2023年9月30日土曜日

ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について

今回は社会保障審議会福祉部会に設置された福祉人材確保専門委員会による「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」を取り上げます。


ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000199560.pdf


この報告書を根拠として,令和元年度カリキュラム改正が行われました。

そんなことで,前説なしで今日の問題です。


第32回・問題31

社会保障審議会福祉部会に設置された福祉人材確保専門委員会の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」(2018年(平成30年))に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会福祉士には,地域課題の解決の拠点となる場づくり,ネットワーキングなどを通じて,地域住民の活動支援を行うことが求められている。

2 地域住民が主体的に地域課題を把握して解決を試みている場合は,社会福祉士はそれを見守ることに専念する。

3 地域課題の解決に必要な新たな社会資源の創出は,社会福祉士の専権的な職務である。

4 地域で表出されにくいニーズの発見は,民生委員に一任する。

5 社会福祉士は,地元の商店や営利企業との連携を控えることとされている。


それぞれの解説をするまでもない問題ですが,一つだけ解説したいと思います。


その前に,この問題の正解は,選択肢1です。

1 社会福祉士には,地域課題の解決の拠点となる場づくり,ネットワーキングなどを通じて,地域住民の活動支援を行うことが求められている。


地域課題の解決の拠点となる場づくりというのかちょっと引っ掛かるかもしれませんが,ほかの選択肢と比べてみると,最も適切なものだと言えるものは,この選択肢しかありません。


解説したいのは,選択肢3です。


3 地域課題の解決に必要な新たな社会資源の創出は,社会福祉士の専権的な職務である。


福祉ニーズを充足するために,時には新たな社会資源を創出することは,ソーシャルワークの機能の一つです。


しかし,社会福祉士は名称独占の資格であり,業務独占ではありません。


そのため,社会福祉士しかできない業務は存在しません。


〈今日の注意ポイント〉


解説したいのは,選択肢3です。


3 地域課題の解決に必要な新たな社会資源の創出は,社会福祉士の専権的な職務である。


福祉ニーズを充足するために,時には新たな社会資源を創出することは,ソーシャルワークの機能の一つです。


しかし,社会福祉士は名称独占の資格であり,業務独占ではありません。

そのため,社会福祉士しかできない業務は存在しません。

2023年9月29日金曜日

義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針

 今回は,文部科学省による「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」を取り上げます。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/__icsFiles/afieldfile/2017/04/17/1384371_1.pdf


おそらく,今後は二度と出題されないだろうと思います。

そのために,前説なしで,今日の問題です。



第32回・問題30 

文部科学省の「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」(2017年(平成29年))で示された不登校児童生徒への支援に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 不登校児童生徒が学校へ登校するという結果を,第一の目標としている。

2 不登校児童生徒の意思を十分に尊重し,その状況によっては休養が必要な場合があることに留意する。

3 不登校児童生徒の実態に配慮した教育を実施する「特例校」の設置を促進している。

4 不登校児童生徒や保護者のプライバシーの保護に配慮して,学校や教育委員会による家庭訪問は控える。

5 「チーム学校」体制の整備を,スクールソーシャルワーカーのリーダーシップの下で推進する。


二度と出題されないと思われる問題を解く意義は,問題を解くことに慣れることにほかなりません。


それでは,脳をフル回転させて,一緒に考えていきましょう。


1 不登校児童生徒が学校へ登校するという結果を,第一の目標としている。


これは誤りですが,問題全体を見渡した場合,矛盾した内容が出題されていることに気が付きますか?


それはさておき,基本指針では,「支援に際しては、登校という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある」と示されています。


2 不登校児童生徒の意思を十分に尊重し,その状況によっては休養が必要な場合があることに留意する。


これが1つめの正解です。


この選択肢が正解なら,選択肢1は必ず誤りとなります。


不登校児童生徒が学校へ登校するという結果を,第一の目標としている。

 ↑       ↑       

 ↓       ↓       

不登校児童生徒の意思を十分に尊重し,その状況によっては休養が必要な場合があることに留意する。


この2つは,並び立たない内容です。

そのため,どちらかが正解であれば,どちらかが誤りとなります。


こういったことに気がつくことは,簡単ではありません。そのために問題を解いて問題慣れすることが大切です。

国家試験では時々見られます。


3 不登校児童生徒の実態に配慮した教育を実施する「特例校」の設置を促進している。


これが2つめの正解です。


特例校とは,不登校児童生徒の実態に配慮した特色ある教育課程を編成し,教育を実施する学校です。


この指針では,教育支援センターの設置の促進も求めています。


教育支援センターとは,不登校児童生徒の支援の中核となるもので,通所希望者に対する支援のみならず、通所を希望しない不登校児童生徒に対する訪問支援などを実施します。


教育支援センターという名称から,不登校児童生徒の支援が結びつかないので,注意が必要です。


4 不登校児童生徒や保護者のプライバシーの保護に配慮して,学校や教育委員会による家庭訪問は控える。


学校や教育委員会による家庭訪問で状況把握を促進することが示されています。


5 「チーム学校」体制の整備を,スクールソーシャルワーカーのリーダーシップの下で推進する。


チーム学校は,校長のリーダーシップの下、学校や教員がスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の専門スタッフ等と不登校児童生徒に対する支援等について連携・分担するチームです。


スクールソーシャルワークに限らず,ワーカーがリーダーシップを取るといった内容のものが正解になることはありません。


〈今日の注意ポイント〉


今日取り上げた指針自体は,今後出題されることはないと思いますが,この問題の中では,3点覚えておきたいものがあります。


・特例校

・教育支援センター

・チーム学校


これらは,スクールソーシャルワークに関連する問題で出題されることがあるかもしれません。


教育現場は,社会福祉士・精神保健福祉士にはスクールソーシャルワーカーとしての役割を期待しています。

2023年9月28日木曜日

持続可能な開発目標(SDGs)

