2024年9月18日水曜日

都道府県の役割の基本の基本

 

国家試験は五者択二,あるいは,五者択二の問題で構成されています。

当然ですが,正解以外は誤りです。


ところが,誤りの文章を作るのは,かなり難しいものです。

そのため,いくつかの方法が使われます。その一つが市町村と都道府県の入れ替えです。


知識不足では,解けないので,かなり手ごわい問題となります。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題42

都道府県の役割に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。 

1 生活困窮者自立支援法に基づき,生活困窮者自立相談支援事業を行う。

2 老人福祉法に基づき,養護老人ホームへの入所措置を行う。

3 「障害者総合支援法」に基づき,介護給付費の支給決定を行う。

4 子ども・子育て支援法に基づき,市町村子ども・子育て支援事業計画を定めるに当たって参酌すべき標準を定める基本指針を策定する。

5 介護保険法に基づき,地域密着型サービス事業者の指定を行う。

(注) 「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。


勉強には,とても良い問題です。しっかりと押さえていきましょう。


それでは,解説です。


1 生活困窮者自立支援法に基づき,生活困窮者自立相談支援事業を行う。


これが正解です。


生活困窮者自立支援法で規定される必須事業には,生活困窮者住宅確保給付金と生活困窮者自立相談支援事業の1つがあります。


これらは,都道府県と市,そして福祉事務所を設置する町村に実施義務があります。


生活困窮者自立相談支援事業は,委託して実施することができます。


2 老人福祉法に基づき,養護老人ホームへの入所措置を行う。


老人福祉法に基づく入所措置は,市町村の役割です。


この問題には出題されていませんが,児童福祉法に基づく入所措置は,都道府県の役割です。


大人は,入所も通所も市町村が決定します。


しかし,児童は,入所の決定は都道府県,通所の決定は市町村,役割が分かれているので,注意が必要です。


3 「障害者総合支援法」に基づき,介護給付費の支給決定を行う。


障害者総合支援法の実施主体は,市町村です。


そのため,ほとんどは市町村が実施します。


障害者総合支援法における都道府県の役割

・自立支援医療のうち,精神通院医療の支給決定

・指定一般相談支援事業者の指定

・障害福祉サービス事業者の指定

・地域生活支援事業のうち,専門性の高い事業

・都道府県障害福祉計画の策定


これら以外は,基本的に市町村の役割です。


なお,事業者の指定は基本的には都道府県の役割ですが,障害者総合支援法では,指定特定相談支援事業者の指定のみは,市町村の役割です。


4 子ども・子育て支援法に基づき,市町村子ども・子育て支援事業計画を定めるに当たって参酌すべき標準を定める基本指針を策定する。


基本指針を定めるのは,中央政府の役割です。


子ども・子育て支援法の場合は,内閣総理大臣が定めます。

厚生労働大臣ではないところに注意が必要です。


5 介護保険法に基づき,地域密着型サービス事業者の指定を行う。


介護保険法でも基本的に事業者の指定は都道府県の役割です。


しかし,

地域密着型サービス事業者

介護予防サービス事業者

居宅介護支援事業者


の指定は,市町村の役割です。


児童福祉法には,地域密着型サービスのようなものはないので,事業者の指定は基本的には都道府県の役割です。


ただし,児童福祉法でも例外があります。障害児相談支援事業者の指定のみは,市町村の役割です。

2024年9月17日火曜日

アウトカム評価について

 

医学教育に長年携わった故・ドナベディアン先生は,ヘルスケアの質の評価に関する要素を示しました。

 

ヘルスケアとは,医療管理,健康管理といった意味合いですが,わかりにくいので,意味を狭めて,医療提供という押さえ方で十分です。

 

質の評価の要素

 

構造(ストラクチャー)

 職員配置などの人的資源,建物,機器などの物的資源などに関するもの。

     

過程(プロセス)

 サービスの提供の内容,方法などに関するもの。

     

結果(アウトカム)

 健康状態の変化,患者満足度などに関するもの。

 

これを簡単にとらえると

 

構造(何を使って)

     

過程(どのように)

     

結果(どう変化した)

 

となるでしょう。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題41

福祉サービスの立案及び評価に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 パブリックコメントとは,利害関係者や学識経験者を集めて意見を聴き,予算や法律・規則の制定を行う手法のことである。

2 ニーズ推計とは,ニーズを一定の基準で分類し,その類型ごとに出現率の推計等を行い,それに対応するサービスの種類や必要量を算出する手法である。

3 福祉サービス第三者評価事業における第三者評価とは,利用者の家族等によって行われる評価のことである。

4 福祉サービスのアウトカム評価とは,福祉サービスが適切な手順と内容で利用者に提供されているかに着目する評価である。

5 プログラム評価の枠組みでは,サービスの効果を計測するための指標の設定は基本的にサービスの実施後に行われる。

 

アウトカム評価は,選択肢4に登場しています。

なかなかの難問です。

 

早速,解説です。


1 パブリックコメントとは,利害関係者や学識経験者を集めて意見を聴き,予算や法律・規則の制定を行う手法のことである。

 

パブリックコメントは,政策を決定する際,市民の意見を公募することです。


2 ニーズ推計とは,ニーズを一定の基準で分類し,その類型ごとに出現率の推計等を行い,それに対応するサービスの種類や必要量を算出する手法である。

 

