障害者雇用促進法では,
・障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センター
が規定されています。
専門職としては,
・障害者職業カウンセラー
・職場適応援助者(ジョブコーチ)
が規定されています。
今回は,このうちの職場適応援助者(ジョブコーチ)を取り上げたいと思います。
職場適応援助者(ジョブコーチ)の支援内容
・ジョブコーチ支援は、対象障害者がその仕事を遂行し、職場に対応するため、具体的な目標を定め、支援計画に基づいて実施されるものです。 |
障害者雇用促進法では,
・障害者職業センター
・障害者就業・生活支援センター
が規定されています。
専門職としては,
・障害者職業カウンセラー
・職場適応援助者(ジョブコーチ)
が規定されています。
今回は,このうちの職場適応援助者(ジョブコーチ)を取り上げたいと思います。
職場適応援助者(ジョブコーチ)の支援内容
・ジョブコーチ支援は、対象障害者がその仕事を遂行し、職場に対応するため、具体的な目標を定め、支援計画に基づいて実施されるものです。 |
生活困窮者自立支援法では,都道府県と市及び福祉事務所を設置する町村に,自立相談支援事業と住宅確保給付金の給付に関する事業を行うことを義務づけています。
住宅確保給付金は,離職等の理由で居住する住宅を失った生活困窮者に対して,家賃相当額を給付するものです。
現在は,新型コロナウイルス対策として,生活が困窮して住宅を失うおそれのある生活困窮者に対しても給付しています。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題144 生活困窮者自立支援法による自立相談支援事業を行う責務を有する組織・機関として,正しいものを1つ選びなさい。
1 公共職業安定所(ハローワーク)
2 市及び福祉事務所を設置する町村又は都道府県
3 児童相談所
4 都道府県労働局
5 障害者職業センター
法制度の適用範囲は明確です。
つまりこの法律が対象とするのは,「〇〇です」と決まっています。
その範囲から外れた者は対象となりません。そのために法のすき間というものが生まれます。
生活困窮者自立支援法は,生活保護法の対象とならない人を対象として誕生した第二のセーフティネットとして誕生しました。
そういった問題でつまらないミスをしないためには,機関等は何の法律に基づいて設置されているのかを考えることをおすすめします。
1 公共職業安定所(ハローワーク)
3 児童相談所
4 都道府県労働局
5 障害者職業センター
は,生活困窮者を対象とした機関等ではありません。
それぞれ別の役割を果たしています。冷静に考えるとそれほど難しくはないですが,冷静に考えることができないのが国家試験の怖いところです。
正解は,
2 市及び福祉事務所を設置する町村又は都道府県
これらの地方公共団体は,生活保護を通してケースワークのノウハウを持っているために生活困窮者の自立支援にも期待されたのです。
ただし,自立相談支援事業は,自ら実施するのではなく,民間委託が可能です。
法律をつくる際,地方公共団体の事務負担に配慮していることがよくわかるでしょう。
そのために,福祉事務所を設置していない町村には,生活困窮者自立支援制度の必須事業は規定されていません。それほどの余裕がないためです。
福祉事務所を設置していない町村は,生活困窮者に対して,必要な情報の提供及び助言,都道府県との連絡調整,生活困窮者自立相談支援事業の利用の勧奨その他必要な援助を行う事業を行うことができるとしています。つまり実施は任意ということです。
現在の障害者雇用促進法は,1960年・昭和35年に「身体障害者雇用促進法」という名称から始まりました。
つまり対象は,対象は身体障害者だったわけです。
最初は努力義務であり,その後雇用義務化され,法定雇用率が規定されました。
その後,知的障害者も対象となり,現在は,身体・知的・精神の三障害が対象となっています。
一定以上の規模の企業が法的雇用率を達成できなかった場合は,不足した人数に対して障害者雇用納付金を納付しなければなりません。
国や地方公共団体などには一般よりも高い法定雇用率が規定されていますが,障害者雇用納付金は適用されません。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題143 障害者雇用率制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 2018年(平成30年)4月1日から,法定雇用率の算定基礎の対象に精神障害者が含まれることになっている。
2 重度身体障害者は,障害者雇用率の算定上,一人をもって三人とみなされる。
3 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
4 法定雇用率未達成の事業主は,利益率に応じて障害者雇用納付金を納付しなければならない。
5 国や地方公共団体には,一般の民間企業より低い法定雇用率が課せられている。
出題された当時のままの文章のままなので,今となってはちょっとおかしな文章ですが,歴史をさかのぼることができるので,良い問題だと思います。
それでは解説です。
1 2018年(平成30年)4月1日から,法定雇用率の算定基礎の対象に精神障害者が含まれることになっている。
これが正解です。
精神障害者が雇用義務化されたのは,三障害の中では最も新しく,この選択肢にあるように,2018年・平成30年から法定雇用率の算定基礎の対象に加わりました。
このことによって,法定雇用率が引き上げられたのです。
2 重度身体障害者は,障害者雇用率の算定上,一人をもって三人とみなされる。
障害者雇用率には,ダブルカウント,ハーフカウントという算定方法があります。
詳しく覚える必要はありませんが,ダブルカウントは重度の場合,1人を2人とカウントするもの,ハーフカウントは短時間雇用の場合,1人を0.5人とカウントするものです。
3 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
特例子会社は,要件を満たすと子会社に雇用した障害者は,グループ全体や親会社で雇用したものとみなす制度です。
清掃やクリーニングなど業態によっては障害者を雇用しやすいものもあります。
そういった企業がグループの中にあった場合に,グループ全体や親会社で雇用したものとみなしてくれると,法定雇用率を達成しやすくなります。
4 法定雇用率未達成の事業主は,利益率に応じて障害者雇用納付金を納付しなければならない。
障害者雇用率を達成できない場合は,その不足した人数に合わせて,障害者雇用納付金を納付しなければなりません。
なお,納付金を納付したからといって障害者雇用の義務が免除されているわけではないことを覚えておきたいです。
5 国や地方公共団体には,一般の民間企業より低い法定雇用率が課せられている。
国や地方公共団体には,一般の民間企業より高い法定雇用率が課せられている。
法定雇用率は5年ごとに見直すことになっています。
具体的な数値を覚えても変わっていくので,
国や地方公共団体には,一般の民間企業より高い法定雇用率が課せられている
という覚え方は適切でしょう。
この学習部屋に訪れている方は精神保健福祉士を受験するという人もいるかもしれませんが,多くの人は社会福祉士の国家試験の受験予定者だと思います。