 今回は,持続可能な開発目標(SDGs)を取り上げます。


ニュースなどで耳にすることがあっても,内容は詳しくは知らない人は多いのではないかと思います。

SDGsは,地球で暮らし続けていくための2030年までに達成すべき目標です。


国際連合広報センター

https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/sustainable_development_goals/


それでは,今日の問題です。


第32回・問題28

国際連合が掲げている「持続可能な開発目標」(SDGs)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 2000年に制定されたミレニアム開発目標(MDGs)の目標を破棄し,それに代わる目標を掲げている。

2 経済成長,社会的包摂,人口増加抑制策の調和が,持続可能な開発を達成するために求められている。

3 持続可能な開発の達成には,政府の手を借りることなく民間セクターによる行動が必要とされている。

4 貧困に終止符を打つとともに,気候変動や環境保護への取組も求めている。

5 目標実現に向けた進捗状況のフォローアップと審査の責任は国際連合にあるとし,独立した国際的専門機関を設置している。

(注) 「持続可能な開発目標」(SDGs)とは,2015年の国際連合総会において採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において掲げられた目標である。


SDGsは,令和元年度改正の国家試験の出題基準で示されているので,今後も出題される可能性が高いと考えられます。


この問題自体は,時代を考えると正解できそうです。


それでは,解説です。


1 2000年に制定されたミレニアム開発目標(MDGs)の目標を破棄し,それに代わる目標を掲げている。


SDGsは知っていても,MDGsというものがあったことを知っている人は多くなったのではないかと思います。


こういったところには,正解はないものです。


なお,この選択肢の誤りポイントは,MDGsで立てた目標のうち未達成だったものに対して,SDGsで新たな目標に立て直して立てて取り組むところです。



2 経済成長,社会的包摂,人口増加抑制策の調和が,持続可能な開発を達成するために求められている。


社会的包摂を入れているところから,正解ではないだろうと推測できると思いますが,正しくは,「経済」,「社会」,「環境の調和」です。


3 持続可能な開発の達成には,政府の手を借りることなく民間セクターによる行動が必要とされている。


国連で採択されたSDGsであるのに,民間セクターに委ねて政府が協力しないなら,あまりにも身勝手ではないかと思います。


正しくはあらゆる社会資源を活用して行動することの重要性を述べています。

これなら納得でしょう?


4 貧困に終止符を打つとともに,気候変動や環境保護への取組も求めている。


これが正解です。

言われてみると,とても自然な内容です。


5 目標実現に向けた進捗状況のフォローアップと審査の責任は国際連合にあるとし,独立した国際的専門機関を設置している。


目標実現に向けた進捗状況のフォローアップと審査の責任は各政府にあるとされています。


〈今日の注意ポイント〉


今日の問題のようなよくわからないものが出題されると焦ります。


しかし,一度答えを知るとそれ以外は正解にはならず,正解が圧倒的に正解に見えるのではないかと思います。


この問題でも正解の「貧困に終止符を打つとともに,気候変動や環境保護への取組も求めている」は,今,地球上で起きている問題を考えるととても自然な内容だと思いませんか。


今後,こういったタイプの問題が出題されなくなるかもしれませんが,出題されても怖がることなく,冷静に考えることを忘れずにいてほしいと思います。

2023年9月27日水曜日

事業経営の準則とは

今日のテーマは,「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(2018年(平成30年)12月,外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)です。


今後再び出題されることは,ほぼありません。

問題を解くポイントを中心として解説したいと思います。


第32回・問題27

「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(2018年(平成30年)12月,外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 地域における外国人の活躍と共生社会の実現を図る地方公共団体の主体的で先導的な取組のために,社会福祉法人からの寄附金を募る。

2 災害時に避難所等にいる外国人被災者への情報伝達を支援する「災害時外国人支援情報コーディネーター」の養成研修を実施する。

3 外国人への行政・生活情報の提供において,個人情報保護の観点からソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用は極力避ける。

4 公営住宅法に基づき,外国人を含む住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録や住宅情報の提供,居住支援等を促進する。

5 外国人への情報提供及び相談を行う一元的な窓口として,厚生労働省の地方厚生局に「多文化共生総合相談ワンストップセンター(仮)」を設置する。


何とも難しい問題です。

国家試験では,こういった問題も出題されることがありますが,正解できなくても大丈夫です。みんなが解けません。


それでは,サクサク解説していきます。


1 地域における外国人の活躍と共生社会の実現を図る地方公共団体の主体的で先導的な取組のために,社会福祉法人からの寄附金を募る。


国が寄附金を募るというのは,聞いたことがありません。

それもそのはず。こんなことは法で認められません。


なぜなら,社会福祉法には「事業経営の準則」があるからです。


事業経営の準則

第六十一条 国、地方公共団体、社会福祉法人その他社会福祉事業を経営する者は、次に掲げるところに従い、それぞれの責任を明確にしなければならない。

一 国及び地方公共団体は、法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し、又はこれらの者の財政的援助を求めないこと。

二 国及び地方公共団体は、他の社会福祉事業を経営する者に対し、その自主性を重んじ、不当な関与を行わないこと。

三 社会福祉事業を経営する者は、不当に国及び地方公共団体の財政的、管理的援助を仰がないこと。


この設問は,アンダーラインを引いた第2項「国及び地方公共団体は、法律に基づくその責任を他の社会福祉事業を経営する者に転嫁し、又はこれらの者の財政的援助を求めないこと」に抵触します。


