2022年8月12日金曜日

高齢期における血圧の変化

今回も,出題基準のうち,「1 人の成長・発達 3」 老化」を取り上げます。


老化は「1)身体の成長・発達」「2)精神の成長・発達」に比べると,身近で見聞きした知識が役立つものが多い傾向にあります。


高齢者になると血圧がどのように変化するか,はかなりの頻度で問われます。


収縮期血圧(いわゆる最高血圧)は,高くなる傾向にあります。


これは,多くの人は知っていることでしょう。


さて,それでは,拡張期血圧(いわゆる最低血圧)は,どうなるのでしょうか。


拡張期血圧は,収縮期血圧と異なり,あまり変化しません。むしろ低下することもあります。


拡張期血圧と,心臓が膨らむときの血圧です。血液を押し出すときは,心臓の力が必要ですが,心臓が戻るときには,心臓の力を必要としないからです。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題2 加齢に伴う生理機能の変化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 体重に占める水分の割合は増加する。

2 収縮期血圧と拡張期血圧の差は縮小する。

3 聴力は高周波音域から低下する。

4 肺活量は維持される。

5 流動性知能は維持される。


流動性知能という日常では聞きなれないものが出てきました。


知能は,流動性知能/結晶性知能と分けることができます。


流動性知能は,新しいことに対応する知能です。若いうちにピークを迎えます。


結晶性知能は,経験によって積み上げられていく知能です。高齢期までは高まります。


高齢者の運転技能が低下するのは,流動性知能によって説明することができます。


これらの知能の提唱者が書かれている参考書もあると思いますが,覚えるべきポイントは,提唱した人の名前ではなく,この2つの違いを確実に覚えることです。


覚えるべきポイントを間違えると,努力は報われないことになります。本番に強くなることとは,このようにそれぞれの違いを確実に覚えることにほかなりません。


それでは,解説です。


1 体重に占める水分の割合は増加する。


高齢になると,体の水分量は,一般的に少なくなります。

そのために脱水を生じやすくなります。のどの渇きを感じにくくなることもあり,のどの渇きがなくても定期的に水分摂取することが大切です。


2 収縮期血圧と拡張期血圧の差は縮小する。


収縮期血圧と拡張期血圧の差は広がります。

理由は,収縮期血圧(最高血圧)は上がりますが,拡張期血圧(最低血圧)は,あまり変わらないかむしろ低下するからです。


3 聴力は高周波音域から低下する。


これが正解です。

高齢期には,高音域の聴力から低下します。


4 肺活量は維持される。


肺は,心臓と異なり,加齢に伴い機能の低下がみられる器官です。


そのため,肺の中の空気を十分に吐き出すことができなくなり,肺に残ります。これを「残気」といいます。高齢になると残気量が増えます。


5 流動性知能は維持される。


流動性知能は,若いうちから低下します。高齢でも維持されるのは結晶性知能です。

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