これが正解です。

ことばが難しいですが,ニーズ推計は,ニーズを割り出して,ニーズを充足するためのサービス等がどのくらい必要なのかを積み上げて算出する方法です。

 

よく知られるものとしては,介護保険事業計画を策定する際に,この手法を使って,第一号被保険者の保険料を算出しています。

 

3 福祉サービス第三者評価事業における第三者評価とは,利用者の家族等によって行われる評価のことである。

 

第三者評価は,評価機関などの第三者によって評価するものです。

 

4 福祉サービスのアウトカム評価とは,福祉サービスが適切な手順と内容で利用者に提供されているかに着目する評価である。

 

福祉サービスが適切な手順と内容で利用者に提供されているかに着目する評価は,プロセス評価です。

 

5 プログラム評価の枠組みでは,サービスの効果を計測するための指標の設定は基本的にサービスの実施後に行われる。

 

 

プログラム評価とは,目標を達成するためのプログラムの実施とその結果の因果関係を評価するものです。

サービスの実施前に指標を設定しないと,評価できません。


プログラム評価の主な構成要素

ニーズ評価

プログラムの対象者のニーズを評価する。

セオリー評価

プログラムが目的を達成するものとして適切に設計されているかを評価する。

プロセス評価

プログラムを実施したプロセス(過程)を評価する。

アウトカム・インパクト評価

プログラムのアウトカム(成果)やインパクト(効果)を評価する。

効率性評価

投入したコスト(費用)に対して十分な成果があったのかを評価する。

 

 

 

 

2024年9月16日月曜日

日常生活自立支援事業にかかわる専門職

日常生活自立支援事業は,都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施しています。

 

業務の一部は,市町村社会福祉協議会等に委託して実施されています。

 

日常生活自立支援事業の支援内容 

福祉サービスの利用援助

・苦情解決制度の利用援助

・住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等

・預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)

・定期的な訪問による生活変化の察知

 

専門職

専門員 契約の締結などを行う。

 

生活支援員 具体的な支援を行う。

 

専門機関

契約締結審査会 契約内容や本人の判断能力等の確認を行う。

 

運営適正化委員会 適性な運営を確保するための監督を行う第三者的機関

 

利用料 

 実施主体が独自に定める。

 契約前の相談等は無料

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題40

地域福祉の人材に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 権利擁護人材育成事業の養成者のうち,成年後見人等として選任されている市民後見人の数は,2017年度(平成29年度)末で3万人を超えている。

2 生活支援体制整備事業の生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)は,原則として民生委員・児童委員から選出される。

3 認知症サポーター養成事業は,認知症高齢者に対して有償で在宅福祉サービスの提供を行う人材の育成を目的としている。

4 地域自殺対策強化事業におけるゲートキーパー養成研修の対象には,民間企業等の管理職,かかりつけ医,民生委員・児童委員,地域住民等が含まれる。

5 日常生活自立支援事業における専門員は,支援計画の作成や契約の締結に関する業務を行うとされている。

 

日常生活自立支援事業は,選択肢5に登場しています。

 

前説によって答えはわかると思いますが,解説します。

 

1 権利擁護人材育成事業の養成者のうち,成年後見人等として選任されている市民後見人の数は,2017年度(平成29年度)末で3万人を超えている。

 

市民後見人が選任されているのは,500人もいません。

 

令和5年時点でも344人です。

 

 

2 生活支援体制整備事業の生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)は,原則として民生委員・児童委員から選出される。

 

生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)の資格要件はありません。

 

 

3 認知症サポーター養成事業は,認知症高齢者に対して有償で在宅福祉サービスの提供を行う人材の育成を目的としている。

 

認知症サポーターは,認知症の人と家族への応援者です。専門職ではありません。

 

4 地域自殺対策強化事業におけるゲートキーパー養成研修の対象には,民間企業等の管理職,かかりつけ医,民生委員・児童委員,地域住民等が含まれる。

 

これが1つめの正解です。

 

5 日常生活自立支援事業における専門員は,支援計画の作成や契約の締結に関する業務を行うとされている。

 

これが2つめの正解です。

2024年9月15日日曜日

認定特定非営利活動法人について

 特定非営利活動法人に寄付しても,税制上の優遇はありません。


しかし,認定特定非営利活動法人に寄付すると,税制上の優遇(寄付金控除など)を受けることができます。


しかし,実際に認定特定非営利活動法人の認定を受けている特定非営利活動法人は,わずか数パーセントです。


用件を満たすのが大変なのかもしれません。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題39

地域福祉等を推進する民間組織への寄附等に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 所轄庁の認定を受けた認定特定非営利活動法人に対して寄附した個人又は法人は,税制上の優遇措置を受けることができる。