2 災害時に避難所等にいる外国人被災者への情報伝達を支援する「災害時外国人支援情報コーディネーター」の養成研修を実施する。


これが正解です。

こういったものがあるそうです。


3 外国人への行政・生活情報の提供において,個人情報保護の観点からソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用は極力避ける。


これだけは,知識がなくても消去可能です。


4 公営住宅法に基づき,外国人を含む住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録や住宅情報の提供,居住支援等を促進する。


住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録や住宅情報の提供,居住支援等は,住宅セーフティ法に基づきます。


5 外国人への情報提供及び相談を行う一元的な窓口として,厚生労働省の地方厚生局に「多文化共生総合相談ワンストップセンター(仮)」を設置する。


仮称だった多文化共生総合相談ワンストップセンターは,現在は,一元的相談窓口に変わっています。あまりに長すぎたからでしょう。

一元的相談窓口を設置するのは,地方公共団体です。

2023年9月26日火曜日

厚生年金の5万円年金とは?

年金給付額として現役時代の6割を保障する施策が長く続きました。

 

それが変わったのは,2004年(平成16年)改正です。

それ以降は,5割ラインを維持する方針に変更されています。

 

さて,厚生年金で5万円が給付されるようになった,いわゆる「厚生年金の5万円年金」は,福祉元年と呼ばれた1973年(昭和48年)のことです。

 

この当時の給料の平均は,8.5万円程度だったことがわかります。

 

当時の厚生省は,被用者の標準的なモデルの年金額(月額)を想定していました。推移は以下のようになります。

 

モデル年金の月額

昭和40年(1965年)

1万円(1万円年金と呼ばれる)

昭和44年(1969年)

2万円(2万円年金と呼ばれる)

昭和48年(1973年)

5万円(5万円年金と呼ばれる)

昭和51年(1976年)

9万円

昭和55年(1980年)

13万円

平成元年(1989年)

20万円

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題26

1973年(昭和48年)の「福祉元年」に実施した福祉政策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 年金の給付水準を調整するために物価スライド制を導入した。

2 標準報酬の再評価を行い,厚生年金では「9万円年金」を実現した。

3 被用者保険における家族療養費制度を導入した。

4 老人医療費支給制度を実施して,60歳以上の医療費を無料にした。

5 老人家庭奉仕員派遣事業が法制化された。

 

福祉元年に関する出題です。

福祉元年に関する出題は多いですが,この問題はとても難しいです。

よくわからない「9万円年金」というものが出題されているからです。

 

しかし,答えは,極めてスタンダートです。

 

それでは,解説です。

 

1 年金の給付水準を調整するために物価スライド制を導入した。

 

これが正解です。物価に合わせて年金給付水準を調整する物価スライド制を導入したのは,1973年(昭和48年)です。

 

2 標準報酬の再評価を行い,厚生年金では「9万円年金」を実現した。

 

9万円年金が実現したのは,1976年(昭和51年)のことです。

福祉元年は,5万円の時代です。

 

3 被用者保険における家族療養費制度を導入した。

 

扶養者に対する医療の現物給付である家族療養費制度は,1942年(昭和12年)に導入したものです。意外と古いです。

 

4 老人医療費支給制度を実施して,60歳以上の医療費を無料にした


老人医療費を無料化したのは,福祉元年の時です。 

しかし,その対象となったのは70歳以上の高齢者です。

その後,1982(昭和57)年の老人保健法によって,無料化の時代は終わります。

 

5 老人家庭奉仕員派遣事業が法制化された。

 

老人家庭奉仕員派遣事業(ホームヘルパー)が法制化されたのは,老人福祉法が制定された1963年(昭和38年)です。

2023年9月25日月曜日

ベヴァリッジ報告が示した社会保障計画の方法

 1942年につくられたベヴァリッジ報告は,イギリスの福祉国家構想の礎となったものです。


〈ベヴァリッジ報告で示された社会保障計画の方法〉

①社会保険(基本ニーズに対応するもの) ※財源は保険料

②国家扶助(特別なニーズに対応するもの) ※財源は税

③任意保険(社会保険と国家扶助を補完するもの) ※民間保険


社会保障制度が,社会保険と国家扶助で構成されるのは,日本の社会保障制度に相通じるものがありますが,任意保険を位置づけたのは,慈善活動が盛んなイギリスらしい感じがします。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題25 

「ベヴァリッジ報告」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 福祉サービスの供給主体を多元化し,民間非営利団体を積極的に活用するように勧告した。

2 従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」路線を選択するように勧告した。

3 ソーシャルワーカーの養成・研修コースを開設して,専門性を高めるように勧告した。

4 衛生・安全,労働時間,賃金,教育で構成されるナショナル・ミニマムという考え方を示した。

5 社会保障計画は,社会保険,国民扶助,任意保険という三つの方法で構成されるという考え方を示した。


答えはすぐわかると思いますが,それ以外のものも合わせて解説します。


1 福祉サービスの供給主体を多元化し,民間非営利団体を積極的に活用するように勧告した。


のちの福祉多元主義につながる考え方を打ち出したのは,「ウルフェンデン報告」です。


福祉サービスの供給主体を多元化して,民間非営利団体を積極的に活用するように勧告したのは,グリフィス報告です。


2 従来の社会民主主義とも新自由主義とも異なる「第三の道」路線を選択するように勧告した。


第三の道を提唱したのは,ギデンズです。


3 ソーシャルワーカーの養成・研修コースを開設して,専門性を高めるように勧告した。


これは,ヤングハズバンド報告の内容です。


ヤングハズバンド報告が国家試験で出題されたのは,本当に久しぶりです。過去の出題を調べたら,第18回に出題されたのが最後で,約15年ぶりに出題されたことになります。