気づき始めている人もいると思いますが,国家試験は150点中90点取れば合格できるという試験ではありません。
厚生労働省や国家試験を実施する社会福祉振興・試験センターは明らかにしていませんが,合格率から合格基準点を決めているようです。
別な言い方をすると,受験者のうち,上から3割の中に入らないと合格できない仕組みだということです。
絶対的な基準ではなく,実質的には相対的な基準になっていることは,受験者を実に混乱させます。
しかしラッキーなことに,受験者の中には「社会福祉士の国家試験は難しい」という亡霊が存在しているため,半ばあきらめ加減で受験に臨む人が多いのです。
しかも,現時点(2021年)は新型コロナの真っただ中。
実習がずれ込むなど,例年よりも勉強が進まないことが予測されます。
そういった状況があるので,ほかの受験者から一歩抜け出すのは,今はそれほど難しくはないと言えます。
ただ,ちょっと心配しているのは,受験料が上がったために,受験を取りやめる人も出てくることです。
それはさておき・・・
社会福祉士の国家試験に合格するために必要なのは,確実に正解できることです。
この学習部屋では,今まで数多くの問題を解説してきました。
解説を読むと「ああ,なるほど」と思う問題もあると思いますが,国家試験会場ではヒントなしで考えなければなりません。
これが結構大変なことです。
知識があることは合格に必要ですが,国試に合格できる知識でなければ意味はなしません。
合格に近道はありません。
しかし,確かな勉強を積み重ねていけば,必ず合格できます。
多くの人が思っているほど,国家試験は難しくありません。
国試に合格した自分を想像してみてください。
勉強が辛くなった時には,その姿を思い出してみてください。
辛い今を乗り越える力となってくれますよ。
※今日の問題はお休みします。
今回は,里親支援専門相談員(里親支援ソーシャルワーカー)を取り上げたいと思います。
里親支援専門相談員は,児童養護施設及び乳児院に配置され,里親の支援等を行います。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題142 里親支援専門相談員に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉士の資格を有する者でなければならない。
2 施設入所している被虐待児童等への生活場面での1対1の対応,保護者への援助を主な目的としている。
3 施設入所している児童の保護者等に対し,児童の早期家庭復帰,里親委託等を可能とするための相談援助を主な目的としている。
4 厚生労働大臣が指定する者が行う研修を受講することが,義務づけられている。
5 里親支援を行う児童養護施設及び乳児院に配置される。
答えはわかりますか?
知識なしでも正解できる可能性のある問題です。
「里親支援」を行う専門職を考えると消去できそうです。
まずは,厚生労働省の資料から
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r985200000202we-att/2r9852000002030w.pdf
〔趣 旨〕 ・施設に地域支援の拠点機能を持たせ,里親やファミリーホームへの支援体制の充実を図るとともに,施設と里親との新たなパートナーシップを構築する。 ・家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)と同じ資格要件(社会福祉士,施設で5年以上勤務した者,又は児童福祉司資格のある者)を満たし,里親養育に理解があり,ソーシャルワークの視点を持てる人 ・実践を積み重ねながら,里親支援の在り方を見いだし,里親支援ソーシャルワークの専門性を高める。 ・①所属施設の児童の里親委託の推進 ・②退所児童のアフターケアとしての里親支援 ・③地域支援としての里親支援 (児童福祉法上,施設はアフターケアの機能を持つとともに,地域住民の相談に応じる機能を持つ。) ・施設の直接処遇の勤務ローテーションに入らない。施設の視点から離れ,里親と子どもの視点に立つ。 ・児童相談所の里親担当職員や里親委託等推進員とともに,定期的な家庭訪問を行うほか,施設機能を活かした支援を含め,里親支援を行う。 ・児童相談所の会議に出席して情報と課題を共有する。 ・配置施設を里親支援機関に指定し,役割を明示する。 ・児童家庭支援センターを附置する施設では,里親支援専門相談員は,センターを兼務し連動する |
それでは解説です。
1 社会福祉士の資格を有する者でなければならない。
資格要件は,社会福祉士・精神保健福祉士,施設で5年以上勤務した者,児童福祉司資格のある者です。
現在のところ,社会福祉士を配置しなければならないのは,地域包括支援センターのみです。
上記の表では,なぜか精神保健福祉士が抜けていますね。
2 施設入所している被虐待児童等への生活場面での1対1の対応,保護者への援助を主な目的としている。
3 施設入所している児童の保護者等に対し,児童の早期家庭復帰,里親委託等を可能とするための相談援助を主な目的としている。
この2つを目的としているのは,いずれも家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)です。
配置されるのは,
・乳児院
・児童養護施設
・児童心理治療施設
・児童自立支援施設
です。里親支援専門相談員の配置は,乳児院と児童養護施設なので,家庭支援専門相談員のほうが広く配置されていることがわかりますね。
4 厚生労働大臣が指定する者が行う研修を受講することが,義務づけられている。
研修受講は。義務づけられていません。
5 里親支援を行う児童養護施設及び乳児院に配置される。
これが正解です。
児童委員は,児童福祉法に規定されています。
児童福祉法では,以下のように定められています。
第十六条 市町村の区域に児童委員を置く。 ② 民生委員法による民生委員は、児童委員に充てられたものとする。 ③ 厚生労働大臣は、児童委員のうちから、主任児童委員を指名する。 ④ 前項の規定による厚生労働大臣の指名は、民生委員法第五条の規定による推薦によつて行う。 第十七条 児童委員は、次に掲げる職務を行う。 一 児童及び妊産婦につき、その生活及び取り巻く環境の状況を適切に把握しておくこと。 二 児童及び妊産婦につき、その保護、保健その他福祉に関し、サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助及び指導を行うこと。 三 児童及び妊産婦に係る社会福祉を目的とする事業を経営する者又は児童の健やかな育成に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。 四 児童福祉司又は福祉事務所の社会福祉主事の行う職務に協力すること。 五 児童の健やかな育成に関する気運の醸成に努めること。 六 前各号に掲げるもののほか、必要に応じて、児童及び妊産婦の福祉の増進を図るための活動を行うこと。 ② 主任児童委員は、前項各号に掲げる児童委員の職務について、児童の福祉に関する機関と児童委員(主任児童委員である者を除く。以下この項において同じ。)との連絡調整を行うとともに、児童委員の活動に対する援助及び協力を行う。 ③ 前項の規定は、主任児童委員が第一項各号に掲げる児童委員の職務を行うことを妨げるものではない。 ④ 児童委員は、その職務に関し、都道府県知事の指揮監督を受ける。 第十八条 市町村長は、前条第一項又は第二項に規定する事項に関し、児童委員に必要な状況の通報及び資料の提供を求め、並びに必要な指示をすることができる。 ② 児童委員は、その担当区域内における児童又は妊産婦に関し、必要な事項につき、その担当区域を管轄する児童相談所長又は市町村長にその状況を通知し、併せて意見を述べなければならない。 ③ 児童委員が、児童相談所長に前項の通知をするときは、緊急の必要があると認める場合を除き、市町村長を経由するものとする。 ④ 児童相談所長は、その管轄区域内の児童委員に必要な調査を委嘱することができる。 第十八条の二 都道府県知事は、児童委員の研修を実施しなければならない。 |
