2024年9月28日土曜日

精神保健福祉法の改正

 

2024年(令和6年)4月に施行された改正精神保健福祉法は,数々の改正ポイントがありますが,社会福祉士の国家試験では,細かい改正は問われないでしょう。

 

そのうちの重要ポイントを2つだけ紹介します。

 

退院後生活環境相談員

 従来,退院後生活環境相談員は,医療保護入院患者に対して選任されていましたが,改正によって,措置入院患者に対しても選任されています。

 

医療保護入院の入院期間

 従来,医療保護入院の入院期間の規定はありませんでしたが,改正によって,6か月以内と規定されました。

 

医療保護入院の市町村長同意

 医療保護入院は,本人の同意がなく,家族等の同意によって入院する形態です。

 家族等がいない場合,または家族等の全員が同意できない場合,市町村長の同意によって,入院します。

 この改正では,家族がいても,同意・不同意の意思表示を行わない場合にも市町村長が同意することになりました。


 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題61

「精神保健福祉法」に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 医療保護入院者を入院させている精神科病院の管理者は,退院後生活環境相談員を選任しなければならない。

2 精神障害者の定義に,知的障害を有する者は含まれない。

3 精神医療審査会は,都道府県の社会福祉協議会に設置するものとされている。

4 精神保健指定医の指定は,1年の精神科診療経験が要件とされている。

5 精神障害者保健福祉手帳の障害等級は,6級までとされている。

(注) 「精神保健福祉法」とは,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことである。

 

この問題は,社会福祉士の国家試験に精神保健福祉法が本格的に出題された初めての記念すべき問題です。

 

この時に受験した人は,面食らったのではないかと思います。

 

精神保健福祉士とのすみ分けのために,出題基準にはありながら,遠慮していたのでしょう。

 

この年は,この問題のほかにも2問に精神保健福祉法に関する出題がありました。これによって,今後は本格的に出題することを宣言したと考えられます。

 

しっかり学びましょう。

 

それでは,解説です。

 

1 医療保護入院者を入院させている精神科病院の管理者は,退院後生活環境相談員を選任しなければならない。

 

これが正解です。

 

現在,退院後生活環境相談員は,医療保護入院患者とともに措置入院患者に対して選任されます。

 

2 精神障害者の定義に,知的障害を有する者は含まれない。

 

精神障害者の定義

統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害その他の精神疾患を有する者。

 

知的障害は含まれます。

 

なお,精神障害者の定義は,「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」

 

2022年(令和4年)6月に施行の改正法で,精神病質が削除されています。

 

3 精神医療審査会は,都道府県の社会福祉協議会に設置するものとされている。

 

精神医療審査会は,医療措置入院及び措置入院の入院届の審査,退院請求の審査などを行います。

 

設置するのは,都道府県です。

 

都道府県の社会福祉協議会に設置されるのは,運営適正化委員会です。

 

4 精神保健指定医の指定は,1年の精神科診療経験が要件とされている。

 

精神保健指定医は,措置入院の際の診察,隔離の判断などを行います。

 

実務経験は1年ではなく,3年です。

 

5 精神障害者保健福祉手帳の障害等級は,6級までとされている。

 

6級まであるのは,身体障害者手帳です。等級表には7級まであり,7級が複数あると6級と認定されます。

 

精神障害者保健福祉手帳の等級は,3級までです。

 

障害者手帳には,このほかに知的障害者の「療育手帳」があります。療育手帳は,法的根拠はなく,当時の厚生省通知によって運営されている制度です。

 

重度が「A」,それ以外は「B」としていますが,法規定がないためなのか,近年は出題されたことがありません。

 

知的障害者福祉法は,知的障害者の定義もありません。

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