今回から,「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」に取り組んでいきます。
この科目で覚えるべき法制度は多いですが,障害福祉サービスを規定しているのは,「障害者総合支援法」です。
2005(平成17)年に,障害者自立支援法ができたときに,サービスの障害種別をなくして,各法に規定されていたサービスをこの法律に規定し直しています。
そのため,サービス体系は,とてもシンプルになりました。
現在の障害福祉サービスは,以下のようになっています。
介護給付
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居宅介護
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居宅において入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
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重度訪問介護
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重度の肢体不自由者その他の障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるものにつき、居宅又はこれに相当する場所として厚生労働省令で定める場所における入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜及び外出時における移動中の介護を総合的に供与する。
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同行援護
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視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する
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行動援護
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知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
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療養介護
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医療を要する障害者であって常時介護を要するものとして厚生労働省令で定めるものにつき、主として昼間において、病院その他の厚生労働省令で定める施設において行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護及び日常生活上の世話の供与。
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生活介護
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常時介護を要する障害者として厚生労働省令で定める者につき、主として昼間において、障害者支援施設その他の厚生労働省令で定める施設において行われる入浴、排せつ又は食事の介護、創作的活動又は生産活動の機会の提供その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
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短期入所
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居宅においてその介護を行う者の疾病その他の理由により、障害者支援施設その他の厚生労働省令で定める施設への短期間の入所を必要とする障害者等につき、当該施設に短期間の入所をさせ、入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
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重度障害者等包括支援
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常時介護を要する障害者等であって、その介護の必要の程度が著しく高いものとして厚生労働省令で定めるものにつき、居宅介護その他の厚生労働省令で定める障害福祉サービスを包括的に提供する。
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施設入所支援
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その施設に入所する障害者につき、主として夜間において、入浴、排せつ又は食事の介護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
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訓練等給付
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自立訓練
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自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、厚生労働省令で定める期間にわたり、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
機能訓練=身体障害者に対するリハビリテーション。
生活訓練=知的・精神障害者に対する生活能力向上の訓練。
宿泊型=夜間の生活訓練。
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就労移行支援
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就労を希望する障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
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就労継続支援
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通常の事業所に雇用されることが困難な障害者につき、就労の機会を提供するとともに、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
A型事業所=雇用型。
B型事業所=非雇用型。
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就労定着支援
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就労に向けた支援として厚生労働省令で定めるものを受けて通常の事業所に新たに雇用された障害者につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、当該事業所での就労の継続を図るために必要な当該事業所の事業主、障害福祉サービス事業を行う者、医療機関その他の者との連絡調整その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する。
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自立生活援助
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施設入所支援又は共同生活援助を受けていた障害者その他の厚生労働省令で定める障害者が居宅における自立した日常生活を営む上での各般の問題につき、厚生労働省令で定める期間にわたり、定期的な巡回訪問により、又は随時通報を受け、当該障害者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の厚生労働省令で定める援助を行う。
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共同生活援助
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主として夜間において、共同生活を営むべき住居において相談、入浴、排せつ又は食事の介護その他の日常生活上の援助を行う。
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サービス体系は,上記のように,介護給付と訓練等給付に分類されます。
この分け方は,もともと介護給付は,障害程度区分認定(現:障害支援区分認定)を受けて利用するものに給付し,訓練等給付は,障害程度区分認定(現:障害支援区分認定)を受けないで利用するものに給付するものでした。
障害者自立支援法が障害者総合支援法になったとき,介護給付の共同生活介護が訓練等給付の共同生活援助(グループホーム)に統合されたことで,ちょっぴり複雑になっています。
重度訪問介護が,居宅又はこれに相当する場所として厚生労働省令で定める場所
となっているのは,訪問先に病院等が含まれるからです。2018年改正で訪問先が拡大しています。
重度障害者の場合,慣れたヘルパーでなければ介助が困難な場合もあります。
たとえば,体位変換をするときのちょっとした手順の違いによって褥瘡が発生してしまうこともあるそうです。
訪問先が拡大されたことにより,重度障害者が入院することになった場合でも,居宅介護の時から慣れているヘルパーが病院でもサービスを提供することができるようになりました。
このときの改正では,介護保険サービスと障害福祉サービスを一体化して提供する「共生型サービス」が創設されています。これも重度訪問介護の訪問先が拡大したことと同じ理由です。
このほかに,障害者総合支援法が規定するもので,重要なのは,自立支援医療と相談支援です。
これらについては,後日改めて取り組んでいきたいと思います。
それでは今日の問題です。
第29回・問題56 事例を読んで,E相談支援専門員(社会福祉士)がFさんに提案するサービスとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Fさん(30歳,男性)は大学在学中に統合失調症を発症し,精神科病院に入院していたが,投薬治療やピアサポーターの励まし,E相談支援専門員の相談支援により,退院後は一人暮らしの希望を持つようになり,この度,アパートの契約もでき退院の運びとなった。Fさんは就労経験や福祉サービスの利用経験がないので,一人暮らしの際に必要なことを身につけるために自分にふさわしいサービスを紹介してもらいたいと,E相談支援専門員に相談した。
1 自立訓練(生活訓練)
2 就労継続支援(B型)
3 重度訪問介護
4 生活介護
5 同行援護
事例問題のタイプ
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①ソーシャルワーク系の問題
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②制度系の問題
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この問題は,もちろん「②制度系の問題」です。
①のタイプ,②のタイプ,ともにポイントを押さえると迷う余地はありません。
①ソーシャルワーク系の問題であっても,現場で行う事例健闘ではないので,必ず明確に答えを見つけ出すことができます。
この問題のポイントは,
Fさんのニーズ
就労経験や福祉サービスの利用経験がないので,一人暮らしの際に必要なことを身につけるために自分にふさわしいサービスを紹介してもらいたいこと。
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今日の問題の答えは,自立訓練(生活訓練)です。
悩むことなく,これが正解だと選べると良いと思います。
事例問題の場合,事例の中に書かれた情報のみで判断することが大切です。
情報がないのに,「これは〇〇だろう」と勝手に思い込んで考えることは絶対にしてはいけません。そうすると間違えます。
<今日の一言>
「2 就労継続支援(B型)」も不適切ではないのではないのか,と思う人もいるでしょう。
そう思った人は,危険です。
Fさんが望んでいるのは「自分にふさわしいサービス」です。
自分は就労継続支援(B型)が良いと思っても,Fさんは就労支援系のサービスは望んでいません。
良かれと思うのは,「パターナリズム」です。
パターナリズムになっているものは,絶対に正解にはなりません。
なぜなら,クライエントの主訴を受容していない対応だからです。