権利擁護を支える法制度は,なかなか手ごわい科目です。
事例問題も一癖も二癖もあります。
今日の問題は,それほど難しくないかもしれませんが,ものすごく難しい問題もあります。そういった問題は,考えてみて答えがわからなければ,気持ちを切り替えてさっさと次の問題に進むのが得策です。
それでは今日の問題です。
第33回・問題78
事例を読んで,次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事 例〕
Dさんは,アパートの1室をEさんから月額賃料10万円で賃借し,一人暮らしをしている。Dさんには,唯一の親族として,遠方に住む子のFさんがいる。また,賃借をする際,Dさんの知人であるGさんは,Eさんとの間で,この賃貸借においてDさんがEさんに対して負担する債務を保証する旨の契約をしている。
1 Dさんが賃料の支払を1回でも怠れば,Eさんは催告をすることなく直ちに賃貸借契約を解除することができる。
2 Fさんは,Dさんが死亡した場合に,このアパートの賃借権を相続することができる。
3 Gさんは,保証が口頭での約束にすぎなかった場合でも,契約に従った保証をしなければならない。
4 Fさんは,Dさんが賃料を支払わないときに,賃借人として賃料を支払う責任を負う。
5 Gさんは,この賃貸借とは別にDさんがEさんから金銭を借り入れていた場合に,この金銭についても保証をしなければならない。
この問題に関連するものとして,高齢者の居住の安定確保に関する法律では,「終身建物賃貸借」というものがあります。
一般的な賃貸借は,貸借権を相続することができます。
終身建物賃貸借は,死亡によって契約が解除される契約です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などは,終身建物賃貸借契約で利用することが多いようです。
それでは解説です。
1 Dさんが賃料の支払を1回でも怠れば,Eさんは催告をすることなく直ちに賃貸借契約を解除することができる。
賃貸借契約は,こんなに急に解除されません。うっかりして支払いを忘れることもあるでしょう。催告が必要です。
2 Fさんは,Dさんが死亡した場合に,このアパートの賃借権を相続することができる。
これが正解です。Dさんが居住しているのは,アパートなので,一般的な賃貸借契約で利用していると考えられます。そのため,貸借権は相続されます。
相続されないのは,終身建物賃貸借です。
3 Gさんは,保証が口頭での約束にすぎなかった場合でも,契約に従った保証をしなければならない。
連帯保証は,契約書によって行われます。
4 Fさんは,Dさんが賃料を支払わないときに,賃借人として賃料を支払う責任を負う。
FさんはDさんの扶養義務者です。しかし,扶養義務と支払い義務は異なります。賃料を支払う必要はありません。
5 Gさんは,この賃貸借とは別にDさんがEさんから金銭を借り入れていた場合に,この金銭についても保証をしなければならない。
借りていた金銭を保証することは必要とされません。
〈今日の一言〉
終身建物賃貸借は,死亡によって契約が解除される契約です。