社会福祉士の国家試験は,18群(就労支援サービスと更生保護制度は2科目で1群)のすべてに得点がなければ,いわゆるボーダーラインを超えていたとしても不合格になります。
0点科目は許されません。
旧カリキュラム時代に最も0点が発生していたのは,「社会福祉原論」です。
現在のカリキュラムでは,「現代社会と福祉」と「福祉行財政と福祉計画」に分離しています。
この2つの科目は,現在でも難易度が高い科目です。
現在のカリキュラムで0点が発生しているのは,
心理学理論と心理的支援
社会理論と社会システム
福祉行財政と福祉計画
社会保障
障害者に対する支援と障害者自立支援制度
社会調査の基礎
児童と家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
といった科目です。
「社会保障」は,確かに覚えるべき範囲は広いです。
そういった意味では,0点になっても仕方がないと言えるでしょう。
しかし,それは出題傾向を知らない愚か者です。
近年はほぼ100%の確率で出題されているものをしっかり覚えていない愚か者です。
近年はほぼ100%で出題されているのは,今回取り上げる社会保障給付費です。
現在のカリキュラムは,第22回国家試験から導入されています。
そのうち,社会保障給付費に関する出題は以下のとおりです。
回
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出題の有無
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第22回
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〇
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第23回
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〇
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第24回
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×
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第25回
|
×
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第26回
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〇
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第27回
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〇
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第28回
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〇
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第29回
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〇
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第30回
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〇
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第31回
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×
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第32回
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〇
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第31回に出題があれば,ほぼ100%ではなく,100%と言い切れたところです。
第31回に出題しなかったのは,第30回のいわゆるボーダーラインが99点という前代未聞のものとなったことの反動だったのではないかと考えています。
第32回は,試験センター目指していると思われる「合格率30%,合格基準点90点」に限りなく近かったので,路線変更は考えにくいと言えるでしょう。
「社会保障」が苦手な人が,「社会保障が好きだ」という大胆な変容は期待できません。
〈結論〉
社会保障給付費は,しっかり覚えましょう。
ということで問題です。
第29回・問題50 「平成28年度社会保障費用統計」(国立社会保障・人口問題研究所)の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は20%を超えている。
2 政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは,「家族」に対する支出である。
3 政策分野別社会支出のうち,「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。
4 部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると,「医療」が最も高い。
5 社会保障財源をみると,公費負担の割合が最も高い。
ちょっと古い統計ですが,傾向はほとんど変わらない問題です。
おそらく第33回の国家試験も今までを踏襲した問題づくりをするはずなので,「社会保障」が苦手な人は,社会保障給付費は,完璧に押さえたいです。
それでは解説です。
1 社会保障給付費の対国内総生産比は20%を超えている。
これが正解です。
社会保障給付費の対国内総生産比は約20%です。
ついでに覚えておきたいのは,
社会保障給付費の対国民所得比は約30%です。
2 政策分野別社会支出の構成割合が最も高いのは,「家族」に対する支出である。
政策分野別社会支出は,
高齢
保健
家族
遺族
障害・業務災害・傷病
失業
積極的労働市場政策
住宅
他の政策分野
といった構成となっています。
このうち,最も大きいのは高齢の約45%,続いて大きいのは保健の約35%です。
この2つを合わせると約80%も占めます。
3 政策分野別社会支出のうち,「住宅」支出の構成割合は10%を超えている。
高齢と保健を合わせると80%にもなります。
そのほかには,10%を超えるものはありません。
4 部門別社会保障給付費の対国内総生産比をみると,「医療」が最も高い。
部門別社会保障給付費で最も高いのは「年金」です。
5 社会保障財源をみると,公費負担の割合が最も高い。
社会保障財源で最も高いのは「社会保険料」です。
<今日の一言>
社会保障給付費に関する出題は多いですが,出題ポイントはほぼ決まっています。
そのため,別の回の問題と比べてみても,ほとんどがそっくりな内容となっています。
これだけ明確に出題ポイントが決まっているものは,ほかにはありません。
0点科目を恐れるのはナンセンスだと思いますが,もし本気で0点を防ぐ戦略をとるなら,社会保障給付費は完璧にしておくと良いと思います。