現時点での医療では,認知症という疾患を治すことはできません。
早く治療法が見つかれば良いと思いますが,現時点の治療薬は脳の機能を活性化させる効果があるものであり,認知症そのものを治すものではありません。
しかし,認知症の中でも治すことができるものがあります。
それが今日のテーマの正常圧水頭症です。
正常圧水頭症とは,脳の中に髄液が貯留することで認知症状を生じるものです。
そのため外科手術によって髄液を抜けば治すことができます。
それでは今日の問題です。
第26回・問題5 認知症に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。
1 アルツハイマー型認知症の治療に用いられる薬物は,現在,存在しない。
2 レビー小体型認知症では,パーキンソン症状を生じることはまれである。
3 血管性認知症は,生活習慣病(糖尿病,脂質異常症,高血圧など)が原因となっていることが多い。
4 正常圧水頭症による認知症は,外科手術で回復することがある。
5 認知症に伴うせん妄は,夜間よりも昼間の方が多い。
そんなに難しい問題ではないかもしれませんが,一応解説します。
1 アルツハイマー型認知症の治療に用いられる薬物は,現在,存在しない。
現時点で,アルツハイマー型認知症の治療薬として認可されている薬物には,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(商品名:アリセプトなど)とNMDA受容体拮抗薬(メマリー)があります。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の中でよく知られるアリセプトは,レビー小体型認知症に唯一効果がある薬剤でもあります。
2 レビー小体型認知症では,パーキンソン症状を生じることはまれである。
レビー小体型認知症の特徴は,パーキンソン症状とはっきりした幻視を生じることです。
3 血管性認知症は,生活習慣病(糖尿病,脂質異常症,高血圧など)が原因となっていることが多い。
これが一つ目の正解です。
これは経験的に知っていることでしょう。
4 正常圧水頭症による認知症は,外科手術で回復することがある。
これがもう一つの正解です。正常圧水頭症は,この時初めて出題されたものです。
今の受験者は勉強していますが,この当時の受験者は知らなかったと思います。
それでもほかの選択肢を消去することで正解できます。国家試験の多くはそのようなタイプの問題です。
5 認知症に伴うせん妄は,夜間よりも昼間の方が多い。
せん妄を多く発症するのは,夜間です。