2020年4月21日火曜日

保護観察の方法~少年の保護処分


少年法による少年の年齢は,20歳未満です。

成年の年齢が18歳に引き下げられるので,少年法の少年の年齢の引き下げもあるかもしれませんが,現在のところは,国民の意見がまとまらないこともあり,引き下げの予定はありません。

そのために,国家試験では覚えるのがちょっと複雑になります。


少年の定義
少年法
二十歳に満たない者
児童福祉法
小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者


さて,今回は,少年司法について取り上げます。


非行少年の類型
犯罪少年
14歳以上で,罪を犯した少年。
触法少年
14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年
虞犯少年
その性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞(おそれ)のある少年


<犯罪少年>

警察の取り調べを受けた上で,検察に送致し,検察は家庭裁判所に送致,あるいは家庭裁判所に直接送致されます。

家庭裁判所は,以下の審判を行います。

①保護処分
②検察への送致(逆送致)
③不処分

①保護処分
「保護観察処分(1号観察)」「少年院送致」「児童自立支援施設・児童養護施設送致」の3種類があります。

②検察への送致(逆送致)
家庭裁判所が刑罰を受けることが相当だと判断した場合,検察に送致します。検察から送致されたものをまた検察に戻す形になるので「逆送致」と呼ばれます。
逆送致の結果,検察が起訴すると,地方裁判所による裁判を受けることになります。

③不処分
児童福祉法の児童相談所に送致されます。


<触法少年・虞犯少年>

児童福祉法が優先され,児童相談所に送致されます。

児童相談所が保護処分が必要だと判断した場合,家庭裁判所に送致されます。

犯罪少年と異なり,触法少年と虞犯少年は,検察への送致(逆送致)はありません。
そのため,裁判を受けることはありません。


今日の問題に入る前に,少年の保護観察対象を確認しましょう。

 1号観察と2号観察
1号観察
2号観察
対象
保護観察処分を受けた少年
少年院から仮退院した少年
良好措置
仮解除
退院
不良措置
少年院送致など
仮退院の取消し


それでは,今日の問題です。


27回・問題147 少年に対する保護処分として言い渡される保護観察(以下「1号観察」という。)と,少年院仮退院者に付される保護観察(以下「2号観察」という。)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 1号観察は家庭裁判所が決定するが,2号観察は少年院の長が決定する。

2 対象者が成績良好の場合,1号観察には仮解除や解除といった良好措置があるが,2号観察には良好措置はない。

3 対象者が遵守事項に違反した場合,1号観察も2号観察も地方更生保護委員会の決定により少年院に収容されることになる。

4 1号観察も2号観察も,対象者が成人(20歳)に達した後でも行われることがある。

5 1号観察では一般遵守事項しか付されないが,2号観察では一般遵守事項に加えて特別遵守事項が必ず付される。



正解は,選択肢4です。

 4 1号観察も2号観察も,対象者が成人(20歳)に達した後でも行われることがある。


1号観察は,わかりやすいと思います。

20歳まで保護観察に付されますが,20歳まで2年未満の場合は,2年間実施されます。

2号観察の場合は,説明が面倒なので「原則20歳まで」とだけ書いておきました。

少年院は,「少年」という名称がついていますが,最高26歳まで収容されます。
20歳を超える仮退院した者が不良措置で戻し収容する際,23歳を超えない期間。
23歳を超える仮退院した者が不良措置で戻し収容する際,26歳を超えない期間。

ということで,2号観察も最高26歳まで保護観察に付される可能性があります。

解答テクニック的には「ことがある」は正解になりやすいものです。
覚えておきましょう。

それではほかの選択肢も見てみましょう。


1 1号観察は家庭裁判所が決定するが,2号観察は少年院の長が決定する。

1号観察を決定するのは,家庭裁判所です。
2号観察を決定するのは,地方更生保護委員会です。


2 対象者が成績良好の場合,1号観察には仮解除や解除といった良好措置があるが,2号観察には良好措置はない。

1号観察も2号観察も良好措置があります。

1号観察の良好措置は,「仮解除」です。
2号観察の良好措置は,「退院」です。


3 対象者が遵守事項に違反した場合,1号観察も2号観察も地方更生保護委員会の決定により少年院に収容されることになる。

1号観察の不良措置は,「少年院送致など」と書きました。
家庭裁判所は,保護処分として,

①保護観察処分
②少年院送致
③児童自立支援施設・児童養護施設送致

を決定します。

そのうち,最も軽い処分が①保護観察処分,最も重い処分が②少年院送致です。

保護観察処分の1号観察の場合の不良措置は,保護観察処分よりも重い処分である

②少年院送致
③児童自立支援施設・児童養護施設送致

を決定することになります。

つまり,少年院送致だけではなく,児童自立支援施設送致,児童養護施設送致もあるということになります。


5 1号観察では一般遵守事項しか付されないが,2号観察では一般遵守事項に加えて特別遵守事項が必ず付される。

特別遵守事項は,必要な場合,1号観察,2号観察ともに付されます。



<今日の一言>

保護観察制度は複雑です。

一つの制度ですが,1~4号観察まであること,しかも少年と成年に分かれているからです。

一度,インターネット等で調べてもみて,きちっと整理することをおすすめします。

しかし,今日の問題のように,内容が必ずしも覚えていなくても,解答テクニック的に解ける問題もあることを覚えておきましょう。

そう思えると,国試当日のプレッシャーはかなり軽減するはずです。

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