児童虐待防止法では,児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者には,通告の義務があります。
通告先は,
・市町村
・福祉事務所
・児童相談所
この中で,最も権限を持つのは,児童相談所です。
児童相談所長は,児童の安全の確保を図るため,児童の一時保護や親権停止・親権喪失の審判の請求などを行うことができます。
最も身近なのは市町村ですが,そのような権限は持ちません。立入調査も行うことができません。
そのため,必要な場合は,児童相談所に送致することになります。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題140 事例を読んで,S市子ども家庭課の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
S市子ども家庭課は,連絡が取れないまま長期間学校を欠席している児童がいると学校から通告を受けた。S市では虐待の疑いがあると考え,A相談員(社会福祉士)が直ちに家庭訪問を実施した。しかし,保護者と思われる人物から,「子どもに会わせるつもりはない」とインターホン越しに一方的に告げられ,当該児童の状態を把握することはできなかった。
1 家庭訪問の結果を学校に伝え,対応を委ねる。
2 近隣住民に通告のことを伝え,児童を見かけたらS市に情報提供してもらう。
3 一時保護などの可能性を考慮し,児童相談所長に通知する。
4 家屋内への強制的な立入調査を行い,直ちに児童の安全を確認する。
5 親権喪失審判請求の申立てを行う。
事例問題の注意ポイントとして,制度を聞かれているものは,制度で考えなければならないことです。
答えは「3 一時保護などの可能性を考慮し,児童相談所長に通知する」です。
悩む余地はありません。
立入調査や一時保護は,強力な権限です。
市町村は,虐待対応の専門機関ではないので,このような権限を持ちません。
そのかわり,市町村に期待されているのは,身近な存在として関係を壊さず介入していくことです。これからの課題でしょう。