高次脳機能障害とは,記憶障害,注意障害(ぼんやりすることなど),遂行機能障害(順序立てて行動することができないなど),社会的行動障害(周囲の人に合わせることができなくなるなど)などの認知障害によって,日常生活又は社会生活に困難をきたす障害です。
若い人では,事故などで脳を損傷することで生じます。
けがは治ってもこのような障害が残ることは,国民にまだそれほど広く知れ渡っていないこともあり,本人にとっては辛いこともよくあるようです。
そのこともあるのかもしれませんが,社会福祉士の国家試験では,高次脳機能障害の出題は結構多いです。
それでは,今日の問題です。
第27回・問題5 障害の概要に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。
2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。
3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。
4 咀嚼や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。
5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。
この中には,知識がなくても消去できる選択肢が2つもあります。
そのような文章での出題は,今後おそらくかなり減るでしょう。
試験委員に対して,作問上の支援が行われるからです。
社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会報告書にそのことが述べられています。
https://www.mhlw.go.jp/content/000881634.pdf
[提言] ○試験センターにおいては、本検討会での議論や提言を踏まえ、新たな国家試験が適正かつ円滑に行われるよう必要な準備を行うとともに、試験問題の作問にかかる支援機能の強化を図ることが望ましい。 |
このことは,受験生にとっては,重くのしかかってくることと思います。
確実な知識があれば何の心配もありませんが,知識不足では正解するのは少し難しくなります。つまりすべての選択肢を考えなければならないことになります。
逆にほぼ自動的に消去できる選択肢があると,知識がなくても正解できる可能性が高まります。
提言のように作問の支援が行われると,そういったものはほぼ撲滅されるのではないかと思います。
試験委員はその領域の専門家ですが,問題をつくるプロではありません。
しかし,ちょっとした視点を教えてあげると注意して問題をつくることができると思います。今後は手ごわくなるでしょう。
この問題で,内容がわからなくても消去できる選択肢は2つです。
2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。
3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。
選択肢2の失行とは,意図した動作が行えなくなることです。
例えば,メモすることが困難になるなどです。高次脳機能障害でも失行が生じることがあります。
メモができなくても今ならスマホに録音するということもできるかもしれません。少なくともリハビリテーションの対象にならない,といった投げやりな姿勢は極めて不適切です。
選択肢3の周産期とは,子どもが生まれる前後を指しますが,よくみられるのは,低酸素性虚血性脳障害と脳出血で,脳性麻痺などが生じます。
起こすことはないというのは,当学習部屋が提唱する
言い切り表現に正解少なし
というものに当たります。
たとえば,100万回の事象のうち,たった1回でも例外が生じれば,その命題は成立しません。
それでは,そのほかを解説します。
1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。
これが正解です。
事故などによる外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つです。
そのほかの原因には脳出血などがあります。
4 咀嚼や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。
身体障害者福祉法は,身体障害として以下の5つを規定しています。
・視覚障害
・聴覚または平衡機能の障害
・音声機能・言語機能・そしゃく機能の障害
・肢体不自由
・内部障害
咀嚼や嚥下機能の障害は,「音声機能・言語機能・そしゃく機能の障害」です。内部障害とは別建てのものです。
内部障害
心臓機能障害 腎臓機能障害 呼吸器機能障害 膀胱・直腸機能障害 小腸機能障害 ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(HIV感染症) 肝臓機能障害 |
5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。
平衡機能障害は,四肢体幹に異常がなくても起立や歩行に障害を生じるものです。
平衡機能障害の代表には,メニエール病があります。
0 件のコメント:
コメントを投稿