ナレッジマネジメントという用語を知っていますか?
訳すと「知識経営」ですが,これでは意味がわかりません。
言ってみれば,現場で得られた知識を組織管理に生かすことだと言えます。
ナレッジマネジメントで用いられる言葉に「暗黙知」と「形式知」があります。
暗黙知とは,職場のスタッフ個々人がそれぞれの経験を通して得られた知識をいいます。
形式知とは,暗黙知が組織全体の知識になったものをいいます。
昔の職人は,先輩の背中を見て技術を学んでいったと言われます。
それだとスーパー職人の近くにいる人は学べますが,少し離れたところにいる人は学べません。
職場に「気づきノート」というものを設置して,仕事の中で気がついたことを書くことを実践している組織があります。
これも暗黙知を形式知に変える取り組みの一つだと言えるでしょう。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題125 人材育成や研修に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 経験学習モデルは,能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化との間の循環を否定している。
2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。
3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。
4 OFF-JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。
5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。
何だかよく知らない用語もあるので,いやだなぁ,と思う人もいるかもしれません。
しかし,この問題は,落ち着いて問題を読むと正解できる道筋を示しています。
こういった問題はめったにない親切な問題だと言えるでしょう。
正解は,選択肢2です。
2 暗黙知と形式知の,共同化,表出化,連結化,内面化からなる循環的な変換過程は,組織の知識を創発するのに有効である。
この文章が親切だと思う理由は,「暗黙知とは・・・」「形式知とは・・・」と出題していることです。
「暗黙知とは・・・」「形式知とは・・・」と出題するのではなく,「暗黙知と形式知」と出題することによって,知識がなくてもおおよその意味がつかめます。
「共同化,表出化,連結化,内面化」といったところには間違いポイントはありません。
国試は,多くの人が思うよりも意地悪ではありません。
それにもかかわらず「意地悪だ」というイメージが強いと疑心暗鬼に陥り,自己肯定感の低い人は振り落とされます。
選択肢1の「能動的実験・具体的経験と内省的観察・抽象的概念化」も難しいです。しかし,この選択肢を正解にすることなく,「否定している」という言葉を添えることで誤りにしています。この選択肢を正解にしたなら,正解するのはかなり難しいものとなったでしょう。
それでは,これら以外の解説です。
3 OJTでは,職員の職務遂行能力は対象外である。
OJTは,作業遂行の過程で行う訓練方法です。職務遂行能力とは,仕事を上手にこなすスキルのことですが,当然OJTの対象となります。
4 OFF-JTは,作業遂行の過程で行う訓練方法のことである。
OFF-JTは,作業遂行の過程以外で行う訓練方法です。
5 エルダー制度は,新入社員のセルフラーニングを通じた自己啓発の仕組みである。
エルダーとは,年長者という意味です。
エルダー制度は,年長者,つまり先輩職員が新人社員を担当して,教育研修を行うものです。