2020年7月10日金曜日

都道府県が保険者となる社会保険制度



わが国の社会保険制度は,5つあります。

そのうち,都道府県が保険者となるのは,国民健康保険のみです。
平成30年の制度改正によって,都道府県は,市町村とともに国民健康保険の保険者となり,運営の責任主体となりました。

  
社会保険を押さえる時の基本
●誰が取り扱うの?(保険者)
●誰が加入するの?(被保険者)
●誰が保険料を負担するの?(社会保険料負担)
●誰が保険料を納付するの?(納付義務者)
●どんな時に給付されるの?(保険事故)
●どのくらい払うの?(保険料率)


保険者を押さえるのは,社会保険制度を整理して覚えるときの基本の一つです。

それでは今日の問題です。

29回・問題43 地方公共団体が関わる社会保険等に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 後期高齢者医療は都道府県が保険者となる。

2 後期高齢者医療の給付に要する費用の3分の2は,保険料で賄われている。

3 国民健康保険と健康保険との間では,財政調整は行われない。

4 介護保険では市町村で組織する広域連合が保険者となることができる。

5 介護保険の財源として,国は各保険者に対し介護給付及び予防給付に要する費用の25%を一律に負担する。


簡単だと思う人には,とても簡単です。
簡単だと思えない人には,難しい問題です。

つまり,消去法ではなく,「答えはこれ!」とわかる問題です。

正解は,選択肢4です。

4 介護保険では市町村で組織する広域連合が保険者となることができる。

介護保険に関する事務を広域連合で行っている市町村に住んでいる人は,ちょっぴり有利だったかもしれません。

それでは,ほかの選択肢も解説します。


1 後期高齢者医療は都道府県が保険者となる。

後期高齢者医療制度は,老人保健法が「高齢者医療確保法」(高齢者の医療の確保に関する法律)に改正されたときに創設された医療制度です。


  
後期高齢者医療制度の基本
誰が取り扱うの?
(保険者)
都道府県の区域ごとに当該区域内のすべての市町村が加入する広域連合
誰が加入するの?
(被保険者)
後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の者

後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する65歳以上75歳未満の者であって,厚生労働省令で定める程度の障害の状態にある旨の当該後期高齢者医療広域連合の認定を受けたもの
誰が保険料を負担するの?
(社会保険料負担)
保険料 1割,
後期高齢者支援金 約4割
 (現役世代の医療保険者からの拠出金)
公費 約5割
誰が保険料を納付するの?
(納付義務者)
本人&世帯主&配偶者の一方
どんな時に給付されるの?
(保険事故)
高齢者の疾病,負傷又は死亡
どのくらい払うの?
(保険料率)
政令で定める基準に従い,後期高齢者医療広域連合の条例で定める。
(後期高齢者医療広域連合の全区域にわたって均一の保険料率)


2 後期高齢者医療の給付に要する費用の3分の2は,保険料で賄われている。

保険料 1割
後期高齢者支援金 約4割
公費 約5割


3 国民健康保険と健康保険との間では,財政調整は行われない。

被用者が定年などで退職すると,健康保険から国民健康保険に加入することとなります。

そのため,前期高齢者(6574歳)の医療費が増大し,体力のない市町村国民健康保険は,財政負担が大きくなってしまいます。

そこで,被用者の医療保険者から「前期高齢者医療制度」により前期高齢者納付金を拠出してもらい,国民健康保険の負担を軽減しています。


5 介護保険の財源として,国は各保険者に対し介護給付及び予防給付に要する費用の25%を一律に負担する。

国は,介護給付及び予防給付に要する費用の25%を負担していますが,各保険者に対して一律に25%を負担しているわけではありません。

一律なのは20%で,残りの5%は,各保険者の財政によって調整する調整交付金です。



<今日の一言>


都道府県が保険者となる社会保険制度は,国民健康保険のみである!

都道府県が国民健康保険の保険者となったのは,2018(平成30)年の制度改正です。

保険者が変わることは,社会保険制度の根幹にかかわることです。
そのため,これは極めて重要な改正なのです。

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