介護保険法と障害者総合支援法では,介護保険法が優先されます。
そのため,介護保険サービスと障害福祉サービスに同等のサービスがある場合は,介護保険サービスを利用することとなります。
40歳以上65歳未満の場合,介護保険サービスを利用できるのは,障害の理由が特定疾患の場合に限られます。
それ以外は,障害福祉サービスを利用します。
障害福祉サービスを利用していても,65歳になると介護保険サービスを利用することとなります。
これを俗に65歳問題といいます。
お金の出どころが変わるだけで,サービスを受けられるのだから,「問題」というほどでもないのでは,と思う人もいるかもしれません。
いや,大きな問題です。
コミュニケーションを図るのが難しい障害者の場合,その障害者をよく知る人でなければサービス提供が難しいといったことがあるからです。
そこで,この問題に対応するために生まれたのが「共生型サービス」です。
障害福祉サービス事業者の指定を受けている事業者が介護保険サービス事業者の指定を受けやすくする(その逆もあり)ことで,サービスの継続を可能としたのです。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題127 事例を読んで,在宅サービスを利用して一人暮らしをしているAさんのケアプランに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕
弱視であるAさん(64歳,男性)は20年前に事故で頸権損傷を受傷し,四肢麻痺の状態になった。現在,障害支援区分6で居宅介護と同行援護を利用し,障害基礎年金を受けて生活している。間もなく65歳となり介護保険を利用することになると訪問介護の時間数が減少してしまうため,地域包括支援センターに行った。そこで,B介護支援専門員(社会福祉士)に今後も同等のサービスを利用できるかを相談した。
1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。
3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。
4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。
5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。
(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
介護保険サービスと障害福祉サービスの関係性を理解していれば,それほど難しい問題ではないかもしれません。
気をつけたいのは,答えを2つ選ぶのを忘れないことです。
それでは,まずは正解です。
1 介護保険法の訪問介護の時間数の不足分は,「障害者総合支援法」で補完することを考える。
介護保険サービスは社会保険制度,障害福祉サービスは社会福祉制度です。基本ニーズは社会保険制度が担い,特別ニーズは社会福祉制度が担う関係性となっています。
この仕組みがあるために,介護保険サービスに移行しても,必要なサービス量を確保することが可能です。
4 同行援護は,「障害者総合支援法」で引き続き対応する。
介護保険に同等のサービスがない同行援護のようなサービスは,障害者総合支援法が対応します。
それでは,正解以外の選択肢を解説します。
2 「障害者総合支援法」のサービスのまま,ケアプランを作成する。
居宅介護と同等の介護保険サービスとしては訪問介護があります。
ケアプランは,居宅介護ではなく,訪問介護として作成します。
3 介護保険法のサービス内でケアプランを作成する。
介護保険サービスには,同行援護と同等のサービスはありません。
介護保険法のサービス内でしかサービスを受けられないとしたら,サービスの提供量が著しく不足してしまいます。
そうならないように,同行援護は,引き続き障害者総合支援法でサービス提供します。
5 介護保険の上限でサービスを組み,他は全額自己負担で対応する。
これも利用者にとっては,サービス低下です。
そうならないような仕組みはちゃんと考えられているものです。