今回は運動器のうち,麻痺を取り上げたいと思います。
運動器の麻痺には,以下のものがあります。
片麻痺 |
右半身,あるいは左半身の麻痺 |
対(つい)麻痺 |
両下肢の麻痺 |
四肢麻痺 |
上肢と下肢の麻痺 |
この中で聞き慣れないのが「対麻痺」です。
国家試験ではこういったものがねらわれます。
それでは,今日の問題です。
第26回・問題2 人体の部位と病変に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 変形性関節症が頻発する部位は,肘関節である。
2 手をついて転倒して起きる骨折は上腕骨に多い。
3 側臥位では,仙骨部に褥瘡ができる。
4 対麻痺とは,左右両側の下肢の麻痺である。
5 脳死とは,脳幹以外の機能の不可逆的な停止をいう。
決して簡単な問題ではないと思います。
社会福祉士の国家試験は,勉強が足りない人が合格できるような試験では決してないことは覚悟しなければなりません。
しかし,知識がある人にとっては,とても簡単です。
第35回国家試験では,問題の分類では「タクソノミーⅡ型」の問題が増えると考えられます。タクソノミーⅡ型の問題は,知識があることを前提にして,考えて答えを出すタイプです。丸暗記型の勉強をしている人は,要注意です。
確実な知識があれば,十二分に対応できるので無用な心配は必要ありません。
さて,この問題の正解は,選択肢4です。
4 対麻痺とは,左右両側の下肢の麻痺である。
対麻痺のことを知っていれば,とても簡単です。少しも深堀していないことがわかることでしょう。
それでは,正解以外も解説します。
1 変形性関節症が頻発する部位は,肘関節である。
変形性関節症は,何度も出題されているものです。
現時点(2022年8月)で直近の国家試験である第34回では,「変形性関節症の中で最も多いのは,変形性膝関節症である」と出題されています。これは正解です。
これでわかるように,過去問を解くとき,正解だけを覚えても何の役にも立ちません。
出題頻度の高いものは,あるときは誤りだったものが,別のときには正解になり,そしてまた次には誤りになる,ということを繰り返します。
あいまいに覚えていると,今日の問題は「変形性関節症」は誤りになっているので,確実に覚えておかないと,第34回国試では間違うもとになります。
2 手をついて転倒して起きる骨折は上腕骨に多い。
転倒することで起きることが多いのは,橈骨の骨折です。
もう少し詳しく言えば,橈骨遠位端骨折です。
橈骨遠位端は手首側,近位端は肘側です。
3 側臥位では,仙骨部に褥瘡ができる。
褥瘡が起きる原因の一つは圧迫です。
褥瘡がどこに起きやすいのかを考えるときは,どこが圧迫されているのを考えることが大切です。そのことによって,どんな問題にも対応できます。
仙骨部に褥瘡が起きやすいのは,仰臥位(仰向け)です。
5 脳死とは,脳幹以外の機能の不可逆的な停止をいう。
今,考えると問題づくりが甘い問題です。「臓器移植法」において,といった前提があって,確実な問題となるように思います。
それはさておき,同法では,脳死は,「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至ったと判定された者」と規定されます。