2 共同募金によって集められた資金は,市町村,社会福祉事業・社会福祉を目的とする事業を経営する者などに配分されている。

3 社会福祉法人の公益事業における剰余金については,他の社会福祉法人が行っている社会福祉事業への寄附が認められている。

4 「社会福祉協議会活動実態調査等報告書2018」(全国社会福祉協議会)によれば,住民から会費を徴収している市町村社会福祉協議会は半数以下であった。

5 「令和元年度市民の社会貢献に関する実態調査」(内閣府)によれば,2018年(平成30年)に市民が寄附をした相手で最も多かったのは特定非営利活動法人であった。


ちょっと古い問題なので,古い統計が含まれていますが,そういったものは二度と出題されないと思います。


深追いしないことが大切です。


前説によって答えはわかると思いますが,一応解説します。


1 所轄庁の認定を受けた認定特定非営利活動法人に対して寄附した個人又は法人は,税制上の優遇措置を受けることができる。


前説のとおり,これが正解です。


2 共同募金によって集められた資金は,市町村,社会福祉事業・社会福祉を目的とする事業を経営する者などに配分されている。


共同募金は,国及び地方公共団体には配分されません。


3 社会福祉法人の公益事業における剰余金については,他の社会福祉法人が行っている社会福祉事業への寄附が認められている。


社会福祉法人は公益事業(老人ホームの経営など)を行うことができます。


しかし,公益事業で得られた収益は,社会福祉事業,もしくは公益事業の経営に充てることが必要です。


他の社会福祉法人が行っている社会福祉事業への寄附は認められません。


4 「社会福祉協議会活動実態調査等報告書2018」(全国社会福祉協議会)によれば,住民から会費を徴収している市町村社会福祉協議会は半数以下であった。


ほとんどの市町村社会福祉協議会は,会費を徴収しています。


5 「令和元年度市民の社会貢献に関する実態調査」(内閣府)によれば,2018年(平成30年)に市民が寄附をした相手で最も多かったのは特定非営利活動法人であった。


市民が寄附をした相手が,特定非営利活動法人ということはないだろうと推測できます。


最も多かったのは,共同募金です。多くの人にとって共同募金が最もなじみのある募金方法だということなのでしょう。


テレビ番組「愛は地球を救う」ではないようです。

2024年9月14日土曜日

地域における公益的な取組

 

社会福祉法人には,社会福祉法によって,地域における公益的な取組みを行う責務が定められています。

 

社会福祉事業及び公益事業を行うに当たっては、日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者に対して、無料又は低額な料金で、福祉サービスを積極的に提供するよう努めなければならない。

 

 

厚生労働省は,地域における公益的な取組として,以下の3点を示しています。

 

①社会福祉事業又は公益事業を行うに当たって提供される「福祉サービス」であること

 留意点:社会福祉と関連のない事業は該当しない。

 例:在宅の単身高齢者や障害者への見守りなど


②「日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者」に対する福祉サービスであること

 留意点:心身の状況や家庭環境、経済的な理由により支援を要する者が対象

 例:生活困窮世帯の子どもに対する学習支援など


③無料又は低額な料金で提供されること

留意点:法人の費用負担により、料金を徴収しない又は費用を下回る料金を徴収して実施するもの

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題38

事例を読んで,V社会福祉法人のD生活相談員(社会福祉士)の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 特別養護老人ホームを中心に社会福祉事業を経営するV社会福祉法人では,2016年(平成28年)の社会福祉法改正を受け,「地域における公益的な取組」(以下「取組」という。)の実施について協議する委員会が設置され,D生活相談員が責任者となった。委員会では,地域の中で孤立する子どもたちに対して1回100円程度で利用できる子ども食堂を実施してはどうかという提案がなされた。

1 子ども食堂は「取組」に当たらないため,法人は関わらず,施設に関わっているボランティアが中心となって実施する計画を立てる。

2 日常生活上又は社会生活上の支援を必要とする者が対象でなければ「取組」に当たらないため,地域住民や関係機関に働き掛けて,地域の子どもたちのニーズを明らかにするための話合いを実施する計画を立てる。

3 高齢者を対象とした事業でなければ法人の「取組」に当たらないため,孤立した高齢者を主たる対象とした取組として実施する計画を立てる。

4 低額であっても費用が徴収される活動は「取組」に当たらないため,無償の活動として実施する計画を立てる。

5 一つの社会福祉法人のみでは「取組」に当たらないため,近隣の他の社会福祉法人に呼び掛けて,賛同が得られた後に実施する計画を立てる。

 

 

 

ごちゃごちゃ書かれた問題ですが,答えは,選択肢2です。


2 日常生活上又は社会生活上の支援を必要とする者が対象でなければ「取組」に当たらないため,地域住民や関係機関に働き掛けて,地域の子どもたちのニーズを明らかにするための話合いを実施する計画を立てる。

 

日常生活又は社会生活上の支援を必要とする者を対象とする必要があります。

 

これ以外は,すべて嘘です。

2024年9月13日金曜日

地域生活課題とは

 

今日の問題は,地域生活課題を抱える人に対する施策に関する問題です。

 

社会福祉法に規定される地域生活課題

 

福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉,介護,介護予防,保健医療,住まい,就労及び教育に関する課題,福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み,あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題。

 

実によくいろいろなものを盛り込んだ規定です。

 

地域住民等は,支援関係機関と連携して地域生活課題の解決を図るよう留意するものとする。

 

地域住民等とは,

・地域住民

・社会福祉を目的とする事業を経営する者

・社会福祉に関する活動を行う者

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題37 

地域生活課題を抱える人への支援のための施策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 生活困窮者自立支援法は,生活困窮者における経済的困窮だけでなく,地域社会からの孤立についても支援の対象としている。