お久しぶり~という感じです。


4 衛生・安全,労働時間,賃金,教育で構成されるナショナル・ミニマムという考え方を示した。


ナショナル・ミニマムという考え方を示したのは,ウェッブ夫妻の「産業民主制論」です。


5 社会保障計画は,社会保険,国民扶助,任意保険という三つの方法で構成されるという考え方を示した。


これが正解です。


〈ベヴァリッジ報告で示された社会保障計画の方法〉

①社会保険

②国家扶助

③任意保険


2023年9月23日土曜日

ニッポン一億総活躍プラン

 今回は,「ニッポン一億総活躍プラン」を取り上げますが,今後,直接的な内容が出題されることはほとんどないでしょう。


こういった問題を解くことの意味は,内容を覚えることではなく,勘を養うためだと言えます。今日の問題については,日本の今を知るという強い意味もあります。


そういったつもりで問題を読んでください。


第32回・問題23

「ニッポン一億総活躍プラン」(2016年(平成28年)6月閣議決定)の内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 地域資源の活用や自然環境を活用した第4次産業革命を実現すべきとした。

2 一億総活躍社会を実現するのは,次世代の役割であるとした。

3 地方創生は,一億総活躍社会を実現する上で最も緊急度の高い取組の一つであるとした。

4 一億総活躍社会は,政府に頼らず社会の側の責任において実現すべきとした。

5 「成長」か「分配」かという論争に終止符を打ち,「成長」に重点を置いた施策を推進するとした。


深く考えると正解することができないかもしれません。


正解は,選択肢3です。

3 地方創生は,一億総活躍社会を実現する上で最も緊急度の高い取組の一つであるとした。


地方創生は,一億総活躍社会を実現する上で最も緊急度の高い取組であるかはわからずとも,この問題が出題された当時は,「地方創生」がかなり盛んに叫ばれていたことを想起できたはずです。


悩むのは,選択肢1です。


1 地域資源の活用や自然環境を活用した第4次産業革命を実現すべきとした。


産業革命とは,工業化のことを意味しています。


地域資源の活用や自然環境の活用は,工業化っぽくありません。


第4次産業革命は。ドローンなどの活用です。これなら第4次産業革命っぽいです。


なお,産業革命を学術用語として初めて使用したのは,バーネット夫妻が設立した世界初のセツルメントであるトインビーホールという名称に名を遺す経済学者のアーノルド・トインビーです。

2023年9月22日金曜日

地域福祉計画で定める内容

 

今回は,社会福祉法に規定される地域福祉(支援)計画に定める内容を覚えたいと思います。

 

市町村地域福祉計画に定める内容

①地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項

②地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項

③地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項

④地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項

⑤地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項

都道府県地域福祉支援計画に定める内容

①地域における高齢者の福祉,障害者の福祉,児童の福祉その他の福祉に関し,共通して取り組むべき事項

②市町村の地域福祉の推進を支援するための基本的方針に関する事項

③社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項

④福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項

 

①は別にして,それ以外の内容は,市町村と都道府県の役割の違い明確に出ていることに気がつくでしょう。

 

市町村は,直接的な住民の支援に関係するもの。

都道府県は,間接的なもの。

 

特に都道府県の

③社会福祉を目的とする事業に従事する者の確保又は資質の向上に関する事項

④福祉サービスの適切な利用の推進及び社会福祉を目的とする事業の健全な発達のための基盤整備に関する事項

 

の2つは,都道府県の役割の特徴的な部分です。

 

これらのほかに特に覚えておきたいのは,市町村の

⑤地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項

 

は要注意です。これは近年の法改正によって加わったものです。

 

それでは,今日の問題です。

 

32回・問題22 

社会福祉法の内容に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 福祉サービス利用援助事業は,第一種社会福祉事業である。

2 市町村は,地方社会福祉審議会を設置しなければならない。

3 市町村は,社会福祉事業等に従事する者の確保に関する基本指針を定めなければならない。

4 都道府県は,都道府県地域福祉支援計画を策定しなければならない。

5 共同募金は,都道府県を単位として毎年1回実施される。

 

知識ゼロでは,5分の1以上の確率では正解できない問題です。

こういった問題が国家試験の理想です。

 

知識ゼロの人でも正解できる問題は,その問題の設計にどこか欠陥があります。

 

それでは,解説です。

 

1 福祉サービス利用援助事業は,第一種社会福祉事業である。

 

社会福祉法が定める福祉サービス利用援助事業は,日常生活自立支援事業が相当し,第二種社会福祉事業です。

 

第一種社会福祉事業は,主に生活支援施設であり,経営は,国,地方公共団体,社会福祉法人が行うことを原則としています。

 

共同募金は,生活支援施設ではありませんが,第一種社会福祉事業です。

 

第二種社会福祉事業は,通所などの事業です。第一種社会福祉事業と異なり,経営主体は限定されず,多様な主体が経営することができます。

 

2 市町村は,地方社会福祉審議会を設置しなければならない。

 

〈地方社会福祉審議会〉

都道府県,指定都市,中核市に必置の機関です。

都道府県知事,指定都市・中核市の長の監督に属し,その諮問に答え,又は関係行政庁に意見を具申します。

 

3 市町村は,社会福祉事業等に従事する者の確保に関する基本指針を定めなければならない。

 

社会福祉事業等に従事する者の確保に関する事項を定めるのは,都道府県地域福祉支援計画です。

 

4 都道府県は,都道府県地域福祉支援計画を策定しなければならない。

 

地域福祉(支援)計画は,2000(平成12)年の社会福祉法で規定されたものです。

 

その時点では,策定は任意でした。

同法の2018(平成30)年の改正によって,策定が任意から努力義務に変更になっています。

 

