2021年8月20日金曜日

事例問題の「この時点」に注意しましょう!

近年の国試問題では「この時点」というのはかなり多いですが,初めて出題されたのは,わずか10年ほど前のことです。


第24回・問題105 地域包括支援センターに勤務するJ 社会福祉士は,地区の民生委員から,「近所に住むKさんのことなのですが,70代後半の女性で一人暮らしをしています。最近,どうも様子がおかしく,季節にそぐわない服装で出歩き,足元もおぼつかなくなっています。少し痩せてきているようにも見えます。また,家の周りにはごみが散乱して悪臭が漂い,近隣住民からの苦情が増えています。私も何度か訪ねているのですが,いつもすごい剣幕で『用はない,帰れ!』の一点張りです。何か良い方法がないものでしょうか」と相談を受けた。民生委員から相談を受けた後,すぐさま,J社会福祉士はKさん宅を訪問したが,その日はKさんに拒否されて会うことができなかった。

 次のうち,この時点でのJ社会福祉士の対応として,最も適切なものを一つ選びなさい。

1 玄関に名刺やK さん宛のメモを置いて,Kさん宅への訪問を継続する。

2 民生委員に今後の対応をゆだね,状況に変化があった際の報告を依頼する。

3 Kさん宅に電話を入れ,センターに来所するよう伝える。

4 民生委員と協力して,Kさん宅のごみの片付けを行う。

5 Kさんの意向を尊重し,センターに連絡があるのを待つ。


※この問題の正解は,今日の最後にあります。


さて,この問題が「この時点」という言葉が社会福祉士の国試に出てきた初めてのものです。


内容だけではなく,この問題については気がつくことがあるのではないでしょうか。


まず1つめは「一つ選びなさい」となっていることです。現在は「1つ選びなさい」と出題されています。


この違いは,第25回国試から「2つ選びなさい」が登場したことによります。


もう一つは,事例が長いことです。


第24回国試は,最も問題の文字数が長かった試験です。


「魔の第25回国試」を経て,第26回国試から問題の文字数が減っていますが,文字数が多くても試験時間には変化がないので,過去は本当に過酷だったと言えるでしょう。


話は戻りますが,「この時点」と限定された問題では,その先の対応ならあり得るということは,すべて排除されます。


第24回国試の問題はかなり高度なので,消去法でしか正解を選び出すことができませんが,近年の出題は答えのパターンはかなり決まってきています。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題135 事例を読んで,R市の地域包括支援センターに勤務するK社会福祉士の,この時点での対応に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

〔事 例〕

 L民生委員が,担当地域のMさん(73歳,男性)への対応について相談するため来所した。Mさんは自分の年金で生活できているが,物忘れが多いという自覚があり,貸アパートの家賃の支払が滞ることがある。親族や近隣との付き合いはない。Mさんは自宅での生活を望んでいる。

1 Mさんから心身の状況や日常生活について話を聞く。

2 K社会福祉士の判断で,要介護認定の申請に関する手続を代行する。

3 Mさんには財産管理はできないと考え,市長申立てで成年後見人を選任する。

4 Mさんに,R市の社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業について説明する。

5 地域包括支援センター運営協議会に諮り,支援方針を決定する。


事例が何と短いことでしょう。第24回の問題から比べると半分以下の分量しかありません。


第30回国試は,第25回国試と逆に合格基準点が最も高くなった時です。

何と99点だったのです。


「この時点」でなければ,おそらくすべての選択肢の対応は正解になるかもしれません。

しかし,この事例は,まだMさんに会ったことがないものです。欠席裁判のようなことは許されません。


その視点で選択肢を見ると


2 K社会福祉士の判断で,要介護認定の申請に関する手続を代行する。

3 Mさんには財産管理はできないと考え,市長申立てで成年後見人を選任する。

5 地域包括支援センター運営協議会に諮り,支援方針を決定する。


の3つは,Mさん不在です。


1 Mさんから心身の状況や日常生活について話を聞く。

4 Mさんに,R市の社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業について説明する。


この2つの選択肢は,Mさんが登場します。


正解は,1と4だということになります。


<今日の一言>


今日の問題は,全然難しくないですが,うっかりすると間違えます。

普段しないようなミスを犯すのが国試の怖いところです。


最も多いうっかりは,2つめの正解を選び忘れることです。


特にこの問題は,選択肢1が1つめの正解となっています。

こういう問題は,2つめの正解を選ぶことを忘れがちになる傾向があるようです。


ヒューマンエラーは,ゼロにすることはできませんが,ゼロに近づけることはできます。


さぁ,あなたはこの課題に対してどのように対処しますか?


私はそんなミスはしません,と思う人は本当に気をつけましょう。


たとえば患者取り違えなどの医療現場の重大事故も「そんなことが起きるの?」と思うようなことでしょう。


いくつものチェックがあっても医療事故は発生しています。


もう一度あなたに問います。


さぁ,あなたはこの課題に対してどのように対処しますか?


〈第24回の問題の正解〉

選択肢1

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