでも
「ここはダブルバーレルになっているよ」というだけで,社会福祉士ならすぐ理解して修正することができるでしょう。
というかダブルバーレル質問自体を作らないと思います。
社会福祉士は,始まりの第一歩。
夢の実現に向けて,頑張りましょう。
それでは今日の問題です。
第30回・問題89 質問紙の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。
2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。
3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。
5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。
前回の問題と違い,今回の問題は,表現がそろっていません。選択肢それぞれの文字数と表現をそろえることが作問技術としてはかなり高いものであることがうかがえるようです。
今回の問題も柔軟な思考と想像力が求められる問題です。
それでは早速解説です。
1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。
これは間違いです。
またまたダブルバーレル質問です。
食事に気を付けているけれど,運動には気を付けていない
あるいは
食事には気を付けていないけれど,運動には気を付けている
といった人は答えられなくなってしまいます。
そのため,ダブルバーレル質問は不適切な質問なのです。
2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。
これは間違いです。
前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることは「キャリーオーバー効果」といいます。
キャリーオーバー効果を悪用すれば,調査結果は,まったく別なものにすることができます。自分に有利な結果を得ることができるのです。
そんな調査はあってはなりません。そのためキャリーオーバー効果の影響がないように質問の順番は十二分に気を付けなければならないのです。
3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
これが正解です。
「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問は,一般的な内容を尋ねる「インパーソナル質問」です。
第23回に出題された「あなたは,宗教は大切だと思いますか」と同じタイプの質問です。
個人的な内容を尋ねるなら
「あなたは夫婦で平等に家事を行いたいと思いますか」といった質問が必要です。
4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。
これも間違いです。
「どちらともいえない」という選択肢がないと,結果はとんでもないことになりま
また,世論調査で「あなたは●●党を支持しますか」という質問をする場合,「どちらでもない」という答えも明確な回答になります。
5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。
これも間違いです。
調査票は,調査対象者が見やすいように答えやすいように配慮することが必要です。
<今日の一言>
この問題自体の難易度は低いものです。
だからといって,確実に正解できるかは別の話です。
要注意なのは,この場合選択肢5です。
レイアウトの工夫は必要なのはわかりやすいですが,色は関係あるのだろうか,と思う人もいたはずです。
法制度など明確に線引きができるものは,「レイアウトや色」のように2つの要素があった場合は,もしかすると片方は含まれないものを出題している可能性があります
例えば,都道府県と市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。
といったものがあります。
今まで何度も出題されてきたように,設置義務があるのは,都道府県と市です。町村は任意設置です。
法制度の問題ではない場合,そんな細かいところに引っ掛けポイントを作ることはほとんど不可能です。下手すると不適切問題になってしまうからです。
この問題で選択肢5を選んでしまった人は,もっと気を楽にして考えましょう。
因みに色の工夫は,紙の色が濃すぎると文字が見にくい,紙と文字を同系色にすると見にくいなど,配慮すべきポイントはたくさんあります。
社会福祉の現場にいる人が,仕事をしながら,そして家庭をもち,その上でさらに勉強するというのは,とても厳しい道であることは間違いありません。
そこに果敢にチャレンジしていることは,それだけですごいことだと思います。
人によっては「社会福祉士を取ったからといって何が変わるの?」という人がいます。
確実に変わります。
社会福祉士には,社会福祉士としての共通基盤があります。
目に見えることでは,質問紙の作成方法もその一つでしょう。
今まで行ってきたアンケートなども適切ではなかったものがあることに気がつく人もいるでしょう。
学校や職場で行うアンケートも変化していくでしょう。
ほかの人が作ったものでも
「ここはダブルバーレルになっているよ」というだけで,社会福祉士ならすぐ理解して修正することができるでしょう。
というかダブルバーレル質問自体を作らないと思います。
社会福祉士は,始まりの第一歩。
夢の実現に向けて,頑張りましょう。
それでは今日の問題です。
第30回・問題89 質問紙の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。
2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。
3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。
5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。
前回の問題と違い,今回の問題は,表現がそろっていません。選択肢それぞれの文字数と表現をそろえることが作問技術としてはかなり高いものであることがうかがえるようです。
今回の問題も柔軟な思考と想像力が求められる問題です。
それでは早速解説です。
1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。
これは間違いです。
またまたダブルバーレル質問です。
食事に気を付けているけれど,運動には気を付けていない
あるいは
食事には気を付けていないけれど,運動には気を付けている
といった人は答えられなくなってしまいます。
そのため,ダブルバーレル質問は不適切な質問なのです。
2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。
これは間違いです。
前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることは「キャリーオーバー効果」といいます。
キャリーオーバー効果を悪用すれば,調査結果は,まったく別なものにすることができます。自分に有利な結果を得ることができるのです。
そんな調査はあってはなりません。そのためキャリーオーバー効果の影響がないように質問の順番は十二分に気を付けなければならないのです。
3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
これが正解です。
「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問は,一般的な内容を尋ねる「インパーソナル質問」です。
第23回に出題された「あなたは,宗教は大切だと思いますか」と同じタイプの質問です。
個人的な内容を尋ねるなら
「あなたは夫婦で平等に家事を行いたいと思いますか」といった質問が必要です。
4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。
これも間違いです。
「どちらともいえない」という選択肢がないと,結果はとんでもないことになりま
また,世論調査で「あなたは●●党を支持しますか」という質問をする場合,「どちらでもない」という答えも明確な回答になります。
5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。
これも間違いです。
調査票は,調査対象者が見やすいように答えやすいように配慮することが必要です。
<今日の一言>
この問題自体の難易度は低いものです。
だからといって,確実に正解できるかは別の話です。
要注意なのは,この場合選択肢5です。
レイアウトの工夫は必要なのはわかりやすいですが,色は関係あるのだろうか,と思う人もいたはずです。
法制度など明確に線引きができるものは,「レイアウトや色」のように2つの要素があった場合は,もしかすると片方は含まれないものを出題している可能性があります
例えば,都道府県と市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。
といったものがあります。
今まで何度も出題されてきたように,設置義務があるのは,都道府県と市です。町村は任意設置です。
法制度の問題ではない場合,そんな細かいところに引っ掛けポイントを作ることはほとんど不可能です。下手すると不適切問題になってしまうからです。
この問題で選択肢5を選んでしまった人は,もっと気を楽にして考えましょう。
因みに色の工夫は,紙の色が濃すぎると文字が見にくい,紙と文字を同系色にすると見にくいなど,配慮すべきポイントはたくさんあります。
2019年1月18日金曜日
質問紙の作成と留意点(4/5)~表現をそろえた問題対策
近年の社会福祉士の国試問題の特徴は・・・
①問題の文字数が短くなっていること
②できるだけ表現をそろえて出題するようになってきていること
どちらも勉強不足の受験生には不利な条件です。日本語的な言い回しで判断することができないからです。
勉強不足で国試に臨む人にとっては,極めて不利な状況にありますが,逆に勉強を地道に続けてきた人にとっては,そのままの力を発揮できる試験になってきています。
社会福祉振興・試験センターでは,受験生の得点分布は発表していませんが,第25回国試以前よりも確実に得点分布に開きが出てきていることは間違いありません。
つまり得点できる人は,合格基準点を大きく上回り,得点できない人は,合格基準点を大きく下回ります。
今回取り上げる問題は,第28回の国試問題です。
久々に不適切問題があった年で,合格基準点は88点となりました。正しいもの(適切なものを選ぶ)問題は,過去最高の20問でした。この次の回から数は減り,12問,11問と推移しています。
第28回は現在国試問題のスタイルに限りなく近づいてきています。
それでは早速今日の問題です。
第28回・問題86 質問紙の作成方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。
2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。
3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。
5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。
いよいよすべての選択肢の表現をそろえて出題してきました。
「望ましい」が出題されたら,多くの場合には正解にならない傾向がありますが,すべての選択肢の表現をそろえられたら,排除しにくくなります。
しかも,出題は同じテーマであっても,出題の切り口は違います。
丸暗記で勉強するタイプの人は,対応は困難かもしれません。
しかし,柔軟な思考で想像してみると,確実に正解にたどり着きます。
こういったスキルが必要な問題はこれからどんどん増加していくことでしょう。社会福祉士に求められるスキルだからです。
それでは解説です。
1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。
これは正解です。
濾過質問はここで初めて出題されたものです。
しかし,第24回・第79問で出題されたリッカート方式やSD法と違って,日本語なのでどんなものかは推測できるはずです。
リッカート法&SD法が出題されたもの
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/25_16.html
「濾過質問は勉強していなかった。困った」と思うと試験委員の思うつぼです。
国試で十分に実力を発揮できない人は,こういったものを見た時,動揺してしまう傾向があるようです。
勉強段階で,わからないことがあれば,推測することなく,すぐ調べるような勉強法を続けてきた人は要注意です。国試会場ではわからないことがあっても調べることができないので,ペースが崩されてしまうのです。
第32回国家試験以降を受験される方はその点を頭に入れておいてください。
ペースを乱されないための特効薬は,こういったときは,焦らず▲をつけて次の選択肢を読むことです。
先述の第24回の問題と今の国試が大きく違うのは,知らないものを出題しても,ほかの選択肢を消去することで,その選択肢が残るというスタイルをとっていることです。そのために,頭をクリアにして動じない姿勢が何よりも大切なのです。そうすれば多くの場合,正解にたどりつくのが今の国試問題です。
話を戻します。
濾過質問とは,最初に何かの質問をして,次にそれに合致した人だけに答えてもらう,といった質問です。液体が濾過されるように,一定の条件をすり抜けた人だけが次の質問に進むもので,濾過質問といいます。
濾過質問の例
Q1 あなたは●●という言葉を聞いたことがありますか?
Q2 Q1で「はい」と答えた方だけにお聞きします。その意味を正しく理解していますか?
といった質問です。
Q1で「いいえ」と答えたのに,Q2に答えてしまう人もいるでしょう。
こういったエラーを「測定誤差」といいます。測定誤差は,全数調査でも標本調査でも生じます。
2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。
これは間違いです。
質問の内容は,最初は答えやすいものを先に配置します。
もし,この調査が郵送調査なら,最初に複雑な質問が配置されると回収率は下がってしまいます。
3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。
これも間違いです。
もし,自分が調査対象者だったとしたら,自由記述(自由回答法)の質問ばかりだったとして,回答するのが面倒だと思うはずです。
選択肢法の例
Q あなたはこの場所にどのように来ましたか?
1.電車 2.バス 3.自転車 4.徒歩 5.自家用車 6その他[ ]
自由回答法の例
Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか?
自由回答法の例も選択肢法の例のようにすれば,答えやすくなります。
Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか?
1.キャリアアップのため 2.就職に必要だから 3.勉強が好きだから 4.職場の命令 5.その他[ ]
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。
これも間違いです。
選択肢の数が多くなると,どちらに分類されるかに迷います。
先の例では
Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか?
1.キャリアアップのため 2.就職に必要だから 3.勉強が好きだから 4.職場の命令 5.よりよい仕事をするため 6.その他[ ]
とすると,
1.キャリアアップのため
2.よりよい仕事をするため
は内容が似ているので,どちらにすればよいのか迷うことでしょう。
だからといって,こういった質問で「複数回答可」にすると,回答結果が明確ではなくなってしまうので注意が必要です。
5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。
これも間違いです。
キャリーオーバー効果とは,前の質問の内容が次の質問に影響を及ぼすものです。そのため,キャリーオーバー効果が出ないような配慮が必要です。
しかし,ランダムな順番にすると,とても答えにくいものとなってしまいます。
質問項目が少ない調査票なら,ランダムに順番を決めても良いでしょう。
しかし,質問項目が多いものなら,ランダムに順番を決めると,内容が行ったり来たりしてしまいます。
例えば,仕事の進め方と休日の過ごし方を調査したい場合
Q1は仕事,Q2は休日,Q3は仕事,Q4は仕事,Q5は休日
と質問が配置されていたとすれば,頭が混乱してしまいそうです。
<今日の一言>
試験委員がそこまで,配慮して問題を作成しているのかはわかりませんが,選択肢1に難しめの内容を配置すると,問題の正解率は下がる傾向にあります。
このことでよくわかることは,受験生の解答は他の選択肢の影響を受けるということです。
試験が終わると,大手出版社や試験対策を実施している企業などが国試の講評をネットでアップします。
そういったものの中に「この問題は過去問の●●を解いていた人は簡単だったでしょう」という講評がされていることがあります。
国試は,決して簡単ではありません。
全体の問題の正解率が6割程度だった場合,半数近くの問題は間違うことになります。
本当は,他の選択肢に影響されないで正解を選べると良いのですが,まじめに勉強を積み重ねてきた人の実力はそれほど違わないため,そういった問題が多くなると,正解率が上がってしまいます。
第30回には,ほとんど見受けられなかったまったくのでたらめな内容の選択肢ですが,第31回がそれを出題してくるかどうかによって,受験生の得点は大きく変わります。
まじめに勉強してきた人がそういったものを見た時,
知らないのは,勉強不足ではなく,それはでたらめな内容だからだ
と思う強い心が必要です。
勉強不足だと思うと,試験委員の仕掛けたトラップにはまり,自滅の道に入り込みますので要注意です!!
