2022年8月26日金曜日

身体障害者福祉法における内部障害

 身体障害者福祉法は,身体障害として以下の5つを規定しています。

 

・視覚障害

・聴覚または平衡機能の障害

・音声機能・言語機能・そしゃく機能の障害

・肢体不自由

・内部障害

 

身体障害というと,肢体不自由や視覚障害などのイメージがあると思いますが,このように,内部障害も含まれています。

 

今日は,この内部障害を取り上げたいと思います。

 

内部障害 

心臓機能障害

腎臓機能障害

呼吸器機能障害

膀胱・直腸機能障害

小腸機能障害

ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(HIV感染症)

肝臓機能障害

 

この内部障害は,1949年(昭和24年)に身体障害者福祉法が成立したときは,まだ含んでいませんでした。

 

1967年(昭和42)年に,初めて心臓機能障害と呼吸器機能障害が加わりました。

 

1984年(昭和59年)には「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害」などが加わり,2010年(平成22年)に肝臓機能障害が加わって現在に至ります。

 

31回・問題6 障害に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 遂行機能障害は,高次脳機能障害に含まれる。

2 白血病による免疫機能障害は,身体障害者福祉法の内部障害に含まれる。

3 先天性の疾患は,聴覚障害の原因疾患に含まれない。

4 脳性麻痺は,身体障害者福祉法の肢体不自由の原因疾患に含まれない。

5 糖尿病の合併症は,視覚障害の原因疾患に含まれない。

 

なかなか難しい問題ですが,答えは意外なほど単純です。

 

1 遂行機能障害は,高次脳機能障害に含まれる。

 

言われてみると,あぁ,そうだなぁ,と思うでしょう。

 

しかし,国家試験は,ほかの選択肢があるので簡単には正解させてくれません。

 

そこが国家試験の怖いところです。

 

それでは,ほかの選択肢を確実に消去していきたいと思います。

 

2 白血病による免疫機能障害は,身体障害者福祉法の内部障害に含まれる。

 

免疫機能障害は,内部障害に含まれますが,白血病ではなく,ヒト免疫不全ウイルスです。

 

なかなか難しいと思いませんか。

 

3 先天性の疾患は,聴覚障害の原因疾患に含まれない。

 

先天性(生まれつきの意味)の疾患も聴覚障害の原因となります。

 

4 脳性麻痺は,身体障害者福祉法の肢体不自由の原因疾患に含まれない。

 

1949年に,身体障害が規定されたときには,「視力障害」,「言語機能障害」,「中枢神経機能障害」,「聴力障害」,「肢体不自由」の5つでした。

 

1954年(昭和29年)に,「中枢神経機能障害」は,肢体不自由に含むことになりました。

 

不思議な出題だと思う人もいると思いますが,実はこのような歴史を背景にして出題したと思われます。

 

法制度は時代とともに変わっていくことがよくわかることでしょう。

 

後天性免疫不全症候群(エイズ)が,世界に広がり震撼させたのは,1980年代前半の話です。その直後に「ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害」が内部障害に含まれています。

 

5 糖尿病の合併症は,視覚障害の原因疾患に含まれない。

 

糖尿病によって,毛細血管が多い部位が損傷されます。

 

その一つが,網膜です。

 

糖尿病性網膜症は,後天性の視覚障害の原因の第1位です。

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