そんなに複雑なものはないので,一度目を通せば記憶に残りやすいのではないでしょうか。
気をつけたいのは,児童委員が指揮監督を受けるのは,都道府県知事であることです。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題141 児童委員の職務として,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童及び妊産婦について,生活や取り巻く環境の状況を把握する。
2 養育医療の給付を行う。
3 乳児院に入所させる。
4 一時保護を決定する。
5 里親への委託を行う。
児童委員の職務を押さえていなくても,正解できる問題でしょう。
こういったところが,過去最高の合格基準点となった第30回国試らしいと言えるでしょう。
念のために解説します。
1 児童及び妊産婦について,生活や取り巻く環境の状況を把握する。
これが正解です。
ほかの選択肢は確実に消去できると思いますので,知らなくてもこれが残ります。
2 養育医療の給付を行う。
養育医療は,未熟児に対する医療費を支給するもので,根拠法は母子保健法です。
最近は障害者総合支援法の自立支援医療の育成医療(障害児に対する医療)と混同させるようには出題されていませんが,区別してきっちり覚えたいものです。
なお,養育医療も育成医療も市町村が支給します。
3 乳児院に入所させる。
乳児院は,児童福祉施設です。都道府県知事の措置によって入所します。市町村ではありません。
入所は都道府県知事,通所は市町村長と役割が分かれているのです。
4 一時保護を決定する。
児童の一時保護を行うのは,児童相談所です。
5 里親への委託を行う。
里親への委託を行うのは,都道府県知事です。
<今日の一言>
今日の問題は簡単ですが,この問題が都道府県の役割なのか,市町村の役割なのか,を問う問題だったとしたら,難易度が何倍にもなったことでしょう。
制度に関する問題は,実は確実に正解するのは簡単ではないのです。
ぜひ自分でまとめてみてください。そうすると共通するものが見えてくることでしょう。
児童虐待防止法では,児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者には,通告の義務があります。
通告先は,
・市町村
・福祉事務所
・児童相談所
この中で,最も権限を持つのは,児童相談所です。
児童相談所長は,児童の安全の確保を図るため,児童の一時保護や親権停止・親権喪失の審判の請求などを行うことができます。
最も身近なのは市町村ですが,そのような権限は持ちません。立入調査も行うことができません。
そのため,必要な場合は,児童相談所に送致することになります。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題140 事例を読んで,S市子ども家庭課の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
S市子ども家庭課は,連絡が取れないまま長期間学校を欠席している児童がいると学校から通告を受けた。S市では虐待の疑いがあると考え,A相談員(社会福祉士)が直ちに家庭訪問を実施した。しかし,保護者と思われる人物から,「子どもに会わせるつもりはない」とインターホン越しに一方的に告げられ,当該児童の状態を把握することはできなかった。
1 家庭訪問の結果を学校に伝え,対応を委ねる。
2 近隣住民に通告のことを伝え,児童を見かけたらS市に情報提供してもらう。
3 一時保護などの可能性を考慮し,児童相談所長に通知する。
4 家屋内への強制的な立入調査を行い,直ちに児童の安全を確認する。
5 親権喪失審判請求の申立てを行う。
事例問題の注意ポイントとして,制度を聞かれているものは,制度で考えなければならないことです。
答えは「3 一時保護などの可能性を考慮し,児童相談所長に通知する」です。
悩む余地はありません。
立入調査や一時保護は,強力な権限です。
市町村は,虐待対応の専門機関ではないので,このような権限を持ちません。
そのかわり,市町村に期待されているのは,身近な存在として関係を壊さず介入していくことです。これからの課題でしょう。
母子生活支援施設は,1998年(平成10年)の児童福祉法の改正によって,母子寮から名称変更されたものです。
設備の基準
一 母子室、集会、学習等を行う室及び相談室を設けること。 二 母子室は、これに調理設備、浴室及び便所を設けるものとし、一世帯につき一室以上とすること。 三 母子室の面積は、三十平方メートル以上であること。 四 乳幼児を入所させる母子生活支援施設には、付近にある保育所又は児童厚生施設が利用できない等必要があるときは、保育所に準ずる設備を設けること。 五 乳幼児三十人未満を入所させる母子生活支援施設には、静養室を、乳幼児三十人以上を入所させる母子生活支援施設には、医務室及び静養室を設けること。 |
配置職員
・母子支援員 ・嘱託医 ・少年を指導する職員 ・調理員 |
それでは今日の問題です。
第30回・問題139 母子生活支援施設に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 父子家庭も入所の対象とすることができる。
2 入所する児童は,15歳に満たない者とされている。
3 母子室は,4世帯につき1室以上が設備基準とされている。
4 施設長は,入所中の個々の母子について,自立支援計画を立てなければならない。
5 家庭支援専門相談員を置かなければならない。
社会福祉士の国試には,ここまで詳しい設備基準が出題されることはめったにありません。
そういう面では,とても珍しい問題ではないでしょうか。
こういった問題を含めないと,合格基準点が上がってしまうのでしかたがないことなのかもしれません。
それでは解説です。
1 父子家庭も入所の対象とすることができる。
対象は,母子家庭です。
2 入所する児童は,15歳に満たない者とされている。
入所の対象児童は,18歳未満です。
ただし,特別な事情がある場合は,20歳まで入所することができます。
根拠法は児童福祉法ですから,15歳ということは考えにくいものだと言えます。
3 母子室は,4世帯につき1室以上が設備基準とされている。
これがびっくりするものです。
今どき,4世帯につき1室以上はないでしょう。
1世帯につき1室以上,つまり個室です。
4 施設長は,入所中の個々の母子について,自立支援計画を立てなければならない。
これが正解です。
母子生活支援施設の長は、前条の目的を達成するため、入所中の個々の母子について、母子やその家庭の状況等を勘案して、その自立を支援するための計画(自立支援計画)を策定しなければならない。
