ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。 社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。 ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。 この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。 |
赤字で示した「地域・民族固有の知」とは,世界各地に根ざし,人々が集団レベルで長期間受け継いできた知のことを指しています。
ソーシャルワークは,欧米生まれであるため,欧米の理論が中心となり,発展してきましたが,もちろん日本にも日本の固有の知があります。
国家試験には,日本古来の住民の互助について出題されたこともあります。
ここまで読んでいて,勘の良い人は,推測ができたかもしれませんが,本日のテーマ「社会福祉の理論」とは,日本の理論のことです。
出題基準では,
社会福祉の理論(政策論、技術論、固有論、統合論、運動論、経営論)
と示されています。
系譜 |
特質 |
人物名 |
政策論 |
経済システム(資本主義)の中の社会(福祉)事業の位置づけを説明するもの。 |
大河内一夫 孝橋正一 |
技術論 |
ソーシャルワーク理論の科学化を志向するもの。 |
竹内愛二 |
統合論 |
政策論と技術論の折衷論。 |
島田啓一郎 木田徹郎 |
固有論 |
社会福祉の固有の視点を志向するもの。 |
岡村重夫 |
運動論 |
社会問題・生活問題の改善を求める運動を志向するもの。 |
一番ヶ瀬康子 真田 是 |
経営論 |
福祉政策(ニード論や供給体制)を志向するもの。 |
三浦文夫 |
国家試験では,それぞれの特徴的なところを出題してくると思うので,そのポイントを押さえて勉強すると良いと思います。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題24
1950年代から1970年代にかけての社会福祉の理論に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 木田徹郎は,社会事業を,資本主義の維持という側面から,賃金労働の再生産機構における「社会的問題」の緩和・解決の一形式と捉えた。
2 三浦文夫は,政策範疇としての社会福祉へのアプローチの方法として,ニード論や供給体制論を展開した。
3 岡村重夫は,生活権を起点に据えた実践論・運動論を組み入れた社会福祉学が総合的に体系化されなければならないと論じた。
4 孝橋正ーは,社会福祉の固有の機能を,個人とそれを取り巻く環境との間の不均衡を調整し,環境への適応を促すことと論じた。
5 一番ヶ瀬康子は,政策論よりも援助技術論を重視すべきと論じた。
すごく難しい問題ですが,今後はこういった問題の出題頻度は高くなるのではないかと思います。
それではポイントを押さえながら,解説します。
1 木田徹郎は,社会事業を,資本主義の維持という側面から,賃金労働の再生産機構における「社会的問題」の緩和・解決の一形式と捉えた。
資本主義という言葉が入っているので,政策論の系譜であると推測できます。
政策論は,大河内一夫は孝橋正一です。
そのうち,「社会的問題」に対応するものが社会事業であることを述べたのは,孝橋正一です。
2 三浦文夫は,政策範疇としての社会福祉へのアプローチの方法として,ニード論や供給体制論を展開した。
これが正解です。
ニード論や供給体制論を展開したのは,経営論の系譜に位置づけられる三浦文夫です。
3 岡村重夫は,生活権を起点に据えた実践論・運動論を組み入れた社会福祉学が総合的に体系化されなければならないと論じた。
運動という言葉が入っているので,運動論の系譜であると推測できます。
運動論は,一番ヶ瀬康子や真田是などです。
そのうち,生活権を起点に据えた実践論・運動論を組み入れた社会福祉学が総合的に体系化されなければならないと論じたのは,一番ヶ瀬康子です。
4 孝橋正ーは,社会福祉の固有の機能を,個人とそれを取り巻く環境との間の不均衡を調整し,環境への適応を促すことと論じた。
固有という言葉が入っているので,固有論の系譜であると推測できます。
固有論を論じたのは,岡村重夫です。
5 一番ヶ瀬康子は,政策論よりも援助技術論を重視すべきと論じた。
一番ヶ瀬康子は,運動論の系譜の人です。
重視するのは,社会問題・生活問題の改善を求める運動です。