社会福祉士の国試は,マーク式
必ず問題の中に答えがあります。
①問題の文字数が短くなっていること
②できるだけ表現をそろえて出題するようになってきていること
どちらも勉強不足の受験生には不利な条件です。日本語的な言い回しで判断することができないからです。
勉強不足で国試に臨む人にとっては,極めて不利な状況にありますが,逆に勉強を地道に続けてきた人にとっては,そのままの力を発揮できる試験になってきています。
社会福祉振興・試験センターでは,受験生の得点分布は発表していませんが,第25回国試以前よりも確実に得点分布に開きが出てきていることは間違いありません。
つまり得点できる人は,合格基準点を大きく上回り,得点できない人は,合格基準点を大きく下回ります。
今回取り上げる問題は,第28回の国試問題です。
久々に不適切問題があった年で,合格基準点は88点となりました。正しいもの(適切なものを選ぶ)問題は,過去最高の20問でした。この次の回から数は減り,12問,11問と推移しています。
第28回は現在国試問題のスタイルに限りなく近づいてきています。
それでは早速今日の問題です。
第28回・問題86 質問紙の作成方法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。
2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。
3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。
5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。
いよいよすべての選択肢の表現をそろえて出題してきました。
「望ましい」が出題されたら,多くの場合には正解にならない傾向がありますが,すべての選択肢の表現をそろえられたら,排除しにくくなります。
しかも,出題は同じテーマであっても,出題の切り口は違います。
丸暗記で勉強するタイプの人は,対応は困難かもしれません。
しかし,柔軟な思考で想像してみると,確実に正解にたどり着きます。
こういったスキルが必要な問題はこれからどんどん増加していくことでしょう。社会福祉士に求められるスキルだからです。
それでは解説です。
1 質問文の中で専門用語を用いる場合,まず,その用語の認識について確認する濾過質問を行った上で,その用語を知っている者のみに尋ねることが望ましい。
これは正解です。
濾過質問はここで初めて出題されたものです。
しかし,第24回・第79問で出題されたリッカート方式やSD法と違って,日本語なのでどんなものかは推測できるはずです。
リッカート法&SD法が出題されたもの
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/25_16.html
「濾過質問は勉強していなかった。困った」と思うと試験委員の思うつぼです。
国試で十分に実力を発揮できない人は,こういったものを見た時,動揺してしまう傾向があるようです。
勉強段階で,わからないことがあれば,推測することなく,すぐ調べるような勉強法を続けてきた人は要注意です。国試会場ではわからないことがあっても調べることができないので,ペースが崩されてしまうのです。
第32回国家試験以降を受験される方はその点を頭に入れておいてください。
ペースを乱されないための特効薬は,こういったときは,焦らず▲をつけて次の選択肢を読むことです。
先述の第24回の問題と今の国試が大きく違うのは,知らないものを出題しても,ほかの選択肢を消去することで,その選択肢が残るというスタイルをとっていることです。そのために,頭をクリアにして動じない姿勢が何よりも大切なのです。そうすれば多くの場合,正解にたどりつくのが今の国試問題です。
話を戻します。
濾過質問とは,最初に何かの質問をして,次にそれに合致した人だけに答えてもらう,といった質問です。液体が濾過されるように,一定の条件をすり抜けた人だけが次の質問に進むもので,濾過質問といいます。
濾過質問の例
Q1 あなたは●●という言葉を聞いたことがありますか?
Q2 Q1で「はい」と答えた方だけにお聞きします。その意味を正しく理解していますか?
といった質問です。
Q1で「いいえ」と答えたのに,Q2に答えてしまう人もいるでしょう。
こういったエラーを「測定誤差」といいます。測定誤差は,全数調査でも標本調査でも生じます。
2 質問項目の順番が後になるほど,回答者の集中力が低下するため,複雑な質問から順に配置することが望ましい。
これは間違いです。
質問の内容は,最初は答えやすいものを先に配置します。
もし,この調査が郵送調査なら,最初に複雑な質問が配置されると回収率は下がってしまいます。
3 質問紙における回答の形式は,自由回答法を主とし必要に応じて選択肢法を用いることが望ましい。
これも間違いです。
もし,自分が調査対象者だったとしたら,自由記述(自由回答法)の質問ばかりだったとして,回答するのが面倒だと思うはずです。
選択肢法の例
Q あなたはこの場所にどのように来ましたか?
1.電車 2.バス 3.自転車 4.徒歩 5.自家用車 6その他[ ]
自由回答法の例
Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか?
自由回答法の例も選択肢法の例のようにすれば,答えやすくなります。
Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか?
1.キャリアアップのため 2.就職に必要だから 3.勉強が好きだから 4.職場の命令 5.その他[ ]
4 回答の形式として選択肢法を用いる場合,想定される選択肢を網羅するため選択肢の数が多いほど望ましい。
これも間違いです。
選択肢の数が多くなると,どちらに分類されるかに迷います。
先の例では
Q あなたが社会福祉士になろうと思ったのはなぜですか?
1.キャリアアップのため 2.就職に必要だから 3.勉強が好きだから 4.職場の命令 5.よりよい仕事をするため 6.その他[ ]
とすると,
1.キャリアアップのため
2.よりよい仕事をするため
は内容が似ているので,どちらにすればよいのか迷うことでしょう。
だからといって,こういった質問で「複数回答可」にすると,回答結果が明確ではなくなってしまうので注意が必要です。
5 キャリーオーバー効果を避けるため,質問の配置は,内容に関係なくランダムな順番で行うことが望ましい。
これも間違いです。
キャリーオーバー効果とは,前の質問の内容が次の質問に影響を及ぼすものです。そのため,キャリーオーバー効果が出ないような配慮が必要です。
しかし,ランダムな順番にすると,とても答えにくいものとなってしまいます。
質問項目が少ない調査票なら,ランダムに順番を決めても良いでしょう。
しかし,質問項目が多いものなら,ランダムに順番を決めると,内容が行ったり来たりしてしまいます。
例えば,仕事の進め方と休日の過ごし方を調査したい場合
Q1は仕事,Q2は休日,Q3は仕事,Q4は仕事,Q5は休日
と質問が配置されていたとすれば,頭が混乱してしまいそうです。
<今日の一言>
試験委員がそこまで,配慮して問題を作成しているのかはわかりませんが,選択肢1に難しめの内容を配置すると,問題の正解率は下がる傾向にあります。
このことでよくわかることは,受験生の解答は他の選択肢の影響を受けるということです。
試験が終わると,大手出版社や試験対策を実施している企業などが国試の講評をネットでアップします。
そういったものの中に「この問題は過去問の●●を解いていた人は簡単だったでしょう」という講評がされていることがあります。
国試は,決して簡単ではありません。
全体の問題の正解率が6割程度だった場合,半数近くの問題は間違うことになります。
本当は,他の選択肢に影響されないで正解を選べると良いのですが,まじめに勉強を積み重ねてきた人の実力はそれほど違わないため,そういった問題が多くなると,正解率が上がってしまいます。
第30回には,ほとんど見受けられなかったまったくのでたらめな内容の選択肢ですが,第31回がそれを出題してくるかどうかによって,受験生の得点は大きく変わります。
まじめに勉強してきた人がそういったものを見た時,
知らないのは,勉強不足ではなく,それはでたらめな内容だからだ
と思う強い心が必要です。
勉強不足だと思うと,試験委員の仕掛けたトラップにはまり,自滅の道に入り込みますので要注意です!!
社会福祉士の国試は,マーク式
必ず問題の中に答えがあります。
2019年1月17日木曜日
質問紙の作成方法と留意点(3/5)~「望ましい」は要注意!!