5 家庭支援専門相談員を置かなければならない。
母子生活支援施設に配置されるのは,母子支援員です。
家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー)は
乳児院
児童養護施設
児童心理治療施設
児童自立支援施設
に配置されます。
児童は長らく,守られなければならない「愛護」の対象でした。
これは,受動的権利といいます。
1989年の「児童の権利に関する条約」(子ども権利条約)は,受動的権利の保障とともに,意見表見権などの能動的権利を保障したのが特徴です。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題138 児童が「自由に自己の意見を表明する権利を確保する」と明記しているものとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童福祉法
2 児童の権利に関する条約
3 児童虐待の防止等に関する法律
4 児童権利宣言
5 児童憲章
正解は,選択肢2です。
第12条
1 締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
<今日の一言>
こういった出題があると,児童の権利に関する条約の条文まで目を通さなければならないと思うかもしれません。
しかし,決してそんなことはありません。
この問題の設問は,「自由に自己の意見を表明する権利を確保する」というこの条約の最も特徴的な部分を取り上げたものです。
条文を読んだことがなくても,勉強の過程で「児童の権利に関する条約は,能動的権利を保障したものである」といった文章を必ず目にするはずです。
勉強の範囲を広げる必要はありません。勉強の範囲を広げるよりも,その中の知識を確実につけることを優先したほうが得点力は上がります。社会福祉士国試はそのような設計がなされているのです。
滋賀県のホームページには,以下のように記載されています。
滋賀県立近江学園は昭和21年11月、大津市南郷に糸賀一雄氏らによって創設され、昭和23年4月「児童福祉法」の施行に伴い、県立の児童福祉施設となりました。
「この子らを世の光に」と人々に語りかけた糸賀氏は、池田太郎氏、田村一二氏らとともに知的障害児・者の療育に力をそそがれました。その後、昭和46年9月、現在の湖南市に移転後も糸賀氏らの心は受け継がれ、知的障害を持った子どもたちが豊かに育っていくよう支援しています。
https://www.pref.shiga.lg.jp/oumi/gakuen/103467.html
この子らを世の光に
『この子らを世の光に』と『この子らに世の光を』の違いについて 「を」と「に」が逆になれば、この子どもたちは哀れみを求めるかわいそうな子どもになってしまいます。しかし、この子らは、みずみずしい生命にあふれ、むしろ回りの私たちに、そして世の人々に、自分の生命のみずみずしさを気づかせてくれるすばらしい人格そのものであります。 この子らこそ「世の光」であり、「世の光」たらしめるべく、私たちは努力しなければなりません。糸賀先生は最後の講義で「この子らを世の光に・・・」の言葉とともに、大きな福祉の思想を私たちに託して逝かれました。 |
出典 https://www.pref.shiga.lg.jp/oumi/yonohikarini/103707.html
児童・家庭の領域では,覚えておかなければならない人物がいます。
社会福祉士の国家試験で絶対に押さえておきたい人名~児童福祉五人衆
https://fukufuku21.blogspot.com/2019/11/blog-post_30.html
社会福祉士の国家試験で合格できる覚え方~人物編(日本)
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/02/20180217.html
五人衆の一人が糸賀一雄さんです。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題137 以下の文章は,障害児福祉の発展に貢献した人物の紹介である。紹介されている人物として,正しいものを1つ選びなさい。
近江学園の創設者。重度の障害児であっても,人間らしく生きていくことが重要であると考え,「この子らに世の光を」ではなく,「この子らを世の光に」という言葉を通して,人間尊重の福祉の取組を展開した。
1 石井亮一
2 高木憲次
3 糸賀一雄
4 福井達雨
5 留岡幸助
答えはすぐ分かりますね?
一応整理しておきます。
人名 |
創設した施設 |
1 石井亮一 |
滝乃川学園 |
2 高木憲次 |
整肢療護園 |
3 糸賀一雄 |
近江学園 |
4 福井達雨 |
止揚学園 |
5 留岡幸助 |
家庭学校 |
このほかに覚えておきたいのは,岡山孤児院の石井十次です。
今回は幼保連携型認定こども園を取り上げたいと思います。
認定こども園には4つのタイプがあります。
認定するのは,都道府県知事です。
幼保連携型 |
幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つもの。 幼稚園教諭の資格をもった保育士が配置される。 学校教育法の学校と児童福祉法の児童福祉施設に位置づけられる。 |
幼稚園型 |
認可幼稚園が,保育が必要な子どものための保育時間を確保するなどの保育所的な機能を備えるもの。 |
保育所型 |
認可保育所が,保育が必要な子ども以外の子どもも受け入れるなどの幼稚園的な機能を備えるもの。 |
地方裁量型 |
幼稚園・保育所いずれの認可がないもの。 |
それでは,今日の問題です。
第30回・問題136 幼保連携型認定こども園に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 児童福祉法に規定する保育所の一類型として位置づけられている。
2 保育教諭及び社会福祉士を置かなければならない。
3 満3歳未満の保育を必要とする子どもは,入園の対象から除外されている。
4 設置主体にかかわらず,保育料は市町村が徴収する。
5 学校及び児童福祉施設として位置づけられている。
幼保連携型認定こども園の内容が具体的に出題されたのは,現時点ではこの問題のみです。
それでは解説です。
1 児童福祉法に規定する保育所の一類型として位置づけられている。
幼保連携型認定こども園は,保育所とは別な児童福祉施設として位置づけられています。
児童福祉施設は以下のとおりです。
助産施設
乳児院
母子生活支援施設
保育所
幼保連携型認定こども園
児童厚生施設
児童養護施設
障害児入所施設
児童発達支援センター
児童心理治療施設
児童自立支援施設
児童家庭支援センター
2 保育教諭及び社会福祉士を置かなければならない。
配置されなければならないのは,幼稚園教諭の資格をもった保育士です。
3 満3歳未満の保育を必要とする子どもは,入園の対象から除外されている。
保育所の機能をもちますから,対象は,0歳~就学前の保育が必要な子どもです。
4 設置主体にかかわらず,保育料は市町村が徴収する。
保育料は設置主体が徴収します。
5 学校及び児童福祉施設として位置づけられている。
これが正解です。
幼保連携型認定こども園は,学校教育法の学校と児童福祉法の児童福祉施設に位置づけられます。
