わが国の医療保険は,療養の給付という制度を取っています。
療養の給付とは,保険証を持って,医療機関で医療を受けた場合,自己負担分のみを窓口で支払えばよい制度です。
自己負担分以外は,審査支払機関から医療機関に支払われます。
それに対して,療養費は保険証を提示できなかった等の理由で,全額を支払い,その後の申請によって審査して認められれば支給する制度です。
療養の給付は,現物給付
療養費は,現金給付
というように整理することができるでしょう。
わが国の療養費と同じような制度を持っている国があります。
それはフランスです。
窓口で全額を支払い,その後で被保険者に保険給付分が支給されます。
社会保障制度の中でも,医療保障は最も特徴が出やすいものです。
イギリスとスウェーデンは,税負担による制度
フランスとドイツは,社会保険制度
アメリカは,極めて対象が狭いメディケア(高齢者,障害者等)とメディケイド(低所得者に対する医療扶助)
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イギリスの税負担による医療保障制度は,国民保健サービス(NHS)といいます。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題55 諸外国における社会保障制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
2 イギリスには,高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。
3 ドイツの介護保険制度では,公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。
4 スウェーデンの老齢年金は,完全積立の財政方式に移行している。
5 フランスの医療保険では,外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。
医療保障は,各国の特徴が出やすいものですが,年金制度は,多くの場合,社会保険制度を採用しています。
自己責任の基本理念が浸透しているアメリカでさえ,OASDIという制度があります。
介護保障に社会保険制度を取り入れている国は少数派です。
さて,この問題の正解は,選択肢3です。
3 ドイツの介護保険制度では,公的医療保険の加入者が年齢にかかわらず被保険者となる。
日本の介護保険は先行していたドイツを参考にして作られましたが,ドイツの制度となることがいくつかあります。
その一つが,被保険者です。
ドイツの制度は年齢にかかわらず,医療保険の加入者が加入します。
ほかの選択肢も確認します。
1 アメリカには,国民保健サービス(NHS)と呼ばれる,原則無料の医療保障制度がある。
NHSはイギリスの制度です。
2 イギリスには,高齢者向けのメディケアという公的な医療保障制度がある。
メディケアはアメリカの制度です。
4 スウェーデンの老齢年金は,完全積立の財政方式に移行している。
スウェーデンの年金制度も2階建てです。
低所得者に対する税財源による「最低保証年金」
1階部分は,日本の制度と同じ,賦課方式
2階部分が,積立方式のプレミアム年金
という構造になっています。
税財源の「最低保証年金」という制度があるのが,高福祉で知られるスウェーデンらしいと言えます。
5 フランスの医療保険では,外来診療に要した費用は保険者から直接医療機関に支払われるのが原則である。
フランスの医療保険制度は,いわゆる「償還払い制度」が採用しています。これが日本の「療養費」にあたります。
<今日の一言>
ドイツの介護保険は,年齢によらず医療保険の被保険者は介護保険の被保険者となります。
わが国の介護保険は,40歳以上を対象にしました。