今回も「社会調査の基礎」に取り組みたいと思います。
この科目で,よく使われる言い回しがあります。
それは今日のタイトルでもある「望ましい」です。
他の科目ではあまり使われることがないので,この科目の特徴だと言えます。
「望ましい」が使われている文章を調べてみると,正解にはなっていないものが多い傾向にあるようです。
「望ましい」という表現が含まれている時には,注意してみましょう。
今日の問題も「望ましい」が含まれた問題です。
第26回・問題87 質問紙作成の注意点に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「喫煙や飲酒を毎日しますか? (はい/いいえ)」のように,なるべく2つの事柄を1つの質問で尋ねるのが効率的である。
2 「増税すると福祉予算が増えますが,あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」のように,回答者がよりよく考えて回答できるように質問に説明を含めるのが望ましい。
3 「あなたは年金支給開始年齢の引上げに賛成ですか」と聞く代わりに,「賛成ですか,反対ですか」と聞くと,表現が簡潔でなくなるので望ましくない。
4 「個人の自由に最大限の配慮をしないケアは認められないという考えに反対する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,否定が重なり好ましくない。
5 質問する順番によって回答が変わることがあるので,回答してほしい選択肢が選ばれやすくなるような順番に配列するのが望ましい。
文章を読むだけでも面倒な問題です。
昼休みは,午前中のことは完全に忘れて,リフレッシュすることの大切さを再認識させてくれます。
昼休みに,答え合わせをする人がいたら,「ありがとう」と思いましょう。
得点しやすい午後に向かうための力を自ら削いでいるようなものだからです。
多くの問題の正解率は60%に想定されていると考えると,問題の半分近くは間違うものです。
答え合わせしていても,相当な実力の持ち主が二人そろっていないと,多くの問題は半分近く答えがそろわないはずです。
昼休みは,リフレッシュするために必要な時間であることを意識してください。
午前中ができていないと思っても,決して気にすることはありません。
それでは解説です。
1 「喫煙や飲酒を毎日しますか? (はい/いいえ)」のように,なるべく2つの事柄を1つの質問で尋ねるのが効率的である。
これは間違いです。
旧カリキュラム時代から何度も何度も繰り返し出題されてきた「ダブルバーレル質問」に関するものです。
喫煙は毎日しているけれど,飲酒は毎日していない
あるいは
喫煙は毎日していないけれど,飲酒は毎日している
という人は答えられなくなってしまいます。
ダブルバーレル質問は,1つの質問に2つ以上の要素が入っている質問です。この例のようにダブルバーレル質問は答えられなくなってしまうことがあるので,不適切な質問となります。
2 「増税すると福祉予算が増えますが,あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」のように,回答者がよりよく考えて回答できるように質問に説明を含めるのが望ましい。
これも間違いです。
「望ましい」が出てきました。要注意です。
最初に「増税すると福祉予算が増えますが」と前置きしてから質問するのは,誘導質問と呼びます。
質問内容は「あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」ですが,誘導質問では回答を「はい」「いいえ」どちらにでも誘導することができます。
おそらく「増税すると福祉予算が増えますが」という前置きだと「はい」と答えるでしょう。
「増税すると日常生活の負担が増えますが」という前置きだと「いいえ」と答えるでしょう。
このように誘導質問は,回答を誘導するので望ましくありません。
3 「あなたは年金支給開始年齢の引上げに賛成ですか」と聞く代わりに,「賛成ですか,反対ですか」と聞くと,表現が簡潔でなくなるので望ましくない。
これも間違いです。
表現が簡潔ではないのは正しいです。
しかし人は「いいえ」と答えるよりも「はい」と答えやすいイエステンデンシーというものがあるので,「賛成ですか」「反対ですか」という質問は極めて適切です。
そうすると「はい」でもなく「いいえ」でもなく,「賛成です」「反対です」と答えられるからです。
4 「個人の自由に最大限の配慮をしないケアは認められないという考えに反対する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,否定が重なり好ましくない。
これが正解です。
いわゆる二重否定の質問は,文章で見てもわかりにくいで,考えなければなりません。
この場合の二重否定の質問とは,「配慮をしない」と「ケアは認められない」という部分です。
さらに「反対する」というものを加えて,よくよく考えないと質問の意味がつかみにくくなっています。
好ましい表現だとは思えないでしょう。
わかりやすい表現を心がけるなら
「個人の自由に最大限の配慮するケアは認められなければならない考えに賛成する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」
あるいは
「個人の自由に最大限の配慮をしないケアでも認められるという考えに,あなたは賛成ですか,反対ですか」
といった質問が適切でしょう。
5 質問する順番によって回答が変わることがあるので,回答してほしい選択肢が選ばれやすくなるような順番に配列するのが望ましい。
これも間違いです。
質問する順番によって回答が変わることは,キャリーオーバー効果といいます。
キャリーオーバー効果や誘導質問を悪用すれば,結論をまったく逆に導くことができるので,適切な社会調査を行う目的で行うのなら,それらは避けなければならないものとなります。
新聞などのマスメディアが実施する世論調査では,どのような質問で調査を行ったのかを公表しているものがあります。そのようにして,調査の信頼性を高めているのです。
<今日の一言>
今の国試は,正しい努力をしてきた人は報われるようにできています。
全然できていないと思っていても,後から自己採点すると意外に点数が取れているものです。
午後は,午前中のことはすっきり忘れて午後に向かうことが大切です。
午前中のことが気になって,持って行った参考書で答えを確認するというのは,最悪のストーリーです。
午前中の問題と午後の問題がリンクされていれば,そういった行為も意味があるでしょう。
しかし,午前と午後で出題内容が重なっていることはほぼありません。
午前中のことは完全に頭から切り離して,午後に向かえば午後の方が解きやすい問題が多いこともあり,良い結果になりやすいです。
この科目で,よく使われる言い回しがあります。
それは今日のタイトルでもある「望ましい」です。
他の科目ではあまり使われることがないので,この科目の特徴だと言えます。
「望ましい」が使われている文章を調べてみると,正解にはなっていないものが多い傾向にあるようです。
「望ましい」という表現が含まれている時には,注意してみましょう。
今日の問題も「望ましい」が含まれた問題です。
第26回・問題87 質問紙作成の注意点に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「喫煙や飲酒を毎日しますか? (はい/いいえ)」のように,なるべく2つの事柄を1つの質問で尋ねるのが効率的である。
2 「増税すると福祉予算が増えますが,あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」のように,回答者がよりよく考えて回答できるように質問に説明を含めるのが望ましい。
3 「あなたは年金支給開始年齢の引上げに賛成ですか」と聞く代わりに,「賛成ですか,反対ですか」と聞くと,表現が簡潔でなくなるので望ましくない。
4 「個人の自由に最大限の配慮をしないケアは認められないという考えに反対する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,否定が重なり好ましくない。
5 質問する順番によって回答が変わることがあるので,回答してほしい選択肢が選ばれやすくなるような順番に配列するのが望ましい。
文章を読むだけでも面倒な問題です。
昼休みは,午前中のことは完全に忘れて,リフレッシュすることの大切さを再認識させてくれます。
昼休みに,答え合わせをする人がいたら,「ありがとう」と思いましょう。
得点しやすい午後に向かうための力を自ら削いでいるようなものだからです。
多くの問題の正解率は60%に想定されていると考えると,問題の半分近くは間違うものです。
答え合わせしていても,相当な実力の持ち主が二人そろっていないと,多くの問題は半分近く答えがそろわないはずです。
昼休みは,リフレッシュするために必要な時間であることを意識してください。
午前中ができていないと思っても,決して気にすることはありません。
それでは解説です。
1 「喫煙や飲酒を毎日しますか? (はい/いいえ)」のように,なるべく2つの事柄を1つの質問で尋ねるのが効率的である。
これは間違いです。
旧カリキュラム時代から何度も何度も繰り返し出題されてきた「ダブルバーレル質問」に関するものです。
喫煙は毎日しているけれど,飲酒は毎日していない
あるいは
喫煙は毎日していないけれど,飲酒は毎日している
という人は答えられなくなってしまいます。
ダブルバーレル質問は,1つの質問に2つ以上の要素が入っている質問です。この例のようにダブルバーレル質問は答えられなくなってしまうことがあるので,不適切な質問となります。
2 「増税すると福祉予算が増えますが,あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」のように,回答者がよりよく考えて回答できるように質問に説明を含めるのが望ましい。
これも間違いです。
「望ましい」が出てきました。要注意です。
最初に「増税すると福祉予算が増えますが」と前置きしてから質問するのは,誘導質問と呼びます。
質問内容は「あなたは消費税率の引上げに賛成ですか」ですが,誘導質問では回答を「はい」「いいえ」どちらにでも誘導することができます。
おそらく「増税すると福祉予算が増えますが」という前置きだと「はい」と答えるでしょう。
「増税すると日常生活の負担が増えますが」という前置きだと「いいえ」と答えるでしょう。
このように誘導質問は,回答を誘導するので望ましくありません。
3 「あなたは年金支給開始年齢の引上げに賛成ですか」と聞く代わりに,「賛成ですか,反対ですか」と聞くと,表現が簡潔でなくなるので望ましくない。
これも間違いです。
表現が簡潔ではないのは正しいです。
しかし人は「いいえ」と答えるよりも「はい」と答えやすいイエステンデンシーというものがあるので,「賛成ですか」「反対ですか」という質問は極めて適切です。
そうすると「はい」でもなく「いいえ」でもなく,「賛成です」「反対です」と答えられるからです。
4 「個人の自由に最大限の配慮をしないケアは認められないという考えに反対する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,否定が重なり好ましくない。
これが正解です。
いわゆる二重否定の質問は,文章で見てもわかりにくいで,考えなければなりません。
この場合の二重否定の質問とは,「配慮をしない」と「ケアは認められない」という部分です。
さらに「反対する」というものを加えて,よくよく考えないと質問の意味がつかみにくくなっています。
好ましい表現だとは思えないでしょう。
わかりやすい表現を心がけるなら
「個人の自由に最大限の配慮するケアは認められなければならない考えに賛成する立場に,あなたは賛成ですか,反対ですか」
あるいは
「個人の自由に最大限の配慮をしないケアでも認められるという考えに,あなたは賛成ですか,反対ですか」
といった質問が適切でしょう。
5 質問する順番によって回答が変わることがあるので,回答してほしい選択肢が選ばれやすくなるような順番に配列するのが望ましい。
これも間違いです。
質問する順番によって回答が変わることは,キャリーオーバー効果といいます。
キャリーオーバー効果や誘導質問を悪用すれば,結論をまったく逆に導くことができるので,適切な社会調査を行う目的で行うのなら,それらは避けなければならないものとなります。
新聞などのマスメディアが実施する世論調査では,どのような質問で調査を行ったのかを公表しているものがあります。そのようにして,調査の信頼性を高めているのです。
<今日の一言>
今の国試は,正しい努力をしてきた人は報われるようにできています。
全然できていないと思っていても,後から自己採点すると意外に点数が取れているものです。
午後は,午前中のことはすっきり忘れて午後に向かうことが大切です。
午前中のことが気になって,持って行った参考書で答えを確認するというのは,最悪のストーリーです。
午前中の問題と午後の問題がリンクされていれば,そういった行為も意味があるでしょう。
しかし,午前と午後で出題内容が重なっていることはほぼありません。
午前中のことは完全に頭から切り離して,午後に向かえば午後の方が解きやすい問題が多いこともあり,良い結果になりやすいです。
2019年1月16日水曜日
質問紙の作成方法と留意点(2/5)~答えられなくても良い問題に動揺しない!!
社会福祉士の国試の合格基準は,6割程度です。
問題の難易度によって,合格基準点が上下するのがやっかいなところでしょう。
前にも紹介したように,チームfukufuku21は,合格基準の6割程度というのは,正解率が6割程度であるという意味なのではないかと推測しています。
それぞれの問題に予測正解率を設定して,その平均が6割程度に収まるように出題しているように思います。
全員が正解できるような問題があれば,その問題と同じ数だけ誰も正解できない問題を出題すれば良いわけです。
参考書は,国家試験に出題されたものを加えて作成するので,誰もが正解できないものとして出題したものも掲載されることになります。
参考書では覚える優先度がわからないのですべてを覚えなければならないと考えるととても辛くなるでしょう。
しかし,絶対にそんなことはありません。
国試合格に重要なことは,うっかりミスをしないこと,考えればわかる問題はしっかり思考して正解に近づくことです。
今日の問題は,出題当時,多くの人が正解できなかった問題です。
それでは,早速紹介します。
第24回・問題79 事例を読んで,調査票の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
スクールソーシャルワーカーであるBさんは,Y市内の小中学枚教師約500人へのアンケート調査を企画した。調査の内容は,主にソーシャルワーカー業務の認知の程度と,どのような場合に必要とされるのかを尋ねるものであった。
1 ソーシャルワーカー業務の認知の程度を把握するために,業務内容を記述した15項目それぞれに対して,リッカート形式の尺度を作成して尋ねた。
2 調査票が長くなると回答率が低下するので,できるだけソーシャルワークの業務に関する略語や専門用語を使って調査票を作成した。
3 教師の属性も把握したいので,性別,年齢,学歴,職歴,家族構成などを調査票の最初に設けて尋ねた。
4 ソーシャルワーカーがどのような場面で必要とされているかを把握するために,あらかじめ設定した10の場面に対して,SD(Semantic Diferential)法を用いて尋ねた。
5 できるだけ具体的な情報が必要なので,自由回答欄を多数設けて調査票を作成した。
この問題を今見ると,そんなに難しくは感じないかもしれません。
なぜなら,リッカート法,SD法も参考書に載っているからです。
国試では,テキスト(中央法規の養成講座など)に記述がないものも正解選択肢として出題することがたまにあります。
そうすると極端に正解率が下がります。
今日の問題のリッカート法,SD法のように2つあると,消去法では正解にたどり着くことができないので,多くの人が正解できなくなります。
こういった問題では,受験生の理解で差が生まれません。
しかしこれも試験委員の作戦です。
実際には,難しい問題があれば,その数と同じ数の誰もが解ける難易度である問題が存在しているはずです。
難しい問題をいくつか混ぜておけば,心が弱い人は,誰もが正解できる問題でも自滅してくれます。
難しい問題が多くて,誰もが正解できる問題の少ないというバランスになれば,合格基準点は下がります。
自分が解けない問題は誰もが解けないのだ
という強い気持ちを持つことが極めて重要なのです。
それでは解説です。
1 ソーシャルワーカー業務の認知の程度を把握するために,業務内容を記述した15項目それぞれに対して,リッカート形式の尺度を作成して尋ねた。
これが正解です。
リッカート法とは,研修後アンケートのように
1.満足 2.やや満足 3.ふつう 4.やや不満 5.不満
といった順序尺度で質問するものです。
この場合は,
1.良く知っている 2.言葉は聞いたことがある 3.聞いたことがない
といった質問を15項目に対して行ったということです。
2 調査票が長くなると回答率が低下するので,できるだけソーシャルワークの業務に関する略語や専門用語を使って調査票を作成した。
これも間違いです。
調査票が長くなると回答率が低下するのは正しいです。
しかし,他分野の人に対して略語や専門用語を使うのは不適切です。質問内容を正しく理解することができないからです。
3 教師の属性も把握したいので,性別,年齢,学歴,職歴,家族構成などを調査票の最初に設けて尋ねた。
これも間違いです。
ちょっと難しいですが,属性を尋ねるのであれば,質問の最後にする方がよいです。
冒頭の導入部分は,簡単な質問の持ってくる方が,調査に対して親しみを持ってくれるので,そのあとの質問に答えてくれる可能性が高まります。
冒頭で属性を尋ねる調査票なら,頭の中が「?」「?」「?」になったまま,質問に入っていくことになるでしょう。
4 ソーシャルワーカーがどのような場面で必要とされているかを把握するために,あらかじめ設定した10の場面に対して,SD(Semantic Diferential)法を用いて尋ねた。
これも間違いです。
SD法は,
華やか⇔地味
明るい⇔暗い
といった対となるイメージの言葉を使って,調査を行うものです。
場面に対しては用いるものではありません。
5 できるだけ具体的な情報が必要なので,自由回答欄を多数設けて調査票を作成した。
これも間違いです。
自由回答欄は必要ですが,多数設けると記入するのが面倒になりますので,回収率が低下します。
<今日の一言>
現在の国試問題は,難しい問題もあります。
しかし,今日のような問題はほとんどありません。
なぜなら,受験生に差がつかないからです。
試験に適切な問題は。
勉強した人は解ける
勉強不足の人は解けない
というタイプです。
今日の問題のように,リッカート形式とSD法という訳のわからないもの(見当がつかないもの)を2つの選択肢に配置してしまうと,消去法で答えにたどり着くことができません。
今日の問題のように,多くの人が正解できない問題が多くなってしまうと合格基準点が下がります。
この年の合格基準点は,なんと81点です。「魔の第25回国試」の72点から比べると高い合格基準点ですが,充実期(第26~30回国試)にはこれだけ低い合格基準点になったことはありません。
誰もが解けない問題が多ければ,合格基準点は下がります。
誰もが解ける問題が多ければ,合格基準点は上がります。
それだけのことです。
勉強すべき内容は,合格基準点がどのようになろうと決して変わるものではありません。
チームfukufuku21では,第31回以降は転換期と捉えていますが,第30回と大きく変わることはないだろうと考えています。
後から振り返るとあの時が転換期の始まりだったと思うだけです。
参考:現行カリキュラムの変遷
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/12/22.html
ここからが結論です。
難しい問題は必ず出題されます。しかしそれは多くの人は解けません。その問題ができてもできなくても合否にはほとんど影響しません。
それよりも大切なのは……
難しい問題でペースを乱さないことです。ペースが乱れると本来正解すべき問題で正解できなくなってしまいます。
今までしてきた努力は尊いものです。
正しい努力を続けてきた人は必ず報われます。今の国試は,そうなるように組み立てられています。
最後に実力を発揮するのは,自分に自信を持てる人であることは間違いありません。
国試当日は晴れやかな気持ちで臨みましょう!!
