2021年8月12日木曜日

介護保険制度における市町村の役割

歴史や人名を苦手とする人は多いですが,出題数はそれほど多くないので合否には大きくかかわりません。


それに比べると法制度は,確実に覚えないと正解することはできず,制度系の問題は多いだけに,ここが合否を分けると言っても決して過言ではないように思います。


特に今日のテーマである「市町村の役割」は,都道府県と入れ替えて出題されれば,文章の言い回しによる不自然は生じないこともあり,知識なしで正解するのはかなり難しいと言えます。


勉強の時間配分では,歴史や人名よりもたっぷり時間をかけて勉強すべきでしょう。


それでは,今日の問題です。


第30回・問題127 介護保険制度に関する次の記述のうち,市町村の役割として,正しいものを1つ選びなさい。

1 介護保険給付費のための支出会計区分は,一般会計である。

2 要介護状態区分を定める。

3 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設ける。

4 第一号被保険者の保険料の徴収を特別徴収の方法によって行うことができる。

5 介護保険審査会を設置する。


介護保険の保険者は市区町村です。


保険者では大変なものを都道府県がバックアップする体制をとります。


市町村と都道府県の関係は,ほかの領域でも同じです。


その視点で問題を読んでみましょう。


1 介護保険給付費のための支出会計区分は,一般会計である。


地方公共団体の会計には,一般会計と特別会計があり,介護保険は,特別会計を組まなければなりません。


この選択肢はもしかすると勘で消去できるかもしれませんね。もし本当に一般会計だとしたら,出題する意味がないからです。


一般会計ではないので,出題する意味があります。


2 要介護状態区分を定める。


これは要注意です。


要介護度の認定を行うのは市町村の役割です。しかし,この文章は「要介護状態区分」となっています。


つまり,どんな状態だったら要介護1なのか,といったものを定めるのは誰かという問題なのです。


これに引っ掛かった人は多いのではないかと思います。


要介護状態区分を定めるのは,厚生労働省です。そのため,日本国内どこに住んでいても同じ基準により要介護認定を行うことができるのです。


3 介護保険の財政の安定化に資する事業に必要な費用に充てるため,財政安定化基金を設ける。


財政安定化基金は,保険者である市町村をバックアップする仕組みの一つです。

つまり設置するのは,都道府県だということになります。


財政安定化基金は,介護保険特別会計が赤字になっても一般会計から繰り入れなくても良いための制度です。


介護保険制度をつくる際,いかに安定した制度にするかについて苦心したことがよくわかる制度だと思いませんか?


4 第一号被保険者の保険料の徴収を特別徴収の方法によって行うことができる。


これが正解です。第一号被保険者の保険料の徴収には,非保険者から直接徴収する普通徴収と年金から天引きする特別徴収があります。


これは年金額によって線引きされます。年額が18万円以上の場合は「特別徴収」,18万円未満の場合は「普通徴収」です。


普通徴収は本来の,というか普通の徴収方法です。しかしこれでは市町村の事務負担が大きくなります。


市町村の事務負担を軽減するために特別徴収という仕組みをつくったのです。


介護保険をいかに国民に納得してもらうかも大きな課題でしたが,もう一つ保険者となる市区町村の事務負担をいかに少なくするかも大きな課題だったのです。


特別徴収は,そのために考えられた工夫なのです。


5 介護保険審査会を設置する。


介護保険審査会は,要介護認定などに不服があった場合の不服申し立て機関です。

設置するのは都道府県です。


この規定がないと,不服申し立ては行政不服審査法に基づいて,市町村長に対して審査請求を行うことになります。


市町村の事務負担を軽減するために,都道府県に介護保険審査会を設置するのです。


市町村が設置する「介護認定審査会」と都道府県が設置する「介護保険審査会」は名称が似ているので,国試会場では読み間違いする可能性があります。

たった2文字しか違いません。

十分に気を付けなければなりません。普段はしない読みが違いが起きるのが国試です。

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