2021年8月5日木曜日

サービスマネジメントについて

組織の管理には


・人事管理

・財務管理

・品質管理


があります。


サービス提供組織にとって品質管理とは,今日のテーマであるサービスマネジメントだということになります。


それでは今日の問題です。


第30回・問題123 サービスマネジメント論に基づく福祉サービスの運営管理の在り方に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 サービスへの利用者の満足度を高めるためには,サービス利用前から利用者がサービスへの高い期待を持つように働き掛けることが望ましい。

2 サービス・プロフィット・チェーンの考え方によれば,サービスへの利用者の満足度を高めるためには,従業員の仕事への満足度を高めることが重要である。

3 利用者のニーズに沿った創意工夫を従業員に促すためには,現場の裁量を認めるのではなく,マニュアルなどの外在的な管理手段を徹底していくことが有効である。

4 利用者にサービスの品質を評価してもらう際は,サービスの提供過程に対する評価よりも,サービスの結果に対する評価を重視することが重要である。

5 利用者の多様性に対応するためには,各々の従業員の価値観の多様性を認めることが望ましいので,組識としてのサービスの理念や価値を明文化すべきではない。


どんなに勉強しても,知らないものが出題されるのが国試です。


それはそれでよいです。


なぜなら,勉強したことがあるものばかりが出題されたら,合格基準点は90点どころか,150点に限りなく近づいてしまいます。


そのため,適度に新しいものを盛り込むことで,調整を図っていると考えられます。


しかし,知らないものが出題されたからといって,決して得点できないということはありません。


落ち着いて落ち着いて,とにかく落ち着いて考えれば,突破口は見えてきます。

今日の問題は,いわゆる消去法で答えるタイプの問題です。


そのために落ち着いて問題を読むことが大切なのです。

落ち着いて冷静に問題を読まないと消去できないものが出てきてしまいます。そうなると正解できないことになります。


さて,解説です。


1 サービスへの利用者の満足度を高めるためには,サービス利用前から利用者がサービスへの高い期待を持つように働き掛けることが望ましい。


解答テクニックを使っても消去できますが,きちっと説明します。


サービス利用前から利用者がサービスへの高い期待を持つことを「事前期待が高い」と表現します。


事前期待が高いと,利用者が満足するラインが高くなります。事前期待を高めると提供するサービスの質を上げなければ満足しないこととなります。


高級ホテルなら,質の良い接客サービスを期待します。少しの落ち度も許されないでしょう。


事前期待が低いと,利用者が満足するラインは低くなります。


安ホテルなら,接客サービスは期待しません。期待していなかった接客サービスがあれば,それだけで満足するでしょう。


福祉サービスは多くの場合,提供するサービスは公定価格となっています。


サービスの質が悪いから,私たちのサービスは安いです。


サービスの質は良いから,私たちのサービスは高いです。


といったことはできません。需要と供給のバランスで価格が決まる自由競争の社会とは異なります。


それではどんな時に事前期待が高くなり,事前期待が低くなるのでしょうか。


一つはハードです。施設を立て替えた時が注意です。古い施設では満足していたものが,新しい施設で同じレベルのサービスを提供していては,利用者に満足していただくのは難しくなります。


ほかには,利用する事業所が変わることも注意です。前に利用していた事業所のサービスが基準となるからです。


2 サービス・プロフィット・チェーンの考え方によれば,サービスへの利用者の満足度を高めるためには,従業員の仕事への満足度を高めることが重要である。


これが正解です。


プロフィットとは利益と訳されます。


それでは,サービス・プロフィット・チェーンとはどんなチェーン(連鎖)なのでしょう。


従業員の仕事への満足度を高める

 ↓ ↓

提供するサービスの質が上がる

 ↓ ↓

利用者の満足が高まる

 ↓ ↓

リピーターが増える

 ↓ ↓

利益が増える

 ↓ ↓

組織が満足する

 ↓ ↓

給料が上がる

 ↓ ↓

従業員の仕事への満足度を高める

 ↓ ↓

提供するサービスの質が上がる

 ↓ ↓

利用者の満足が高まる

 ↓ ↓

リピーターが増える

 ↓ ↓

利益が増える

 ↓ ↓

組織が満足する


このような連鎖が起きます。


これが,サービス・プロフィット・チェーンの例です。


3 利用者のニーズに沿った創意工夫を従業員に促すためには,現場の裁量を認めるのではなく,マニュアルなどの外在的な管理手段を徹底していくことが有効である。


これを正解だと思う人は要注意です。


マニュアルは,過去の経験によって作り上げられます。そこからは新しい発想を生み出すことは難しいと言えます。


現場のことを一番知っているのは,現場職員です。


ある程度は,現場の裁量に任せて,管理者はそれを実現するためのバックアップすることが大切です。


現場職員がせっかく良いアイディアを出しても「そんな青臭いことを言って」とストップをかける管理者の元では,創意工夫に富んだ発想は生かされません。


4 利用者にサービスの品質を評価してもらう際は,サービスの提供過程に対する評価よりも,サービスの結果に対する評価を重視することが重要である。


対人援助は,物を提供するといったサービスではありません。物なら質の高い製品が出来上がることが大切ですが,無形のサービスは,提供する過程が大きな影響を及ぼします。


例えば,車いすの介助では,移動して目的地に到着するということと同時に安心・安全にサービスを提供することが必要です。乱暴な介助では評価されないでしょう。


5 利用者の多様性に対応するためには,各々の従業員の価値観の多様性を認めることが望ましいので,組識としてのサービスの理念や価値を明文化すべきではない。


プライベートでは,どんな価値観を持っていても良いです。しかし,プロとしては,自己覚知で自分の価値観の偏りに気づき,それを意識しながら対人援助することが求められます。


判断のよりどころになるものが,組織理念であり,価値です。


そうしないと,サービスの質はバラバラになってしまい,利用者の信頼をつかむことは難しくなります。



<今日の一言>


第30回の国家試験を受験した人の中で「サービス・プロフィット・チェーン」を知っていた人はそれほど多くなかったことでしょう。


しかし,今の国試を受験する人はこの用語を知っていると思います。


参考書に書かれているからです。


過去問よりも本試験のほうが難しく感じるのは,参考書を読んで過去問を解くからです。


主だったものは,参考書に書かれています。しかし,本当は参考書に書かれているものだけではなく,一定数はテキストにも参考書にも書かれていないものが出題されます。そのために本試験は難しく感じるのです。


そんなときでも,とにかく落ち着いて問題を読むことが必要です。


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