「年齢のために覚えられない」と言う人がいますが,加齢を言い訳しているだけに聞こえます。
「記憶力に優れている」というのは,覚え方を工夫できる人のように思います。
国家試験に備えて押さえておかなければならない福祉計画の種類がたくさんあって辟易している人も多いことでしょう。
それぞれをまともに覚えようと思うと難しいです。
覚え方にはコツがあります。
覚え方のヒントとしては,共通性や異なることに着目することです。
ぜひいろいろ考えてみてください。
さて,福祉計画にももちろんコツがあります。
福祉計画の関連性です。
一体のもの
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整合性
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調和
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老人福祉計画
と
介護保険事業(支援)計画
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都道府県介護保険事業支援計画
と
都道府県計画
(医療介護総合確保推進法)
と
医療計画
(医療法)
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いっぱい
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障害福祉計画
と
障害児福祉計画
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市町村介護保険事業計画
と
市町村計画
(医療介護総合確保推進法)
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次世代育成支援対策推進法の行動計画策定指針では,
市町村行動計画等については、子ども・子育て支援事業計画と一体のものとして策定して差し支えなく,・・・
という記述がありますが,これは無視しても良いでしょう。
これを正解にしていた模擬試験がありましたが,ちょっと出題の品格を疑ってしまいます。その理由は,<今日の一言>で述べます。
模擬試験でこのような出題があると,受験生は不安になるのでやめてほしいものです。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題47 福祉計画等の策定に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 市町村障害者計画と市町村障害福祉計画は,一体のものとして策定されなければならない。
2 市町村は,市町村障害福祉計画を定めたときは,厚生労働大臣に提出しなければならない。
3 市町村は,市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画のうち,いずれか一つを策定すればよい。
4 市町村子ども・子育て支援事業計画は,都道府県知事の定める基本指針に即して策定される。
5 都道府県介護保険事業支援計画は,医療計画との整合性の確保が図られたものでなければならない。
勉強不足の人にとっては,かなり難易度が高いでしょう。
日本語的に消去できそうなものは,
3 市町村は,市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画のうち,いずれか一つを策定すればよい。
法制度で「いずれか一つを策定すればよい」みたいなゆるゆるのものはあり得ないでしょう。
市町村老人福祉計画と市町村介護保険事業計画は,ケアケースの「一体のものとして」の関係です。
正解は,
5 都道府県介護保険事業支援計画は,医療計画との整合性の確保が図られたものでなければならない。
もともと「整合性」の関係性はなかったのですが,いわゆる2025年問題への対応として,医療と介護を整合性の関係で結びつける法改正がなされています。
それでは,ほかの選択肢を確認しましょう。
1 市町村障害者計画と市町村障害福祉計画は,一体のものとして策定されなければならない。
この2つ関係性は,「調和が図られたもの」です。
2 市町村は,市町村障害福祉計画を定めたときは,厚生労働大臣に提出しなければならない。
市町村は,市町村障害福祉計画を定めたときの提出先は,都道府県知事です。
一般の市町村が中央官庁と直接つながることはないのではないでしょうか。
これだと都道府県のメンツ丸つぶれです。
4 市町村子ども・子育て支援事業計画は,都道府県知事の定める基本指針に即して策定される。
子ども・子育て支援法の基本指針を定めるのは,内閣総理大臣です。
厚生労働大臣ではないところに注意が必要です。
<今日の一言>
一体のものとして定めることを法で規定されているもの
(義務)
市町村介護保険事業計画と市町村老人福祉計画
都道府県介護保険事業支援計画と都道府県老人福祉計画
(任意)
市町村障害福祉計画と市町村障害児福祉計画
都道府県障害福祉計画と都道府県障害児福祉計画
これらが,「一体のものとして策定」されることには意味があります。
いずれもサービスの供給量などを定めるものだからです。
高齢者については,特に注意が必要です。
社会保険制度と社会福祉制度が並立しているからです。
介護保険事業計画は,社会保険制度である介護保険サービスの供給量などを定めます。
老人福祉計画は,社会福祉制度である老人福祉サービスの供給量などを定めます。
分野別では,社会保険制度と社会福祉制度が並立しているのは高齢者分野しかありません。
障害福祉計画と障害児福祉計画は,障害者(18歳以上)と障害児(18歳未満)のサービスの供給量などを定めます。
これらは一体として策定した方が適切なものが作れることでしょう。
障害者計画は,障害者施策の方向性を定めるものです。
サービスの内容や量などを定めるものではありません。
中には一体で策定している地方公共団体もあるでしょう。
しかし,一体のものとして策定することを法で規定するほどの意味を持ちません。
〈行動計画と子ども・子育て支援事業計画について〉
次世代育成支援対策推進法の行動計画は,次世代育成支援施策の方向性を定めるものです。
そういった意味で,障害者基本法の障害者計画に似たようなものだと言えます。
子ども・子育て支援法の子ども・子育て支援事業計画は,提供する教育・保育の量などを定めるものです。
そのため,一体のものとして定めることを法規定するではなく,行動計画策定指針で
市町村行動計画等については、子ども・子育て支援事業計画と一体のものとして策定して差し支えなく,・・・
としているのにとどまるのでしょう。
一体のものとして定めるものは,同じ領域のものであって,いずれもサービスの供給量を定めるものの場合。
こういったことを理解しておけば,国試当日に迷ったり混乱したりすることがないでしょう。
また,聞いたこともないようなへんちくりんな計画が出題されたとしてもまったく怖がる必要はありません。
出来の悪い模擬試験ならいざ知らす,国家試験ではへんちくりんなものが突然正解になることはめったにありません。