今回から数回にわたって「福祉サービスの組織と経営」を取り組んでいきたいと思います。
この科目は,組織に関する理論など,おそらく勉強しなければ知らない内容満載です。
つまり,勉強した人とそうでない人の差が大きく出る科目だということです。
覚えるのは決して簡単ではありませんが,見返りは大きいと思います。
さて,今日のテーマは「コンプライアンスとガバナンス」です。
コンプライアンスは,「法令遵守」と訳されます。
法令なので,本来は,法律,省令等を守るという意味です。
しかし,最近では,組織が独自に決めたルールを守るという意味合いで用いられることもあるようですが,この科目では,本来の意味の「法律と省令」等を守るという意味でとらえておきたいです。
ガバナンスは,「企業統治」「内部統制」と訳されます。
組織も人と同じように意思決定して活動します。
組織が適正な意思決定を行うために必要なのが,ガバナンスです。
ガバナンスのない組織は,本来の意味のコンプライアンスを無視しだし,最悪の場合は。指定の停止や取消といったペナルティを受けることになります。
ガバナンスが効いていない組織は,とても危険です。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題119 福祉サービスの経営に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 CSR(Corporate Social Responsibility)は,福祉サービス事業者には求められない。
2 CSV(Creating Shared Value)とは,企業や法人の価値を共有するために情報開示を進める概念である。
3 バランス・スコアカードとは,財務面の評価手法である。
4 コンプライアンスを達成するには,ガバナンスが重要である。
5 福祉サービスの改善活動であるPDCAには,現場職員が関わらないことが望ましい。
カタカナ用語が連発する問題です。
しかし,問題づくりが下手なので,この問題自体はそれほど難しくないと思います。
おそらく,今後はこんな下手な問題を見ることはできなくなるでしょう。
その分,勉強不足の人が合格するのはかなり難しくなります。
それでは解説です。
1 CSR(Corporate Social Responsibility)は,福祉サービス事業者には求められない。
CSRは,Corporate(企業) Social(社会) Responsibility(責任),つまり企業の社会的責任のことです。
福祉サービス事業者,特に社会福祉事業を経営することを主目的とする社会福祉法人には,大きな社会的責任があります。
社会福祉法人は,税制面で営利企業よりも優遇されているからです。
2 CSV(Creating Shared Value)とは,企業や法人の価値を共有するために情報開示を進める概念である。
CSVは,Creating(創造) Shared (共有)Value(価値),つまり共有価値を創造するという意味です。
これでは意味がわかりませんが,社会に役立つ企業を目指す企業理念といった意味合いになります。
その組織だけが儲かればよいというものではなく,企業活動を通して社会貢献を目指すという考え方です。
3 バランス・スコアカードとは,財務面の評価手法である。
バランス・スコアカードは,経営の評価手法であることは適切です。
しかし,評価指標は,財政に加えて,顧客,業務プロセス,学習と成長,4つで成り立ちます。
4 コンプライアンスを達成するには,ガバナンスが重要である。
これが正解です。
ガバナンスが効いていないと,コンプライアンスを達成することは難しいと思います。
一時期,食品会社で賞味期限を変えて大問題になったことがあります。
誰も「それはまずいよ」と言い出せない組織風土があったのかもしれません。
そうではなく,誰もが「それは変じゃない?」と言える組織,つまり内部統制があれば,法令を破るようなことはない組織となるはずです。
5 福祉サービスの改善活動であるPDCAには,現場職員が関わらないことが望ましい。
PDCAは,現場職員がかかわってこそ,機能していきます。