生活困窮者自立支援法では,都道府県と市及び福祉事務所を設置する町村に,自立相談支援事業と住宅確保給付金の給付に関する事業を行うことを義務づけています。
住宅確保給付金は,離職等の理由で居住する住宅を失った生活困窮者に対して,家賃相当額を給付するものです。
現在は,新型コロナウイルス対策として,生活が困窮して住宅を失うおそれのある生活困窮者に対しても給付しています。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題144 生活困窮者自立支援法による自立相談支援事業を行う責務を有する組織・機関として,正しいものを1つ選びなさい。
1 公共職業安定所(ハローワーク)
2 市及び福祉事務所を設置する町村又は都道府県
3 児童相談所
4 都道府県労働局
5 障害者職業センター
法制度の適用範囲は明確です。
つまりこの法律が対象とするのは,「〇〇です」と決まっています。
その範囲から外れた者は対象となりません。そのために法のすき間というものが生まれます。
生活困窮者自立支援法は,生活保護法の対象とならない人を対象として誕生した第二のセーフティネットとして誕生しました。
そういった問題でつまらないミスをしないためには,機関等は何の法律に基づいて設置されているのかを考えることをおすすめします。
1 公共職業安定所(ハローワーク)
3 児童相談所
4 都道府県労働局
5 障害者職業センター
は,生活困窮者を対象とした機関等ではありません。
それぞれ別の役割を果たしています。冷静に考えるとそれほど難しくはないですが,冷静に考えることができないのが国家試験の怖いところです。
正解は,
2 市及び福祉事務所を設置する町村又は都道府県
これらの地方公共団体は,生活保護を通してケースワークのノウハウを持っているために生活困窮者の自立支援にも期待されたのです。
ただし,自立相談支援事業は,自ら実施するのではなく,民間委託が可能です。
法律をつくる際,地方公共団体の事務負担に配慮していることがよくわかるでしょう。
そのために,福祉事務所を設置していない町村には,生活困窮者自立支援制度の必須事業は規定されていません。それほどの余裕がないためです。
福祉事務所を設置していない町村は,生活困窮者に対して,必要な情報の提供及び助言,都道府県との連絡調整,生活困窮者自立相談支援事業の利用の勧奨その他必要な援助を行う事業を行うことができるとしています。つまり実施は任意ということです。