2 日常生活自立支援事業は,判断能力の不十分な精神障害者等に対して住宅を購入するための銀行からの借入れの契約などを支援している。

3 災害対策基本法は,福祉避難所に,介護支援専門員の配置を義務づけている。

4 住居確保給付金は,18歳未満の子を持つ母子世帯に対して,生活保護法に基づく住宅扶助の一環として家賃相当額を給付するものである。

5 ひきこもり地域支援センター設置運営事業は,ひきこもりの状態にある人を一般就労につなげるための職業訓練を必須事業にしている。

 

広範にわたる地域生活課題だけに,多方面の施策を盛り込んだ問題です。

 

問題自体は,よく考えて解けばそれほど難しくはありませんが,解説します。

 

1 生活困窮者自立支援法は,生活困窮者における経済的困窮だけでなく,地域社会からの孤立についても支援の対象としている。

 

これが正解です。

 

(基本理念)

生活困窮者に対する自立の支援は,生活困窮者の尊厳の保持を図りつつ,生活困窮者の就労の状況,心身の状況,地域社会からの孤立の状況その他の状況に応じて,包括的かつ早期に行われなければならない。

 

2 日常生活自立支援事業は,判断能力の不十分な精神障害者等に対して住宅を購入するための銀行からの借入れの契約などを支援している。

 

日常生活自立支援事業に含まれる日常的金銭管理は,預金の払い戻し,預金の解約,預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理です。

 

借り入れは含みません。

 

3 災害対策基本法は,福祉避難所に,介護支援専門員の配置を義務づけている。

 

福祉避難所の指定基準は,以下のように規定されています。

 

・読要配慮者(高齢者,障害者,乳幼児その他)の円滑な利用を確保するための措置が講じられていること。

・災害が発生した場合において要配慮者が相談し,又は助言その他の支援を受けることができる体制が整備されること。

・災害が発生した場合において主として要配慮者を滞在させるために必要な居室が可能な限り確保されること。

 

人員の配置の規定はありません。

 

 

4 住居確保給付金は,18歳未満の子を持つ母子世帯に対して,生活保護法に基づく住宅扶助の一環として家賃相当額を給付するものである。

 

住宅確保給付金は,生活困窮者自立支援法に基づき,居住する住宅の所有権若しくは使用及び収益を目的とする権利を失い,又は現に賃借して居住する住宅の家賃を支払うことが困難となったものであって,就職を容易にするため住居を確保する必要があると認められるものに対し支給するものです。

 

2025年4月から,住居確保給付金は,生活困窮者が家計を改善するため新たな住居を確保する場合(より安い賃貸住宅への住み替え)にも給付されます。

 

5 ひきこもり地域支援センター設置運営事業は,ひきこもりの状態にある人を一般就労につなげるための職業訓練を必須事業にしている。

 

ひきこもり地域支援センターの主な役割は,ひきこもりの人の居場所づくりです。

職業訓練は含まれません。

2024年9月12日木曜日

社会福祉法における地域福祉の推進

 

近年,社会福祉法は,地域共生社会の実現に向けての改正が続いています。

 

社会福祉法は,社会福祉法の基本法的位置づけの法律なので,必ず目を通しておくことが大切です。

 

最近のe-govは,改正箇所がわかるように更新されているので,とても便利になりました。

過去の改正も追えるようになっています。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題36

社会福祉法における地域福祉の推進に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会福祉事業を経営する者は,地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。

2 社会福祉に関する活動を行う者は,地域福祉を推進する主体である市町村に協力しなければならないとされている。

3 地域住民等は,支援関係機関と連携して地域生活課題の解決を図るよう留意するとされている。

4 福祉サービスの利用者は,支援を受ける立場であることから,地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。

5 国及び地方公共団体は,地域住民等が取り組む地域生活課題の解決のための活動に関与しなければならないとされている。

 

この問題は,平成29年改正(施行は平成30年)の内容が含まれています。


平成29年改正のテーマは,

 

「我が事・丸ごと」の地域作り・包括的な支援体制の整備 

 

でした。

 

それでは解説です。

 

1 社会福祉事業を経営する者は,地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。

 

地域福祉の推進主体

 ・地域住民

・社会福祉を目的とする事業を経営する者

・社会福祉に関する活動を行う者

 

2 社会福祉に関する活動を行う者は,地域福祉を推進する主体である市町村に協力しなければならないとされている。

 

市町村は,地域福祉の推進主体に含まれません。

 

3 地域住民等は,支援関係機関と連携して地域生活課題の解決を図るよう留意するとされている。

 

これが正解です。平成29年改正で加わった部分です。

 

地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

 

4 福祉サービスの利用者は,支援を受ける立場であることから,地域福祉を推進する主体には含まれないとされている。

 

福祉サービスの利用者は,地域住民です。つまり,地域福祉を推進する主体に含まれます。

 

5 国及び地方公共団体は,地域住民等が取り組む地域生活課題の解決のための活動に関与しなければならないとされている。

 

これも平成29年改正で加わったところです。

 

国及び地方公共団体は、地域住民等が地域生活課題を把握し、支援関係機関との連携等によりその解決を図ることを促進する施策その他地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めなければならない。

 

2024年9月11日水曜日

アウトリーチの事例問題と重層的支援体制整備事業

 今回は,アウトリーチの事例問題です。


アウトリーチは地域に出かけていって,ニーズをキャッチすることをいいます。


アウトリーチのもともとの意味は,腕を外に伸ばすことで,アウトリーチの地域に出かける様子がまさしく腕を外に伸ばすように見えることからその名がついています。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題35

