現在の障害者雇用促進法は,1960年・昭和35年に「身体障害者雇用促進法」という名称から始まりました。
つまり対象は,対象は身体障害者だったわけです。
最初は努力義務であり,その後雇用義務化され,法定雇用率が規定されました。
その後,知的障害者も対象となり,現在は,身体・知的・精神の三障害が対象となっています。
一定以上の規模の企業が法的雇用率を達成できなかった場合は,不足した人数に対して障害者雇用納付金を納付しなければなりません。
国や地方公共団体などには一般よりも高い法定雇用率が規定されていますが,障害者雇用納付金は適用されません。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題143 障害者雇用率制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 2018年(平成30年)4月1日から,法定雇用率の算定基礎の対象に精神障害者が含まれることになっている。
2 重度身体障害者は,障害者雇用率の算定上,一人をもって三人とみなされる。
3 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
4 法定雇用率未達成の事業主は,利益率に応じて障害者雇用納付金を納付しなければならない。
5 国や地方公共団体には,一般の民間企業より低い法定雇用率が課せられている。
出題された当時のままの文章のままなので,今となってはちょっとおかしな文章ですが,歴史をさかのぼることができるので,良い問題だと思います。
それでは解説です。
1 2018年(平成30年)4月1日から,法定雇用率の算定基礎の対象に精神障害者が含まれることになっている。
これが正解です。
精神障害者が雇用義務化されたのは,三障害の中では最も新しく,この選択肢にあるように,2018年・平成30年から法定雇用率の算定基礎の対象に加わりました。
このことによって,法定雇用率が引き上げられたのです。
2 重度身体障害者は,障害者雇用率の算定上,一人をもって三人とみなされる。
障害者雇用率には,ダブルカウント,ハーフカウントという算定方法があります。
詳しく覚える必要はありませんが,ダブルカウントは重度の場合,1人を2人とカウントするもの,ハーフカウントは短時間雇用の場合,1人を0.5人とカウントするものです。
3 特例子会社とは,事業内容を勘案して障害者の雇用義務を課さないと認められた子会社のことである。
特例子会社は,要件を満たすと子会社に雇用した障害者は,グループ全体や親会社で雇用したものとみなす制度です。
清掃やクリーニングなど業態によっては障害者を雇用しやすいものもあります。
そういった企業がグループの中にあった場合に,グループ全体や親会社で雇用したものとみなしてくれると,法定雇用率を達成しやすくなります。
4 法定雇用率未達成の事業主は,利益率に応じて障害者雇用納付金を納付しなければならない。
障害者雇用率を達成できない場合は,その不足した人数に合わせて,障害者雇用納付金を納付しなければなりません。
なお,納付金を納付したからといって障害者雇用の義務が免除されているわけではないことを覚えておきたいです。
5 国や地方公共団体には,一般の民間企業より低い法定雇用率が課せられている。
国や地方公共団体には,一般の民間企業より高い法定雇用率が課せられている。
法定雇用率は5年ごとに見直すことになっています。
具体的な数値を覚えても変わっていくので,
国や地方公共団体には,一般の民間企業より高い法定雇用率が課せられている
という覚え方は適切でしょう。