自分が解けない問題は誰もが解けないのだ
という強い気持ちを持つことが極めて重要なのです。
問題の難易度によって,合格基準点が上下するのがやっかいなところでしょう。
前にも紹介したように,チームfukufuku21は,合格基準の6割程度というのは,正解率が6割程度であるという意味なのではないかと推測しています。
それぞれの問題に予測正解率を設定して,その平均が6割程度に収まるように出題しているように思います。
全員が正解できるような問題があれば,その問題と同じ数だけ誰も正解できない問題を出題すれば良いわけです。
参考書は,国家試験に出題されたものを加えて作成するので,誰もが正解できないものとして出題したものも掲載されることになります。
参考書では覚える優先度がわからないのですべてを覚えなければならないと考えるととても辛くなるでしょう。
しかし,絶対にそんなことはありません。
国試合格に重要なことは,うっかりミスをしないこと,考えればわかる問題はしっかり思考して正解に近づくことです。
今日の問題は,出題当時,多くの人が正解できなかった問題です。
それでは,早速紹介します。
第24回・問題79 事例を読んで,調査票の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
〔事 例〕
スクールソーシャルワーカーであるBさんは,Y市内の小中学枚教師約500人へのアンケート調査を企画した。調査の内容は,主にソーシャルワーカー業務の認知の程度と,どのような場合に必要とされるのかを尋ねるものであった。
1 ソーシャルワーカー業務の認知の程度を把握するために,業務内容を記述した15項目それぞれに対して,リッカート形式の尺度を作成して尋ねた。
2 調査票が長くなると回答率が低下するので,できるだけソーシャルワークの業務に関する略語や専門用語を使って調査票を作成した。
3 教師の属性も把握したいので,性別,年齢,学歴,職歴,家族構成などを調査票の最初に設けて尋ねた。
4 ソーシャルワーカーがどのような場面で必要とされているかを把握するために,あらかじめ設定した10の場面に対して,SD(Semantic Diferential)法を用いて尋ねた。
5 できるだけ具体的な情報が必要なので,自由回答欄を多数設けて調査票を作成した。
この問題を今見ると,そんなに難しくは感じないかもしれません。
なぜなら,リッカート法,SD法も参考書に載っているからです。
国試では,テキスト(中央法規の養成講座など)に記述がないものも正解選択肢として出題することがたまにあります。
そうすると極端に正解率が下がります。
今日の問題のリッカート法,SD法のように2つあると,消去法では正解にたどり着くことができないので,多くの人が正解できなくなります。
こういった問題では,受験生の理解で差が生まれません。
しかしこれも試験委員の作戦です。
実際には,難しい問題があれば,その数と同じ数の誰もが解ける難易度である問題が存在しているはずです。
難しい問題をいくつか混ぜておけば,心が弱い人は,誰もが正解できる問題でも自滅してくれます。
難しい問題が多くて,誰もが正解できる問題の少ないというバランスになれば,合格基準点は下がります。
自分が解けない問題は誰もが解けないのだ
という強い気持ちを持つことが極めて重要なのです。
それでは解説です。
1 ソーシャルワーカー業務の認知の程度を把握するために,業務内容を記述した15項目それぞれに対して,リッカート形式の尺度を作成して尋ねた。
これが正解です。
リッカート法とは,研修後アンケートのように
1.満足 2.やや満足 3.ふつう 4.やや不満 5.不満
といった順序尺度で質問するものです。
この場合は,
1.良く知っている 2.言葉は聞いたことがある 3.聞いたことがない
といった質問を15項目に対して行ったということです。
2 調査票が長くなると回答率が低下するので,できるだけソーシャルワークの業務に関する略語や専門用語を使って調査票を作成した。
これも間違いです。
調査票が長くなると回答率が低下するのは正しいです。
しかし,他分野の人に対して略語や専門用語を使うのは不適切です。質問内容を正しく理解することができないからです。
3 教師の属性も把握したいので,性別,年齢,学歴,職歴,家族構成などを調査票の最初に設けて尋ねた。
これも間違いです。
ちょっと難しいですが,属性を尋ねるのであれば,質問の最後にする方がよいです。
冒頭の導入部分は,簡単な質問の持ってくる方が,調査に対して親しみを持ってくれるので,そのあとの質問に答えてくれる可能性が高まります。
冒頭で属性を尋ねる調査票なら,頭の中が「?」「?」「?」になったまま,質問に入っていくことになるでしょう。
4 ソーシャルワーカーがどのような場面で必要とされているかを把握するために,あらかじめ設定した10の場面に対して,SD(Semantic Diferential)法を用いて尋ねた。
これも間違いです。
SD法は,
華やか⇔地味
明るい⇔暗い
といった対となるイメージの言葉を使って,調査を行うものです。
場面に対しては用いるものではありません。
5 できるだけ具体的な情報が必要なので,自由回答欄を多数設けて調査票を作成した。
これも間違いです。
自由回答欄は必要ですが,多数設けると記入するのが面倒になりますので,回収率が低下します。
<今日の一言>
現在の国試問題は,難しい問題もあります。
しかし,今日のような問題はほとんどありません。
なぜなら,受験生に差がつかないからです。
試験に適切な問題は。
勉強した人は解ける
勉強不足の人は解けない
というタイプです。
今日の問題のように,リッカート形式とSD法という訳のわからないもの(見当がつかないもの)を2つの選択肢に配置してしまうと,消去法で答えにたどり着くことができません。
今日の問題のように,多くの人が正解できない問題が多くなってしまうと合格基準点が下がります。
この年の合格基準点は,なんと81点です。「魔の第25回国試」の72点から比べると高い合格基準点ですが,充実期(第26~30回国試)にはこれだけ低い合格基準点になったことはありません。
誰もが解けない問題が多ければ,合格基準点は下がります。
誰もが解ける問題が多ければ,合格基準点は上がります。
それだけのことです。
勉強すべき内容は,合格基準点がどのようになろうと決して変わるものではありません。
チームfukufuku21では,第31回以降は転換期と捉えていますが,第30回と大きく変わることはないだろうと考えています。
後から振り返るとあの時が転換期の始まりだったと思うだけです。
参考:現行カリキュラムの変遷
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/12/22.html
ここからが結論です。
難しい問題は必ず出題されます。しかしそれは多くの人は解けません。その問題ができてもできなくても合否にはほとんど影響しません。
それよりも大切なのは……
難しい問題でペースを乱さないことです。ペースが乱れると本来正解すべき問題で正解できなくなってしまいます。
今までしてきた努力は尊いものです。
正しい努力を続けてきた人は必ず報われます。今の国試は,そうなるように組み立てられています。
最後に実力を発揮するのは,自分に自信を持てる人であることは間違いありません。
国試当日は晴れやかな気持ちで臨みましょう!!
自分が解けない問題は誰もが解けないのだ
という強い気持ちを持つことが極めて重要なのです。
2019年1月15日火曜日
質問紙の作成方法と留意点(1/5)~避けなければならないもの
出題基準では,前回まで取り組んでいた調査票の配布と回収の方があとで,今日の質問紙の作成方法と留意点の方が先になっています。
それはさておき,質問紙の作成方法と留意点が出題されたのは,以下の通りです。
第23回,第24回,第26回,第28回,第30回。
出題回数は多いのですが,ほぼ2回に1回の出題なので,第31回は出題の可能性は低いと言えますが,以前に書いたように,ヤマを張らない方針なので,ここもしっかり押さえておきたいと思います。
「社会調査の基礎」は,現行カリキュラムで加わった科目ですが,質問紙の作成方法は,旧カリキュラム時代から繰り返し出題されてきたものです。
その中で,最も出題回数が多いのは,ダブルバーレル質問です。
ダブルバーレルは,もともとは2連発銃のことを指します。
2連発銃とは,1回引き金を引いたら,2つの弾が同時に発射されるものです。
下手な鉄砲数打てば当たる
1発よりも相手に当たる確率は高くなるでしょう。
質問紙を作成する場合は,ダブルバーレル質問は不適切なものとなります。
ダブルバーレル質問は,1つの質問に複数の要素を含んだ質問です。
1つの質問で複数の要素があるのが2連発銃に似ているため,ダブルバーレル質問という名称がついているのです。
例としては,
リンゴやミカンなどの果物は好きですか?
リンゴは好きでもミカンは嫌い,逆にミカンは好きでもリンゴは嫌い,という人は答えられなくなってしまいます。
研修後アンケートなどでは,
講師の話の内容や声の大きさは適切でしたか?