事例を読んで,N市の地域包括支援センターのC社会福祉士の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 N市の地域包括支援センターのC社会福祉士は,担当地区で住民主体の集いの場を行っているグループから,様々な高齢者が集まってくれて手応えを感じているが,福祉の専門的な相談に対応できずに悩んでいる,と相談を受けた。C社会福祉士は,この相談を住民活動と協働して,アウトリーチによる早期のニーズ把握を行う好機と捉え,対応することにした。

1 集いの場を通じて高齢者の早期のニーズを正確に把握するため,地域包括支援センターが主体となった運営に切り替えることを提案する。

2 集いの場において受付や後片付けなどを手伝い,集いの場により多くの参加者を受け入れられるよう支援する。

3 専門的な相談機関のリストを作成し,相談が必要な人に渡すよう,集いの場に参加している高齢者に依頼する。

4 集いの場に地域包括支援センターの保健師を派遺し,適切な介護予防のプログラムが実施できるよう指導させる。

5 集いの場において出張相談を実施し,気になることがあればいつでも相談してほしいと参加者に伝える。


国家試験では,地域の集まりに出かける事例がよく出題されています。


さて,事例問題の場合は,事例の中の情報で答えを考えていきます。


答えになる情報は必ず事例の中にあるからです。


事例問題でミスしないコツは,事例を読んで,各選択肢を読んで答えを考えますが,それに加えて,もう一度事例に戻って,その答えが適切かどうかを確かめるようにすることです。


先にヒントを言うと,この事例のポイントは,福祉の専門的な相談に対応できずに悩んでいることです。


これに対応しないものは,不適切です。


それでは解説です。


1 集いの場を通じて高齢者の早期のニーズを正確に把握するため,地域包括支援センターが主体となった運営に切り替えることを提案する。


住民の自主的な活動を地域包括支援センターが奪い取ってしまっては,地域福祉になりません。


2 集いの場において受付や後片付けなどを手伝い,集いの場により多くの参加者を受け入れられるよう支援する。


受付や後片付けの手伝いをしても,福祉の専門的な相談に対応できずに悩んでいることには対応しません。


3 専門的な相談機関のリストを作成し,相談が必要な人に渡すよう,集いの場に参加している高齢者に依頼する。


これもまったく不適切ではないですが,地域包括支援センターも相談機関です。

その機能を活用しないのは不適切だと言えるでしょう。


4 集いの場に地域包括支援センターの保健師を派遺し,適切な介護予防のプログラムが実施できるよう指導させる。


介護予防のニーズがあることは,事例には述べられていません。


5 集いの場において出張相談を実施し,気になることがあればいつでも相談してほしいと参加者に伝える。


これが正解です。


重層的支援体制整備事業について


集いの場で出張相談を行うのは,アウトリーチそのものです。

センターで相談を受けるのではなく,地域に出かけることがアウトリーチです。

一般的な事業所にとって,アウトリーチは,直接的な収益にはつながりません。お金になるのは社会資源につなげた後だからです。

そういった意味で,市町村の任意事業である重層的支援体制整備事業は,とても重要です。


重層的支援体制整備事業は,


・属性を問わない相談支援

・参加支援

・地域づくりに向けた支援


の3つの支援を一体的に実施します。


社会福祉法では,これらは


①包括的相談支援事業

②参加支援事業

③地域づくり事業


として規定されています。


これらを支えるものとして,さらに


④アウトリーチ等を通じた継続的支援事業

⑤多機関協働事業


が規定されています。


とうとうアウトリーチが法に規定されたのです。つまりお金になることを意味します。

2024年9月10日火曜日

地域共生社会推進検討会最終とりまとめ

 令和元年のカリキュラム改正は,社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会の報告書「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」を踏まえて行われました。


この報告書では,以下のように述べられています。


地域共生社会の実現を推進し,新たな福祉ニーズに対応するためには,これらのソーシャルワーク機能の発揮が必要であり,ソーシャルワークの専門職である社会福祉士が,その役割を担っていけるような実践能力を習得する必要があることから,現行のカリキュラムを見直し,内容の充実を図っていく必要がある。


地域共生社会の実現を目指すものであることがわかります。


地域共生社会の実現にかかわる内容が国家試験でも問われるものとなっていきます。


コミュニティワークなどもその一つでしょう。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題34

地域福祉の在り方に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 社会保障審議会の「市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画策定指針の在り方について」(2002年(平成14年))は,専門のコンサルタントに計画の策定を請け負わせるべきであると提言した。

2 厚生労働省の「これからの地域福祉のあり方に関する研究会報告書」(2008年(平成20年))は,制度の対象とならない生活課題は,行政が原則として関与せず,住民同士の支え合いによって解決していく必要があると提言した。

3 社会保障審議会の「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会報告書」(2013年(平成25年))は,生活保護受給者が増加する中で,中間的就労を通じた生活困窮者の社会参加よりも一般就労を重視すべきであると提言した。

4 厚生労働省の「地域力強化検討会最終とりまとめ」(2017年(平成29年))は,地域共生社会の実現に向けて,地域住民が多機関協働の中核を担う必要があると提言した。

