厚生労働省では,平成14年3月に「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針~利用者の笑顔と満足を求めて~」という指針を発表しています。
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/04/h0422-2.html
これが国家試験に出題されたことがあります。
そういった出題があると「こんなものまで知っておかなければならないのか」と思うかもしれません。
しかし,新しいものならともかく,こんなに古い資料をもってきた理由は,知らなくても解けると考えているからです。
その理由はわかりますか?
現在となっては,現場のスタンダードとなっているはずだからです。
〈重要なこと〉
当たり前のことを当たり前だと思えること。
自分の常識を信じることができること。
これを心がけるとつまらないミスを防ぐことができます。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題122 「福祉サービスにおける危機管理(リスクマネジメント)に関する取り組み指針~利用者の笑顔と満足を求めて~」(厚生労働省)の内容に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 利用者の自立的な生活を重視するほどリスクは高まるため,利用者の自由を制約するのはやむを得ない。
2 標準化されたサービスよりも,各職員の経験と勘に頼ったサービスの方が,業務改善や事故の原因の特定が行いやすい。
3 より質の高いサービスを提供することによって多くの事故が未然に回避できる,という考え方で危機管理に取り組むべきである。
4 利用者の状況や施設環境等の個別性が高いため,各施設において十分な検討と創意工夫が必要である。
5 リスクマネジメントは職員全体で取り組むべきことなので,経営者の強いリーダーシップは不要である。
この指針を知らない,困った,と思う人はまじめに勉強を続けてきた人です。
この問題は,「指針」の内容を問うものです。
指針は,方向性を示すものです。
その観点から考えた場合,おそらく指針に含まれないだろう,と推測できるものがあります。
1 利用者の自立的な生活を重視するほどリスクは高まるため,利用者の自由を制約するのはやむを得ない。
2 標準化されたサービスよりも,各職員の経験と勘に頼ったサービスの方が,業務改善や事故の原因の特定が行いやすい。
5 リスクマネジメントは職員全体で取り組むべきことなので,経営者の強いリーダーシップは不要である。
迷うのは,選択肢5ではないかと思います。
経営者のリーダーシップがなくても,職員がしっかりやっていれば,安心安全で質の高いサービスを提供することはできるでしょう。
しかし,そんな組織にずっといたいと思いますか。
この考え方がとても重要です。
判断に困る時は,自分や自分の周りに置き換えて考えることです。
正解は,
3 より質の高いサービスを提供することによって多くの事故が未然に回避できる,という考え方で危機管理に取り組むべきである。
4 利用者の状況や施設環境等の個別性が高いため,各施設において十分な検討と創意工夫が必要である。
先の3つの文章とは明らかに異なります。
いかにも指針という感じがするでしょう。