民生委員の根拠法である「民生委員法」は,わずか29条で構成されています。しかも途中,いくつかの条文は削除されています。
民生委員はかなり出題頻度が高いので,民生委員法は,一度で良いので目を通しておくとよいと思います。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題38 民生委員・児童委員に関する法の規定についての次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童福祉法に定める児童委員は,本人の申出によって,民生委員との兼務を辞退することができる。
2 民生委員は,市町村長の推薦によって,都道府県知事から委嘱される
3 補欠で着任した民生委員・児童委員は,着任目から起算して3年を任期とすると定められている。
4 民生委員・児童委員の定数は,厚生労働大臣の定める基準を参酌して,市町村の区域ごとに都道府県の条例で定められている。
5 都道府県知事は,民生委員協議会を組織しなければならない。
この問題は,知識なしでは正解するのは難しいと思います。
しかし,確実に知識をつけてきた人なら正解できる確率は高くなります。
正解は,選択肢4
4 民生委員・児童委員の定数は,厚生労働大臣の定める基準を参酌して,市町村の区域ごとに都道府県の条例で定められている。
国家試験で出題されるものの中で「基準を参酌して」は,現在は民生委員しかありません。本当はいっぱいありますが,国家試験で出題されるのは民生委員だけです。
以前は,児童相談所に配置される児童委員数も「基準を参酌して」だったのですが,現在は,「基準を標準として」という一段階高いものに変更されています。
さらにもう一段階高いのは「基準として」です。
それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。
1 児童福祉法に定める児童委員は,本人の申出によって,民生委員との兼務を辞退することができる。
児童福祉法第十六条の2
民生委員法による民生委員は、児童委員に充てられたものとする。
つまり,民生委員に委嘱された者は,自動的に児童委員となります。
兼務を辞退することはできるわけがありません。
2 民生委員は,市町村長の推薦によって,都道府県知事から委嘱される。
これは今まで何度出題されたことでしょうか。あまりに出題される回数が多いので,調べる気にもなれません。
第五条 民生委員は、都道府県知事の推薦によつて、厚生労働大臣がこれを委嘱する。
3 補欠で着任した民生委員・児童委員は,着任目から起算して3年を任期とすると定められている。
第十条 民生委員には、給与を支給しないものとし、その任期は、三年とする。ただし、補欠の民生委員の任期は、前任者の残任期間とする。
5 都道府県知事は,民生委員協議会を組織しなければならない。
第二十条 民生委員は、都道府県知事が市町村長の意見をきいて定める区域ごとに、民生委員協議会を組織しなければならない。
主語がわかりにくいと思う人もいると思いますが,「民生委員は、民生委員協議会を組織しなければならない」となります。
<今日の一言>
基準を参酌して
「参酌して」とは,「参考にして」という意味です。
第四条 民生委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を参酌して、前条の区域ごとに、都道府県の条例で定める。
この条文を言い換えると,
民生委員の定数は,厚生労働省が定めた基準を参考にして,市町村の区域ごとに都道府県の条例で定める。
あるいは,都道府県を主語にして
都道府県は,厚生労働省が定めた基準を参考にして,民生委員の定数を市町村の区域ごとに条例で定める。
となります。
法律用語は読みにくいので,慣れることが必要です。
先述の
民生委員は、都道府県知事が市町村長の意見をきいて定める区域ごとに、民生委員協議会を組織しなければならない。
の文章は,
都道府県知事が市町村長の意見をきいて定める区域ごとに、民生委員は、民生委員協議会を組織しなければならない。
という文章と言い換えることができます。
もし法の条文がこのような文章であったなら,今日の問題の選択肢5は,違う文章で出題されていたことでしょう。
つまり,この選択肢は,間違えて理解している人がいるだろう,という予測をしたうえで出題したと考えられます。
理解しにくいと思うものは,ほかの多くの人も同じく理解しにくいものです。
覚えにくいと思うものは,ほかの多くの人も同じく覚えにくいものです。
そこを乗り越えることができたなら,合格に大きく近づきます。