5 共同募金は,都道府県を単位として毎年1回実施される。

 

これが正解です。

 

共同募金は,都道府県を単位として毎年1回実施される寄附金の募集です。

 

共同募金会以外の者は,共同募金を行うことはできません。

2023年9月21日木曜日

国家試験に出題される社会的ジレンマ

 社会福祉士の国家試験に出題される社会的ジレンマの例は,


 ・フリーライダー

・共有地の悲劇

・囚人のジレンマ

 

の3つです。

 

それでは,今日は前説なしに今日の問題です。

 

32回・問題20

次のうち,「囚人のジレンマ」に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 合理的な仕組みに対して過剰な執着を持つ状況を指す。

2 一定期間,閉鎖的・画ー的に管理された場所で生活する状況を指す。

3 協力し合うことが互いの利益になるにもかかわらず,非協力への個人的誘因が存在する状況を指す。

4 二つの矛盾した命令を受けているため,そのいずれも選択することができない状況を指す。

5 非協力的行動を行うと罰を受け,協力的行動を行うと報酬を得ることで,協力的行動が促される状況を指す。

 

知識ゼロでは,5分の1以上の確率では正解できない問題です。

 

知識なしでも消去できる選択肢が含まれる問題もありますが,そういったものはあまり良い出来ではない問題だと言えます。この問題の出来具合は,中くらいといったところでしょう。

 

それでは解説です。

 

1 合理的な仕組みに対して過剰な執着を持つ状況を指す。

2 一定期間,閉鎖的・画ー的に管理された場所で生活する状況を指す。

4 二つの矛盾した命令を受けているため,そのいずれも選択することができない状況を指す。

 

これらはすべて解説する必要もないほどの嘘の選択肢です。

 

正解は,選択肢4です。

3 協力し合うことが互いの利益になるにもかかわらず,非協力への個人的誘因が存在する状況を指す。

 

囚人のジレンマは,以下のように説明されます。


状況

刑期

2人の刑期合計

ABとも黙秘

いずれも1年

2年

Aが黙秘

Bが自白

A15年,Bは無罪

15

Aが自白

Bが黙秘

Aは無罪Bは15年

15

ABとも自白

いずれも2年

4年


最も利益のあるのは,相棒を信じてABともに黙秘する場合です。

 

しかし,相手を信じれず,自白すると,2人とも黙秘した場合よりも,不利益となります。

 

5 非協力的行動を行うと罰を受け,協力的行動を行うと報酬を得ることで,協力的行動が促される状況を指す。

 

これは,選択的誘因と呼ばれるものです。

 

社会的ジレンマとともに覚えておきたいです。

2023年9月20日水曜日

社会的行為理論の整理

 今回は,社会的行為理論を整理してみたいと思います。


社会的行為と言えば,ウェーバーとハーバーマスのものが多く出題されていますので,それらは最低でも必ず押さえておくことが必要です。


ウェーバーとハーバーマスの社会的行為

https://fukufuku21.blogspot.com/2022/03/blog-post.html


〈コミュニケーション的行為論〉


ハーバーマスが提唱したものです。

この理論では,社会的行為は,行為者同士がコミュニケーションによってお互いを理解することを目的とするものだと考えます。


〈交換理論〉


ブラウが提唱したものです。

この理論では,社会的行為は,行為者が互いの利益を高めるために交換しあうものだと考えます。


〈集合行動論〉


たくさんの人がいろいろなことを提唱しています。

この理論は,人の集合行動の仕組みとその行為の意味を明らかにするものです。


〈象徴的相互作用論〉


ブルーマーが提唱したものです。

この理論では,社会的行為は,行為者の相互作用によって引き起こされるものであると考えます。


〈主意主義的行為理論〉


パーソンズが提唱したものです。


この理論では,社会的行為は,社会規範(理性や感情などを超えた意志)にしたがって行われるものであると考えます。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題19 

次のうち,パーソンズ(Parsons,T.)の社会的行為論として,正しいものを1つ選びなさい。

1 コミュニケーション的行為論

2 交換理論

3 集合行動論

4 象徴的相互作用論

5 主意主義的行為理論





正解は「5 主意主義的行為理論」です。


主意主義的行為理論の主意主義とは,理性や感情などを超えた意志を重視するものです。


なお,理性や感情などを重視することは主知主義といいます。主知主義は覚える必要はありません。



〈今日の注意ポイント〉


社会的行為理論の代表は,ヴェーバーの4類型(目的合理的行為,価値合理的行為,伝統的行為,感情的行為)です。

ダークホースは,ハーバーマスのコミュニケーション的行為です。

これらは絶対に覚えないといけません。

それぞれを友達に簡単に説明できる程度(一言で良い)まで,理解できると完璧です。

2023年9月19日火曜日

家族の類型~ステップファミリーなど

家族の類型は,さまざまなものが出題されてきています。


ステップファミリーというものの出題されたことがあります。


ステップは「義理の」という意味で,再婚した夫婦の以前のパートナーとの間に生まれた子どもを伴った家族のことです。


なお,再婚相手の子は,再婚をもって自分の子になるのではなく,養子縁組することが必要です。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題18 

次のうち,直系家族制についての記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 複数の子どもが,結婚後も親と同居することを原則とする。