といった質問をしてしまうと,果物と同じように話の内容は適切だったが,声が小さくて聞き取りにくかった,または,声の大きさはちょうどよく,歯切れも良かったけれど,話の内容が面白くなかった,という人は答えられなくなってしまいます。
質問紙の作成では,ダブルバーレル質問のほかに避けなければならない留意点はたくさんあります。
これから問題を解きながら,押さえていきましょう。
それでは早速今日の問題です。
第23回・問題80 質問文作成の注意点に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 「煙草は健康に悪いから吸うべきではない,という意見にあなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,ダブルバーレルな質問ではない。
2 「ごきょうだいは何人ですか」という質問には,回答者が判断に迷うようなあいまいさは存在しない。
3 「あなたは,宗教は大切だと思いますか」という質問の回答は,回答者本人の信心の強さ・弱さを表すものと解釈してよい。
4 「市民運動」という表現と「草の根の市民運動」という表現は,同じ意図で使われている場合でも,回答が異なってしまう可能性がある。
5 「ふだん朝食をとりますか」という質問文では「ふだん」が指すものがあいまいなので,「今朝は朝食をとりましたか」のように日時を特定しなければならない。
「質問紙の作成方法」も想像力が求められる選択肢の連続です。
「考えるのが面倒だ」と思うと思わなければ,必ず正解にたどり着くことができます。
もちろんダブルバーレル質問のように,最低限の知識は必要です。
それでは解説です。
1 「煙草は健康に悪いから吸うべきではない,という意見にあなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,ダブルバーレルな質問ではない。
これは間違いです。
ダブルバーレルになっているかが,明確にはわかりにくいからです。しかし,このタイプの問題は,ダブルバーレル質問だからこそ出題されていると考えることができます。
「煙草は健康に悪いから吸うべきではない」を分解すると
煙草は健康に悪い
という部分と
煙草は吸うべきではない
という部分に分解することができます。
煙草は健康に悪いけれど,煙草を吸うべきではないとは考えない。
あるいは
煙草を吸うべきではないとは思うけれど,それは健康に悪いという理由ではない。
といった人は答えられなくなってしまいます。
2 「ごきょうだいは何人ですか」という質問には,回答者が判断に迷うようなあいまいさは存在しない。
これも間違いです。
しかしどこがあいまいなのかが明確にはわかりにくいと思います。
あいまいさがあるからこそ出題している意味があると考えられます。
「ごきょうだい」といった場合は,最近はひらがな表記をすることで,男性の兄弟,女性の姉妹両方を示すようになっていますが,きょうだいと聞くと,「姉妹はいるけれど,兄弟はいない」と考えてしまう恐れがあります。
ほかには,自分を含めるのかどうか,といったあいまいさもあります。
3 「あなたは,宗教は大切だと思いますか」という質問の回答は,回答者本人の信心の強さ・弱さを表すものと解釈してよい。
これも間違いです。
質問には,一般的なことを尋ねるインパーソナル質問と,個人の内容を尋ねるパーソナル質問があります。
第30回国試では,
「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
という出題がなされて,正解となっています。
あなたは,宗教は大切だと思いますか
家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか
という部分はどちらもインパーソナルな質問です。
どちらも,個人の内容を尋ねるものとはなっていません。
個人の内容を尋ねるなら
あなたは,宗教を信仰していますか
あなたの家庭では,夫婦で平等に家事を分担していますか
といった内容の質問をしなければなりません。
4 「市民運動」という表現と「草の根の市民運動」という表現は,同じ意図で使われている場合でも,回答が異なってしまう可能性がある。
これが正解です。
一定の意味やイメージのあることを「ステレオタイプ」と言います。
この場合の一定の意味やイメージとは単に「市民活動」というよりも「草の根」が地べたを這いずり回った市民活動というイメージがあるということです。
言葉が違うので,当然受け手のイメージも変わります。当然ですね。
5 「ふだん朝食をとりますか」という質問文では「ふだん」が指すものがあいまいなので,「今朝は朝食をとりましたか」のように日時を特定しなければならない。
これも間違いです。
ふだんがあいまいだと感じるのでしたか,
「あなたは,週に何回朝食をとりますか」
といった質問にします。
「今朝は朝食をとりましたか」
という質問にあいまいさはありませんが,今日たまたま朝食はとったけれど,久しぶりに朝食をとった,という人もいるかもしれません。
<今日の一言>
法制度は覚えるのは得意だけれど,理論系の問題は苦手
という人はたくさんいます。
合格する人でも,もしかするとそうかもしれません。
法制度の方が問題数が多いので,それはそれでよいと思います。
しかし,法制度はしっかり覚えておかなければ,正解することができないですが,理論系の問題は,想像力で解くことができるものがあります。
その分,なかなか事前の対策が取りにくいという面もありますが,最低限の知識があれば,突破口を見つけ出すことができるでしょう。
こういった問題で正解できたときは,結構気持ちが良いものですよ。
最後の仕上げにぜひ学習部屋をお役立てください。
それはさておき,質問紙の作成方法と留意点が出題されたのは,以下の通りです。
第23回,第24回,第26回,第28回,第30回。
出題回数は多いのですが,ほぼ2回に1回の出題なので,第31回は出題の可能性は低いと言えますが,以前に書いたように,ヤマを張らない方針なので,ここもしっかり押さえておきたいと思います。
「社会調査の基礎」は,現行カリキュラムで加わった科目ですが,質問紙の作成方法は,旧カリキュラム時代から繰り返し出題されてきたものです。
その中で,最も出題回数が多いのは,ダブルバーレル質問です。
ダブルバーレルは,もともとは2連発銃のことを指します。
2連発銃とは,1回引き金を引いたら,2つの弾が同時に発射されるものです。
下手な鉄砲数打てば当たる
1発よりも相手に当たる確率は高くなるでしょう。
質問紙を作成する場合は,ダブルバーレル質問は不適切なものとなります。
ダブルバーレル質問は,1つの質問に複数の要素を含んだ質問です。
1つの質問で複数の要素があるのが2連発銃に似ているため,ダブルバーレル質問という名称がついているのです。
例としては,
リンゴやミカンなどの果物は好きですか?
リンゴは好きでもミカンは嫌い,逆にミカンは好きでもリンゴは嫌い,という人は答えられなくなってしまいます。
研修後アンケートなどでは,
講師の話の内容や声の大きさは適切でしたか?
といった質問をしてしまうと,果物と同じように話の内容は適切だったが,声が小さくて聞き取りにくかった,または,声の大きさはちょうどよく,歯切れも良かったけれど,話の内容が面白くなかった,という人は答えられなくなってしまいます。
質問紙の作成では,ダブルバーレル質問のほかに避けなければならない留意点はたくさんあります。
これから問題を解きながら,押さえていきましょう。
それでは早速今日の問題です。
第23回・問題80 質問文作成の注意点に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 「煙草は健康に悪いから吸うべきではない,という意見にあなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,ダブルバーレルな質問ではない。
2 「ごきょうだいは何人ですか」という質問には,回答者が判断に迷うようなあいまいさは存在しない。
3 「あなたは,宗教は大切だと思いますか」という質問の回答は,回答者本人の信心の強さ・弱さを表すものと解釈してよい。
4 「市民運動」という表現と「草の根の市民運動」という表現は,同じ意図で使われている場合でも,回答が異なってしまう可能性がある。
5 「ふだん朝食をとりますか」という質問文では「ふだん」が指すものがあいまいなので,「今朝は朝食をとりましたか」のように日時を特定しなければならない。
「質問紙の作成方法」も想像力が求められる選択肢の連続です。
「考えるのが面倒だ」と思うと思わなければ,必ず正解にたどり着くことができます。
もちろんダブルバーレル質問のように,最低限の知識は必要です。
それでは解説です。
1 「煙草は健康に悪いから吸うべきではない,という意見にあなたは賛成ですか,反対ですか」という質問は,ダブルバーレルな質問ではない。
これは間違いです。
ダブルバーレルになっているかが,明確にはわかりにくいからです。しかし,このタイプの問題は,ダブルバーレル質問だからこそ出題されていると考えることができます。
「煙草は健康に悪いから吸うべきではない」を分解すると
煙草は健康に悪い
という部分と
煙草は吸うべきではない
という部分に分解することができます。
煙草は健康に悪いけれど,煙草を吸うべきではないとは考えない。
あるいは
煙草を吸うべきではないとは思うけれど,それは健康に悪いという理由ではない。
といった人は答えられなくなってしまいます。
2 「ごきょうだいは何人ですか」という質問には,回答者が判断に迷うようなあいまいさは存在しない。
これも間違いです。
しかしどこがあいまいなのかが明確にはわかりにくいと思います。
あいまいさがあるからこそ出題している意味があると考えられます。
「ごきょうだい」といった場合は,最近はひらがな表記をすることで,男性の兄弟,女性の姉妹両方を示すようになっていますが,きょうだいと聞くと,「姉妹はいるけれど,兄弟はいない」と考えてしまう恐れがあります。
ほかには,自分を含めるのかどうか,といったあいまいさもあります。
3 「あなたは,宗教は大切だと思いますか」という質問の回答は,回答者本人の信心の強さ・弱さを表すものと解釈してよい。
これも間違いです。
質問には,一般的なことを尋ねるインパーソナル質問と,個人の内容を尋ねるパーソナル質問があります。
第30回国試では,
「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
という出題がなされて,正解となっています。
あなたは,宗教は大切だと思いますか
家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか
という部分はどちらもインパーソナルな質問です。
どちらも,個人の内容を尋ねるものとはなっていません。
個人の内容を尋ねるなら
あなたは,宗教を信仰していますか
あなたの家庭では,夫婦で平等に家事を分担していますか
といった内容の質問をしなければなりません。
4 「市民運動」という表現と「草の根の市民運動」という表現は,同じ意図で使われている場合でも,回答が異なってしまう可能性がある。
これが正解です。
一定の意味やイメージのあることを「ステレオタイプ」と言います。
この場合の一定の意味やイメージとは単に「市民活動」というよりも「草の根」が地べたを這いずり回った市民活動というイメージがあるということです。
言葉が違うので,当然受け手のイメージも変わります。当然ですね。
5 「ふだん朝食をとりますか」という質問文では「ふだん」が指すものがあいまいなので,「今朝は朝食をとりましたか」のように日時を特定しなければならない。
これも間違いです。
ふだんがあいまいだと感じるのでしたか,
「あなたは,週に何回朝食をとりますか」
といった質問にします。
「今朝は朝食をとりましたか」
という質問にあいまいさはありませんが,今日たまたま朝食はとったけれど,久しぶりに朝食をとった,という人もいるかもしれません。
<今日の一言>
法制度は覚えるのは得意だけれど,理論系の問題は苦手
という人はたくさんいます。
合格する人でも,もしかするとそうかもしれません。
法制度の方が問題数が多いので,それはそれでよいと思います。
しかし,法制度はしっかり覚えておかなければ,正解することができないですが,理論系の問題は,想像力で解くことができるものがあります。
その分,なかなか事前の対策が取りにくいという面もありますが,最低限の知識があれば,突破口を見つけ出すことができるでしょう。
こういった問題で正解できたときは,結構気持ちが良いものですよ。
最後の仕上げにぜひ学習部屋をお役立てください。
2019年1月13日日曜日
調査票の配布と回収(4/5)~国試には想像力が必要です!
今回も調査票の配布と回収です。
国家試験は,時間との戦いです。
時間内に解けなければなりません。「ゆっくり考えれば解ける」ではだめなのです。
国家試験の文字数が減ってきているのは,今まで何度も伝えてきたとおりですが,その逆に,柔軟な思考や想像力が求められる問題が出題されるようになっています。
そのような問題に対応するのは結構大変です。
タイマーで1問を解く時間を計って解く練習をするという人がいます。
チームfukufuku21は,そのような練習はあまりおすすめできないと考えています。
なぜなら,今書いたように柔軟な思考や想像力が求められる問題があるので,ちょっと立ち止まらなければならないこともあるからです。
そういった問題は,時間をかけて解くことも必要です。
午前2時間15分で83問,午後1時間45分で67問が収まればよいです。
その時間をいくつかのブロックに分けて,目安をつけておくと良いと思います。
すべての問題を90秒で解こうと思うと焦りが生じて,せっかく解ける問題もミスしてしまうことになりますので,注意が必要です。
さて,今日の問題も想像力が求められる問題です。
第29回・問題87 社会調査における調査票を用いた方法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 郵送調査は,回答者が十分に時間をかけて回答することができるため,質問項目数の上限がないというメリットがある。
2 集合調査は,特定の団体が集まる会合の場で実施できるため,代表性のある標本を確保しやすいというメリットがある。
3 電話調査は,近年,固定電話に加え,携帯電話を持つ人が増えてきたため,回収率が高いというメリットがある。
4 留置調査は,調査票を配布したその場で回答がなされないため,他の方法に比べて回収率が低いというデメリットがある。
5 インターネット調査は,インターネット上で調査対象者を公募する場合,代表性の偏りが生じるというデメリットがある。
前回と前々回で紹介した問題で出題された項目とほとんど一緒ですが,メリット,デメリットは切り口が変わるので,決して簡単な問題ではないです。
柔軟な思考と想像力が求められる問題とはこういった内容のものです。
今日の問題は,自分が調査対象者だとしたらどうなのだろうと想像することが必要です。
それでは,解説です。
1 郵送調査は,回答者が十分に時間をかけて回答することができるため,質問項目数の上限がないというメリットがある。
これは間違いです。
自分が調査対象者だとしたら,質問項目が多いと答えるのが面倒だと思いませんか?