近年の国試問題では「この時点」というのはかなり多いですが,初めて出題されたのは,わずか10年ほど前のことです。
第24回・問題105 地域包括支援センターに勤務するJ 社会福祉士は,地区の民生委員から,「近所に住むKさんのことなのですが,70代後半の女性で一人暮らしをしています。最近,どうも様子がおかしく,季節にそぐわない服装で出歩き,足元もおぼつかなくなっています。少し痩せてきているようにも見えます。また,家の周りにはごみが散乱して悪臭が漂い,近隣住民からの苦情が増えています。私も何度か訪ねているのですが,いつもすごい剣幕で『用はない,帰れ!』の一点張りです。何か良い方法がないものでしょうか」と相談を受けた。民生委員から相談を受けた後,すぐさま,J社会福祉士はKさん宅を訪問したが,その日はKさんに拒否されて会うことができなかった。
次のうち,この時点でのJ社会福祉士の対応として,最も適切なものを一つ選びなさい。
1 玄関に名刺やK さん宛のメモを置いて,Kさん宅への訪問を継続する。
2 民生委員に今後の対応をゆだね,状況に変化があった際の報告を依頼する。
3 Kさん宅に電話を入れ,センターに来所するよう伝える。
4 民生委員と協力して,Kさん宅のごみの片付けを行う。
5 Kさんの意向を尊重し,センターに連絡があるのを待つ。
※この問題の正解は,今日の最後にあります。
さて,この問題が「この時点」という言葉が社会福祉士の国試に出てきた初めてのものです。
内容だけではなく,この問題については気がつくことがあるのではないでしょうか。
まず1つめは「一つ選びなさい」となっていることです。現在は「1つ選びなさい」と出題されています。
この違いは,第25回国試から「2つ選びなさい」が登場したことによります。
もう一つは,事例が長いことです。
第24回国試は,最も問題の文字数が長かった試験です。
「魔の第25回国試」を経て,第26回国試から問題の文字数が減っていますが,文字数が多くても試験時間には変化がないので,過去は本当に過酷だったと言えるでしょう。
話は戻りますが,「この時点」と限定された問題では,その先の対応ならあり得るということは,すべて排除されます。
第24回国試の問題はかなり高度なので,消去法でしか正解を選び出すことができませんが,近年の出題は答えのパターンはかなり決まってきています。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題135 事例を読んで,R市の地域包括支援センターに勤務するK社会福祉士の,この時点での対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
L民生委員が,担当地域のMさん(73歳,男性)への対応について相談するため来所した。Mさんは自分の年金で生活できているが,物忘れが多いという自覚があり,貸アパートの家賃の支払が滞ることがある。親族や近隣との付き合いはない。Mさんは自宅での生活を望んでいる。
1 Mさんから心身の状況や日常生活について話を聞く。
2 K社会福祉士の判断で,要介護認定の申請に関する手続を代行する。
3 Mさんには財産管理はできないと考え,市長申立てで成年後見人を選任する。
4 Mさんに,R市の社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業について説明する。
5 地域包括支援センター運営協議会に諮り,支援方針を決定する。
事例が何と短いことでしょう。第24回の問題から比べると半分以下の分量しかありません。
第30回国試は,第25回国試と逆に合格基準点が最も高くなった時です。
何と99点だったのです。
「この時点」でなければ,おそらくすべての選択肢の対応は正解になるかもしれません。
しかし,この事例は,まだMさんに会ったことがないものです。欠席裁判のようなことは許されません。
その視点で選択肢を見ると
2 K社会福祉士の判断で,要介護認定の申請に関する手続を代行する。
3 Mさんには財産管理はできないと考え,市長申立てで成年後見人を選任する。
5 地域包括支援センター運営協議会に諮り,支援方針を決定する。
の3つは,Mさん不在です。
1 Mさんから心身の状況や日常生活について話を聞く。
4 Mさんに,R市の社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業について説明する。
この2つの選択肢は,Mさんが登場します。
正解は,1と4だということになります。
<今日の一言>
今日の問題は,全然難しくないですが,うっかりすると間違えます。
普段しないようなミスを犯すのが国試の怖いところです。
最も多いうっかりは,2つめの正解を選び忘れることです。
特にこの問題は,選択肢1が1つめの正解となっています。
こういう問題は,2つめの正解を選ぶことを忘れがちになる傾向があるようです。
ヒューマンエラーは,ゼロにすることはできませんが,ゼロに近づけることはできます。
さぁ,あなたはこの課題に対してどのように対処しますか?
私はそんなミスはしません,と思う人は本当に気をつけましょう。
たとえば患者取り違えなどの医療現場の重大事故も「そんなことが起きるの?」と思うようなことでしょう。
いくつものチェックがあっても医療事故は発生しています。
もう一度あなたに問います。
さぁ,あなたはこの課題に対してどのように対処しますか?
〈第24回の問題の正解〉
選択肢1
介護支援専門員は何をする人でしょうか。
と質問すると多くの人は「ケアプランをつくる人」と答えるでしょう。
もちろんそれは正しいですが,介護支援専門員の業務の多くを占めるのは,モニタリングです。
モニタリングは,特段の事情がない限り,少なくとも月1回,利用者の居宅を訪問して利用者に面接しなければならないからです。
特段の事情には,介護支援専門員に起因する事情は含まれません。
指定取消が発表されますが,居宅介護支援については,モニタリングの不正が多いようです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題134 指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員の役割に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 居宅サービス計画を作成した際に,当該居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付しなければならない。
2 居宅サービス計画原案の内容について,文書でサービス担当者から同意を得なければならない。
3 実施状況の把握(モニタリング)に当たり,月に2回以上,利用者に訪問面接をしなければならない。
4 居宅サービス計画には,介護給付等対象サービス以外の,地域の住民による自発的な活動によるサービスを含めてはならない。
5 利用者が訪問看護,通所リハビリテーション等の医療サービスを希望している場合,利用者の同意を得て主治医等の意見を求めなければならない。
落ち着いて文章を読めばそれほど難しい問題ではないように思いますが,確実に正解するのはそれほど簡単ではありません。
それが国試の怖いところです。
解説です。
1 居宅サービス計画を作成した際に,当該居宅サービス計画を利用者及び担当者に交付しなければならない。
