労働基準法と労働契約法は,いずれも労働契約に関する法律です。
労働基準法は,日本国憲法の勤労の義務及び権利を保障するために,1947年(昭和22年)に作られました。
労働時間や休日などの労働に関する基準が規定され,罰則も規定されています。
労働契約法は,近年,個別労働関係紛争が増加していることから,民法を補足するために2007年(平成19年)に作られました。
労働契約の成立及び変更の方法などが規定されていますが,労働基準法と異なり,罰則は規定されていません。このあたりが民法を補足する法制度っぽいところです。
それでは今日の問題です。
第28回・問題125 労働法上の労働契約,就業規則,労働協約に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 労働契約とは,労働組合と使用者との間の集団的な労働条件の取決めである。
2 労働契約で合意した場合には,就業規則で定めた労働条件を下回ることができる。
3 使用者が就業規則を変更する場合,労働者代表の意見を聴く必要はない。
4 就業規則は,労働協約に反する定めをしてはならない。
5 労働協約は,口頭の申合せにより効力を生ずる。
労働法という法律はありません。
労働に関する規定がある法制度をトータルして労働法(あるいは労働法規)と呼びます。
さて,この問題自体は,正解するのはそれほど難しくないと思います。
日本語的に消去できる選択肢があるからです。
しかし,確実に正解することは,そんなに簡単なものではありません。
それでは解説です。
1 労働契約とは,労働組合と使用者との間の集団的な労働条件の取決めである。
労働契約は,労働契約法によると
第三条 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
労働契約は,労働者と使用者が対等な立場で締結するものです。
労働組合と使用者の間で締結するのは,労働協約といいます。そのため労働協約は労働組合法で規定されています。
2 労働契約で合意した場合には,就業規則で定めた労働条件を下回ることができる。
労働契約は,就業規則で定める労働条件に基づいて締結します。
就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,基準に達しない部分が無効となります。
3 使用者が就業規則を変更する場合,労働者代表の意見を聴く必要はない。
使用者が就業規則を作成および変更する場合は,労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は労働組合の意見,労働者の過半数で組織する労働組合のない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません。
4 就業規則は,労働協約に反する定めをしてはならない。
就業規則は,法令又は労働協約に反してはなりません。
5 労働協約は,口頭の申合せにより効力を生ずる。
労働協約は,労働組合法によって,書面によるもの,両当事者の署名又は記名押印することによって効力を生じることが規定されています。