2020年7月28日火曜日

障害者虐待を発見した場合の対応法


今回は,障害者虐待防止法に取り組んでいきたいと思います。


障害者虐待の定義
・養護者による障害者虐待
・障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
・使用者による障害者虐待

3種類あるのが複雑なところです。

それぞれで対応法が少し異なります。



通報先
養護者による障害者虐待を発見した者
市町村
障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を発見した者
市町村
使用者による障害者虐待を発見した者
市町村又は都道府県



通報を受けた市町村の対応
養護者による障害者虐待の場合
事実確認及び市町村障害者虐待対応協力者との協議
障害者福祉施設従事者等の場合
障害者福祉施設の業務又は障害福祉サービス事業等の適正な運営の確保
使用者による障害者虐待の場合
事業所の所在地の都道府県に通知しなければならない



使用者による障害者虐待の場合のみ,都道府県が絡んでいます。

その理由は,都道府県が使用者による障害者虐待の通知を受けたときの対応として,当該通報等について,事業所の所在地を管轄する都道府県労働局に報告しなければならないからです。


それでは,今日の問題です。

29回・問題62 事例を読んで,この時点におけるP市障害者虐待防止センターの対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕
 精神障害のあるGさん(45歳,女性)は,父親(78歳)と二人暮らしである。母親は病死し,きょうだいはいない。最近,Gさんは,自分の障害年金が入っている預金通帳の残高が知らない間に減っていることに気付いた。Gさんは,父親が貯金を黙って下ろしているのではないかと疑い,父親に尋ねた。父親は否定し,大事には至らなかったが暴力を振るわれたとのことであった。相談を受けた民生委員は,直ちにP市障害者虐待防止センターに通報した。

1 Gさんへの父親からの,虐待に関する通報があったことを,都道府県に報告する。

2 Gさん宅への立ち入り調査を実施するため,警察署長に援助を求める。

3 Gさんの安全を確保するため,緊急一時保護の利用を勧める。

4 Gさんに関わる民生委員からの通報について,事実確認を行う。

5 Gさんのお金を父親から取り戻し,日常生活自立支援事業の利用を勧める。


障害者虐待防止センターとは,障害者虐待の通報の届出の受理などを行うための市町村の機能です。

センターとして設置される場合もありますし,市町村の関係部局がセンターの機能を果たすこともあります。

さて,この事例は,養護者による障害者虐待が疑われるものです。

発見者は,虐待の事実があるかどうかにかかわらず,市町村に通報しなければなりません。

養護者による障害者虐待が疑われる通報を受けた市町村の対応は,

①事実確認
②市町村障害者虐待対応協力者との協議


この問題は正解を1つ選ぶ問題ですから,

正解は,選択肢4

4 Gさんに関わる民生委員からの通報について,事実確認を行う。

だということになります。


<今日の一言>

法制度系の科目の事例問題は,事例問題として読むと間違える原因になるので注意が必要です。

この問題は,事例問題に見せかけて,障害者虐待防止法の知識が問われています。

1 Gさんへの父親からの,虐待に関する通報があったことを,都道府県に報告する。

は一見正しいように思えますが,都道府県に報告しなければならないのは,虐待の3つのうち,「使用者による障害者虐待」の場合のみです。

事例問題は,ポイントに気がつけば,迷う余地がないように作られます。

そうでないと,不適切問題になってしまう恐れがあるからです。

今日の問題のポイントは,虐待したと思われる者の種類によって,発見した者及び市町村の対応が異なることを知っていることです。

この問題の場合は,それを知らなくても正解はできますが,事例問題でミスしないために,そのポイントに気がつくことが大切です。

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