これが1つめの正解です。
確実に正解するのが難しい理由は,選択肢1が正解であるため,ホッとしてしまい,もう1つを選ぶのを忘れる恐れがあるためです。
2 居宅サービス計画原案の内容について,文書でサービス担当者から同意を得なければならない。
同意を得ることが必要なのは本人等です。
この選択肢を間違う可能性があるのは,問題文をザーっと読むと「担当者」という文字を読み飛ばす恐れがあるためです。
3 実施状況の把握(モニタリング)に当たり,月に2回以上,利用者に訪問面接をしなければならない。
前説で述べたように,モニタリングの頻度は,月に1回以上です。
4 居宅サービス計画には,介護給付等対象サービス以外の,地域の住民による自発的な活動によるサービスを含めてはならない。
居宅サービス計画には,インフォーマルな社会資源も含めます。
5 利用者が訪問看護,通所リハビリテーション等の医療サービスを希望している場合,利用者の同意を得て主治医等の意見を求めなければならない。
これがもう1つの正解です。
医療系のサービスの提供には,主治医等の意見を求めることが必要です。
国民健康保険団体連合会は,国民健康保険法が根拠となって設立されています。
しかし,今日では国民健康保険の診療報酬の審査支払にとどまらず,後期高齢者医療制度,介護保険制度,障害者総合支援制度の審査支払を行っています。
今回は,その中の介護保険制度での役割を整理したいと思います。
①介護報酬等の審査・支払い
②介護保険サービスの質の向上に関する調査及びサービス提供事業者に対する指導・助言
③介護保険サービス事業及び介護保険施設の運営 など
それでは,今日の問題です。
第30回・問題133 介護保険法における国民健康保険団体連合会の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 第二号被保険者から要介護認定の申請があった場合,認定調査を行う。
2 市町村から委託を受けて,各種介護サービス費の請求に関する審査・支払を行う。
3 適正な業務管理体制を整備していない介護サービス事業者に対し,是正勧告・命令を行う。
4 介護支援専門員の試験及び研修,登録に関する業務を行う。
5 第一号被保険者の保険料を,政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率で算定する。
特に難しい問題ではないとは思いますが,一応解説していきます。
1 第二号被保険者から要介護認定の申請があった場合,認定調査を行う。
認定調査は市町村の業務です。
2 市町村から委託を受けて,各種介護サービス費の請求に関する審査・支払を行う。
これが正解です。
3 適正な業務管理体制を整備していない介護サービス事業者に対し,是正勧告・命令を行う。
国保連が行うのは,介護サービス事業者に対する助言・指導です。
是正勧告や命令を行うほどの権限は持っていません。
これらは,市町村の業務です。
なお,指定取消しを行うのは,都道府県です。
地域密着型サービス事業者の場合は,市町村です。
なぜこのようにわかれているのかについては,前回の記事で確認してください。
サービス事業者を指定する機関の覚え方
https://fukufuku21.blogspot.com/2021/08/blog-post_17.html
4 介護支援専門員の試験及び研修,登録に関する業務を行う。
介護支援専門員の試験及び研修,登録に関する業務は,都道府県が行います。
5 第一号被保険者の保険料を,政令で定める基準に従い条例で定めるところにより算定された保険料率で算定する。
第一号被保険者の保険料を決めるのは,市町村の業務です。
勉強する過程で「指定」と出てきたら,どこが指定するのかを意識して押さえることが大切です。
大きく分けると
国
都道府県
市町村
の3つ段階がありますが,サービス事業者の場合,ほとんどは都道府県の役割です。
国や市町村が指定するのはレアケースです。
介護保険で,市町村長が指定するのは
①地域密着型サービス事業者
②介護予防サービス事業者
③居宅介護支援事業者
の3種類です。
これら以外はすべて都道府県知事が指定します。
それでは今日の問題です。
第30回・問題132 介護保険法における指定居宅サービス事業者(地域密着型サービスを除く)の指定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 指定居宅サービス事業者は,市町村長が指定を行う。
2 事業者は,市町村長から3年ごとに指定の更新を受けなければならない。
3 市町村長は,事業者からの廃業の届出があったときは,公示しなければならない。
4 都道府県知事は,居宅介護サービス費の請求に関する不正があったとき,指定を取り消すことができる。
5 事業の取消しを受けた事業者は,その取消しの日から起算して3年を経過すれば指定を受けることができる。
この問題は,答えを知らなくても解答テクニックでも正解できます。
そういった面が第30回らしい問題だと言えるでしょう。
行政が行う事務は,別の機関と重なりません。
指定を行った機関は,指定を取り消すのも更新するのもすべて行います。
それでは,解説です。
1 指定居宅サービス事業者は,市町村長が指定を行う。
市町村長が指定するのは,
①地域密着型サービス事業者
②介護予防サービス事業者
③居宅介護支援事業者
この問題の場合は,地域密着型サービスを除くとされているので,指定するのは都道府県知事です。
2 事業者は,市町村長から3年ごとに指定の更新を受けなければならない。
この選択肢は,近年の問題では珍しく間違っているポイントが2つあります。
3年ごと → 6年ごと
市町村長 → 都道府県知事
3 市町村長は,事業者からの廃業の届出があったときは,公示しなければならない。
公示するのは,都道府県知事です。
4 都道府県知事は,居宅介護サービス費の請求に関する不正があったとき,指定を取り消すことができる。
これが正解です。指定するのは都道府県知事です。指定を取り消すのも都道府県知事です。
5 事業の取消しを受けた事業者は,その取消しの日から起算して3年を経過すれば指定を受けることができる。
指定の取り消しを受けた事業者が再び指定を受けられるのは5年経過してからです。
<今日の一言>
解答テクニック的に問題を読むと
1 市町村長
2 市町村長
3 市町村長
4 都道府県知事
5 市町村長と都道府県知事のいずれでもない
正解を1つ選ぶ問題なので,1~3は消去できそうです。
残るは4と5です。
ここで迷う人もいるかもしれませんが,選択肢5の3年というのが短いと考えると消去できそうです。
しかし,そんなことを考えなくても,指定の原則を押さえることで簡単に正解することができます。
市町村長が指定するのは,極めてレアケースです。
わが国の高齢者に対する施策は長らく救貧制度の中にありました。
現在の養護老人ホームの変遷を考えてみるとよくわかります。
救護法(1929・昭和4年) 養老院
↓ ↓
旧・生活保護法(1946・昭和21年) 養老施設
↓ ↓
老人福祉法(1963・昭和38年) 養護老人ホーム
もう一つ老人保健を見てみます。
1963・昭和38年 老人福祉法 65歳以上の者に対する健康診査を実施する。
↓ ↓
1982・昭和57年 老人保健法 老人保健は老人福祉法から独立する。
これでわかるように老人保健は,最初は老人福祉法の中にあり,老人保健法ができたことで制度が独立したのです。