5 厚生労働省の「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ」(2019年(令和元年))は,既存の地域資源と狭間のニーズを持つ者との間を取り持つ,新たな参加支援の機能が重要であると提言した。


今日の問題は,正解以外はでたらめの内容なので,解説しません。


正解は,選択肢5です。


5 厚生労働省の「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ」(2019年(令和元年))は,既存の地域資源と狭間のニーズを持つ者との間を取り持つ,新たな参加支援の機能が重要であると提言した。


これをもとに,社会福祉法が改正され,重層的支援体制整備事業が創設されています。


重層的支援体制整備事業は,


属性を問わない相談支援(包括的相談支援事業)

参加支援(参加支援事業)

地域づくりに向けた支援(地域づくり事業)


の3つの支援を一体的に実施する事業です。


包括的相談支援事業を担う任用資格は明示されていませんが,社会福祉士がかかわることは間違いありません。


このようにして,社会福祉士の職域が拡大していきます。

2024年9月9日月曜日

民生委員制度の歴史

 民生委員制度の源流には,岡山県で創設された済世顧問制度,その翌年に大阪府で創設された方面委員制度があります。


戦後の民生委員令によって,方面委員は民生委員となり,その後,民生委員法によって,民生委員が規定されています。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題33

民生委員制度やその前身である方面委員制度等に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 方面委員制度は,岡山県知事である笠井信一によって,地域ごとに委員を設置する制度として1918年(大正7年)に創設された。

2 方面委員は,救護法の実施促進運動において中心的な役割を果たし,同法は1932年(昭和7年)に施行された。

3 民生委員法は,各都道府県等で実施されていた制度の統一的な発展を図るため,1936年(昭和11年)に制定された。

4 民生委員は,旧生活保護法で補助機関とされていたが,1950年(昭和25年)に制定された生活保護法では実施機関とされた。

5 全国の民生委員は,社会福祉協議会と協力して,「居宅ねたきり老人実態調査」を全国規模で1968年(昭和43年)に実施した。


この時,初めて「居宅ねたきり老人実態調査」が出題されています。


この問題は,民生委員の役割の重要性を表わすとても良い出題だったように思います。


それでは,解説です。


1 方面委員制度は,岡山県知事である笠井信一によって,地域ごとに委員を設置する制度として1918年(大正7年)に創設された。


方面委員制度は,大阪府で創設されたものです。


岡山県が創設したのは,済世顧問制度です。


2 方面委員は,救護法の実施促進運動において中心的な役割を果たし,同法は1932年(昭和7年)に施行された。


これが1つめの正解です。


救護法は,1929年に作られましたが,その後,予算不足などを理由になかなか実施されませんでした。


そこで方面委員の代表たちは辞表を胸にして,天皇陛下に請願書を上奏しました。その活動が功を奏して,実施に至りました。


ネットで検索すると,方面委員の代表たちが皇居に向けて頭を下げている写真を見られます。


余談ですが,救護法の施行には,1万円札の肖像となった渋沢栄一も後押ししています。


3 民生委員法は,各都道府県等で実施されていた制度の統一的な発展を図るため,1936年(昭和11年)に制定された。


1936年に制定されたのは,方面委員令です。


民生委員法が制定されたのは,戦後である1948年(昭和23年)です。


4 民生委員は,旧生活保護法で補助機関とされていたが,1950年(昭和25年)に制定された生活保護法では実施機関とされた。


民生委員が旧生活保護法で補助機関とされていたのは正しいです。


しかし,現生活保護法では,補助機関となりました。


5 全国の民生委員は,社会福祉協議会と協力して,「居宅ねたきり老人実態調査」を全国規模で1968年(昭和43年)に実施した。


これが2つめの正解です。


1968年の1年前の1967年は,1917年の済世顧問制度が創設されてから50年の年でした。この時に全国民生委員児童委員協議会は「活動強化要綱」を定め,その中に「全国モニター調査」が示されました。その初めてのモニター調査が,「居宅ねたきり老人実態調査」です。


この調査によって,居宅で70歳以上のねたきり高齢者は,全国で少なくとも20万人いることが明らかになりました。


これがその後の高齢者福祉施策に大きな影響を与えました。

2024年9月8日日曜日

成年後見関係事件の概況

 成年後見関係事件の概況 リンク先は裁判所

https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/kouken/index.html


たった16ページしかないので,必ず目を通すことが大切です。見た方が頭に残りやすいからです。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題83

「成年後見関係事件の概況(平成31年1月~令和元年12月)」(最高裁判所事務総局家庭局)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「成年後見関係事件」の「終局事件」において,主な申立ての動機として最も多いのは,預貯金等の管理・解約であった。