2 夫婦の結婚とともに誕生し,一方の死亡によって家族が一代限りで消滅する。

3 跡継ぎとなる子どもの家族との同居を繰り返して,家族が世代的に再生産される。

4 離家した子どもの生殖家族が,親と頻繁な交際や相互援助を行う。

5 親の死亡をきっかけに,財産を均分相続して家族が分裂する。


直系家族制は知らずとも,直系がどのようなものであるかを思いだすことができれば,正解できるでしょう。


それでは,解説です。


1 複数の子どもが,結婚後も親と同居することを原則とする。


これは,複合家族制のことを述べたものです。


2 夫婦の結婚とともに誕生し,一方の死亡によって家族が一代限りで消滅する。


これは,夫婦家族制を述べたものです。


3 跡継ぎとなる子どもの家族との同居を繰り返して,家族が世代的に再生産される。


これが正解です。

言われてみると「なるほど直系だ」と思えるのではないでしょうか。


4 離家した子どもの生殖家族が,親と頻繁な交際や相互援助を行う。


これは,修正拡大家族のことを述べたものです。


離家した子どもの生殖家族は,核家族のことです。


核家族と修正拡大家族との違いは,核家族は,孤立化しやすいですが,修正拡大家族は,つながりがあるところです。


5 親の死亡をきっかけに,財産を均分相続して家族が分裂する。


これは,複合家族制のことを述べたものです。


〈今日の注意ポイント〉

家族社会学の出題頻度はそれほど高くありません。

そのため,過去問で学ぶには限界があります。

しかし,今日の問題でわかるかもしれませんが,勉強せずとも正解できる問題もあります。

なぜなら,社会学は社会で生じている現象を取り扱う学問なので,用語をよくよく考えてみると「なるほど。そうだ」と身近で実感できるものがあるからです。

重要なことは,決してひるまないことです。

2023年9月18日月曜日

コンパクトシティ

 コンパクトシティとは,

人口減少によって,すき間(歯が抜けたような状態)が生じた空間を集約することで,高齢者も車に頼らずとも生活できるようにすることを目指す政策のことです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題17 次のうち,コンパクトシティに関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 拡散した都市機能を集約させ,生活圏の再構築を図る都市

2 出身地域の異なる外国人住民の多様なコミュニティから形成される都市

3 文化や芸術,映像などの産業をまちづくりの中核に据える都市

4 先端技術産業を軸として,地方経済の発展を目指す都市

5 世界中の金融・情報関連産業が集積する都市


コンパクトシティが出題されたのは,現在のところ,第25回と第32回の2回しかありません。


答えは,選択肢1です。

1 拡散した都市機能を集約させ,生活圏の再構築を図る都市


それ以外のものは覚える必要はありません。福祉に直接的にかかわる政策ではないからです。

2023年9月17日日曜日

一般的イメージと異なるものは要注意~完全失業率

 今回は,完全失業率を取り上げます。


完全失業率は,5%を超えたこともありますが,近年は3%程度で推移しています。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題16 

「平成30年労働力調査年報」(総務省)に示された,過去5年間の日本の失業等の動向に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 若年層の完全失業率は,上昇傾向にある。

2 「若年無業者」の若年人口に対する割合は,5%台で推移している。

3 自発的な離職者数は,増加している。

4 女性の完全失業率は,男性の完全失業率よりも一貫して高い。

5 男女共に完全失業率は,低下している。

(注) 「若年無業者」とは,15~34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者を指す。


完全失業率は,おそらくしばらくはこのような問題は作れないように思います。

近年の情勢によって,完全失業率は,再び上昇しましたが,また低下しているからです。


それでは,解説です。


1 若年層の完全失業率は,上昇傾向にある。


一時期,上昇しましたが,傾向的には低下しています。


2 「若年無業者」の若年人口に対する割合は,5%台で推移している。


若年無業者は,2%前後です。


3 自発的な離職者数は,増加している。


一時期,増加しましたが,傾向的には減少しています。


4 女性の完全失業率は,男性の完全失業率よりも一貫して高い。


一貫して高いのは,男性の完全失業率です。


5 男女共に完全失業率は,低下している。


これが正解です。


一時期,上昇しましたが,傾向的には低下しています。


因みに,この解説で述べている「一時期」とは,2021年度,2022年度あたりのことです。

この時期の雇用状況が不安定になった理由はわかるでしょう?

2023年9月16日土曜日

ウェーバーの支配システム

今回は,ウェーバーの支配システムを取り上げます。

  

伝統的支配

神聖なもの,慣習によるもの,などによるものです。

日本では昔の天皇制,家父長制(親の言うことは絶対的)などが伝統的支配の類型になります。

カリスマ的支配 

特別な能力(カリスマ)を持った人による支配です。

「ちょっと極端だけれど,この人の言うことなら従える」と思えるようなものです。

戦国武将の織田信長や豊臣秀吉などがカリスマ的支配と言えるでしょう。

合法的支配

規則(法)による支配です。

近代民主国家は,合法的支配です。

伝統的支配やカリスマ的支配と違い,規則により命令し,人々は規則によって従います。支配者も規則に従います。

 