最後,老人医療費を見てみます。
1973・昭和48年 老人福祉法を改正して,70歳以上の高齢者に対する「老人医療費支給制度」をつくり,老人医療費の無料化する。
↓ ↓
1982・昭和57年 老人保健法により,老人医療費の一部負担が実施される。
そして,2000・平成12年に介護保険が実施されます。
2005・平成17年には,老人保健法を改正して,高齢者の医療の確保に関する法律,となり後期高齢者医療制度が始まりました。
これらを押さえたところで,今日の問題です。
第30回・問題131 高齢者に関わる保健医療福祉施策に関する次の記述のうち,施策の開始時期が最も早いものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法による70歳以上の者に対する老人医療費支給制度
2 老人保健制度
3 老人福祉法による65歳以上の者に対する健康診査
4 介護保険制度
5 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)
歴史が苦手な人はいやになってしまう問題かもしれません。
こういった問題を見ると,年号をしっかり覚えないと正解できないと思う人もいるかもしれません。
しかし,決してそんなことはありません。
前説のように,ポイントはいくつかあります。
この問題で言えば1963年の老人福祉法です。
それでは,入れ替えてみます。
3 老人福祉法による65歳以上の者に対する健康診査 1963(昭和38)年
↓ ↓
1 老人福祉法による70歳以上の者に対する老人医療費支給制度 1973(昭和48)年
↓ ↓
2 老人保健制度 1982(昭和57)年
↓ ↓
5 高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン) 1989(平成元)年
↓ ↓
4 介護保険制度 2000(平成12)年
ということで,正解は選択肢3でした。
緩和医療にかかわり,ホスピスを創設したソンダース(C. Saunders)は,末期患者の抱える苦痛について,以下のように述べています。
全人的苦痛(トータルペイン) |
・身体的苦痛(からだの痛み) ・精神的苦痛(不安など) ・社会的苦痛(仕事や家族,経済的問題など) ・スピリチュアルペイン(生きる意味など) |
スピリチュアルとは,「霊的」と訳されますが,日本ではなじまないので,日本語に訳されず,そのまま使われることが多いようです。
緩和ケアでは,これらの苦痛に対して様々な職種による緩和ケアチームがかかわっていきます。
この中で,社会福祉士がかかわる側面は,特に「社会的苦痛」です。経済的な問題に精通しているのは社会福祉士です。
緩和ケアチームに社会福祉士がかかわるのは,社会的苦痛に対応するためだということをしっかり覚えておきましょう。
事例問題では,この部分に着目して問題を読むことが大切です。
それでは今日の問題です。
第30回・問題130 事例を読んで,緩和ケアチームにおけるソーシャルワーカー(社会福祉士)の主な役割として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Jさん(60歳)は,自宅で(58歳)と二人暮らしである。先日,腹部に違和感があり,病院で受診した。その結果,ステージⅣの胃がん(他の器官への転移あり。)が見つかった。主治医は,病状の進行状況を勘案し,自宅での療養を勧めた。主治医と夫婦で話し合い,在宅での療養に同意した。妻は病院内のソーシャルワーカーと共に,Jさんの緩和ケアを目指した在宅療養について,話合いを始めた。ソーシャルワーカーは,主治医,看護師,訪問看護師,薬剤師,介護支援専門員と共に関係者会議を行った。
1 身体的痛みに対するコントロール
2 医療的ケアへの助言
3 療養に関わる助成制度や経済的な問題への助言
4 薬物療法への助言
5 日常の介護の相談
答えはすぐわかりますね。
3 療養に関わる助成制度や経済的な問題への助言
〈今日の一言〉
この問題がもしかすると「保健医療サービス」で出題されていれば,経済的問題に着目するということに迷うことがないかもしれません。
この問題は「高齢者に対する支援と介護保険制度」で出題されました。
そのために選択肢1「身体的痛みに対するコントロール」や選択肢5「日常の介護の相談」に意識が向きがちです。
しかし,設問は「社会福祉士の主な役割」ですから,どの科目で出題されても求められるものが変わることがないことを忘れてはなりません。
高齢者に対する支援と介護保険制度は,ほかの科目よりも出題数が多い科目です。
この科目の問題数が多いのは,近年の高齢化への対応のためだと思っている人もいるようですが,そういうことではありません。
前のカリキュラムでは,「老人福祉論」と「介護概論」という2科目があったのを統合したためです。
そのことを試験センターもすっかり忘れていたようで,介護技術系の出題が少ない傾向にあります。
しかし,ようやく近年ではその原点を思い出したのか,少しずつ適正な比率になってきているように思います。
介護技術系の問題は,基本事項を押さえたものしか出題されないので,落ち着いて考えれば解けます。
もしわからなくなった場合は,頭の中でシミュレーションしてみると良いと思います。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題129 右片麻痺で嚥下機能が低下した状態にある人に対する食事介護の在り方として,適切なものを2つ選びなさい。
1 食形態は,きざみ食が適している。
2 食前に嚥下体操を行う。
3 食事の時は,左側にクッションを入れ座位姿勢が保てるようにする。
4 右側から食事介助をする。
5 口腔内の右側に食物残渣がないか確認をする。
この問題のポイントは2つあります。
①右片麻痺
②2つ選ぶ
「①右片麻痺」は,もしわからなくなった場合は,自分に麻痺があったとき,どんな状態になるのだろうと考えることです。
「2つ選ぶ」は,意外と見落としがちです。「大丈夫」と思っている人は要注意です。普段はしないミスをするのが国試の怖いところです。模擬試験を受けるなど,打てる対策は打っておくことが大切です。
それでは解説です。
1 食形態は,きざみ食が適している。
嚥下機能が低下している人には,とろみ食が適しています。
嚥下機能の研究があまり進んでいなかった時代にはきざみ食が良いとされていました。しかし嚥下の「食塊をつくる」段階では,きざみ食では食塊になりにくいために,誤嚥のリスクがあることがわかったのです。
その点,とろみ食では食塊にしやすいために誤嚥のリスクが低くなります。
食塊になったものを嚥下しないと気道に入るおそれがあるのです。
2 食前に嚥下体操を行う。
これが1つめの正解です。
介護現場にいる人にとってはなじみのあることでしょう。
高齢になると,唾液の分泌が減少します。嚥下体操を行うことで唾液腺の働きを活発化させることができます。
人によっては,「ビュー」と出ることもあります。
3 食事の時は,左側にクッションを入れ座位姿勢が保てるようにする。
クッションなどで座位姿勢を保つことを「シーティング」といいます。
物理的には,体は弱いほうに曲がり,倒れていきます。
この問題は「右片麻痺」ですから,弱いほうは「右」です。
左側にクッションを入れると重心が右にずれます。
そのために右に倒れやすくなります。