2 「成年後見関係事件」の「終局事件」において,市区町村長が申立人となったものの割合は,全体の約5割であった。

3 後見開始,保佐開始,補助開始事件のうち「認容で終局した事件」において,親族以外の成年後見人等の選任では,社会福祉士が最も多い。

4 「成年後見関係事件」のうち「認容で終局した事件」において,開始原因として最も多いのは,統合失調症であった。

5 「成年後見関係事件」の申立件数に占める保佐開始の審判の割合は,全体の約7割であった。


ちょっと古い問題ですが,傾向は現在と同じです。


この時は,申立人のうち,最も多かったのは子でしたが,現在は市区町村長が最も多くなっています。


それでは,解説です。


1 「成年後見関係事件」の「終局事件」において,主な申立ての動機として最も多いのは,預貯金等の管理・解約であった。


これが正解です。この傾向はずっと同じです。


2 「成年後見関係事件」の「終局事件」において,市区町村長が申立人となったものの割合は,全体の約5割であった。


市区町村長による申立てが最も多くなったと言え,まだ2割ちょっとです。


3 後見開始,保佐開始,補助開始事件のうち「認容で終局した事件」において,親族以外の成年後見人等の選任では,社会福祉士が最も多い。


親族以外の成年後見人等は,司法書士が最も多くなっています。


4 「成年後見関係事件」のうち「認容で終局した事件」において,開始原因として最も多いのは,統合失調症であった。


開始原因は,認知症が最も多くなっています。


5 「成年後見関係事件」の申立件数に占める保佐開始の審判の割合は,全体の約7割であった。


保佐開始は,2割程度です。

7割を占めるのは,後見開始です。


なお,補助開始と任意後見監督人選任は1割未満です。

2024年9月7日土曜日

任意後見制度

 任意後見制度は,「任意後見契約に関する法律」によって規定されています。


条文は,たった11条しかありません。


そのため,出題されるポイントは,いつもほとんど同じです。


任意後見契約

・代理権を付与する委任契約。任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる。

任意後見契約の方式

・公正証書によってしなければならない。

登記

・任意後見契約していることは,登記所(法務局)に登記される。

任意後見監督人の選任

・家庭裁判所は,本人,配偶者,四親等内の親族又は任意後見受任者の請求により,任意後見監督人を選任する。

選任の請求ができない者

・本人に対して訴訟をし,又はした者及びその配偶者並びに直系血族 など

同意

・本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには,あらかじめ本人の同意がなければならない。

任意後見監督人になれない者

・任意後見受任者又は任意後見人の配偶者,直系血族及び兄弟姉妹

任意後見監督人の職務

・任意後見人の事務を監督すること。

・任意後見人の事務に関し,家庭裁判所に定期的に報告をすること。

・急迫の事情がある場合に,任意後見人の代理権の範囲内において,必要な処分をすること。

・任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

任意後見契約の解除

・任意後見監督人が選任される前は,本人又は任意後見受任者は,いつでも,公証人の認証を受けた書面によって,任意後見契約を解除することができる。

・任意後見監督人が選任された後は,本人又は任意後見人は,正当な事由がある場合に限り,家庭裁判所の許可を得て,任意後見契約を解除することができる。

後見,保佐及び補助との関係

・任意後見契約が登記されている場合には,家庭裁判所は,本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り,後見開始の審判等をすることができる。

・任意後見監督人が選任された後において本人が後見開始の審判等を受けたときは,任意後見契約は終了する。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題82 

任意後見制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 任意後見契約に関する証書の作成後,公証人は家庭裁判所に任意後見契約の届出をしなければならない。

2 本人は,任意後見監督人選任の請求を家庭裁判所に行うことはできない。

3 任意後見契約では,代理権目録に記載された代理権が付与される。

4 任意後見監督人が選任される前において,任意後見受任者は,家庭裁判所の許可を得て任意後見契約を解除することができる。

5 任意後見監督人が選任された後において,本人が後見開始の審判を受けたとしても,任意後見契約は継続される。


前説の中には書かれていないものが出題されても消去法で正解できるのが任意後見制度に関する良い点です。


それでは,解説です。


1 任意後見契約に関する証書の作成後,公証人は家庭裁判所に任意後見契約の届出をしなければならない。


任意後見契約の証書を作成した後に,公証人が行わなければならないのは,法務局で登記することです。


2 本人は,任意後見監督人選任の請求を家庭裁判所に行うことはできない。


任意後見監督人選任の請求を行うことができるのは,


・本人

・配偶者

・四親等内の親族

・任意後見受任者


です。


3 任意後見契約では,代理権目録に記載された代理権が付与される。


これが正解です。


目録の実際 リンク先は,e-govなので安心です。

https://laws.e-gov.go.jp/data/MinisterialOrdinance/412M50000010009/587363_1/pict/3JH00000216831_1905281305_2001241901_001.pdf


ここに書かれているものにチェックを入れていきます。任意後見人はチェックされてるものに対して代理権を行使します。


4 任意後見監督人が選任される前において,任意後見受任者は,家庭裁判所の許可を得て任意後見契約を解除することができる。


家庭裁判所の許可を得て任意後見契約を解除することができるのは,任意後見監督人が選任された後です。


任意後見監督人が選任される前は,いつでも,公証人の認証を受けた書面によって,任意後見契約を解除することができます。


5 任意後見監督人が選任された後において,本人が後見開始の審判を受けたとしても,任意後見契約は継続される。


任意後見監督人が選任された後において本人が後見開始の審判等を受けたときは,任意後見契約は終了します。


〈今日の一言〉


任意後見制度の問題は,簡単です


2024年9月6日金曜日

成年後見人の権限

 

成年後見人等に付与され得る権限 

 

代理権

同意権

取消権

成年後見人

×

保佐人

補助人

任意後見人

×

×

 

成年後見人に同意権が付与されないのは,同意して行った法律行為であっても,取消しが可能だからです。

 

