2022年8月19日金曜日

国際生活機能分類(ICF)に関する出題

国際生活機能分類(ICF)は,世界保健機構(WHO)が定めたもので,それまでのICIDHは,障害というネガティブ(医学モデル)なものでした。ICFは生活機能に焦点を当てる生活モデルです。

 

ICFで使われる用語

健康状態

疾患,外傷,妊娠,加齢,ストレス状態その他などの生活機能低下を起こす原因

心身機能

身体系の生理的機能(心理的機能を含む)

身体構造

身体の解剖学的部分

活動

課題や行為の個人による遂行のこと

参加

生活・人生場面への関わりのこと

機能障害

心身機能または身体構造上の問題

活動制限

個人が活動を行うときに生じる難しさのこと

参加制約

個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと

環境因子

人々が生活し,人生を送っている物的な環境や社会的環境,人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと

環境因子と個人因子がある。

※環境因子には,促進因子(生活機能にプラスの影響を与えるもの)と阻害因子(生活因子にマイナスの影響を与えるもの)がある。



それでは,今日の問題です。

 

25回・問題4 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 健常者も障害者も区別なく,個別性はあっても「健康状態」という一つの概念のもとにとらえられるという考え方をしている。

2 機能障害,能力障害,社会的不利のように,「障害」を分類したものである。

3 「健康状態」に含まれる心身機能・身体構造,活動・参加に関与する因子として,「遺伝因子」を含めている。

4 「障害」は,「環境因子」とは無関係なものととらえている。

5 症状が進行中あるいはまだ治癒していない場合を「疾患」と呼び,それが固定あるいは永続した場合を「障害」と呼んでいる。

 

25回国試を私たちチームfukufuku21は,魔の第25回国試と呼んでいます。

今見るとやはり変な問題があります。この問題では,

 

5 症状が進行中あるいはまだ治癒していない場合を「疾患」と呼び,それが固定あるいは永続した場合を「障害」と呼んでいる。

 

がそんなところにあたるように思いませんか。

 

こんな分け方はありません。

 

法制度なら明確に分ける必要がありますが,生活機能を分類する際,それが疾患であったとしても障害であったとしても,本人には変わりはありません。

 

法制度で明確に分ける必要があるのは,お金が発生するからです。

 

それでは,そのほかの解説です。

 

1 健常者も障害者も区別なく,個別性はあっても「健康状態」という一つの概念のもとにとらえられるという考え方をしている。

 

これが正解です。

 

何となくでもICFの理念は見えてくるように思いませんか。

 

2 機能障害,能力障害,社会的不利のように,「障害」を分類したものである。

 

これが,ICIDHのことを述べているものです。

 

ICFとともにICIDHがどのようなものであったのかは,押さえておく必要はありそうです。

 

3 「健康状態」に含まれる心身機能・身体構造,活動・参加に関与する因子として,「遺伝因子」を含めている。

 

心身機能・身体構造,活動・参加に関与する因子は,背景因子といいます。

 

背景因子は,環境因子と個人因子に分けられます。遺伝因子というものはありません。

 

4 「障害」は,「環境因子」とは無関係なものととらえている。

 

障害は,環境因子と密接に関連します。

 

そのため,障害者の科目では,次の問題が出題されたことがあります。

 

28回・問題57 事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)の「参加制約」に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

Eさん(49歳,男性)は,脳性麻痺で足が不自由なため,車いすを利用している。25年暮らした障害者支援施設を退所し1年がたつ。本日,どうしても必要な買物があるが,支援の調整が間に合わない。その場での支援が得られることを期待して,一人で出掛けた。店まで来たが,階段の前で動けずにいる。

1 脳性麻痺で足が不自由なこと

2 階段があること

3 支援なしで外出できること

4 店で買物ができないこと

5 障害者支援施設を退所したこと

 

参加制約は,個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのことです。

 

正解は,選択肢4です。

4 店で買物ができないこと

 

ほかの選択肢は以下の通りです。

 

1 脳性麻痺で足が不自由なこと → 機能障害

2 階段があること → 環境因子

3 支援なしで外出できること → 活動,あるいは参加

5 障害者支援施設を退所したこと → 個人因子


この中で,ちょっとわかりにくいのは,選択肢1の「脳性麻痺で足が不自由なこと」です。

単に疾患としての「脳性麻痺」なら,第25回の問題のように,健康状態になります。「足が不自由」が加わると,脳性麻痺による心身機能に問題を生じているので,機能障害となります。

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