麻痺のある側にクッションを入れると,重心が身体の中心にくるので安定します。
4 右側から食事介助をする。
右片麻痺がある人には,麻痺のない左側から食事介助します。
右側には麻痺があるので,口をうまく動かすことができないからです。
5 口腔内の右側に食物残渣がないか確認をする。
これが2つめの正解です。
右側は麻痺があるために,下をうまく動かすことができません。
そのために食物が口の中に残りやすいので確認することが大切です。
〈今日の一言〉
今日の問題は決して難しくない問題です。しかし,こういった問題であっても国家試験では確実に正解することは決して簡単ではありません。
なぜなら,読み間違いということがあるからです。この問題の場合,「右片麻痺」が読み間違いを引き起こすおそれがあるのです。
「右」や「左」,「上」や「下」などは,たった1文字違いです。そのために間違って読むと脳はそのように認知してしまい,本当は右と書いてあるのに,左に見えてしまうのです。
これが医療事故などの要因となるヒューマンエラーです。
さて,それではどうしたらよいでしょうか。
対策は人それぞれですが,脳が正しく認知するように,問題文に線を引くなり,しるしをつけるなりすると良いと思います。
国試会場でそういったことを急にするのは難しいので,普段の勉強から意識的に行うようにしましょう。
片麻痺は良く知られていますが,対麻痺(ついまひ)はあまり知られていないのではないだしょうか。
そのため,国試では片麻痺と混同させるように出題されます。
対麻痺とは,両下肢の麻痺状態をいいます。
英語では,paraplegia(パラプレジア)といいます。
このパラブレジアの「パラ」こそが,パラリンピックの「パラ」の意味の一つです。
パラリンピックの始まりは,第二次世界大戦で脊髄損傷した兵士のリハビリテーションとしてイギリスの病院で行ったものです。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題128 次の記述のうち,対麻痺の状態に当たるものとして,正しいものを1つ選びなさい。
1 左右どちらかの上肢と下肢に麻痺がある状態
2 右上肢と左下肢に麻痺がある状態
3 左上肢に麻痺がある状態
4 両下肢に麻痺がある状態
5 四肢全体に麻痺がある状態
答えは簡単ですね。
選択肢4です。
ほかの選択肢も一応解説します。
1 左右どちらかの上肢と下肢に麻痺がある状態
これは,片麻痺です。中でも交代性片麻痺と呼ばれる状態です。
2 右上肢と左下肢に麻痺がある状態
これも片麻痺です。一般的によく知られる片麻痺ですが,交叉性片麻痺と呼ばれる状態です。
3 左上肢に麻痺がある状態
これは,単麻痺です。
5 四肢全体に麻痺がある状態
これは,四肢麻痺です。
歴史や人名を苦手とする人は多いですが,出題数はそれほど多くないので合否には大きくかかわりません。
それに比べると法制度は,確実に覚えないと正解することはできず,制度系の問題は多いだけに,ここが合否を分けると言っても決して過言ではないように思います。
特に今日のテーマである「市町村の役割」は,都道府県と入れ替えて出題されれば,文章の言い回しによる不自然は生じないこともあり,知識なしで正解するのはかなり難しいと言えます。
勉強の時間配分では,歴史や人名よりもたっぷり時間をかけて勉強すべきでしょう。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題127 介護保険制度に関する次の記述のうち,市町村の役割として,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護保険給付費のための支出会計区分は,一般会計である。
2 要介護状態区分を定める。
3 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設ける。
4 第一号被保険者の保険料の徴収を特別徴収の方法によって行うことができる。
5 介護保険審査会を設置する。
介護保険の保険者は市区町村です。
保険者では大変なものを都道府県がバックアップする体制をとります。
市町村と都道府県の関係は,ほかの領域でも同じです。
その視点で問題を読んでみましょう。
1 介護保険給付費のための支出会計区分は,一般会計である。
地方公共団体の会計には,一般会計と特別会計があり,介護保険は,特別会計を組まなければなりません。
この選択肢はもしかすると勘で消去できるかもしれませんね。もし本当に一般会計だとしたら,出題する意味がないからです。
一般会計ではないので,出題する意味があります。
2 要介護状態区分を定める。
これは要注意です。
要介護度の認定を行うのは市町村の役割です。しかし,この文章は「要介護状態区分」となっています。
つまり,どんな状態だったら要介護1なのか,といったものを定めるのは誰かという問題なのです。
これに引っ掛かった人は多いのではないかと思います。
要介護状態区分を定めるのは,厚生労働省です。そのため,日本国内どこに住んでいても同じ基準により要介護認定を行うことができるのです。
3 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設ける。
財政安定化基金は,保険者である市町村をバックアップする仕組みの一つです。
つまり設置するのは,都道府県だということになります。
財政安定化基金は,介護保険特別会計が赤字になっても一般会計から繰り入れなくても良いための制度です。
介護保険制度をつくる際,いかに安定した制度にするかについて苦心したことがよくわかる制度だと思いませんか?
4 第一号被保険者の保険料の徴収を特別徴収の方法によって行うことができる。
これが正解です。第一号被保険者の保険料の徴収には,非保険者から直接徴収する普通徴収と年金から天引きする特別徴収があります。
これは年金額によって線引きされます。年額が18万円以上の場合は「特別徴収」,18万円未満の場合は「普通徴収」です。
普通徴収は本来の,というか普通の徴収方法です。しかしこれでは市町村の事務負担が大きくなります。
市町村の事務負担を軽減するために特別徴収という仕組みをつくったのです。
介護保険をいかに国民に納得してもらうかも大きな課題でしたが,もう一つ保険者となる市区町村の事務負担をいかに少なくするかも大きな課題だったのです。
特別徴収は,そのために考えられた工夫なのです。
5 介護保険審査会を設置する。
介護保険審査会は,要介護認定などに不服があった場合の不服申し立て機関です。
設置するのは都道府県です。
この規定がないと,不服申し立ては行政不服審査法に基づいて,市町村長に対して審査請求を行うことになります。
市町村の事務負担を軽減するために,都道府県に介護保険審査会を設置するのです。
市町村が設置する「介護認定審査会」と都道府県が設置する「介護保険審査会」は名称が似ているので,国試会場では読み間違いする可能性があります。
たった2文字しか違いません。
十分に気を付けなければなりません。普段はしない読みが違いが起きるのが国試です。
今日から新年度です。 気持ちを新たにスタートです。 当学習部屋を開設以来,ほぼ毎日新しい情報を出して来ました。 ずっとご覧になっていた方は,間が空いたことが不思議に思ったでしょう。 実は,今年の国家試験が終わったところから,ペースを変えて,2日に1回にしようと計画していました。 ...