2020年7月12日日曜日

身体障害者福祉司&知的障害者福祉司の基礎知識



今回は,社会福祉かかわる専門職のうち,身体障害者福祉司と知的障害者福祉司を押さえていきたいと思います。

職名
身体障害者福祉司
知的障害者福祉司
根拠法
身体障害者福祉法
知的障害者福祉法
配置
都道府県は,その設置する身体障害者更生相談所に,身体障害者福祉司を置かなければならない。
都道府県は,その設置する知的障害者更生相談所に,知的障害者福祉司を置かなければならない。

市町村は,その設置する福祉事務所に,身体障害者福祉司を置くことができる。
市町村は,その設置する福祉事務所に,知的障害者福祉司を置くことができる。
業務
(都道府県の身体障害者福祉司)
・専門的な知識及び技術を必要とする身体障害者に関する相談及び指導。
・身体障害者の医学的・心理学的・職能的判定。
・障害者総合支援法に規定する補装具の処方及び適合判定 など
(都道府県の知的障害者福祉司)
・専門的な知識及び技術を必要とする知的障害者に関する相談及び指導。
18歳以上の知的障害者の医学的・心理学的・職能的判定 など。


(市町村の身体障害者福祉司)
・福祉事務所の所員に対する技術的指導 など
(市町村の知的障害者福祉司)
・福祉事務所の所員に対する技術的指導 など
任用資格
・社会福祉主事であって,身体障害者の福祉に関する事業に二年以上従事した経験を有するもの
・医師
・社会福祉士 など
・社会福祉主事であって,知的障害者の福祉に関する事業に二年以上従事した経験を有するもの
・医師
・社会福祉士 など


このように,2つの職種は,対象が身体障害者と知的障害者というように異なるだけで,そのほかはすべて共通しています。

覚えるのが楽ですね。

それでは,今日の問題です。


29回・問題45 社会福祉における専門職に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 知的障害者福祉司は,都道府県の設置する知的障害者更生相談所に配置されなければならない。

2 児童福祉司は,社会福祉士として2年以上児童福祉事業に従事した者のうちから任用しなければならない。

3 身体障害者福祉司は,市及び福祉事務所を設置する町村では,その設置する福祉事務所に配置されなければならない。

4 主任介護支援専門員は,保健師,社会福祉士と共に福祉事務所に配置されなければならない。

5 都道府県の社会福祉主事は,都道府県に設置する福祉事務所において,老人福祉法,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に関する事務を行う。


答えは,すぐわかりますね。

1 知的障害者福祉司は,都道府県の設置する知的障害者更生相談所に配置されなければならない。

これが正解です。

都道府県が必置で,市町村は任意配置なのは,身体障害者福祉司と同じです。

ほかの選択肢も見てみましょう。


2 児童福祉司は,社会福祉士として2年以上児童福祉事業に従事した者のうちから任用しなければならない。

児童福祉司の任用には,社会福祉士の場合は,実務経験を必要としません。

任用にあたって,社会福祉士の場合,実務経験を必要としないのは,身体障害者福祉司&知的障害者福祉司と同じです。


3 身体障害者福祉司は,市及び福祉事務所を設置する町村では,その設置する福祉事務所に配置されなければならない。

身体障害者福祉司を配置しなければならないのは,都道府県が設置する身体障害者更生相談所です。

市町村が設置する福祉事務所には,配置することができる「任意配置」となります。

これは,知的障害者福祉司と同じです。


4 主任介護支援専門員は,保健師,社会福祉士と共に福祉事務所に配置されなければならない。

主任介護支援専門員,保健師,社会福祉士が配置されなければならないのは,介護保険法の地域包括支援センターです。


5 都道府県の社会福祉主事は,都道府県に設置する福祉事務所において,老人福祉法,身体障害者福祉法,知的障害者福祉法に関する事務を行う。

都道府県に設置する福祉事務所がかかわるのは,生活保護法,児童福祉法,母子及び父子並びに寡婦福祉法です。

前回を思い起こしてみましょう。


解答テクニックでは絶対に解けない問題です。

特に複雑なのが,児童福祉法に関するものです。

通所関係は,市町村の取り扱い事務です。
入所関係は,都道府県の取り扱い事務です。

それに対して,障害者関係と高齢者関係は,入所も通所も市町村の取り扱い事務です。

これらは,1990(平成2)年の福祉関係八法改正により,都道府県から市町村に権限移譲されたからです。(八法改正では,高齢者と身体障害者,その後,2003年に知的障害者の入所措置が権限移譲された)

もともと都道府県の福祉事務所は,

生活保護法
児童福祉法
母子及び父子並びに寡婦福祉法

に加えて,

老人福祉法
身体障害者福祉法
知的障害者福祉法

の三法も取り扱っていましたが,これらは,町村に権限移譲されたため,都道府県では取り扱うことがなくなったのです。


<今日の一言>

1990(平成2)年の福祉関係八法改正は,必ず勉強するものでしょう。

これは決して過去の出来事ではありません。
今もそのままです。

歴史の出来事としかとらえていない人は,おそらく,第29回国試の問題44と問題45は,続けて落としてしまった可能性があります。

この問題も同じです。

31回・問題42 福祉行政における都道府県の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法の規定により,特別養護老人ホームに入所させる権限を持つ。
3 「障害者総合支援法」の規定により,介護給付の支給決定を行う。

4 児童福祉法の規定により,障害児入所施設に入所させる権限を持つ。
5 知的障害者福祉法の規定により,障害者支援施設に入所させる権限を持つ。

障害者と高齢者の入所措置は,市町村に権限移譲されているので,

1 老人福祉法の規定により,特別養護老人ホームに入所させる権限を持つ。
5 知的障害者福祉法の規定により,障害者支援施設に入所させる権限を持つ。

の2つは消去できます。

介護保険法と障害者総合支援法の実施主体は,市町村です。

2 介護保険法の規定により,介護保険の保険者とされている。
3 「障害者総合支援法」の規定により,介護給付の支給決定を行う。

の2つは消去できます。

4 児童福祉法の規定により,障害児入所施設に入所させる権限を持つ。

これが正解です。

児童福祉法に関して,

通所関係は,市町村の取り扱い事務です。
入所関係は,都道府県の取り扱い事務です。


覚えにくいから出題されます。
それをしっかり覚えた人だけが合格できます。

それが国試です。

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