郵送調査は,事業所などに送られてくることが多いと思います。
回答する義務や義理がなければ,無視することも多いと思います。そのため,郵送調査は手軽にできる調査である反面,回収率が低くなります。
質問項目が多いと面倒なので,さらに回収率が下がってしまいます。
そのため,質問項目数に上限は存在しませんが,適切な項目数は存在するのです。
質問が1,000項目もあったら大変です。
2 集合調査は,特定の団体が集まる会合の場で実施できるため,代表性のある標本を確保しやすいというメリットがある。
これも間違いです。
集合調査は,調査対象者に集まってきてもらって,その場で調査する方法です。
代表性のある標本を確保するためには,無作為抽出でなければなりません。
特定の団体が集まる会合の出席メンバーを無作為抽出したところで,もともと会合に集まっている人は,ある目的や興味・関心が共通しているので,代表性のある標本にはなり得ません。
極端な例を言えば,ある政党の会合に集まっている場で,世論調査を行った場合,一般的な意見とは違うものとなってしまいます。
3 電話調査は,近年,固定電話に加え,携帯電話を持つ人が増えてきたため,回収率が高いというメリットがある。
これも間違いです。
携帯電話では,知らない番号からかかってきたら電話には出ないという人は結構います。
そのため,携帯電話が普及したとしても,回収率が高くなるは限りません。
4 留置調査は,調査票を配布したその場で回答がなされないため,他の方法に比べて回収率が低いというデメリットがある。
これも間違いです。
郵送調査は,突然送られてくることが多いので,調査に協力しようと思う人はそれほど多くはありません。
それに対して,留置調査は,調査員が訪問してお願いするので,協力してくれる可能性は高いです。
回収率が低いのは,郵送調査
これだけはしっかり押さえておきたいです。
5 インターネット調査は,インターネット上で調査対象者を公募する場合,代表性の偏りが生じるというデメリットがある。
これが正解です。
経費も労力も最もかからないのは,インターネット調査です。インターネットにつながるPC等があれば,実施することができます。
しかし,インターネット調査は,調査に協力してくれる人がその内容に興味がある人が回答します。
興味がない人はそこにアクセスすることもわざわざ時間をかけて回答することもないでしょう。
現在のところ,インターネット調査で無作為抽出する方法は開発されていません。
<今日の一言>
今日の問題は,決して難易度が高い問題ではありません。
そのため,解説を読めば「ああ,なるほど」とわかるでしょう。
しかし,国試会場で正しく正解を選ぶのは,簡単ではありません。
先述のように,柔軟な思考と想像力が必要だからです。
国試対策としてたくさんの問題を解く必要があるのは,柔軟な思考と想像力を高める訓練でもあるのです。
社会科学系の学問である社会福祉学は,看護学や医学などの自然科学系とは違った難しさが存在しています。
国家試験は,時間との戦いです。
時間内に解けなければなりません。「ゆっくり考えれば解ける」ではだめなのです。
国家試験の文字数が減ってきているのは,今まで何度も伝えてきたとおりですが,その逆に,柔軟な思考や想像力が求められる問題が出題されるようになっています。
そのような問題に対応するのは結構大変です。
タイマーで1問を解く時間を計って解く練習をするという人がいます。
チームfukufuku21は,そのような練習はあまりおすすめできないと考えています。
なぜなら,今書いたように柔軟な思考や想像力が求められる問題があるので,ちょっと立ち止まらなければならないこともあるからです。
そういった問題は,時間をかけて解くことも必要です。
午前2時間15分で83問,午後1時間45分で67問が収まればよいです。
その時間をいくつかのブロックに分けて,目安をつけておくと良いと思います。
すべての問題を90秒で解こうと思うと焦りが生じて,せっかく解ける問題もミスしてしまうことになりますので,注意が必要です。
さて,今日の問題も想像力が求められる問題です。
第29回・問題87 社会調査における調査票を用いた方法に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 郵送調査は,回答者が十分に時間をかけて回答することができるため,質問項目数の上限がないというメリットがある。
2 集合調査は,特定の団体が集まる会合の場で実施できるため,代表性のある標本を確保しやすいというメリットがある。
3 電話調査は,近年,固定電話に加え,携帯電話を持つ人が増えてきたため,回収率が高いというメリットがある。
4 留置調査は,調査票を配布したその場で回答がなされないため,他の方法に比べて回収率が低いというデメリットがある。
5 インターネット調査は,インターネット上で調査対象者を公募する場合,代表性の偏りが生じるというデメリットがある。
前回と前々回で紹介した問題で出題された項目とほとんど一緒ですが,メリット,デメリットは切り口が変わるので,決して簡単な問題ではないです。
柔軟な思考と想像力が求められる問題とはこういった内容のものです。
今日の問題は,自分が調査対象者だとしたらどうなのだろうと想像することが必要です。
それでは,解説です。
1 郵送調査は,回答者が十分に時間をかけて回答することができるため,質問項目数の上限がないというメリットがある。
これは間違いです。
自分が調査対象者だとしたら,質問項目が多いと答えるのが面倒だと思いませんか?
郵送調査は,事業所などに送られてくることが多いと思います。
回答する義務や義理がなければ,無視することも多いと思います。そのため,郵送調査は手軽にできる調査である反面,回収率が低くなります。
質問項目が多いと面倒なので,さらに回収率が下がってしまいます。
そのため,質問項目数に上限は存在しませんが,適切な項目数は存在するのです。
質問が1,000項目もあったら大変です。
2 集合調査は,特定の団体が集まる会合の場で実施できるため,代表性のある標本を確保しやすいというメリットがある。
これも間違いです。
集合調査は,調査対象者に集まってきてもらって,その場で調査する方法です。
代表性のある標本を確保するためには,無作為抽出でなければなりません。
特定の団体が集まる会合の出席メンバーを無作為抽出したところで,もともと会合に集まっている人は,ある目的や興味・関心が共通しているので,代表性のある標本にはなり得ません。
極端な例を言えば,ある政党の会合に集まっている場で,世論調査を行った場合,一般的な意見とは違うものとなってしまいます。
3 電話調査は,近年,固定電話に加え,携帯電話を持つ人が増えてきたため,回収率が高いというメリットがある。
これも間違いです。
携帯電話では,知らない番号からかかってきたら電話には出ないという人は結構います。
そのため,携帯電話が普及したとしても,回収率が高くなるは限りません。
4 留置調査は,調査票を配布したその場で回答がなされないため,他の方法に比べて回収率が低いというデメリットがある。
これも間違いです。
郵送調査は,突然送られてくることが多いので,調査に協力しようと思う人はそれほど多くはありません。
それに対して,留置調査は,調査員が訪問してお願いするので,協力してくれる可能性は高いです。
回収率が低いのは,郵送調査
これだけはしっかり押さえておきたいです。
5 インターネット調査は,インターネット上で調査対象者を公募する場合,代表性の偏りが生じるというデメリットがある。
これが正解です。
経費も労力も最もかからないのは,インターネット調査です。インターネットにつながるPC等があれば,実施することができます。
しかし,インターネット調査は,調査に協力してくれる人がその内容に興味がある人が回答します。
興味がない人はそこにアクセスすることもわざわざ時間をかけて回答することもないでしょう。
現在のところ,インターネット調査で無作為抽出する方法は開発されていません。
<今日の一言>
今日の問題は,決して難易度が高い問題ではありません。
そのため,解説を読めば「ああ,なるほど」とわかるでしょう。
しかし,国試会場で正しく正解を選ぶのは,簡単ではありません。
先述のように,柔軟な思考と想像力が必要だからです。
国試対策としてたくさんの問題を解く必要があるのは,柔軟な思考と想像力を高める訓練でもあるのです。
社会科学系の学問である社会福祉学は,看護学や医学などの自然科学系とは違った難しさが存在しています。
2019年1月12日土曜日
調査票の配布と回収(3/5)~想像力の必要性
社会福祉士の国試の文字数は年々短くなっています。
その結果として知識をしっかりつけてきた人は高い点数が取れるようになっています。
厚生労働省&社会福祉士試験・振興センターでは,受験者の得点分布等は一切発表していません。しかし,目指している方向性は見えます。
上位30%の人が,90点以上取れる試験
第26回国試以降,つまり試験委員長が現在の坂田周一先生になってから,それをずっと目指して国試問題改革を行っているように思います。
それによって何が起きているのか?
受験者の点数の開きが広がってきているのです。
第30回国試では,もしかすると135点以上を取った人がいるのではないかと思います。
一方では,50点台の人もいたことでしょう。
点数が取れる人は満点に近い点数が取れて,点数が取れない人は全然取れないという2極化が進んでいます。
その理由はいくつかがありますが,想像力が求められる問題が含まれることもその一つとしてあるように思います。
勘の良いだけで点数が取れなくなっている一方,知識プラス想像力が求められる問題が出現しているのです。
こういった問題で点数が取れる人と取れない人では,どんどん差が広がります。
今日の問題もそんなタイプの問題です。
第28回・問題84 調査方法と調査票への記入の仕方に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。
2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に聴き取る自計式調査である。
3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。
4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。
5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。
「社会調査の基礎が苦手だ」という人は実にもったいないように思います。
専門科目は,法制度の科目が多いため,この科目に力を入れない人が多いこともあると思います。しかし,決して難易度が高い問題が多いわけではありません。
それでは,その辺りののことを踏まえながら,解説していきたいと思います。
1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。
これは間違いです。
郵送調査は,郵送料がかかるので,経費が多くかかると思うかもしれません。
しかし,経費は定型封筒で送った場合,84円×2(往復分)=168円です。
1,000件に送った場合,168,000円
留置調査の場合は,徒歩圏内なら無料です。
しかし,そうでない場合は交通費がかかります。往復300円だとすれば,300,000円です。
これは個別面接調査も同じです。
電話調査は,電話代だけなので,郵送調査よりも安いかもしれません。
次に労力です。
郵送調査は,コピー,封入して投函すれば終わります。あとは果報は寝て待て。返信があるのを待ちます。
留置調査も訪問面接調査も移動して訪問して説明しなければなりません。訪問面接調査ではさらにその場で面接する時間もかかります。
電話調査は電話をかけて聞き取るので,移動時間がない分,訪問面接調査よりも時間はかかりません。
これでわかるように,郵送調査は経費,労力ともかからない調査法なのです。そのため,量的調査では,実施されることが多くなります。
長々と書きましたが,国試ではこれらを瞬時に考えなければなりません。
ポイントは,郵送調査は,経費,労力ともかからない調査法である,ということです。
2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に聴き取る自計式調査である。
これも間違いです。
自計式,他計式がわかっていないと間違えます。
自計式の「自」は,調査対象者が調査票に記入することをいいます。調査員が聞き取り内容を調査票に記入するのは「他計式」です。
電話調査は,他計式です。
3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。
これも間違いです。
こんな問題が出題されると勉強不足を実感するかもしれません。
ここで想像力が必要です。留置調査は,経費も労力もかかる調査方法です。一般的にはあまり実施されないだろうと想像することができそうです。
最も多いのは,経費も労力もかからない郵送調査でした。
4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。
これが正解です。
訪問面接調査は,調査員が調査票に記入します。
5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。
これも間違いです。
自計式は,調査対象者が記入するので,質問の意味を正しく記入するかどうかは,その対象者の能力によって変わります。
一般的に他計式の方が正しく記入することができます。
なぜなら,他計式の場合は,調査員が質問して,答えてもらったものを記入するので,うまく答えられなかった場合,質問をかみ砕いて説明することができるからです。
<今日の一言>
「調査票の配布と回収」で出題されているのは以下の項目です。
郵送調査法
個別面接調査法
RDD
集合調査法
留置調査法
インターネット調査
自記式(自計式)
他記式(他計式)
たった8項目しかありません。
用語を丸暗記する勉強法をしている人がいます。
国試では同じ表現で出題されることはありません。
そのため,丸暗記の勉強法は極めて危険です。
今日の問題のように,想像力が求められる時には対応が難しくなってしまうからです。
第32回国試を目指している方には,強くお勧めしたいのは,文章の中で得に重要な部分を自分なりに考えて,ポイントを押さえる勉強法です。
例えば,
郵送調査では,経費も労力もかからない手軽に行える方法だが,その分回収率が低くなる。
といった感じです。
第31回国試を受験される方は,これから覚え直しをする時間はありません。
問題を解きながら,ポイントを押さえていくことが極めて重要です。足りない知識は,想像力でカバーできます。
今日の問題では,
3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。
がそれに当たります。
留置調査の代表は,国勢調査です。2015年調査からネットでの回答もできるようになりましたが,基本的には留置調査で全数調査を行っています。
調査票の配布と回収を行っているのは,アルバイトの人です。事前の説明会を開いてやり方を伝えて実施します。手軽にはできない調査です。
サンプル数が30件くらいなら,なんとか一人でもできるかもしれません。
それでも多大な時間がかかります。
時間がかかるのは,社会調査にとっては大きなデメリットとなります。
その理由は,最初に調査した人と最後に調査した人ではタイムラグが生じるので,その間に状況は変わっているかもしれないかもしれません。
極端な例を挙げると,メディアが行う世論調査はRDDで行われるのが一般的です。
最も時間がかからないで実施できるからです。
今日と一週間後では,大きく意見が変わることさえあります。
そんなことからメディアが留置調査を行うことは,まずあり得ないと考えられます。
人によっては,限られた時間の中で,想像力を働かせて答えることはできない,と思う人もいるいもしれません。
しかし,チャレンジするのは社会福祉士の国家試験です。
社会福祉士=ソーシャルワーカーではありませんが,ソーシャルワーカーは常に想像力が求められます。
クライエントに合わせて柔軟な対応が必要です。
瞬時に考えて,行動しなければなりません。ソーシャルワークの特徴は,基本的にワーカーとクライエントとの関係は,1対1であることです。
対応に困っても周りには,自分を助けてくれる人はいません。
そういった中で常に適切な判断が求められます。
社会福祉士の国試は,あるべき社会福祉士像を目指して出題されます。
想像力を試されたり,足りない知識をしながら解く問題が出題されるのは,社会福祉士にそういった能力が求められているからにほかなりません。
限られた時間の中で,想像力を働かせて答えることはできない
と思う人は,国が考えている社会福祉士像に合致していないと言えます。
国試で出題される問題の多くは,過去に出題されたものが繰り返し出題されています。
それはこのブログで紹介し続けているのでわかるでしょう。
しかし,同じ表現で出題されることはありませんから,必ず思考しなければなりません。
今日の問題も解説を読めば,決して難しくはないはずです。
実際に正解するのは決して簡単なものではありません。
想像してごらん
ジョン・レノンは,世界中の人に問いかけました。
社会福祉士の国試でも同じです。
想像してごらん
そうすれば,必ず道は開けます。
少々わからない言葉があっても,想像力でカバーしましょう。
たくさんの問題を解くことは,想像力を高めることにつながります。
社会福祉士としてのスキルも高まります。
<おまけ>
今日の問題で正解するために必要な知識は,自計式,他計式を正しく覚えていることです。
2つある場合は,セット入れ替え手法に気を付けましょう。
セット入れ替え手法対策
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_5.html
その結果として知識をしっかりつけてきた人は高い点数が取れるようになっています。
厚生労働省&社会福祉士試験・振興センターでは,受験者の得点分布等は一切発表していません。しかし,目指している方向性は見えます。
上位30%の人が,90点以上取れる試験
第26回国試以降,つまり試験委員長が現在の坂田周一先生になってから,それをずっと目指して国試問題改革を行っているように思います。
それによって何が起きているのか?
