障害者に対する就労支援に関するサービスは,障害者総合支援法と障害者雇用促進法に基づくものがあります。
国家試験でよく使われる出題方法の一つに「根拠法を変える」というものがありますが,意外と盲点になります。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題145 就労支援を担う機関などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 障害者就業・生活支援センターは,社会福祉法に基づき支援対象障害者からの相談に応じ,関係機関との連絡調整を行っている。
2 障害者職業能力開発校は,学校教育法に基づき支援対象者の能力に適応した職業訓練を行っている。
3 就労移行支援事業所は,「障害者総合支援法」に基づき無料の職業紹介を行っている。
4 地域障害者職業センターは,「障害者雇用促進法」に基づき職業リハビリテーションに関する技術的事項について関係機関に対し助言を行っている。
5 公共職業安定所(ハローワーク)は,職業安定法に基づき最低賃金の減額適用の許可に関する事務を行っている。
(注)1 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
2 「障害者雇用促進法」とは,「障害者の雇用の促進等に関する法律」のことである。
選択肢をそれぞれ読むとき,一語一語しっかり読まないと,重要語句を見落としてしまいます。
特に勉強するときは,おそらく法律名よりも内容を意識して覚えるはずなので,この問題を読むときも法律名は,素通りしやすいと思います。
それでは,解説です。
1 障害者就業・生活支援センターは,社会福祉法に基づき支援対象障害者からの相談に応じ,関係機関との連絡調整を行っている。
障害者就業・生活支援センターの根拠法は,障害者雇用促進法です。
全部を読む必要はありません。問題文の途中で正誤がわかります。
2 障害者職業能力開発校は,学校教育法に基づき支援対象者の能力に適応した職業訓練を行っている。
障害者職業能力開発校の根拠法は,職業能力開発促進法です。
こんな法律を覚えていなくても,学校教育法ではないと考えることができます。
3 就労移行支援事業所は,「障害者総合支援法」に基づき無料の職業紹介を行っている。
この選択肢は,今度は根拠法が合っています。しかし,最後の部分がうそです。無料の職業紹介は行いません。
無料の職業紹介を行うと言えば,ハローワークを思い浮かべる人は多いはずです。
それが思い浮かべられたら,それでよいのです。法制度の基本は同じ業務は,複数の機関が行うことは通常ありません。
それが法制度です。ある法制度で対応できないことがあった時,必要であれば新しい法制度がつくられます。
これはとても重要なことです。
4 地域障害者職業センターは,「障害者雇用促進法」に基づき職業リハビリテーションに関する技術的事項について関係機関に対し助言を行っている。
これが正解です。
地域障害者職業センターの根拠法は,障害者雇用促進法です。
地域障害者職業センターは,障害者に対して職業評価,職業指導,職業準備訓練,職業講習を行っていますが,そのほかには,障害者就業・生活支援センターその他の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言その他の援助なども行っています。
障害者雇用促進法に基づくものは,地域障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターです。
専門職としては,障害者職業カウンセラーと職場適応援助者(ジョブコーチ)があります。
法制度の基本として,違う法制度に基づくものには,基本的にかかわらない,というものがあります。
たとえば,地域障害者職業センターは,障害者就業・生活支援センターに対して,技術的指導は行っても,就労移行支援事業所の職員に対して指導を行うということは法律に規定することは通常はありません。
こういった法制度の基本は,ほかの領域にも共通することです。
5 公共職業安定所(ハローワーク)は,職業安定法に基づき最低賃金の減額適用の許可に関する事務を行っている。
公共職業安定所(ハローワーク)が行うのは,無料の職業紹介,雇用保険の現業事務などです。
最低賃金の減額適用の許可に限らず,何かに対しての許認可を行うような権限は持ちません。