高齢者の介護ニーズ等に対応する法制度は,介護保険法が中心です。
しかし,老人福祉法も重要です。
介護保険サービスには,介護保険法によって規定されているサービスもありますが,中には,老人福祉法に規定されているものを指定して,介護保険サービスに位置づけているものもあります。
特別養護老人ホーム,老人デイサービスセンターなどがそうです。
これらは,介護保険では,それぞれ介護老人福祉施設,通所介護となります。
老人福祉法が規定する老人福祉施設
・老人デイサービスセンター
・老人短期入所施設
・養護老人ホーム
・特別養護老人ホーム
・軽費老人ホーム
・老人福祉センター
・老人介護支援センター
老人福祉法が規定する老人ホームには,このほかに有料老人ホームがありますが,これは老人福祉施設に含まれません。
老人福祉法が出題されるとき,養護老人ホームを絡めることが多い傾向にあります。
いかにも福祉っぽい施設だからでしょう。
養護老人ホームの入所要件は,65歳以上で,環境上の理由及び経済的理由により,居宅で養護を受けることが困難なものです。
経済的理由というところがポイントです。
養護老人ホームは,救護法で養老院として規定され,生活保護法で養老施設となり,老人福祉法で養護老人ホームとなったという経過をたどっています。
老人福祉は,高齢者の救貧対策から始まったことがわかるでしょう。
老人福祉法によって,救貧から社会福祉制度になりました。
養護老人ホームと特別養護老人ホームは,市町村長の措置によって入所します。
介護保険制度が始まった時,養護老人ホームは介護も提供していましたが,2005年の老人福祉法の改正によって,介護を提供する際は,特定施設入居者生活介護として指定を受けて,介護保険サービスとして介護を提供しています。
特別養護老人ホームは,老人福祉法ができたときに,創設されたものです。入所要件は,65歳以上者で,身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし,かつ居宅で介護を受けることが困難なものです。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題134 老人福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉法人は,厚生労働大臣の認可を受けて,養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置することができる。
2 有料老人ホームの設置者は,あらかじめその施設を設置しようとする地域の市町村長に法定の事項を届け出なければならない。
3 民生委員は,老人福祉法の施行について,市町村長,福祉事務所長又は社会福祉主事の指示に従わなければならない。
4 都道府県は,老人福祉施設を設置することができる。
5 国は,教養講座,レクリエーションその他広く老人が自主的かつ積極的に参加できる事業の実施に努めなければならない。
なかなかの難問です。
それでは,解説です。
1 社会福祉法人は,厚生労働大臣の認可を受けて,養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置することができる。
養護法人ホーム等の設置は,認可主義が取られていることは適切ですが,認可するのは都道府県知事です。
厚生労働大臣が認可するには,数が多すぎます。
注意したいのは,市町村長ではないことです。認可等の事務は基本的には市町村が行うことはありません。
市町村が行うのは,基礎的地方公共団体としての役割,つまり基本的な住民サービスです。
2 有料老人ホームの設置者は,あらかじめその施設を設置しようとする地域の市町村長に法定の事項を届け出なければならない。
有料老人ホームの届出先は,都道府県知事です。認可,許可,認証,届出,指定等は基本的に都道府県の役割です。
3 民生委員は,老人福祉法の施行について,市町村長,福祉事務所長又は社会福祉主事の指示に従わなければならない。
民生委員は,生活保護法と同様に,老人福祉法でも協力機関です。
4 都道府県は,老人福祉施設を設置することができる。
これが正解です。
何となく舌足らずのような感じがしますが,法の規定のままの表現です。
舌足らずになっている理由は,以下の規定から切り取ったものだからです。
・都道府県は、老人福祉施設を設置することができる。
・国及び都道府県以外の者は,厚生労働省令の定めるところにより,あらかじめ,厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出て,老人デイサービスセンター、老人短期入所施設又は老人介護支援センターを設置することができる。
・市町村及び地方独立行政法人は,厚生労働省令の定めるところにより,あらかじめ,厚生労働省令で定める事項を都道府県知事に届け出て,養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置することができる。
・社会福祉法人は,厚生労働省令の定めるところにより,都道府県知事の認可を受けて,養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置することができる。
都道府県は,認可や届出がなくても老人福祉施設を設置することができる,という意味なのです。
社会福祉法人の場合,養護老人ホーム又は特別養護老人ホームを設置するときは,都道府県知事の認可を受けること,老人デイサービスセンター、老人短期入所施設又は老人介護支援センターを設置するときは,都道府県知事へ事前に届出ることがそれぞれ必要です。
5 国は,教養講座,レクリエーションその他広く老人が自主的かつ積極的に参加できる事業の実施に努めなければならない。
教養講座,レクリエーションその他の事業の実施に努めなければならないのは,地方公共団体です。