受験者の点数の開きが広がってきているのです。
第30回国試では,もしかすると135点以上を取った人がいるのではないかと思います。
一方では,50点台の人もいたことでしょう。
点数が取れる人は満点に近い点数が取れて,点数が取れない人は全然取れないという2極化が進んでいます。
その理由はいくつかがありますが,想像力が求められる問題が含まれることもその一つとしてあるように思います。
勘の良いだけで点数が取れなくなっている一方,知識プラス想像力が求められる問題が出現しているのです。
こういった問題で点数が取れる人と取れない人では,どんどん差が広がります。
今日の問題もそんなタイプの問題です。
第28回・問題84 調査方法と調査票への記入の仕方に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。
2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に聴き取る自計式調査である。
3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。
4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。
5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。
「社会調査の基礎が苦手だ」という人は実にもったいないように思います。
専門科目は,法制度の科目が多いため,この科目に力を入れない人が多いこともあると思います。しかし,決して難易度が高い問題が多いわけではありません。
それでは,その辺りののことを踏まえながら,解説していきたいと思います。
1 郵送調査,留置調査,個別面接調査,電話調査の中で,実対象数を同じとすれば,調査の実施に当たっての経費と労力が最もかかるのは,郵送調査である。
これは間違いです。
郵送調査は,郵送料がかかるので,経費が多くかかると思うかもしれません。
しかし,経費は定型封筒で送った場合,84円×2(往復分)=168円です。
1,000件に送った場合,168,000円
留置調査の場合は,徒歩圏内なら無料です。
しかし,そうでない場合は交通費がかかります。往復300円だとすれば,300,000円です。
これは個別面接調査も同じです。
電話調査は,電話代だけなので,郵送調査よりも安いかもしれません。
次に労力です。
郵送調査は,コピー,封入して投函すれば終わります。あとは果報は寝て待て。返信があるのを待ちます。
留置調査も訪問面接調査も移動して訪問して説明しなければなりません。訪問面接調査ではさらにその場で面接する時間もかかります。
電話調査は電話をかけて聞き取るので,移動時間がない分,訪問面接調査よりも時間はかかりません。
これでわかるように,郵送調査は経費,労力ともかからない調査法なのです。そのため,量的調査では,実施されることが多くなります。
長々と書きましたが,国試ではこれらを瞬時に考えなければなりません。
ポイントは,郵送調査は,経費,労力ともかからない調査法である,ということです。
2 電話調査は,調査員が質問をしながら調査票に聴き取る自計式調査である。
これも間違いです。
自計式,他計式がわかっていないと間違えます。
自計式の「自」は,調査対象者が調査票に記入することをいいます。調査員が聞き取り内容を調査票に記入するのは「他計式」です。
電話調査は,他計式です。
3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。
これも間違いです。
こんな問題が出題されると勉強不足を実感するかもしれません。
ここで想像力が必要です。留置調査は,経費も労力もかかる調査方法です。一般的にはあまり実施されないだろうと想像することができそうです。
最も多いのは,経費も労力もかからない郵送調査でした。
4 訪問面接調査法では,記入要領を理解した調査員が,調査対象者との面接で聞き取った内容を調査票に記入する。
これが正解です。
訪問面接調査は,調査員が調査票に記入します。
5 調査票への記入の仕方として自計式は,他計式と比べて,質問の意味を正しく理解し回答を正しく記入しやすい。
これも間違いです。
自計式は,調査対象者が記入するので,質問の意味を正しく記入するかどうかは,その対象者の能力によって変わります。
一般的に他計式の方が正しく記入することができます。
なぜなら,他計式の場合は,調査員が質問して,答えてもらったものを記入するので,うまく答えられなかった場合,質問をかみ砕いて説明することができるからです。
<今日の一言>
「調査票の配布と回収」で出題されているのは以下の項目です。
郵送調査法
個別面接調査法
RDD
集合調査法
留置調査法
インターネット調査
自記式(自計式)
他記式(他計式)
たった8項目しかありません。
用語を丸暗記する勉強法をしている人がいます。
国試では同じ表現で出題されることはありません。
そのため,丸暗記の勉強法は極めて危険です。
今日の問題のように,想像力が求められる時には対応が難しくなってしまうからです。
第32回国試を目指している方には,強くお勧めしたいのは,文章の中で得に重要な部分を自分なりに考えて,ポイントを押さえる勉強法です。
例えば,
郵送調査では,経費も労力もかからない手軽に行える方法だが,その分回収率が低くなる。
といった感じです。
第31回国試を受験される方は,これから覚え直しをする時間はありません。
問題を解きながら,ポイントを押さえていくことが極めて重要です。足りない知識は,想像力でカバーできます。
今日の問題では,
3 「全国世論調査の現況(平成26年版)」(内閣府)によると,公的機関,大学,メディア,企業が実施した調査の中で最も多かったのは,留置法である。
がそれに当たります。
留置調査の代表は,国勢調査です。2015年調査からネットでの回答もできるようになりましたが,基本的には留置調査で全数調査を行っています。
調査票の配布と回収を行っているのは,アルバイトの人です。事前の説明会を開いてやり方を伝えて実施します。手軽にはできない調査です。
サンプル数が30件くらいなら,なんとか一人でもできるかもしれません。
それでも多大な時間がかかります。
時間がかかるのは,社会調査にとっては大きなデメリットとなります。
その理由は,最初に調査した人と最後に調査した人ではタイムラグが生じるので,その間に状況は変わっているかもしれないかもしれません。
極端な例を挙げると,メディアが行う世論調査はRDDで行われるのが一般的です。
最も時間がかからないで実施できるからです。
今日と一週間後では,大きく意見が変わることさえあります。
そんなことからメディアが留置調査を行うことは,まずあり得ないと考えられます。
人によっては,限られた時間の中で,想像力を働かせて答えることはできない,と思う人もいるいもしれません。
しかし,チャレンジするのは社会福祉士の国家試験です。
社会福祉士=ソーシャルワーカーではありませんが,ソーシャルワーカーは常に想像力が求められます。
クライエントに合わせて柔軟な対応が必要です。
瞬時に考えて,行動しなければなりません。ソーシャルワークの特徴は,基本的にワーカーとクライエントとの関係は,1対1であることです。
対応に困っても周りには,自分を助けてくれる人はいません。
そういった中で常に適切な判断が求められます。
社会福祉士の国試は,あるべき社会福祉士像を目指して出題されます。
想像力を試されたり,足りない知識をしながら解く問題が出題されるのは,社会福祉士にそういった能力が求められているからにほかなりません。
限られた時間の中で,想像力を働かせて答えることはできない
と思う人は,国が考えている社会福祉士像に合致していないと言えます。
国試で出題される問題の多くは,過去に出題されたものが繰り返し出題されています。
それはこのブログで紹介し続けているのでわかるでしょう。
しかし,同じ表現で出題されることはありませんから,必ず思考しなければなりません。
今日の問題も解説を読めば,決して難しくはないはずです。
実際に正解するのは決して簡単なものではありません。
想像してごらん
ジョン・レノンは,世界中の人に問いかけました。
社会福祉士の国試でも同じです。
想像してごらん
そうすれば,必ず道は開けます。
少々わからない言葉があっても,想像力でカバーしましょう。
たくさんの問題を解くことは,想像力を高めることにつながります。
社会福祉士としてのスキルも高まります。
<おまけ>
今日の問題で正解するために必要な知識は,自計式,他計式を正しく覚えていることです。
2つある場合は,セット入れ替え手法に気を付けましょう。
セット入れ替え手法対策
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/01/blog-post_5.html
2019年1月11日金曜日
調査票の配布と回収(2/5)
質問紙に記入する方法は
調査対象者が記入する自記式(自計式)
調査者が記入する他記式(他計式)
があります。
自記式の「自」というのは誰のことを言っているのか分かりにくいので,国試ではこういったところがねらわれます。
自記式の「自」は,自分(調査者)ではなく,調査対象者のことを指します。
しっかり押さえましょう。
それでは今日の問題です。
第26回・問題86 質問紙を用いる調査方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 訪問面接法,留置法,郵送法,電話法を自記式か他記式かに着目して分類すると,訪問面接法と電話法が他記式であり,留置法と郵送法が自記式である。
2 犯罪や性行動など,多くの調査対象者が自分からは答えたがらない質問内容については,郵送法よりは調査員が訪問して質問する訪問面接法の方が適している。
3 訪問面接法では,調査員と調査対象者が面接することになるが,両者の関係によって回答結果が影響を受けることはない。
4 他記式に比べて自記式は,社会的に望ましい内容に同調する回答の選択を選びがちになる。
5 留置法では,調査票回収時に調査員が,本当に調査対象者が回答を記入したかどうかのチェックをしてはいけない。
想像力が必要な問題は結構あります。
頭を柔らかくしておくことが必要です。これについては<今日の一言>で解説します。
それでは解説です。
1 訪問面接法,留置法,郵送法,電話法を自記式か他記式かに着目して分類すると,訪問面接法と電話法が他記式であり,留置法と郵送法が自記式である。
これが正解です。
訪問面接法と電話法は調査者が記入するので,他記式です。
留置法は,調査者が調査対象者に調査票を渡して,後日回収するといった配布・回収う方です。留置法と郵送法は自記式です。
2 犯罪や性行動など,多くの調査対象者が自分からは答えたがらない質問内容については,郵送法よりは調査員が訪問して質問する訪問面接法の方が適している。
これは間違いです。
人に言いにくいことは,自記式の方が向いています。
「私は〇〇フェチです」なんてことは,調査員には言いにくいものでしょう。
想像力が求められる問題です。
これと同じようなタイプの問題が第30回にも出題されています。
訪問面接調査法は,プライバシーに関わる質問をするのに適している。
今日の問題と同じように,訪問面接調査法などの他記式は,人に言いにくいものはあまり適さないと言えます。人に言いにくい質問は,郵送法,留置調査法など,自記式が適します。
この問題は後日詳しく解説します。
3 訪問面接法では,調査員と調査対象者が面接することになるが,両者の関係によって回答結果が影響を受けることはない。
これも間違いです。
調査員と調査対象者がもし知り合いであれば,「この人はこんなことを考えていたのか」と思われたくないという心理が働くこともあります。
