2020年7月29日水曜日

福祉事務所を設置していない町村の役割


福祉事務所は,社会福祉法の規定により,都道府県及び市が設置しなければなりません。

町村は任意で設置することができます。

国家試験では,旧カリキュラムの時代から,

都道府県及び市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。

と何度も出題されていますが,間違わないようにしましょう。

福祉事務所の設置について出題された時は,町村がくっついていないか,目を皿のようにして,確認するようにしたいです。たった2文字を加えるだけで,誤ったものとなります。

正しいのは・・・

都道府県及び市は,福祉事務所を設置しなければならない。


間違っているのは・・・

都道府県及び市町村は,福祉事務所を設置しなければならない。


今は,冷静に読んでいるので,「こんなところに引っ掛かるわけがない」と思うでしょう。

しかし,国家試験会場の独特の雰囲気の中では,緊張し,文字が頭に入ってこなくなり,普段はしないミスをするものです。

こういった引っ掛けポイントを事前に知っておくと,ミスは減らせるでしょう。


福祉事務所の設置に関する問題の場合は,設置義務に「町村」を含めた記述になっていないか,必ず確認するようにしましょう。そこが見極めポイントです。


さて,町村は,福祉事務所の設置義務はありません。
しかし,福祉事務所を設置しなくても,生活保護に関する役割はあります。

よく知られるものには,職権保護があります。


職権保護
25条 
3 町村長は,要保護者が特に急迫した事由により放置することができない状況にあるときは,すみやかに,職権をもって第十九条第六項に規定する保護を行わなければならない。


応急的処置第十九条第六項)
福祉事務所を設置しない町村の長は,その町村の区域内において特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者に対して,応急的処置として,必要な保護を行うものとする。


さらに,第十九条第七項では,以下のように規定されます。(要約)


福祉事務所を設置していない町村の役割
7 町村長は,保護の実施機関又は福祉事務所の長が行う保護事務の適切な執行のため,次に掲げる事項を行う。
一 要保護者の発見,被保護者の生計その他の状況の変動を発見した場合,速やかに,保護の実施機関又は福祉事務所長に通報すること。
二 保護開始又は変更申請を受け取った場合,保護の実施機関に送付しなければならない。
三 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合,被保護者等に保護金品を交付すること。
四 保護の実施機関又は福祉事務所長から求められた場合,要保護者に関する調査を行うこと。


町村が福祉事務所を設置せずとも,役割はこのように定められています。

それでは,今日の問題です。


29回・問題63 生活保護制度について,国,都道府県及び市町村の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 国は,居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護に要する費用の全額を負担する。

2 厚生労働大臣以外の者は,生活保護法に基づく医療機関を指定することができない。

3 都道府県知事は,生活保護法に定める職権の一部をその管理に属する行政庁に委任することができない。

4 人口5万人未満の市は,福祉事務所を設置しなくてもよい。

5 福祉事務所を設置していない町村の長は,特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者に対して応急的な処置として必要な保護を行う。


制度の詳細を知らなくても,日本語的に解けそうな問題かもしれません。


正解は,選択肢5です。

5 福祉事務所を設置していない町村の長は,特に急迫した事由により放置することができない状況にある要保護者に対して応急的な処置として必要な保護を行う。


生活保護の基本原則には,「申請保護の原則」がありますが,急迫した事由がある場合は,職権で保護を行います。

それは,保護の実施機関のみならず,福祉事務所を設置していない町村にも課せられています。

それでは,ほかの選択肢です。

1 国は,居住地がないか,又は明らかでない被保護者の保護に要する費用の全額を負担する。


保護費の負担割合
4分の3
居住地が明らかな場合
(保護の実施機関を設置する地方公共団体)
4分の1
居住地が明らかではない場合
(都道府県)
4分の1


国の負担割合は,多くの制度で2分の1とされます。
保護費の負担割合が4分の3となっているのは,保護は国家責任で行うものだからです。

4分の3はレアです。ほかには,生活困窮者自立支援法の必須事業の負担割合が保護費と同じ4分の3です。


2 厚生労働大臣以外の者は,生活保護法に基づく医療機関を指定することができない。


医療機関の指定
国の開設した病院等
そのほかの病院等
都道府県知事



3 都道府県知事は,生活保護法に定める職権の一部をその管理に属する行政庁に委任することができない。

保護の実施機関は,保護の決定及び実施に関する事務の全部又は一部を、その管理に属する行政庁に委任することができます。


4 人口5万人未満の市は,福祉事務所を設置しなくてもよい。

人口にかかわらず,市は福祉事務所を設置しなければなりません。

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