2000年に採択された「ソーシャルワークの定義」は,2014年に改訂され,「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」となりました。
旧・定義 |
ソーシャルワーク専門職は,人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して,社会の変革を進め,人間関係における問題解決を図り,人びとのエンパワーメントと解放を促していく。 ソーシャルワークは,人間の行動と社会システムに関する理論を利用して,人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。 人権と社会正義の原理は,ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。 |
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義 |
ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。 社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。 ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。 この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。 |
「エンパワメントと解放」は,旧・定義とグローバル定義が共通する部分です。
原理は,旧・定義では「人権と社会正義」でしたが,グローバル定義では,それに「集団的責任」と「多様性の尊重」が加わっています。
大きく変わっているのは「地域・民族固有の知」を基盤とするところです。
そして,「各国および世界の各地域で展開してもよい」とされました。
社会福祉士がソーシャルワーカーであるとしたら,グローバル定義は確実に覚えたいです。
それでは,今日の問題です。
第28回・問題92 2014年の「ソーシャルワークのグローバル定義」に関する次の記述のうち適切なものを1つ選びなさい。
1 ウェルビーイングの増進を目指して,人間関係の問題解決を図ることが新たに加えられた。
2 ソーシャルワークは,専門職であるとともに政策目標であることが明示された。
3 これまで過小評価されてきた地域・民族固有の知を認めるものとなっている。
4 先進国の意見や実情を尊重し,マクロレベルの社会政策と社会開発を重視している。
5 西洋における集団主義重視への懸念が示された。
(注) 「ソーシャルワークのグローバル定義」とは,2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。
この問題は,グローバル定義が初めて出題された記念すべきものです。
これ以降,続けて出題されています。
さて,正解です。
3 これまで過小評価されてきた地域・民族固有の知を認めるものとなっている。
グローバル定義を一度でも目にした人なら,「地域・民族固有の知」はとてもインパクトがあって,印象に残るものでしょう。
さすが初めての出題だなぁ,と思います。実に受験生にやさしいものを正解にしたと思います。
皆さんもそう思いませんか?
それでは,ほかの選択肢も確認しましょう。
1 ウェルビーイングの増進を目指して,人間関係の問題解決を図ることが新たに加えられた。
ウェルビーイングの増進を目指して,人間関係の問題解決を図ることは,旧・定義にあったものです。
2 ソーシャルワークは,専門職であるとともに政策目標であることが明示された。
ソーシャルワークは専門職であるとは明記されていますが,政策目標ということばは使われていません。
4 先進国の意見や実情を尊重し,マクロレベルの社会政策と社会開発を重視している。
マクロレベルの社会政策と社会開発を重視していることは適切ですが,先進国ではなく,開発途上国の意見が重視されたものです。
開発途上国でクライエントの権利擁護を行おうと思うと,社会が変わること自体が必要なことが多いのです。
5 西洋における集団主義重視への懸念が示された。
懸念が示されたのは,西洋における個人主義への偏重です。
これは,ソーシャルワークが欧米生まれであることに関係しています。特にCOSの活動を通して発展したケースワーク(個別援助技術)は,リッチモンドの功績によって科学化されていきますが,今はSDGsの時代です。
ソーシャルワークも地球規模の広い視点が必要だということなのでしょう。
ソーシャルワークは,誇り高いものです。