そうすると,無難な回答をするかもしれません。たとえ知り合いでなくとも,同じような心理は働くことは十分に考えられます。
4 他記式に比べて自記式は,社会的に望ましい内容に同調する回答の選択を選びがちになる。
これも間違いです。
社会的に望ましい内容に同調する回答の選択を選びがちになるのは,他記式です。自分で記入する自記式では比較的本音で答えやすくなります。
5 留置法では,調査票回収時に調査員が,本当に調査対象者が回答を記入したかどうかのチェックをしてはいけない。
これも間違いです。
留置法では,誰が実際に記入したのかが分からないので,回収時に確認するのは大切なことです。
<今日の一言>
国家試験で,何度も受験してもなかなか合格できないという人の傾向を考えてみたいと思います。
今までの勉強を通して,知識は十分あると考えられます。
中には10回以上受験している人もいます。
第26回の国家試験を受験された方は,その時に今日の問題は解けたでしょうか。
多くの方は,解けなかったのではないかと考えます。
それと同じように第30回・問題88も正解できなかったのではないでしょうか(この問題は後日解説します)。
これらの問題は,「自記式」(自計式)「他記式」(他計式)の意味を正しく理解しておくという基礎力は最低限必要とされていますが,それに加えて想像力が必要です。
何度も国試にチャレンジされている方は,とてもまじめな方です。
そうでなければおそらくとっくに受験をあきらめていることでしょう。
しかし真面目な故に,国試ではがちがちになってしまって柔軟な思考ができなくなる傾向があります。
今日の問題は,「後から問題を読めば解けた」というタイプの問題だと思います。
よくよく読んでみたら,選択肢1の自記式,他記式の記述は正しいことが分かります。
しかし,国試で必要なことは,「後から問題を読めば解けた」ではなく,「試験会場で解けた」でなければなりません。
合格基準点に届かなかった人で「後から読んでも解ける問題がなかった」という方は,明らかに知識不足です。そういった方は,ひたすら1年をかけて勉強すべきです。
そうではなく,「後から問題を読めば解けた」という問題が数問あり,それが正解できていれば,合格点に到達していたという方が圧倒的に多いと思います。
そういった方は,要注意です。
抽象的な言い方をすれば,
慎重になりすぎて正解にたどりつけなかった
と言えるからです。
真面目な方は,勉強していた時に,分からない言葉が出てきたら,その都度調べて対応していたと思います。
しかし,国試会場では,調べることはできませんし,教えてくれる人もいません
国試で得点を伸ばす人の特徴は
答えが分からなくても,正解にたどりつくことができるセンスの持ち主です。
具体的に言えば,
大胆に考えることができる柔軟な思考です。
もちろんベースになる知識はしっかり持っていることは必要です。
しかしそれでも分からないものは出題されます。
その時に「これは●●のことを述べているのだろう」と推測するのと「この言葉は分からない。困った」と行き詰ってしまうのでは,大きな差があります。
「大胆に考える」とは,分からないことがあっても,おおよその意味をつかむことにほかなりません。
国家試験会場は独特の緊張感にあふれています。冷静になるのはとても難しいことです。
最後の力となるのは,
大胆に考える柔軟な思考です。
これができると国試では必ず合格基準点を超えることができます。
試験委員の仕掛けたトラップをうまく避けることができるからです。
慎重なことは必要です。
しかし慎重になりすぎて,ここに引っ掛けがあるのはないかと疑い始めたら自滅します。
今の国家試験問題は,文字数が少ないので言い回しで引っ掛けることでできないこともあり,素直に考えたほうが良い結果となります。
出題基準に示された内容をしっかり積み重ねてきた人は,ちゃんと合格基準点を超えられます。今の国試問題はそのように作られています。
後は,自信をもって,国試に臨む強いこころを持つことです。そうすれば,必ず合格基準点を超えられます。
特に何度も受験されてきた方は,強いこころをもって「大胆に考える」ということを心がけましょう。そうすれば,必ず合格基準点を超えられます。
出題基準に示された内容をしっかり積み重ねてきた人は,ちゃんと合格基準点を超えられるように今の国試問題は作られています。
自信をもって,国試に臨むことができる強いこころを持ちましょう!!
そのためには,必要以上に不安になることなく,今までの勉強をひたすら繰り返すことが何よりも大切です。
調査対象者が記入する自記式(自計式)
調査者が記入する他記式(他計式)
があります。
自記式の「自」というのは誰のことを言っているのか分かりにくいので,国試ではこういったところがねらわれます。
自記式の「自」は,自分(調査者)ではなく,調査対象者のことを指します。
しっかり押さえましょう。
それでは今日の問題です。
第26回・問題86 質問紙を用いる調査方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 訪問面接法,留置法,郵送法,電話法を自記式か他記式かに着目して分類すると,訪問面接法と電話法が他記式であり,留置法と郵送法が自記式である。
2 犯罪や性行動など,多くの調査対象者が自分からは答えたがらない質問内容については,郵送法よりは調査員が訪問して質問する訪問面接法の方が適している。
3 訪問面接法では,調査員と調査対象者が面接することになるが,両者の関係によって回答結果が影響を受けることはない。
4 他記式に比べて自記式は,社会的に望ましい内容に同調する回答の選択を選びがちになる。
5 留置法では,調査票回収時に調査員が,本当に調査対象者が回答を記入したかどうかのチェックをしてはいけない。
想像力が必要な問題は結構あります。
頭を柔らかくしておくことが必要です。これについては<今日の一言>で解説します。
それでは解説です。
1 訪問面接法,留置法,郵送法,電話法を自記式か他記式かに着目して分類すると,訪問面接法と電話法が他記式であり,留置法と郵送法が自記式である。
これが正解です。
訪問面接法と電話法は調査者が記入するので,他記式です。
留置法は,調査者が調査対象者に調査票を渡して,後日回収するといった配布・回収う方です。留置法と郵送法は自記式です。
2 犯罪や性行動など,多くの調査対象者が自分からは答えたがらない質問内容については,郵送法よりは調査員が訪問して質問する訪問面接法の方が適している。
これは間違いです。
人に言いにくいことは,自記式の方が向いています。
「私は〇〇フェチです」なんてことは,調査員には言いにくいものでしょう。
想像力が求められる問題です。
これと同じようなタイプの問題が第30回にも出題されています。
訪問面接調査法は,プライバシーに関わる質問をするのに適している。
今日の問題と同じように,訪問面接調査法などの他記式は,人に言いにくいものはあまり適さないと言えます。人に言いにくい質問は,郵送法,留置調査法など,自記式が適します。
この問題は後日詳しく解説します。
3 訪問面接法では,調査員と調査対象者が面接することになるが,両者の関係によって回答結果が影響を受けることはない。
これも間違いです。
調査員と調査対象者がもし知り合いであれば,「この人はこんなことを考えていたのか」と思われたくないという心理が働くこともあります。
そうすると,無難な回答をするかもしれません。たとえ知り合いでなくとも,同じような心理は働くことは十分に考えられます。
4 他記式に比べて自記式は,社会的に望ましい内容に同調する回答の選択を選びがちになる。
これも間違いです。
社会的に望ましい内容に同調する回答の選択を選びがちになるのは,他記式です。自分で記入する自記式では比較的本音で答えやすくなります。
5 留置法では,調査票回収時に調査員が,本当に調査対象者が回答を記入したかどうかのチェックをしてはいけない。
これも間違いです。
留置法では,誰が実際に記入したのかが分からないので,回収時に確認するのは大切なことです。
<今日の一言>
国家試験で,何度も受験してもなかなか合格できないという人の傾向を考えてみたいと思います。
今までの勉強を通して,知識は十分あると考えられます。
中には10回以上受験している人もいます。
第26回の国家試験を受験された方は,その時に今日の問題は解けたでしょうか。
多くの方は,解けなかったのではないかと考えます。
それと同じように第30回・問題88も正解できなかったのではないでしょうか(この問題は後日解説します)。
これらの問題は,「自記式」(自計式)「他記式」(他計式)の意味を正しく理解しておくという基礎力は最低限必要とされていますが,それに加えて想像力が必要です。
何度も国試にチャレンジされている方は,とてもまじめな方です。
そうでなければおそらくとっくに受験をあきらめていることでしょう。
しかし真面目な故に,国試ではがちがちになってしまって柔軟な思考ができなくなる傾向があります。
今日の問題は,「後から問題を読めば解けた」というタイプの問題だと思います。
よくよく読んでみたら,選択肢1の自記式,他記式の記述は正しいことが分かります。
しかし,国試で必要なことは,「後から問題を読めば解けた」ではなく,「試験会場で解けた」でなければなりません。
合格基準点に届かなかった人で「後から読んでも解ける問題がなかった」という方は,明らかに知識不足です。そういった方は,ひたすら1年をかけて勉強すべきです。
そうではなく,「後から問題を読めば解けた」という問題が数問あり,それが正解できていれば,合格点に到達していたという方が圧倒的に多いと思います。
そういった方は,要注意です。
抽象的な言い方をすれば,
慎重になりすぎて正解にたどりつけなかった
と言えるからです。
真面目な方は,勉強していた時に,分からない言葉が出てきたら,その都度調べて対応していたと思います。
しかし,国試会場では,調べることはできませんし,教えてくれる人もいません
国試で得点を伸ばす人の特徴は
答えが分からなくても,正解にたどりつくことができるセンスの持ち主です。
具体的に言えば,
大胆に考えることができる柔軟な思考です。
もちろんベースになる知識はしっかり持っていることは必要です。
しかしそれでも分からないものは出題されます。
その時に「これは●●のことを述べているのだろう」と推測するのと「この言葉は分からない。困った」と行き詰ってしまうのでは,大きな差があります。
「大胆に考える」とは,分からないことがあっても,おおよその意味をつかむことにほかなりません。
国家試験会場は独特の緊張感にあふれています。冷静になるのはとても難しいことです。
最後の力となるのは,
大胆に考える柔軟な思考です。
これができると国試では必ず合格基準点を超えることができます。
試験委員の仕掛けたトラップをうまく避けることができるからです。
慎重なことは必要です。
しかし慎重になりすぎて,ここに引っ掛けがあるのはないかと疑い始めたら自滅します。
今の国家試験問題は,文字数が少ないので言い回しで引っ掛けることでできないこともあり,素直に考えたほうが良い結果となります。
出題基準に示された内容をしっかり積み重ねてきた人は,ちゃんと合格基準点を超えられます。今の国試問題はそのように作られています。
後は,自信をもって,国試に臨む強いこころを持つことです。そうすれば,必ず合格基準点を超えられます。
特に何度も受験されてきた方は,強いこころをもって「大胆に考える」ということを心がけましょう。そうすれば,必ず合格基準点を超えられます。
出題基準に示された内容をしっかり積み重ねてきた人は,ちゃんと合格基準点を超えられるように今の国試問題は作られています。
自信をもって,国試に臨むことができる強いこころを持ちましょう!!
そのためには,必要以上に不安になることなく,今までの勉強をひたすら繰り返すことが何よりも大切です。
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