緩和医療にかかわり,ホスピスを創設したソンダース(C. Saunders)は,末期患者の抱える苦痛について,以下のように述べています。
全人的苦痛(トータルペイン) |
・身体的苦痛(からだの痛み) ・精神的苦痛(不安など) ・社会的苦痛(仕事や家族,経済的問題など) ・スピリチュアルペイン(生きる意味など) |
スピリチュアルとは,「霊的」と訳されますが,日本ではなじまないので,日本語に訳されず,そのまま使われることが多いようです。
緩和ケアでは,これらの苦痛に対して様々な職種による緩和ケアチームがかかわっていきます。
この中で,社会福祉士がかかわる側面は,特に「社会的苦痛」です。経済的な問題に精通しているのは社会福祉士です。
緩和ケアチームに社会福祉士がかかわるのは,社会的苦痛に対応するためだということをしっかり覚えておきましょう。
事例問題では,この部分に着目して問題を読むことが大切です。
それでは今日の問題です。
第30回・問題130 事例を読んで,緩和ケアチームにおけるソーシャルワーカー(社会福祉士)の主な役割として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Jさん(60歳)は,自宅で(58歳)と二人暮らしである。先日,腹部に違和感があり,病院で受診した。その結果,ステージⅣの胃がん(他の器官への転移あり。)が見つかった。主治医は,病状の進行状況を勘案し,自宅での療養を勧めた。主治医と夫婦で話し合い,在宅での療養に同意した。妻は病院内のソーシャルワーカーと共に,Jさんの緩和ケアを目指した在宅療養について,話合いを始めた。ソーシャルワーカーは,主治医,看護師,訪問看護師,薬剤師,介護支援専門員と共に関係者会議を行った。
1 身体的痛みに対するコントロール
2 医療的ケアへの助言
3 療養に関わる助成制度や経済的な問題への助言
4 薬物療法への助言
5 日常の介護の相談
答えはすぐわかりますね。
3 療養に関わる助成制度や経済的な問題への助言
〈今日の一言〉
この問題がもしかすると「保健医療サービス」で出題されていれば,経済的問題に着目するということに迷うことがないかもしれません。
この問題は「高齢者に対する支援と介護保険制度」で出題されました。
そのために選択肢1「身体的痛みに対するコントロール」や選択肢5「日常の介護の相談」に意識が向きがちです。
しかし,設問は「社会福祉士の主な役割」ですから,どの科目で出題されても求められるものが変わることがないことを忘れてはなりません。