2020年7月6日月曜日

地域福祉にかかわる専門職いろいろ



「地域福祉の理論と方法」は,出題範囲が広いので苦手だと思っている人もいるかもしれません。

今日の問題は,苦手だと思っている人にとっては,嫌だと思うものでしょう。

さて,その前に,福祉用具について考えてみたいと思います。

介護保険法では,福祉用具は,購入と貸与があります。

〈福祉用具〉(介護保険法)
心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障がある要介護者等の日常生活上の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練のための用具であって、要介護者等の日常生活の自立を助けるためのもの。

福祉用具に関して,「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」(平成5年)があります。

この法律の福祉用具の定義は
心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人(以下単に「老人」という。)又は心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具及びこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具。

介護保険法では「日常生活の自立」という用語が加わっています。
「自立支援」がキーワードになっていたことをうかがわせます。

この法律では,以下のような規定があります。

(事業者等の責務)
第五条 福祉用具の製造の事業を行う者は、常に、老人及び心身障害者の心身の特性並びにこれらの者の置かれている環境を踏まえ、その製造する福祉用具の品質の向上及び利用者等からの苦情の適切な処理に努めなければならない。

2 福祉用具の販売又は賃貸の事業を行う者は、常に、老人及び心身障害者の心身の特性並びにこれらの者の置かれている環境を踏まえ、その管理に係る福祉用具を衛生的に取り扱うとともに、福祉用具の利用者の相談に応じて、当該利用者がその心身の状況及びその置かれている環境に応じた福祉用具を適切に利用できるように努めなければならない。

3 老人福祉施設、障害者支援施設その他の厚生労働省令で定める施設の開設者は、常に、老人及び心身障害者の心身の特性並びに当該施設の入所者等の心身の状況を踏まえ、必要な福祉用具の導入に努めなければならない。

こんな法律があることを知らない人もいるでしょう。

それでは,お待たせの今日の問題です。

29回・問題39 地域福祉に係る専門職及び組織に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護支援専門員の負う秘密保持義務は,その職を辞した後においては適用されない。

2 地域包括支援センター運営協議会の構成員は,当該自治体の関係部署の職員で組織される。

3 福祉用具の販売や賃貸を行う事業者は,老人及び心身障害者が福祉用具を適切に利用できるよう努めなければならない。

4 生活困窮者自立支援制度における主任相談支援員は,社会福祉士でなければならない。

5 市町村は,「障害者総合支援法」で定める基幹相談支援センターを自ら設置しなければならない。


正解は,

3 福祉用具の販売や賃貸を行う事業者は,老人及び心身障害者が福祉用具を適切に利用できるよう努めなければならない。

他の選択肢もみてみましょう。

1 介護支援専門員の負う秘密保持義務は,その職を辞した後においては適用されない。

その職を辞した後においても適用されます。

2 地域包括支援センター運営協議会の構成員は,当該自治体の関係部署の職員で組織される。

<構成員等>
運営協議会の構成員については、次に掲げるところを標準とし、センターの公正・中立性を確保する観点から地域の実情に応じて市町村長(特別区の区長を含む)が選定する。なお、構成員は非常勤とし、再任することができる。
① 介護サービス及び介護予防サービスに関する事業者及び職能団体(医師、歯科医師、看護師、介護支援専門員、機能訓練指導員等)
② 介護サービス及び介護予防サービスの利用者、介護保険の被保険者(第1号及び第2号)
③ 介護保険以外の地域の社会的資源や地域における権利擁護、相談事業等を担う関係者
④ 前各号に掲げる者のほか、地域ケアに関する学識経験者

4 生活困窮者自立支援制度における主任相談支援員は,社会福祉士でなければならない。

(ア)社会福祉士、精神保健福祉士、保健師として保健、医療、福祉、就労、教育等の分野における業務に5年以上従事している者であり、かつ、生活困窮者への相談支援業務その他の相談支援業務に3年以上従事している者
(イ)生活困窮者への相談支援業務その他の相談支援業務に5年以上従事している者
(ウ)相談支援業務に準ずる業務として、実施主体である自治体の長が認めた業務に5年以上従事している者

社会福祉士のみが資格要件になっているのは,地域包括支援センターしかありません。


5 市町村は,「障害者総合支援法」で定める基幹相談支援センターを自ら設置しなければならない。

基幹相談支援センターは,任意設置です。しかも委託することができます。



<今日の一言>


制度を知らなくても解ける問題がある

今日の問題では「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」の規定が正解となっています。

しかし,この法律を知らなければ正解できないというタイプの問題ではありません。

つまり,ほかの選択肢を消去することによって,正解が残ります。

正解するためには,確実に消去することが求められます。

近年の問題は,このタイプの問題がよく見られます。

途中,一つでも消去できない選択肢があると,絶対に正解にたどり着けないという極めて厳しい問題も存在しています。

辛い問題でもありますが,別の見方をすると,正解できる人とできない人が明確に分かれる問題だと言えます。

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