生活保護にかかる費用は,約3.8兆円です。
この金額を高いとみるか,低いとみるかは,個々によって異なるかと思いますが,社会保障給付費約120兆円に占める割合は,決して高いものではないように思います。
さて,生活保護費の扶助別割合です。
医療扶助
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約50%
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生活扶助
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約30%
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住宅扶助
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約16%
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介護扶助
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約2%
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その他の扶助
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約1%
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その他の扶助には,生業扶助,助産扶助,教育扶助,葬祭扶助が含まれます。
全体の費用の半分は,医療扶助が占めます。
生活保護というと,生活扶助というイメージが強いですが,実際に費用が最もかかっているのは,医療扶助です。
生活保護費を削減するなら,生活扶助の保護基準を下げるのではなく,医療扶助の見直しでしょう。
聞くところによると,以前は,生活保護受給者だと医療費の取りはぐれがないので,必要以上の薬剤を処方する医療機関もあったらしいです。
実際,複数の医療機関にかかって,ダブって処方されることはよくあったようです。
現在は,できるだけジェネリック医薬品を使うように制度が変わりましたが,以前はそういったこともなかったようです。
不正受給があると世間の目が厳しくなりますが,いずれにせよ,生活扶助よりも医療扶助に多くかかっていることを覚えておきたいです。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題64 生活保護の動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 平成景気が終了した直後,生活保護受給世帯数が生活保護法施行後,最も多くなっている。
2 リーマンショック(2008年(平成20年))以降,受給者数は減少を続けている。
3 2014年(平成26年)の生活保護受給世帯人員別内訳では,単身世帯の占める割合が最も高くなっている。
4 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では,生活扶助費の占める割合が最も高くなっている。
5 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では,介護扶助費の占める割合が最も低くなっている。
この問題では,2015年度(平成27年度)のデータが問われていますが,現在も傾向はほぼ一緒です。
もし年度によって順位が変わるようなものがあった場合,国家試験では出題されない傾向があります。
そういったものがあると,どの年度の数字を覚えたらないのか,と不安になるでしょう。
しかし,そういったものはほぼ出題されないので,気にすることはありません。
国家試験では,明確なものを出題します。
それでは解説です。
1 平成景気が終了した直後,生活保護受給世帯数が生活保護法施行後,最も多くなっている。
生活保護受給世帯数は,1992年(平成4年)が最も少なく,その後,上昇していきます。
2 リーマンショック(2008年(平成20年))以降,受給者数は減少を続けている。
被保護実人員は,1995年(平成7)が最も少なく,その後,上昇しています。
3 2014年(平成26年)の生活保護受給世帯人員別内訳では,単身世帯の占める割合が最も高くなっている。
これが正解です。単身世帯(一人世帯)は,いつも7割以上を占めています。
4 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では,生活扶助費の占める割合が最も高くなっている。
最も多いのは,全体の半分を占める医療扶助です。
5 2015年度(平成27年度)の生活保護費扶助別内訳では,介護扶助費の占める割合が最も低くなっている。
その他の扶助(生業扶助,助産扶助,教育扶助,葬祭扶助)が最も少なくなっています。
このうち,最も少ないのは,助産扶助です。
介護扶助の割合は2%程度と低いですが,近年一貫して伸びていることを覚えておきましょう。