社会福祉士の国家試験は,19科目あります。
1科目にすると,少ないもので4問,多いもので21問あります。
多くの科目は,わずか7問です。
出題すべき内容は多いので,相当大きな制度改正ではない限り,制度が変わったものをすぐ出題するほどの余裕はありません。
今日取り上げるのは,雇用保険制度です。
令和2年に制度改正がありました。
今までの雇用保険は,
失業等給付
雇用保険二事業
で成り立っていました。
この度の改正では,失業等給付の中の雇用継続給付の「育児休業給付」が独立して
失業等給付
育児休業給付
雇用保険二事業
の3つで構成されています。
これが第33回国家試験で出題されるかと言えば,出題される確率はあまり高くないように思います。
出題されたとしても,正解になることはほとんどないように思います。
現時点では本格的に勉強を始めている人は少ないと思いますが,勉強が進んでいくと,新しいものを見ると不安になります。
覚えるべき内容をしっかり確実に覚えていけば,必ずボーダーラインは超えることができます。
試験対策の先生は「変わったところが出題される」と言います。
そして「変わったところは要注意」と言います。
しかし,そういったものが出題されるのは,あって1問。なければ1問もありません。
変わったものを出題するほど,問題に余裕がないからでしょう。
他の人よりも1点でも多く得点しなければならない入学試験ならほかの人が勉強しないものも押さえて,得点するということが必要でしょう。
社会福祉士の国家試験に限って言えば,出題頻度の高いものをひたすら覚えていった方が,得点を伸ばすことができます。
それでは今日の問題です。
第29回・問題51 雇用保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 保険者は,都道府県である。
2 基本手当は,自己の都合により退職した場合には受給できない。
3 教育訓練給付は,被保険者でなくなった者は受給できない。
4 雇用継続給付には,高年齢雇用継続給付,育児休業給付及び介護休業給付がある。
5 雇用保険の保険料は,全額事業主が負担する。
この問題は,現時点では正解はありません。
前説で紹介したように,制度改正があったからです。
因みにこの問題が出題された時には,正解は選択肢4でした。
現在の雇用継続給付は,育児休業給付が独立したため,高年齢雇用継続給付と介護休業給付の2つになります。
それでは解説です。
1 保険者は,都道府県である。
わが国の社会保険制度は5つあります。
そのうち,保険者が都道府県なのは,この問題が出題された時点では存在していませんでした。
現在は,平成30年の制度改正で,国民健康保険の保険者となりました。
保険者か変わるのは,大きな制度改正です。
社会保険制度を押さえるポイントは,以下の通りです。
社会保険を押さえる時の基本
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●誰が取り扱うの?(保険者)
●誰が加入するの?(被保険者)
●誰が保険料を負担するの?(社会保険料負担)
●誰が保険料を納付するの?(納付義務者)
●どんな時に給付されるの?(保険事故)
●どのくらい払うの?(保険料率)
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雇用保険の保険者は,政府です。
2 基本手当は,自己の都合により退職した場合には受給できない。
基本手当は,失業等給付のうちの最も中心的な給付です。
雇用保険の保険事故は,失業です。
同法では,失業を以下のように定めています。
「失業」とは、被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。
単に「離職」としているだけで,離職理由までは規定されていません。
離職理由によって,基本手当が支給される期間が異なりますが,自己都合であっても,解雇であっても,倒産であっても,支給されます。
法とはこういうものです。
3 教育訓練給付は,被保険者でなくなった者は受給できない。
教育訓練給付は,無職者の雇用可能性を高める意味と,有職者のキャリアアップの2つの意義があります。
被保険者でなくても,要件に合致すれば,支給されます。
4 雇用継続給付には,高年齢雇用継続給付,育児休業給付及び介護休業給付がある。
現在の雇用継続給付は,高年齢雇用継続給付,介護休業給付の2つです。
5 雇用保険の保険料は,全額事業主が負担する。
雇用保険の保険料は,
失業等給付は,労使折半
雇用保険二事業は,全額事業主負担
となっています。
<今日の一言>
社会福祉士の国家試験の出題傾向は,変わったところが出るのではなく,大切なところが出題されます。
制度変更があったから出題するのはなく,出題する意味があればすぐにでも出題しますし,出題する意味が低ければ出題しません。
出題する意味とは,法制度の根幹にかかわる部分です。
出題する意味が低いというのは,法制度の枝葉の部分です。