社会福祉士の国家試験には,事例問題が出題されます。
事例問題は簡単なので点数を稼ぐことができる
と思っていたら,ミスします。
事例問題のタイプ
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①ソーシャルワーク系の問題
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②制度系の問題
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比較的易しいと思われるのは,「①ソーシャルワーク系の問題」でしょう。
「②制度系の問題」は,事例であっても,制度の知識がなければ解けません。
「児童と家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」などで出題される事例問題は,一見,①のタイプのように見えても,②のタイプであることが多いので,注意が必要です。
このことについては,機会があったら改めて紹介したいと思います。
さて,今回は,「①ソーシャルワーク系の事例問題」について考えます。
ソーシャルワーク系の事例問題で重要なのは,事例の中にある情報のみで考えることです。
絶対にやってはいけないのは,事例の中にはないものを「きっとこうだろう」と勝手な解釈をすることです。
経験のある人はやりがちなので,本当に注意しなければなりません。
これは,先が想像できることで生じるものです。
それでは,今日の問題です。
第29回・問題36 事例を読んで,社会福祉協議会に配置されているA地域福祉コーディネーター(社会福祉士)の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
N町のB民生委員より,A地域福祉コーディネーターのところに,近頃,子どもの貧困問題に直面することが多く,全国的にも学習支援や子ども食堂の取組が注目されていることから,N町でも同様の活動を始めたいとの相談があった。
1 学習支援と子ども食堂は機能が異なるので,B民生委員にどちらかに絞るように促した。
2 社会福祉協議会がある社会福祉センター内には活動できるようなスペースがないため,B民生委員に社会福祉協議会としてはしばらく様子を見たいと伝えた。
3 教育委員会が担当すべき課題であると考え,対応を依頼した。
4 学生による学習ボランティアが必要であると考え,ボランティアセンターを通じて募集することにした。
5 B民生委員も含め,地域関係者や教育関係者などによる協議の機会を持ち,対応策について検討することにした。
多分ほとんどの人は,選択肢5を選んだものと思います。
それが正解です。
しかし,中には選択肢4を選んだ人がいるのではないでしょうか。
4 学生による学習ボランティアが必要であると考え,ボランティアセンターを通じて募集することにした。
これが絶対に正解にならない理由があります。
「学生による学習ボランティアが必要であると考え」た根拠はどこにありますか?
実際に運営する時に,学生による学習ボランティアが必要になるかもしれません。
学習ボランティアは,学生でなければできませんか?
ソーシャルワーク系の事例問題の初期対応で,最も先に行わなければならないのは,情報収集です。初回面接なら,クライエントの主訴に耳を傾けることです。
そのうえで,具体的な対応策が生まれます。
ソーシャルワーク系の事例問題なのですから,ソーシャルワークの展開過程を意識して,問題を作ります。
そこを忘れると思わぬミスをしてしまいます。