これを押さえたところで,今日の問題です。


32回・問題15

次のうち,ウェーバー(WeberM.)の合法的支配の説明として,正しいものを1つ選びなさい。

1 伝統や慣習により正当化される支配

2 正当な手続により制定された法に従うことで成立する支配

3 支配者のリーダーシップや資質,魅力によって正当化される支配

4 絶対的な権力者が定めた法に基づいて行われる支配

5 少数の卓越した能力を持つ者たちによって行われる支配



ウェーバーの支配システムを一問丸ごと取り上げるのは,とても珍しいことです。

多くの場合は,問題の中のいくつかの選択肢として出題されます。

今後のためにポイントを整理したとも言える出題なのかもしれません。


それでは,解説です。


1 伝統や慣習により正当化される支配


これは,伝統的支配のことを述べたものです。


2 正当な手続により制定された法に従うことで成立する支配


これが正解です。


3 支配者のリーダーシップや資質,魅力によって正当化される支配


これは,カリスマ的支配を述べたものです。


4 絶対的な権力者が定めた法に基づいて行われる支配


絶対的な権力者が定めた法は,抑圧的法といいます。

抑圧的法は,絶対的権力者はその法に従うことはありません。


5 少数の卓越した能力を持つ者たちによって行われる支配


これは寡頭制の鉄則と呼ばれるものです。

2023年9月15日金曜日

心理療法~応用行動分析

心理療法の出題頻度は極めて高いので,確実に覚えておきたいです。

覚える数が多くて覚えるのが大変かもしれません。


しかし,出るか出ないかわからないものを覚えるよりも出る確率が高いものを確実に覚えることが得点を上げるためには重要です。


さて,今日は,心理療法の中でも「応用行動分析」を取り上げます。


応用行動分析では,問題となる行動・変えたいと思う行動を標的行動といいます。標的行動の前後の行動を分析することで,標的行動を変化させていきます。


例えば,勉強する時間がなくなるので,スマホを見ないようにしたいと思っているとします。


この場合の標的行動は「スマホを見る」です。


勉強中にわからないことがある。(先行事象

スマホを見る。(標的行動

調べもの以外のものを見てしまう。(結果事象



この場合は,調べものは,教科書や参考書などに限定します。

それらに書かれていないものは,国家試験に出題されていたとしても,それほど重要ではないことを意味していると考えることができます。


勉強中にスマホを手に取るという行動をしなければ,標的行動は変えられそうです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題14 

心理療法に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 回想法は,高齢者の自動思考を修正することを目的としている。

2 応用行動分析は,個人の無意識に焦点を当てて介入を行っていく。

3 認知行動療法は,クライエントの人生を振り返ることでアイデンティティを再確認していく。

4 森田療法は,不安をあるがままに受け入れられるように支援していく。

5 ブリーフセラピーは,未来よりも過去に焦点を当てて介入を行っていく。


苦手だと思う人はとことん嫌な問題かもしれません。


しかし,心理専門職ではない社会福祉士には,詳細の知識を必要としません。

それぞれの特徴を覚えておけば,心理専門職と連携できます。


それでは,解説です。


1 回想法は,高齢者の自動思考を修正することを目的としている。


回想法は,クライエントの人生を振り返ることでアイデンティティを再確認していくものです。


高齢者の自動思考を修正するのは,認知行動療法(あるいは認知療法)です。


2 応用行動分析は,個人の無意識に焦点を当てて介入を行っていく。


応用行動分析は前説でわかりますね。


個人の無意識に焦点を当てて介入するのは,精神分析療法です。


3 認知行動療法は,クライエントの人生を振り返ることでアイデンティティを再確認していく。


この解説は良いでしょう。選択肢1の解説のとおりです。


4 森田療法は,不安をあるがままに受け入れられるように支援していく。


これが正解です。森田療法では,不安があってもそれを解消するのではなく,不安をあるがままに受け入れることが特徴です。


5 ブリーフセラピーは,未来よりも過去に焦点を当てて介入を行っていく。


ブリーフセラピー(短期療法)では,過去に焦点を当てた問題の解決は求めません。


過去に焦点を当てた問題の解決を行うことは,とても時間がかかり,短期では行えないためです。

過去に焦点を当てた問題の解決を行うのは,精神分析療法などです。


〈今日のポイント〉

心理療法は種類が多くて覚えるのが大変です。

しかし,それぞれの特徴をピンポイントで押さえると国家試験では対応可能です。

たとえば,森田療法では「不安をあるがままに」といったことです。

2023年9月14日木曜日

バーンアウトの症状

 バーンアウトの症状は


1.情緒的消耗感(精神的な疲労などによって,それ以上努力できなくなってしまうこと)

  ↓ ↓

2.脱人格化(人を物のように扱ってしまうこと)

  ↓ ↓

3.個人的達成感の低下(自分に対する自信の喪失や仕事などに対するやりがいの喪失)


の順番に現われるとされます。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題13 

ストレス反応の1つであるバーンアウトの症状に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 理解と発話の両面での失語症状が生じる。

2 人を人と思わなくなる気持ちが生じる。

3 近時記憶の著しい低下が生じる。

4 視覚的な幻覚が頻繁に生じる。

5 他者との関係を強めようとする傾向が生じる。


バーンアウトは知っていても,バーンアウトの症状については,勉強しないと正しく理解できないものでしょう。


そういった意味では,資格試験には向く出題かもしれません。


それでは,解説です。


1 理解と発話の両面での失語症状が生じる。


失語が生じるのは,脳障害によるものです。


理解の面での失語は,ウェルニッケ失語といいます。


発語の面での失語は,ブローカ失語といいます。


2 人を人と思わなくなる気持ちが生じる。


これが正解です。


人を人と思わなくなる気持ちが生じるのは,バーンアウトの症状のうちの「脱人格化」といいます。


3 近時記憶の著しい低下が生じる。


近時記憶の著しい低下が生じるのは,認知症です。


4 視覚的な幻覚が頻繁に生じる。


視覚的な幻覚が頻繁に生じる疾患の代表は,レビー小体型認知症です。


幻聴が特徴なのは,統合失調症です。


5 他者との関係を強めようとする傾向が生じる。


他者との関係を強めようとする傾向が生じるのは,あえて言えば,境界性パーソナリティ障害と言えるかもしれません。


境界性パーソナリティ障害は,他者から見捨てられたくないなどの気持ちから,逆に他者に対して激しく攻撃するなどの衝動性が特徴です。

2023年9月13日水曜日

ハーディネスとレジリエンス

今回,取り上げる問題は,ストレスをテーマにしたものです。

ストレスが出題される時には,高い確率でコーピングが出題されます。


しかし,今回のテーマは,ストレスではなく「ハーディネスとレジリエンス」です。

どちらもストレスを感じた時の本人の強さに関連した用語です。


ハーディネスは,ストレスに強い性格特性のことです。

レジリエンスは,復元力などを意味し,ストレスなどの状況に対応する力のことです。


どちらもストレスマネジメントには重要なので,しっかり覚えておきたいです。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題12 

