社会福祉法人は,社会福祉事業を行うことを目的として,社会福祉法の規定によって設立されています。
社会福祉法では,第22~59条にわたって,社会福祉法人が規定されています。
社会福祉法は,社会福祉士を目指すものにとっては,極めて重要なので,どこから出題されても決して不思議ではありません。
つまり,過去問だけではなく,社会福祉法には目を通しておくことが必要です。
2016(平成28)年の法改正は,社会福祉法人制度改革を目的としたものです。
以下の出典元:厚生労働省「社会福祉法人制度改革について」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000155170.pdf
それでは,今日の問題です。
第30回・問題119 社会福祉法人に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 役員の選任は,評議員会の決議を必要とする。
2 株主がいないため,事業経営の透明性の確保は求められない。
3 親族等特殊関係者の理事,評議員,監事への選任に係る規定はない。
4 監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることができる。
5 理事・監事等の関係者に対し特別の利益を与えることができる。
簡単そうで,簡単ではない問題です。
確かな知識がなければ間違う可能性があるからです。
解答テクニックで問題は解ける,という人がいます。確かにそういった問題もありますが,解答テクニックを駆使したところで,確かな知識がなければ到底合格基準点を超えることができません。
それでは,解説です。
1 役員の選任は,評議員会の決議を必要とする。
これが正解です。
2016年改正では,評議員会は必置の機関となり,法人運営に係る重要事項の議決機関となりました。
重要事項の中には,役員の選任,解任等が含まれます。
2 株主がいないため,事業経営の透明性の確保は求められない。
事業経営の透明性の確保は,提供する福祉サービスの質の向上とともに「経営の原則」として定められています。
3 親族等特殊関係者の理事,評議員,監事への選任に係る規定はない。
親族等特殊関係者の制限は,以下のように定められています。
親族等特殊関係者の制限
理事 一定の数を超えなければなることができる。 評議員 なることができない 監事 なることができない。 |
このように,評議員,監事の選任は厳しい条件がつけられています。
なお,社会福祉法では,役員は,理事と監事のことを指しています。
そのため,親族等特殊関係者は,役員になることができない,と出題されたら誤りになるので,注意が必要です。
役員のうち,理事は一定の範囲を超えなければ親族等特殊関係者も理事になることができるからです。
親族等特殊関係者がなれないのは,評議員と監事です。
4 監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることができる。
監事は,理事,評議員又は当該法人の職員が兼ねることができません。
5 理事・監事等の関係者に対し特別の利益を与えることができる。
特別の利益は,誰に対しても与えることができません。
<今日の一言>
解答テクニック的にこの問題を見ると
ほかの選択肢よりも
4 監事は,理事,評議員又は当該法人の職員を兼ねることができる。
5 理事・監事等の関係者に対し特別の利益を与えることができる。
の2つが正解になりやすい「ことができる」という表現になっています。
「できない」と「できる」が両方ともあれば,「できる」のほうが正解になりやすいのです。
しかし,この問題は社会福祉法の規定です。冷静に考えると,どちらも社会福祉法人の経営の透明性には,程遠い内容です。