それでは,今日の問題です。

 

33回・問題81

次のうち,成年後見制度において成年後見人等に対して付与し得る権限として,正しいものを1つ選びなさい。

1 成年後見人に対する本人の居所指定権

2 成年後見監督人に対する本人の懲戒権

3 保佐人に対する本人の営業許可権

4 補助人に対する本人の代理権

5 任意後見監督人に対する本人の行為の取消権

 

なかなかの難問です。いろいろなものが混ざっています。

 

それでは,解説です。

 

1 成年後見人に対する本人の居所指定権

 

居所指定権を有するのは,親権者です。

 

親権者が指定した居所に正当な理由なく寄り付かない場合は,虞犯少年になり得ます。

 

2 成年後見監督人に対する本人の懲戒権

 

以前,民法によって,懲戒権は親権者に付与されていました。

現在は,削除されています。

 

3 保佐人に対する本人の営業許可権

 

職業許可権であれば,親権者です。

 

営業許可権であれば,所轄の行政でしょう。

 

4 補助人に対する本人の代理権

 

これが正解です。

 

補助人は,目録に記載された特定の法律行為に関して,本人を代理します。

 

5 任意後見監督人に対する本人の行為の取消権

 

任意後見制度には,取消権の制度はありません。

 

任意後見人及び任意後見監督人に付与されるのは,代理権のみです。

 

<任意後見監督人の職務>

・任意後見人の事務を監督すること。

・任意後見人の事務に関し,家庭裁判所に定期的に報告をすること。

・急迫の事情がある場合に,任意後見人の代理権の範囲内において,必要な処分をすること。

・任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

 任意後見制度は,次回に詳しく学びます。


〈今日の一言〉

 

成年後見人等が取消しできないもの

 ・日用品の購入その他日常生活に関する行為

・身分行為(婚姻など)

・遺言

2024年9月5日木曜日

不法行為責任について

不法行為とは,意図的,あるいは不注意によって,他人に損害を与えることをいいます。


不法行為に対しては,金銭賠償を求めることができます。


職員の不法行為に関しては,その職員を雇用している法人も使用者責任を負います。


それでは,今日の問題です。


第33回・問題 

事例を読んで,関係当事者の民事責任に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Y社会福祉法人が設置したグループホーム内で,利用者のHさんが利用者のJさんを殴打したためJさんが負傷した。K職員は,日頃からJさんがHさんから暴力を受けていたことを知っていたが,適切な措置をとらずに漫然と放置していた。

1 Hさんが責任能力を欠く場合には,JさんがK職員に対して不法行為責任を追及することはできない。

2 JさんがK職員に対して不法行為責任を追及する場合には,Y社会福祉法人に対して使用者責任を併せて追及することはできない。

3 JさんはY社会福祉法人に対して,施設利用契約における安全配慮義務違反として,損害賠償を請求することができる。

4 Hさんに責任能力がある場合に,JさんがY社会福祉法人に対して使用者責任を追及するときは,Jさんは,損害の2分の1のみをY社会福祉法人に対して請求することができる。

5 Y社会福祉法人が使用者責任に基づいてJさんに対して損害賠償金を支払った場合には,Y社会福祉法人はK職員に対して求償することができない。


論点を整理します。


ポイントは,K職員が適切な措置を取らなかったことです。


民法の規定がわからずとも,これが事例に含まれていることから,答えに関係すると推測できます。


国家試験の事例には,ムダな情報はありません。


それでは解説です。


1 Hさんが責任能力を欠く場合には,JさんがK職員に対して不法行為責任を追及することはできない。


K職員は安全に配慮していないことから,責任は追及されます。

Hさんが責任能力を欠いていたとしても,それは同じです。


今回,負傷した暴力は突発的だったとしても,これまでに何度も繰り返されているからです。


それに対して対策を打っていたなら,訴訟を起こされたとしても反論の余地はあります。しかし,K職員は何の手も打っていません。


2 JさんがK職員に対して不法行為責任を追及する場合には,Y社会福祉法人に対して使用者責任を併せて追及することはできない。


使用者責任とは,職員の不法行為によって,他者に損害を与えた場合,その職員を雇用している法人も責任を負うことです。


使用者責任を追及されないためには,日ごろから職員への教育指導を徹底し,報告させるなどの措置を行うことが必要です。


3 JさんはY社会福祉法人に対して,施設利用契約における安全配慮義務違反として,損害賠償を請求することができる。


これが正解です。


安全配慮義務とは,事故が起きることが予見されている場合に,事故が起きないように対策を打つことです。


契約書に安全に配慮することの内容が含まれていなかったとしても,安全配慮義務は生じます。


4 Hさんに責任能力がある場合に,JさんがY社会福祉法人に対して使用者責任を追及するときは,Jさんは,損害の2分の1のみをY社会福祉法人に対して請求することができる。


Hさんに責任能力がある場合,Hさんに対しても損害賠償を追及することができます。


だからといって,法人に対する責任は軽減されないと考えられます。


5 Y社会福祉法人が使用者責任に基づいてJさんに対して損害賠償金を支払った場合には,Y社会福祉法人はK職員に対して求償することができない。


Y社会福祉法人には使用者責任があるので損害賠償をしなければなくなるかもしれません。


その場合は,K職員に対して,損害賠償を追及することができます。

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