ストレスに関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1 コーピングとは,ストレスの原因となる出来事のことである。

2 日常の些細ないらだちごとが積み重なっても,健康を損なうようなストレスは生じない。

3 ストレッサーを制御できるという信念は,ストレスの緩和にはつながらない。

4 アパシーとは,ストレス状態が続いても,それに対処できている状態のことである。

5 ハーディネスとは,ストレスに直面しても健康を損なうことが少ない性格特性である。


カタカナが多い問題です。

カタカナ用語は,勉強しないと意味がわからないため,国家試験の出題に向くと言えます。知識の有無が明確になるからです。


それでは,解説です。


1 コーピングとは,ストレスの原因となる出来事のことである。


コーピングは,ストレスへの対処方略のことです。問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングがあります。


ストレスの原因となる出来事のことは,ストレッサーといいます。


2 日常の些細ないらだちごとが積み重なっても,健康を損なうようなストレスは生じない。


日常の些細なことであっても,それが積み重なることで大きなストレスとなります。


3 ストレッサーを制御できるという信念は,ストレスの緩和にはつながらない。


ストレッサーを制御できるという信念は,首尾一貫感覚(SOC)といいます。

ストレスの緩和につながる感覚です。


首尾一貫感覚(SOC)には,ストレッサーを制御できるという信念「処理可能感」のほかに,自分が置かれた状況を理解できるという信念「把握可能感」,自分が置かれた状況は意味のあるものであるという信念「有意味感」があります。


4 アパシーとは,ストレス状態が続いても,それに対処できている状態のことである。


アパシーは,ストレスが続いたことによって無気力になることです。


5 ハーディネスとは,ストレスに直面しても健康を損なうことが少ない性格特性である。


これが正解です。


ストレスは,人によって感じ方が異なり,ストレスに弱い人もストレスに強い人もいます。

ストレスに強い性格特性がハーディネスです。

2023年9月12日火曜日

流動性知能と結晶性知能

流動性知能は,新しいことへの適応力です。


その場の判断力なども流動性知能の一つです。

高齢者の自動車運転による事故が社会問題化していますが,事故を起こす原因の一つには,流動性知能の低下が考えられます。


このように流動性知能は加齢とともに低下します。


結晶性知能は,経験などにより培われていく知能です。


いわば,「おばあちゃんの知恵袋」といったところでしょうか。


結晶性知能は,流動性知能と異なり,加齢に伴ってそれほど低下しません。

もちろん個人差はありますが,人によってはかなりの高齢期まで結晶性知能が高まるという人もいます。


それでは,今日の問題です。


第32回・問題11

前期高齢者(65~74歳)における認知機能や知的機能の一般的な特徴について,適切なものを1つ選びなさい。

1 作動記憶の機能は,加齢による影響が顕著にみられる。

2 エピソード記憶の機能は,加齢による影響がほとんどみられない。

3 意味記憶の機能は,加齢による影響が顕著にみられる。

4 流動性知能は,加齢による影響がほとんどみられない。

5 結晶性知能は,加齢による影響が顕著にみられる。


認知と知能をミックスして出題しています。

それぞれの用語は,特別なものを出題しているわけではありませんが,確実な知識が求められるために,正解するのは決して簡単ではないように思います。


今後は,こういった出題が増えるではないかと思います。


それでは解説です。


1 作動記憶の機能は,加齢による影響が顕著にみられる。


これが正解です。


作動記憶(ワーキングメモリー)は,短期記憶の情報処理を行うための記憶です。


ウェクスラー式知能検査では,検査者が言った言葉を覚えておいて,それを正しく答える(順唱),順番を逆に答える(逆唱)をするなどして作動記憶の知能指数を測ります。


作動記憶は,加齢の影響を受けることが理解できるでしょう。


2 エピソード記憶の機能は,加齢による影響がほとんどみられない。


エピソード記憶は,過去の記憶です。

過去の記憶という点では,個人の体験である自伝的記憶もエピソード記憶に含まれると言えるのかもしれません。


しかし,自伝的記憶は,はるか昔の記憶であるのに対し,エピソード記憶は,それほど過去の記憶ではなく,比較的最近の記憶であることに違いがあります。


加齢による影響がほとんどみられないのは,自伝的記憶です。認知症高齢者であっても,若い頃の記憶をよく覚えているのは,自伝的記憶は加齢の影響を受けにくい記憶であるということから説明できます。


エピソード記憶は,比較的最近の記憶です。

今日や昨日の出来事を覚えていないのは,認知症でなくてもよくあることです。


特に加齢の影響を受けがちな記憶だと言えるでしょう。


3 意味記憶の機能は,加齢による影響が顕著にみられる。


意味記憶は,ものの意味の記憶です。


花を見て,花の名前は思い出せなくても,花であるということは分かります。


このように,意味記憶は,加齢の影響を受けにくい記憶です。


4 流動性知能は,加齢による影響がほとんどみられない。

5 結晶性知能は,加齢による影響が顕著にみられる。


今日のテーマの登場です。


流動性知能は,新しいことへの適応力です。加齢の影響を受けます。


結晶性知能は,経験などにより培われていく知能です。加齢の影響はあまり受けず,人によってはかなりの高齢期まで高まっていく人もいるくらいです。

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