2024年9月11日水曜日

アウトリーチの事例問題と重層的支援体制整備事業

 今回は,アウトリーチの事例問題です。


アウトリーチは地域に出かけていって,ニーズをキャッチすることをいいます。


アウトリーチのもともとの意味は,腕を外に伸ばすことで,アウトリーチの地域に出かける様子がまさしく腕を外に伸ばすように見えることからその名がついています。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題35

事例を読んで,N市の地域包括支援センターのC社会福祉士の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 N市の地域包括支援センターのC社会福祉士は,担当地区で住民主体の集いの場を行っているグループから,様々な高齢者が集まってくれて手応えを感じているが,福祉の専門的な相談に対応できずに悩んでいる,と相談を受けた。C社会福祉士は,この相談を住民活動と協働して,アウトリーチによる早期のニーズ把握を行う好機と捉え,対応することにした。

1 集いの場を通じて高齢者の早期のニーズを正確に把握するため,地域包括支援センターが主体となった運営に切り替えることを提案する。

2 集いの場において受付や後片付けなどを手伝い,集いの場により多くの参加者を受け入れられるよう支援する。

3 専門的な相談機関のリストを作成し,相談が必要な人に渡すよう,集いの場に参加している高齢者に依頼する。

4 集いの場に地域包括支援センターの保健師を派遺し,適切な介護予防のプログラムが実施できるよう指導させる。

5 集いの場において出張相談を実施し,気になることがあればいつでも相談してほしいと参加者に伝える。


国家試験では,地域の集まりに出かける事例がよく出題されています。


さて,事例問題の場合は,事例の中の情報で答えを考えていきます。


答えになる情報は必ず事例の中にあるからです。


事例問題でミスしないコツは,事例を読んで,各選択肢を読んで答えを考えますが,それに加えて,もう一度事例に戻って,その答えが適切かどうかを確かめるようにすることです。


先にヒントを言うと,この事例のポイントは,福祉の専門的な相談に対応できずに悩んでいることです。


これに対応しないものは,不適切です。


それでは解説です。


1 集いの場を通じて高齢者の早期のニーズを正確に把握するため,地域包括支援センターが主体となった運営に切り替えることを提案する。


住民の自主的な活動を地域包括支援センターが奪い取ってしまっては,地域福祉になりません。


2 集いの場において受付や後片付けなどを手伝い,集いの場により多くの参加者を受け入れられるよう支援する。


受付や後片付けの手伝いをしても,福祉の専門的な相談に対応できずに悩んでいることには対応しません。


3 専門的な相談機関のリストを作成し,相談が必要な人に渡すよう,集いの場に参加している高齢者に依頼する。


これもまったく不適切ではないですが,地域包括支援センターも相談機関です。

その機能を活用しないのは不適切だと言えるでしょう。


4 集いの場に地域包括支援センターの保健師を派遺し,適切な介護予防のプログラムが実施できるよう指導させる。


介護予防のニーズがあることは,事例には述べられていません。


5 集いの場において出張相談を実施し,気になることがあればいつでも相談してほしいと参加者に伝える。


これが正解です。


重層的支援体制整備事業について


集いの場で出張相談を行うのは,アウトリーチそのものです。

センターで相談を受けるのではなく,地域に出かけることがアウトリーチです。

一般的な事業所にとって,アウトリーチは,直接的な収益にはつながりません。お金になるのは社会資源につなげた後だからです。

そういった意味で,市町村の任意事業である重層的支援体制整備事業は,とても重要です。


重層的支援体制整備事業は,


・属性を問わない相談支援

・参加支援

・地域づくりに向けた支援


の3つの支援を一体的に実施します。


社会福祉法では,これらは


①包括的相談支援事業

②参加支援事業

③地域づくり事業


として規定されています。


これらを支えるものとして,さらに


④アウトリーチ等を通じた継続的支援事業

⑤多機関協働事業


が規定されています。


とうとうアウトリーチが法に規定されたのです。つまりお金になることを意味します。

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