地域包括支援センターは,現時点(2022年7月)では,社会福祉士の配置義務がある唯一の機関です。
2005年に創設されていますが,地域包括支援センターに続く2つめは未だにありません。
地域包括支援センターは,介護保険制度の地域支援事業の包括的支援事業に位置づけられています。
障害者総合支援法の地域生活支援事業は,都道府県が実施する事業と市町村が実施する事業がありますが,介護保険の地域支援事業に都道府県の役割はほとんどありません。
それでは今日の問題です。
第31回・問題133 地域包括支援センターに関する介護保険法の規定についての次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 市町村は,地域包括支援センターを設置しなければならない。
2 地域包括支援センターの設置者は,包括的支援事業に関して,都道府県が条例で定める基準を遵守しなければならない。
3 地域包括支援センターの設置者若しくはその職員又はこれらの職にあった者は,正当な理由なしに,その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
4 都道府県は,定期的に,地域包括支援センターにおける事業の実施状況について,評価を行わなければならない。
5 地域包括支援センターの設置者は,自ら実施する事業の質の評価を行うことにより,その事業の質の向上に努めなければならない。
この問題は,不適切問題となったものです。
不適切問題があるとその問題は全員が正解したものとして取り扱われ,1点くれます。
その科目が0点だった人にとっては救われますが,そうではない人にとっては,全員に加点されることから,合格基準点も上がるため,決して良いことではありません。
自分だけに加点してくれればよいのですが,そんな都合の良いことはないので,不適切問題があることは,実は受験者にとってはとても辛い事態になりかねません。
それでは,解説です。
1 市町村は,地域包括支援センターを設置しなければならない。
地域包括支援センターの設置は,実は任意です。
この出題があるまで知らなかった人も多かったのではないかと思います。
2 地域包括支援センターの設置者は,包括的支援事業に関して,都道府県が条例で定める基準を遵守しなければならない。
条例で基準を定めるのは,市町村です。
地域支援事業には都道府県の役割はほとんどありません。
唯一あるのは,市町村が行う介護予防・日常生活支援総合事業等に関して,情報の提供その他市町村に対する支援に努めることのみです。
3 地域包括支援センターの設置者若しくはその職員又はこれらの職にあった者は,正当な理由なしに,その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
これは正解です。
4 都道府県は,定期的に,地域包括支援センターにおける事業の実施状況について,評価を行わなければならない。
評価を行うのは市町村です。
また評価の実施は,義務ではなく努力義務です。
5 地域包括支援センターの設置者は,自ら実施する事業の質の評価を行うことにより,その事業の質の向上に努めなければならない。
本来,もう1つの正解はこの選択肢になる予定でした。
不適切となった理由は,以下の通りです。
正 自ら実施する事業の質の評価を行うことにより
誤 自らその実施する事業の質の評価を行うことその他必要な措置を講ずることにより
その他必要な措置を講ずることが抜けていたためです。
受験者の立場ではどちらでもよいと思いますが,政策上では「その他必要な措置を講ずること」を加えていることはとても重要なことです。
「質の評価」だけではなく,ほかの代替する方法でも良いことを意味するからです。
そういった意味で,この問題を作った試験委員は大チョンボをしたと言えます。
近年,不適切問題はあまりないのですが,うっかりミスは受験者だけではなく,試験委員にもあるようです。